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ヤンデレの小説を書こう!Part32

1 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 07:57:29 ID:cWFJWR0A
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
 ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
  →(別名:黒化、黒姫化など)
 ・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/

■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!part31
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1275550710/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
 ・版権モノは専用スレでお願いします。
 ・男のヤンデレは基本的にNGです。

2 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 09:56:23 ID:XWFVJ0Ir
>>1

3 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 11:41:22 ID:5TaiAOe5
>>1
乙〜

4 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 14:49:40 ID:q6Zh/BuV
>>1
乙でした。
それにしても、最近は投稿してくれる小説が決まってるような…
まぁ、あせらずにまとう。
鳴かぬなら鳴くまでまとうなんとやらってな

5 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 14:59:37 ID:G7gTqhoa
>>1

6 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 15:42:41 ID:I3WMqbDz
今週もヤンデレ家族の投下あるかな?楽しみだ(*^_^*)

7 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 16:05:01 ID:DhA205Dd
>>6
そんなにヤンデレ家族嫌いか?

8 :c & c:2010/06/27(日) 16:41:35 ID:jp0xFyoS
>>1
新スレ乙です
お久しぶりです、c & c の者です
大分間をお空けしてすみません
c&c10話投下いたします
今回も皆さんの暇つぶしになれば幸いです
それでは、ごゆるりと

9 :c & c:2010/06/27(日) 16:42:09 ID:jp0xFyoS
〜依音side〜

「はいねぇ、少しは落ち着いた?」
はいねぇが泣き出した後、オレは片方しかない腕ではいねぇを抱きしめ、謝り続けた。
自分がはいねぇの気持ちに気付けなかったこと、自分だけはのうのうと日常を享受していたこと。
いくら謝っても謝りきれないと思う。
「うん、ありがとうね。えねちゃん」
オレは此処で、出来るだけの償いをしなければならないのだろう。
寧ろ、そうしなければ自分自身が許せない。
それが何年かかろうとも、オレはそれをし続ける。
その旨をはいねぇに伝えると、はいねぇはまた泣き出した。
「それでさ、はいねぇ」
「うん、なぁに?」
そろそろこの手錠をほどいてもらいたい。
一応鎖でつながれていて、少しの自由は聞くんだけど、流石に長時間は辛い。
「この手錠ほd「ダメだよ」

……え?

「だって、ソレ解いたらえねちゃんまた居なくなっちゃうでしょう?」
人の話聞いてなかったんですかね、このお姉さまは。
此処にいて償うっていった気がするんですけど。
「いや、だかr「やっと手に入れた欲しいものをみすみす逃がすわけないでしょう?」
まずい、今のはいねぇには何を言っても無駄だ。
まず、眼がやばい、すげぇ濁ってる。
ひめねぇと同じ眼……いや、それより怖い。
「だからね、えねちゃんはもうここから出られないの。
 ここでおねぇちゃんと一生一緒に暮らすの。
 もう他の女には絶対渡さないから。」
え、そこまで?
確かに償うとは言ったけれども、一生は辛いなぁ。
いや、そんな状況じゃないことは解ってますけどね。
「もしも他の女に盗られる位なら……殺しちゃうから」
ひめねぇ、さきねぇ、ごめんなさい。
どうやらオレは、一生ここから出られないみたいです。

10 :c & c:2010/06/27(日) 16:42:37 ID:jp0xFyoS
〜姫乃side〜

えねちゃんが此処から居なくなって、そろそろ一週間。
私は大学に行かず『あること』の準備をしていた。
「これは、このくらいでいいわね。寧ろこっちが……」
でも、もうちょっとでこの準備も終わり。
その『あること』を実行に移す時が来る。

ピンポーン

来たみたいね。
「はーい」
ドアを開けると、そこには緑を基調にした服を着た運送業者。
「こちら奏姫乃さんのお宅でよろしいしょうか?」
「えぇ」
この運ばれてきた荷物の中身こそ私の計画に必要な物。
「では、こちらにハンコかサインお願いします」
「わかりました」
はやる気持ちを抑え、サインをし終える。
「はい、ありがとうございました」
運ばれてきた荷物を部屋に持って行き、段ボールの蓋を開けると、そこにはとあるビンが数個。
「ふふ、ふふふ」
これで必要な物はすべてそろった。
あとは『あること』を実行に移すだけ。
「待っててね、えねちゃん」
荷物をキャリーバッグの中に入れ、立ち上がる。
「それじゃあ、行きましょうか」
私の『すべて』を、取り戻すために。
部屋を出て数歩、妃乃の部屋の前で歩を止める。
何時までも塞ぎ込んでいるこの子にも、一応言っておかないとね。
「妃乃」
「……なに?」
数秒たってからの返事、声からしてまだ落ち込んでいるらしい。
本当にイライラする。
「私、一ヶ月ほど出掛けてくるから」
「っ!?」
部屋の中からの物音、そんなに驚くことでもないでしょうに。
「……取り戻しに……行くの?」
「えぇ、あの子は私の『すべて』だもの。当然でしょう?」
「……そう……」
「あなたはそこで何をしているの? 本当にそれでいいの?」
「だって……私のせいで……」
やっぱり、そんなことを思っていたのか。
「自分の所為で人を不幸にしてしまったのなら、その倍その人を幸せにしなさい。
 それを出来ないって塞ぎこんで、ずっと逃げ続けるというのなら、私は止めないわ。
 ただ、少しでも抗う意思があるのなら、行動しなさい。その人の幸せだけを祈って行動しなさい。
 ……それじゃあ、私はもう行くわ。それじゃあね」
「姉さん、私も……動いていいのかな?」
「……当り前でしょう、それにね……この家に居ていいのはお姫様とお妃様だけなの、シンデレラなんて要らないのよ」
そう言って部屋を後にする、後はあの子が決めればいい。
さぁ、待っててね、えねちゃん。
「すぐに、迎えに行くからね」


11 :c & c:2010/06/27(日) 16:43:06 ID:jp0xFyoS
〜妃乃side〜

姫乃姉さんと話した後、私は準備をし始めた。
もちろん、えねを取り戻すための準備だ。
とはいっても、今まで全く準備していなかったわけではない。
いざという時のために、準備は怠っていなかった。
ただ、今回は完全にアウェーの土地で行動するのだ。
準備していたものだけで勝てるとは思えない。
まして、相手はあの灰乃姉さんだ。
念入りに準備をし、土地勘を持ったとしても勝てる確率は少ないだろう。
「でも……」
負けるわけにはいかない、絶対に。
私がえねの左腕を奪ってしまったのだ、その報いは受けなければならない。
それは解っていた。
しかし、姫乃姉さんは言った。
自分が人を不幸にしたのならば、その倍その人を幸せにしろと。
ただ、その人の幸せだけを祈って行動しろと。
だから私は、行動しなければならない。
えねを幸せにするために。
「何で今まで……」
だからこそ、何もしなかった自分に腹が立つ。
準備をする為には、最低でも三日はかかる。
「早く、行かなきゃ……」


12 :c & c:2010/06/27(日) 16:48:18 ID:jp0xFyoS
今回はここまでです
相変わらずの稚拙な文章、短い量の投下で申し訳ありません
最後に
全作者様、皆さんの素晴らしいssで毎日楽しませてもらっています
これからもss投下楽しみにしています、頑張ってください
それでは、またの機会に

P.S. 最近リアルでヤンデレに出会いました
   友人が羨ましくて仕方ないです

13 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 16:56:35 ID:5TaiAOe5
GJww

懐かしさあまりに発狂www



次回も気長に待ちますよ〜

14 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 17:24:46 ID:cgKVgNzY
ヤバいひめねぇktkr
ずぅっと待ってたんだからね!

15 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:00:04 ID:5P1OH2qA
こんばんは。ヤンデレ家族が日曜の夜八時をお知らせします。
今回はIFストーリーです。妹懇編はまた今度。

投下します。

16 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:03:21 ID:5P1OH2qA
*****

 俺の家には4人が同時に暮らしている。そして、一人を除いて他の全員が何かしらおかしい。

 まず、考え方や行動が最もおかしいと言える人物を挙げるなら、両親だ。
 両親のどちらがよりおかしいかというと、どんぐりの背比べみたいな感じで断じにくい。
 両親のおかしいところ。
 二人は血の繋がった兄妹なのに、近親相姦し、俺ら兄妹を生み、育てた。
 戸籍謄本までは確認していないが、両親を育てた祖母が言うのだから、間違いないだろう。
 兄妹で子供を作った時点でどっちも犯罪レベルのおかしさだ。
 それでもあえて順をつけるなら、おかしい順に、母親、父親となる。
 理由はまあ、いろいろある。
 夜中にトイレへ行こうとして起きると、両親の部屋から母の嬌声が聞こえてくるとか。
 父が社員旅行で撮影してきた写真が、現像した翌日には女性の顔だけマジックペンで黒く塗りつぶされているとか。
 父の帰りが遅くなった夜、携帯電話に向かって独り言を言う母が玄関に座り込んでいるとか。
 そういうわけで、俺の目には母が最も変人として映っている。
 次が、変人の母に対して臆面もなく「好きだよ」と言ってのける父だ。

 そして、次に来るのは、俺になる。

 嘘ではない。両親のどちらに聞いても、弟に聞いても、妹に聞いても――心の中で、そう言うだろう。
 自分が過去にやったことは覚えている。
 後悔はしていないけれど、行動の結果、俺が人を傷つけたのは確かなのだ。
 妹を守るため。弟を守るため。誰の手も借りず、凶器を手にとり、憎い相手に憎しみをぶつけた。
 その件について、俺が誰かから責められたことはない。
 身内の誰一人として、友人の誰一人として、俺を責めなかった。
 むしろ、両親からは謝られ、弟と妹からは感謝された。
 俺が傷つけた相手さえ、少しの年月を空けて謝ってきた。
 事の起こった場に居た友人、いや幼なじみは、俺の行動を誉め称えた。

 周囲の人間がそう言ってくれても、俺のやったことは無くならない。
 他人に全治数ヶ月の怪我を負わせたのは事実として残っている。
 家族の中で、三番目におかしい人間は間違いなく俺だ。

 唯一普通と言えるのは、俺の妹だけだ。
 過去から今まで、妹が他人に迷惑をかけたとか、異常行動をしたといったことはない。
 未だに俺に対して「私、将来絶対お兄ちゃんと結婚するんだからね!」と言うぐらい純粋なのだ。
 中学三年になってまでそんなことを言うなんて、うちの妹は本当に子供っぽい。
 体は年齢相応なのに中身が幼いままでは、兄としては妹の将来が心配でたまらない。
 まあ、子供っぽいからといって、両親や俺みたいにおかしいわけではない。
 今後もそのまま健全に育ってほしいと俺は願う。

 同居している家族四人で、テレビのニュースをBGMにしながら朝食をとる。
 日本人の出生率が低下したというニュースから話が発展し、伯母が昨日女の子を無事出産したと父から聞かされた。
 帰ってきたら女の子の名前を教えてもらうという小さな約束を父と交わし、食器を流し台へ持って行く。
 その後、自室で家から出る準備をしている最中、妹から話を振ってきた。
 初めての子供は男の子と女の子のどっちがいいか、というお題だった。
 一姫二太郎が同時に生まれたら賑やかで楽しいよな、とか思い付きで答えてみる。
 なにやら腕を組んで悩んでいる妹を後にして、玄関から表に出る。
 辟易するほどの夏の暑さも、朝のうちならまだ大人しい。

 ――さて、今日もあいつと一緒にやるとするかな。


17 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:04:27 ID:5P1OH2qA
*****

 僕が住み慣れた家を出て、遠くの高校に通うことにしたのには理由がある。
 一言で言えば、夢を叶えるため。もうちょっと現実的に言えば、将来就きたい職業のためだ。
 スーツアクターと呼ばれる俳優。僕はその仕事に就きたいと考えている。

 スーツアクターは、ただアクションができればいい、という仕事じゃない。
 物語上に登場する人物を演じる俳優。彼らと同じレベルの演技力がなければ務まらない。
 だから、スーツアクターと言うより、アクション俳優と呼んだ方が正解に近い。
 友達や先生から将来就きたい仕事を聞かれたら、必ずそう説明している。
 そうすると、顔を出せる俳優一本の方が楽じゃないの、そっちの方が見てみたい、お願いだからそうしてくれ、と言う人が出てくる。
 でも僕は、ドラマや映画に出てくる登場人物になりたいんじゃない。
 特撮ヒーロー番組に出てくるヒーローや、モンスター役を演じたい。
 初めて魅せられてから今まで、ずっと憧れているアクション俳優になりたいんだ。
 高校の進学先を選ぶ時、兄さんに問われて、僕は初めて自分の夢を自覚した。

 僕は兄さんに感謝してる。
 進学先を選ぶ時に一番熱心に相談に乗ってくれたのは兄さんだった。
 僕が家を出ることに絶対反対の姿勢だった母さんを説得出来たのは、兄さんが味方をしてくれたからだ。
 昔から、兄さんには世話になりっぱなしだ。
 いくら感謝しても、しきれないと思っている。
 これまで受けた恩は、もはや返しきれないほど。
 僕にとって、兄さんはヒーローだ。
 兄さんみたいに強くなりたい。圧倒的な恐怖を相手に戦えるような人になりたい。
 僕と妹のために戦ってくれた時から、テレビの中のヒーローよりも、兄さんに強く憧れるようになった。
 もしかしたら僕は、兄さんみたいなヒーローを演じたいのかもしれない。


18 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:06:32 ID:5P1OH2qA

「――って感じの理由かな。僕が剣道部と空手部の強い高校に入ったのは。
 ほら、ヒーローや怪人のスーツって通気性ものすごく悪いから、夏場は体力がないともたないし。
 その点、空手とか剣道は色々着て他人と試合するから、暑さにも慣れるし、動きも身につくし、一石二鳥。
 この町の高校はさ、県大会でも成績良くないって兄さんが言ってたし」
「……うるさい。勝ち逃げしといて」
 道場の隅っこで壁に背中を預けて座り、肩で息をしながら、ききちゃんはそう言った。
 ききちゃんと違う高校に通う理由を問われたから答えてみたけど、果たしてちゃんと聞いていたんだろうか。
 姿見の前に立ち、今朝の特撮番組で見た立ち姿の真似をしてみる。
 うーん、いまいち様にならない。やっぱり身長が欲しいな、あと十センチぐらい。
 まだ身長は伸びると思うけど、このまま止まったら、演じられる役が絞られそうな気がする。
 戦隊ものの女性隊員役とかね。

「あなた、ちょっと強くなりすぎ。私と差が開きすぎてるじゃない。
 私だってあれからいっぱい稽古してるのに、なんで私がこの様で、あなたがピンピンしてるのよ……」
「それはまあ、全国大会常連の空手部には練習相手が豊富だから。
 普段から近いレベルの人と試合してると、ついつい負けん気が出てきてさ。
 負けないようにしようとするから、練習のモチベーションも続くし」
「だからってあれはおかしいわよ!」
 ききちゃんが突然立ち上がり、僕の鼻先に指をつきつける。
「絶え間なく打ってるのに全部はらわれるとか、躱されるとか、おかしいでしょ、変でしょ!
 近距離で足刀が届かないとかおかしいでしょ、上段をしゃがんでかわすとか何よ!
 あなたの高校の空手部、一体どんな練習してるのよ!」
「近くの大学の空手部の人とマンツーマンで一時間組み手したり、とか。
 あ、月に二回ぐらい警察のベテランの人達の練習に混じったりもしてる。
 部活がない日は、僕は剣道の練習をたまにしてるけど――」
 今ではすっかり慣れてしまった空手部と剣道部の練習メニューを説明していく。
 実は一日に一回ぐらい練習中に倒れそうになることは黙っておく。
 水を無理矢理たらふく飲まされてから先生と組み手をしたときの失敗談をしようとしたら、ききちゃんが手を上げて静止した。
「もういいわ、ごめんなさい。そりゃ強くなるわよね。
 あなたがこの道場で稽古してた時よりハードだわ。
 やっぱりやってる人はやってるのね、それぐらいのことは」
「そうだね。ハードな練習してる人がみんな強いってわけじゃないけど、強い人はみんな厳しい練習をこなしてるよ。
 葉月先生の言うとおり。努力を積むことで真の強さは得られる、ってね」
「ええ。私もそう思う。その言葉は真理だわ。
 ……でも、どうしてでしょうね、疑いたくなってしまうのは」

 ききちゃんが、窓の向こうへ視線を向ける。
 今まで待っていたみたいに、蝉たちの大合唱が始まった。
 窓枠からは蒼穹と白い雲だけが見える。太陽は高い位置にあって、今は見えない。
 道場に差し込んでくる太陽の光は一つもない。

「お父さんが、もう居ないから、なのかしら」


19 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:09:22 ID:5P1OH2qA

 ききちゃんが遠い目をしていたので、「葉月先生まだ生きてるでしょ」というツッコミを躊躇った。
 現在この道場内に居ない、という意味ならその台詞は正しいのだ。ききちゃんの言い方は紛らわしい。
 葉月先生は健在だ。今朝久しぶりに道場を訪ねていったところ、玄関で竹箒片手に掃除をしている先生に出会った。
 近況を話し合っていたところに、ききちゃんがやってきて、どういうわけか勝負を挑まれた。
 煙に巻いてもよかったのだけど、先生の手前、それは躊躇われた。
 結局、勝負の申し出を受けてしまい、道着に着替えて待つことになった。
 けれど現れたのはききちゃん一人で、先生は姿を見せなかった。
「先生は今どこに? 何か用事があったの?」
「うん。急な用事で知り合いから呼び出されたから、ちょっと出てくるって。
 帰りは遅くなるとも言ってたわね。残念ね、あなたも積もる話があったでしょうに」
「話をしたいっていうか、手合わせをしたかったな」
 そう。今日葉月道場に訪ねていったのは、先生と手合わせするためだった。
 空手部での三ヶ月の練習の成果を、先生相手に確かめてみたかった。
 三ヶ月程度で埋まるような実力差ではないから、勝てないことはわかりきっている。
 それでも、春までの自分より善戦できれば、成長したことを実感できる。
 強豪空手部の内側にいると、感覚がマヒして、自分の実力がわからなくなってしまうのだ。
「あなたは強くなってるわよ、さっきも言ったけど。三ヶ月前に比べて、明らかに。
 前は運が良かったり調子が良い時しか、私に勝てなかったでしょう」
「うん、まあ……そうなのかな」
「なによその反応。えーえー、どうせ私じゃあなたの相手は務まりませんよ−、ふん」
「いや、拗ねないでよ。そういうつもりじゃないんだから。
 ききちゃんと久しぶりに試合できてよかったって思ってるよ、僕」
「……ふうん、そう」

 二人して道着から普段着に着替えて、ききちゃんの家にお邪魔することになった。
 すると、ききちゃんのお母さんが昼食を準備して待っていた。僕の分まで用意されていた。
 御膳立てされて断るわけにはいかず、昼食をいただくことにした。
 食卓を囲むのは、ききちゃん、ききちゃんのお母さん、僕の三人。
 運動後の渇いた喉に、麦茶と冷やしそうめんはありがたい。
「いただきます、おばさん」
「どうぞ召し上がれ。おかわりしたければ言ってね、あの人の分もあるから」
 はい、と返事してからそうめんを口に運ぶ。
 ううん。ただのそうめんなのに、どうして母さんが作るそうめんより美味しいんだろう。
 久しぶりにおばさんの料理を食べたから、美味しさが増している気がする。
 ついつい箸が進み、おかわりまでしてしまった。
 おばさんの料理をいつも食べられるなんて羨ましい、とききちゃんに話すと、こんな返答があった。
「私の家の味が好きなんだったら、うちにずっと住んでいればいいのよ」
「そうねえ。いっそのこと、うちの子になってみない? 娘をお嫁さんにもらってちょうだい」
「ちょっと、お母さん!? べ、別にそう言う意味で言ったんじゃないって!」
 じゃあどういう意味で言ったんだろうか。
 夏だからききちゃんは薄着を来ている。
 久しぶりに会ったせいか、その服装のせいか、より身体が成長したように見える。
 加えて、さっきのききちゃんの台詞。
 もしかしたら誘われているんじゃないか、なんて邪な考えを持ってしまう。
 でも、きっとききちゃんみたいに可愛い女の子には彼氏がいるだろうと思ったので、その場は苦笑してごまかすことにした。


20 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:10:57 ID:5P1OH2qA

 また明日も道場にお邪魔することを約束してから、葉月家を後にする。
 僕は今日から一週間ほど、この町で過ごす。
 空手部の練習は、先生達がお盆休みで帰郷するため、それに合わせて休止する。
 自主練習することまでは禁じられていないけど、僕はせっかくなので実家に帰ることにした。
 高校入学してから今まで、一度も実家に帰っていなかったからだ。
 平日は練習があるし、休日は体力回復と一週間分の授業の内容を復習したりで、帰る余裕ができなかった。
 本音を言うと、月に一度ぐらいはこの町に帰ってきたい。
 理由は簡単だ。
 家族の身が心配なのだ。特に、兄さんの安否が。
 僕が特別に心配性なわけではない。でも、ここまで心配しているのはおそらく僕だけだろう。
 なぜならば。
 兄さんがどれだけモテているか、そして、兄さんが女の子の好意に気付かない鈍感だ、ということを知っているのが僕だけだからだ。

 兄さんは鈍いわけじゃない。むしろ、感性は鋭い方だ。
 しかし、自分に向けられている好意を受け取るアンテナだけは折れている。おそらく撤去済みだろう。
 それがいけないのだ。兄さんは女の子の好意に気付くことがない。
 そのくせに、相談してくる人間は誰であっても真剣に相手をする。
 結果として、相手からの好感度は右肩上がりなのに、兄さんの向ける好意がほぼ一定値のままというグラフが生まれる。
 せめて、グラフに描かれる棒が二本だけなら救いはある。
 春の時点では、僕が知っている限りで五本存在していた。
 少なくとも兄さんは四人の女の子から好かれ、それに気付いていない。
 もしかしたらだけど、僕の居ない間にまた違う女の子から好かれているかもしれない。
 そろそろ兄さんの鈍さに女の子が痺れを切らす頃じゃないだろうか。
 季節は夏だ。装いが薄着になるのと同じように、心の壁まで薄くなる。
 男も女も大胆になる季節。
 何かが起こる予感が、大挙して押し寄せてくる。


21 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:12:56 ID:5P1OH2qA

 ききちゃんの家から僕の家までの道程。
 角を曲がったところで、自宅とは正反対の方向へ向かう兄さんの後ろ姿を見た。
 Tシャツとジーンズとスニーカーという、ラフな格好だった。
 兄さんはファッションに関してなんらかのこだわりを持っている人じゃない。
 兄さんのこだわりというと、趣味のプラモデル作りぐらいだったと思う。
 どれぐらい凝り性かというと、プラモデルをおもちゃと言い違えただけで、
口調を変えて「プラモデルは模型だ、ホビーだ」ということを相手に熱弁するぐらい。
 僕も説教されたことがある。本当にこの人は兄さんなのか、別人じゃないのか、と疑うほど変貌する。
 説教モードの兄さんを相手にして一歩も引かなかったのは、シンナーの匂いが嫌いな母さんぐらい。

 プラモデル作りを愛する兄さんは、バッグ片手にどこかへ向かっているようだった。
 昨年の行動パターンから予測すると、おそらく兄さんの行き先は女友達のところだろう。
 兄さんと同じぐらい、あるいは兄さん以上にプラモデル作りに情熱を注ぐ人、藍川京子さんの家のはずだ。

 僕の考えでは、兄さんから最も好かれている人は藍川さんだ。
 二人が知り合うきっかけは、当時中学一年生の兄さんと一年先輩の藍川さんが特別授業で同席したことらしい。
 兄さんが嬉々として「すっげえ先輩と会ったぞ!」と口にする姿が思い出される。
 二人はそれからの付き合いだから、もう四年ぐらい付き合っていることになる。
 付き合っているとは言っても、兄さんは親友程度にしか思っていないはずだ。
 反対に藍川さんは、どうにかして兄さんと恋人同士になりたいようだけど。
 事実上の恋人みたいなものなんだけどねえ、兄さんと藍川さん。
 しょっちゅう藍川さんと二人きりで買い物に出かけるし、一ヶ月に一回は必ずどちらかの家に泊まってるし。
 でも、泊まってすることというと、色気のあることじゃなくて、プラモデルに色を塗ることだけ。
 下着姿で誘惑すればさすがの兄さんも理性に負けると思うから、そうすればいいのに。
 このままのペースでいくと、兄さんと藍川さんは結婚して夫婦になるんじゃないかな。
 それはそれで見てみたい気もする。
 もっとも、そうなるには藍川さんの敵が減る、もしくは敵が何のアクションも起こさない必要があるため、実現するかは未知数。
 藍川さんの敵、つまり兄さんに好意を抱く人は、いつだって兄さんの周囲にいる。

 今だって――ほら。
 自動販売機や塀を壁にして兄さんを尾行している女の子がいる。
 僕にはバレバレな尾行だけど、肝心の兄さんにはバレていないから、あの子にとってはこれでいいのだろう。


22 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:15:47 ID:5P1OH2qA

「木之内さん、こんにちは」
「ぅひっ!?」
 近づいて後ろから声をかけてみた。
 悲鳴を上げても咄嗟に逃げないのは、一応尾行中だという意識があったからなのか。
 木之内さんが振り向いて、怪訝な顔で僕の足下から頭まで観察してきた。
「……あ、も、もしかして、弟さん、ですか?」
「そうだよ。木之内さんは兄さんに何か用?」
「い、いえ、用はあるというか、でも、何ていうか」
「見てるだけじゃ、兄さんは木之内さんには気付かないと思うよ。
 何か用があるなら、兄さん、呼んでこようか?」
「えぇっ! だ、駄目です! まだ心の、心の準備が出来てないので!
 い、いきなり告白されても困りますから! 
 いえ、告白されるのは全然問題無いんですけど、今日はまだ駄目です! ひ、日が良くありません!」
「え……?」
 兄さんを呼んできて、どうして木之内さんが告白されるんだ?
 因果関係がわからない。それとも僕の知らない間に二人の関係が飛躍していたとでも?
 それはそれで構わないけど、進展してるならどうして木之内さんは尾行してるんだ?
 クエスチョンマークが浮かんだまま消えない。
 相変わらず言動が不審な女の子だ。
「と、とにかくいいですから。
 今日は偶然お兄さんを見かけて、ちょっとだけ観察したくなっただけですので」
「そう。まあ、そう言うならいいけど」
「そ、それじゃさようなら。ご、ごきげんよう」
 そう言うと、木之内さんは兄さんの進んだ道とは逆方向へ小走りで去っていった。

 彼女の名字は木之内。名前は……すみこ、だったかな。
 兄さんに好意を向けている女の子の一人で、兄さんを取り巻くハーレムの中では新メンバーに当たる。
 と言っても、もう一年以上は兄さんをああして追っかけているから、新メンバーと呼ぶのはふさわしくないかも。
 僕が知る限り、彼女の行動パターンは登下校中と休日の兄さんを追いかけるぐらい。
 そう、木之内さんは兄さんのストーカーをしている。
 実害がこれまで発生していないから、僕にはさっきみたいに追い払うしかできない。

 兄さんと木之内さんが知り合ったきっかけは、中学時代の兄さんの新聞配達のアルバイトで、木之内さんの家が配達先の一つだったこと。
 兄さんの説明では、木之内さんの家に新聞の集金に行ったら、木之内さんに新聞勧誘の男がしつこくつきまとっていたので追い払ったところ、
泣きながら何度も感謝されてしまった、ということだった。
 僕の考えでは、この説明には、一部に誤解が混じっている。
 木之内さんに新聞勧誘の男がしつこくつきまとっていた、という部分。
 たぶん、その男は、実は新聞勧誘の男ではない。
 ちょうど同じ時期に、この町にて婦女暴行未遂で逮捕された男。
 兄さんは木之内さんの家に集金に来た時、その男と邂逅したんじゃないか。
 木之内さんの視点では、兄さんは婦女暴行魔に襲われそうになっているところを助け出してくれたヒーローに見えているんじゃないか。
 そう考えると、木之内さんが兄さんに惚れてしまう理由に説明がつく。
 というか、恋の始まりとしては文句の付けようもないほど理想的だろう。
 犯罪の被害者になりそうになった人がストーカーになるっていうのはおかしいけど。

 ちなみに、兄さんのハーレムで好感度のランクをつければ、彼女は最下位に位置する。
 好感度を稼げているのかどうかも怪しい。
 たぶん兄さんは、木之内さんの顔の見覚えはあっても、なんらかの感情を覚えることはないはずだ。
 藍川さんや幼なじみみたいに一緒に遊んでいれば別だけど、木之内さんは兄さんに声をかけたりしない。
 そんなことで鈍感な兄さんが木之内さんを気にかけるなんてありえない。
 まあ、僕は兄さんじゃないから、絶対とは言えない。だけど、かなり的を射てるはずだ。
 今日兄さんが家に帰ってきたら、木之内さんのことを覚えているか聞いてみよう。


23 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:18:39 ID:5P1OH2qA

 自宅。実に三ヶ月ぶりに帰ってきた。
 新生活の慌ただしさと、空手部の練習の密度のせいで、一年ぐらい家を空けていたような気になった。
 合い鍵を玄関の錠に差し込み、右に回す。
 あれ、手応えがない。鍵が開いてるから、妹か母さんが家にいるのかも。
 扉を開けると、屋内に閉じ込められた夏の熱気が肌を覆った。
 外にいるとき以上のペースで汗が噴き出してくる。
 クーラーを求め、靴を脱ぎ捨ててリビングへ飛び込む。
 ――ああ、涼しい。
 やっぱりこの家はこれがあるからいい。実家に帰ってきて良かった。
 学校の寮じゃクーラーを置いている部屋が食堂だけだもんなあ。

 風の当たる場所でシャツの胸元を広げたまま立ち尽くしていると、廊下の方から足音がした。
 妹あたりだろうと見当を付けて、リビングの扉を開ける。
「妹? 久しぶり、帰ってきたよ――」
「おかえり、アーニキーっ! 待ってたよーっ!」
 突然飛び出してきた黒い何かに反応できず、僕は声の主――幼なじみの女の子に押し倒された。
 幼なじみは僕の顔も確認せずに、胸元に頭をぐりぐりとこすりつけてくる。
 こいつ、もしかして僕と兄さんを勘違いしてる?
「ちょっと、こ、こら!」
「恥ずかしがるなってえ。アニキだって嬉しいんだろー? 私に抱きつかれてさー」
 嬉しいと言うか、それを通りこして幸せだ。
 特に相手の胸を押しつけられている部分。
 生地が薄いせいで柔らかさがダイレクトに伝わってくる。
 というか、柔らかすぎる。もしかして、これって――?
「ほれ、こうしちゃる、こうしちゃる」
 とか言いながら、より強く抱きついてくる。
 視線を下にずらし、幼なじみの胸元を観る。
 やっぱりそうだ。こいつ、ブラジャーしてない、ノーブラだ。
 白いシャツの中で双丘がひしめきあってる。
 こ、こぼれてポロリといっちゃうんじゃないのか、これ。
 でかいっていうのは知ってたけど、まさかここまでとは。谷間が深すぎだろ。
 ただの肉体の一部なのに、ちょっと近くで見ているだけなのに、どうしてここまでエロスを感じてしまうんだ。
「どーよ? いつも子供扱いするけど、私の身体はこんなに大人なんだよ?
 この間の測定結果聞きたい? 聞きたい? んー、どしよっかなー?」
 まずい。早くこいつを止めないと。
 僕の身体がやばい。下半身的な意味ではなく、もっと奥の、命に関わる部分で。
 今は暴走しっぱなしだからいいけど、もしも冷静になったら、こいつは僕の命を刈りかねない。
「アニキが私の言うこと聞くって言うなら、教えてあげてもいいんだけどなー?」
 しかし、この状況でなんて声をかければ僕は状況を切り抜けられる?
 一つ間違えればゲームオーバーだぞ……!
 こうなったら一か八か、一撃でこいつを昏倒させて――


24 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:22:27 ID:5P1OH2qA

「あら? あれ、あら、あらら? 花火ちゃん、兄さんになにしてるのかしら?
 お兄ちゃんから、兄さんに乗り換えたのかしら? それはよかったわ、嬉しいわ、おめでとう」
 聞き慣れた声と、拍手の音。
 次に、僕の身体に圧力をかけていた幸せ感触が消え失せた。
「な……ア、アニキじゃない……」
 押し倒してきた犯人は、予想した通り花火だった。
 わなわなと震えながら、僕を見下ろしている。
 僕と兄さんを間違うなんて、花火のレーダーも鈍ったな。

 心配していた花火の攻撃もなく、僕は花火の下から解放された。
 その代わり、怒りの矛先は別方向へ向けられる。
「ちっさい妹、お前、図ったな」
「ふん。花火ちゃんがお兄ちゃんを好きなのがいけないのよ。フフフフフ」
「アニキと同じ匂いがしたから、てっきりアニキだと思ったら……」
 僕だった、と。
 僕と兄さんって同じ匂いがするのかな。友達からはあんまり似てないって言われてるのに。
 それとも、花火が僕の匂いを兄さんの匂いと勘違いしたのか。
 花火が兄さんと遊ぶ時は、結構僕も一緒してたから、それも無いとは言えないな。
「ちくしょう、弟、金だせ! サービスしてやったんだからサービス料!」
「花火はいつのまにヤのつくお仕事に就いたのさ……」
 勝手にサービスしといてお金取るとかありえないよ。

「あらあら花火ちゃん、みっともないわね。そんなことで取り乱すなんて」
 ちっさい妹こと、僕の妹が花火を挑発する。
 花火の顔が不機嫌に歪む。
 どうして花火の顔って、傷一つ無いくせに、怒ると任侠映画に出てきそうな感じに変貌するんだろう。
 空手部の先輩だって顔だけでここまで威圧感は出せないよ。
「あ? ちっさい妹の分際で調子に乗って生意気なことぬかしてんじゃねえぞ」
「花火ちゃんが騙されるのがいけないのよ。
 お兄ちゃんが今日一日家にいるなんていう情報、私が教えてきた時点で疑って然るべきじゃなくて?」
「そうだな……お前はアニキを独占したくてしょうがないんだもんな。実の妹のくせして」
「実の妹? 妹がお兄ちゃんを好きなのがおかしいの?」
「詭弁をぬかしやがる。アニキと私が付き合いだしたら、ちっさい妹、お前はアニキに絶対近づけさせないからな。
 家の中に閉じ込めてでもだ。アニキの妹は私一人で充分だ。大は小を兼ねる、ってな」
「本当に花火ちゃんは夢見る少女なのね。お兄ちゃんが私以外の女を選ぶことなんて、あり得ないのに」
「自惚れてると、足下をすくわれることになるぜ……ククククク」
「そうね、さっきの花火ちゃんみたいにならないようにしないと……フフフフフ」

 このように、花火と妹は兄さんのことが大好きだ。
 兄さんを慕う女の子のうちの二人は、言うまでもないけど、花火と妹にあたる。
 どちらが有利かというと、それは難しい話になってくる。
 花火は容姿の面で有利。幼なじみだから、妹と違って、いざ付き合おうという段になって兄さんが気後れすることもない。
 妹は、妹であること自体が有効な武器となる。兄さんは妹想いだから、妹が切実なお願いをしてきたら断らない。
 この二人の闘いは、決定打がないと決着が付かないと思う。
 リスクを恐れた小さな攻撃ではなく、捨て身の一撃。
 果たして先に賭けに出るのはどちらか。賭けを成功させるのはどちらか。機会を誤らないのはどちらか。
 まあ、藍川さんや木之内さんもいるから、二人だけの勝負っていうことにはならないだろうね。


25 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:24:30 ID:5P1OH2qA

 家の固定電話が鳴り出した。
 言い合いを続ける二人を置き去りにして、電話機の元へ向かう。
 受話器を手に取る。聞こえてきたのは、兄さんの声だった。
「あれ、お前帰ってきてたのか。行ってくれたら迎えに行ったのに」
「いいよ、気を遣わなくても。兄さんだって何か用事があるんでしょ」
 たとえば、藍川さんと二人きりで一夜を過ごすとかね。
 こんな台詞、兄さんに言ってもあっさり肯定されるだけで面白くないから、言わないけど。
「ああ、まあな。……で、今日はお前ずっと家にいるか?」
「うん。今日から五日か、六日ぐらい家にいるつもりだけど」
「それなら良かった。悪いんだけど、今日は藍川先輩の家で作品の仕上げを徹夜でするから、お前が妹の面倒を見てやってくれ」
「いいよ。別に面倒みるようなことも……ないけど」
 食器の割れる音が背後からしたり、ソファーのひっくり返るような振動が伝わってきたけど、放置。
 ああ、二人がやり合った後でのリビングの片づけも、ある意味妹の面倒見なのかな。
 花火と妹って、兄さんが留守の時に限ってやり合うもんな。
 兄さんの目の前じゃ、やり合いたくないのか、大人しくしてるし。
 一度ぐらい兄さんもあの二人の醜い争いを見てくれたらいいのに。
「そんじゃよろしくな。金は立て替えといてくれ、後で返すから。
 明日の昼頃には帰ってくるから、吉報を待ってろよ」

 通話が終わり、兄さんの声が聞こえなくなる。
 受話器を置いて一息つくと、幼なじみと妹の声がよりはっきり聞こえてきた。
「ちっさい妹は不幸になーれ、葵紋花火は幸せになーれ!」
「お兄ちゃんが居る限り、私の幸せは約束されたようなものなのよ! アッハハハハハ!」
 今が平日の昼でよかった。この言い争いを近所に聞かれずに済む。
 ちょっとお菓子でも買ってこよう。
 エネルギー不足になった女の子を放っておくと僕に矛先が向きかねない。
 靴を履いて、玄関から外に出る。
 空は突き抜けるほど晴れていて、ますます勢いづく太陽と一緒に夏を盛り上げる気満々だった。

 暑いし、二人にはアイスでも買ってきてあげようっと。


26 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/06/27(日) 20:27:42 ID:5P1OH2qA
以上で、IFストーリーは終了です。

どこで食い違ってこんな世界になっちゃったんでしょうか。
理由は、みなさんがお察しください。
ではまた。

27 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 20:30:53 ID:I3WMqbDz
リアルタイム投下キタ━━━━ヽ(・_・`)ノ━━━━パラレルワールドも読めて、最高に幸せでありますよー( ^-^)⊃旦~

28 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 20:38:26 ID:5TaiAOe5
GJ×100!



それより、ききって誰だったけ?

29 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 20:43:13 ID:E0P9v2J+
相変わらずGJ!!!
パラレルワールドとは言え葉月さんの名前が判明!?ききちゃん?…後花火も可愛げがあって良かった。
次回は妹懇編ですか楽しみにしてます。


30 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 20:53:40 ID:fiqVJ+vw
ヘーイGJ
IF要素は…ジミーが叔母を刺したときに花火には手を出さなかった事と、
澄子ちゃん&藍川がレイプ魔の被害に遭わなかった事の2点…かな?
あと俺の勘だが…恐らく名前の1文字目か末尾のどっちかが「き」なんだろう、葉月さんは

31 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 21:05:14 ID:GmPRBQVe
ID:DhA205Dd
NG推奨

32 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 21:05:45 ID:DCOucn3A
澄子ちゃん&藍川がレイプ魔の被害に遭わなかった事
ってまじ?
本編読んだつもりだけど、そんな(被害にあった)場面あったっけ?

33 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 21:06:56 ID:L/CWpVP6
>>32
もう一回読み返してくればいいよ
そうすれば新たな発見だってあるだろうしまた楽しめる

34 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 21:29:32 ID:DhA205Dd
>>26
乙!

35 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 21:53:20 ID:5kHb1Vho
被害に遭わなかったことというか、澄子の方は思いっきりジミーが打ち払ってね?
花火を傷つけなかったことがこのIFの原点っぽく感じるな

何にせよ乙だぜ

36 : ◆fyY8MjwzoU :2010/06/27(日) 23:01:17 ID:p2ZcKWO6
初めまして、こんばんは。ヤンデレ作品を書いたので投下しようと思います。
ヤンデレ長編話をヘタレな初心者が書いたしょぼいものですが生温かく見守ってください。
どうぞよろしくお願いします。

37 : ◆fyY8MjwzoU :2010/06/27(日) 23:02:08 ID:p2ZcKWO6
「あつ……」
 俺は暑さでだるい体に鞭をうち帰宅する。俺の名前は杉岡卓也。とある高校の二年生をやっている。
 四月に生徒会選挙をやり役員は全員二年生に変わったのだが運良く俺が副会長に当選し今は副生徒会長という就職、大学に行くのにも結構な評価が来るなかなかおいしいポジションについている。
 だが頭は中の中。運動は上の下というどこにでもいそうな平凡な高校生でもある。なんで当選したかは自分でもはっきり言って分からない。
 特にめぼしい行事もないまま進んでいき、期末試験になった。今日はその期末試験の二日目だった。俺の学校ではテストは三日に別れ三時間ずつどこかで追加一時間という形式でやっている。
 帰った後勉強できるような配慮だろうが俺たち高校生は勉強なぞせず遊ぶだろう。そう! 早く帰れるのだから!
 こほん……とにかく早く帰れるのはいいことだ。問題点は帰宅する時間だ。今日は俺たち二年生の追加日。
 現在は12時45分。真夏の太陽がお空の中心地点にいる頃だ。果てしなく暑い。太陽の無駄な頑張りに涙する、俺17歳。
 これならまだ学校でクーラーを浴びながら睡眠授業をしている方がマシだ。家に帰れば開放感が胸いっぱいに広がるが。
 それにしても腹も減り暑さで元気が削られ体から水分がなくなっていく。せめて少しでもいいから満たしたいと俺は考えていた。
「コンビニでもよるかな…」
 人類が作った文明の英知の結晶、コンビニ。クーラーで涼しくなり喉も潤せお腹も満たせる。まさに現代の天国。俺はコンビニに向かうことにした。
 コンビニの難点は少し値段が高いところだけどこのぐらいは目をつぶっても大丈夫だと思う。時々小銭足りないときあるけど
 ふと、コンビニに向かう途中細い通路があった。いつも通っているはずなのに見慣れない道。もともとここらへんは来ても素通りするような場所だから仕方ないけど。
 俺はどうするべきか迷った。現代の天国に行って俺の欲求を満たして休憩したいがこの溢れんばかりの冒険心も満たしたい。
「細い通路に行くか」
 この高鳴る鼓動の冒険心を満たすことにした。もしかしたらこの先にもコンビニがあるかもしれない。行き当たりばったりの人生。それが男子高校生の華だろう。
 孤独を気にせずワクワク、ルンルンとした気分になりながら俺は向かうことにした。
 
 長い間進んでいると小さな喫茶店が見えた。この奥に通路にはもう通路が無いようなのでここで食事にして帰ることに決めた。
 どうせ家に帰っても妹が俺のテストの出来を笑うだけだし。そうだよなー。俺の妹は俺と違ってすごく出来がいいからな。勉強も運動も顔も。
 妹は男女分け隔て無く優しく接しており(兄除く)校内新聞の週間ランキングでは彼女にしたい女子一年生の部二位になってるし。
 なぜか女子にも嫌われていないのが不思議な点だ。こんななんでもできるやつに自分の彼氏取られると思い込むやつもいると思うんだけど。
 色々疑問に思ったことがあったので妹に詳しく聞こうと思ったら一言で
「兄貴とは出来が違うのだよ」
 といわれ凄くショックを感じたことを今でもはっきりと覚えている。そりゃ俺何にもできないけどさ。
 けれどもな。俺だって! 俺も一応校内新聞の週間ランキングに乗ったことがあるし女性にもちやほやされたことがある!
 ランキングの内容は……『学校のBLカップルリングで受けだと思う人』である。栄えある二年の部三位だ。嬉しくないよ!
 女性は商店街のおばちゃんたち。よくコロッケとか野菜とかをおまけしてくれる。ちょっぴり嬉しい。時々アイスもくれるから暑い日は大助かりだったりする。
 と、なぜ妹と俺の不名誉なことを考えているんだ。頭が熱にやられたのか。さて涼もう……
 ドアを開けるとチリンチリンと涼しげな音が響く。

38 : ◆fyY8MjwzoU :2010/06/27(日) 23:04:40 ID:p2ZcKWO6
「いらっしゃいませー」
 沈んでいる気分で店内に入るとそんな気分を吹き飛ばすような明るい声で出迎えてくれた清楚で可憐なお姉さんがいた。
 髪はセミロングのウェーブのかかった茶髪。胸ははちきれんばかりの大きさ。日本人の大和撫子とは違うが綺麗だと思える。
 潤んだ唇、少々おっとりしているように見える垂れ目気味の瞳。まるで癒しという言葉を人の形にしたような人物だ。胸元には名札がついておりその名札曰く名前は藤里愛さんらしい。
 それにしてもお尻も下品ではなく品のある色気が漂って……これは……すごく目の保養です。ここに来てよかったな。体の凹凸がここまで芸術になるなんて……恐ろしい。
「……え、あ、あれ? もしかして……」
 俺の顔に近づきジーッと見て首をかしげている。は、もしや胸とお尻の見すぎで!? 神様ごめんなさい……いきなり好感度下げてどうすんだよ。俺!
「あ、わ! すいません! わたしの勘違いでした! お客様とは初めて会うのに! すいません! えっとぉ……お席はどこにいたしますか?」
 胸のことではないのか……よかったー。いやいやよくないだろ。胸は見るな。胸は見るな。
「いえいえ。気にしてませんよ。えっと……」
 俺は店内を見渡す。そこまで大きくないが立派な喫茶店だ。なかなか広いけれども清潔で人を落ち着かせる。うん。この人のイメージどおりの店だ。
 エアコンもついており暑さを感じることはない。見回してふと疑問点が浮かび上がった。この客の少なさだ。お昼時にこれはありえないと思うんだけど。
「え、えっと他のお客様っていないんですか?」
「え! えーっとぉ……滅多にこないです」
 うーんここは人が話すにはいいのにな。落ち着くし、愛さん美人だしそれを見に来る男もわんさか居そうなんだけどな。
「えっとそうだ。カウンター席でいいですか?」
「ええ、大歓迎ですよ」
 俺は愛さんと話すためにカウンター席に座ることにした。一人で黙々と食べるのも虚しいし。

「こちらがメニューとなります」
 トンと心地よい音を立てて水と一緒にメニューが置かれる。メニューは洋食が多くこれぞ洋食! という感じの食べ物が多かった。
「それじゃあ……このクリームオムライスの魚介入りと特製フルーツジュースをお願いします」
「はい分かりました。精一杯つくりますね」
 愛さんは鼻歌を歌いながら厨房に向かう。客が来たのが嬉しかったのだろうか? 本当にいいところだと思うんだけどな。この喫茶店
 今後のために一応、情報を整理しておこう。えっと店内は確実に不満はないほど綺麗になっている。まるでドラマのセットのようにも思える程綺麗だ。
 ここ最近の仮面をかぶっている変身ヒーローが使う場所に使えそうだ。愛さんは美人だよな。色気を出しているが健全な清楚なオーラがたまらない。胸と尻……大きかったな。
 いやいやそんなこと考えている暇じゃない。かなり脱線したぞ! ならご飯が壊滅的なのか? それしかないな。うん
 数分後彼女はオムライスとジュースをお盆に持ってきてくれた。
「こちら魚介入りクリームソースオムライスと特製フルーツジュースとなります」
 俺の想像とは裏腹に見た目は凄くよくいい香りを漂わせ食欲を刺激する。俺は渡されたスプーンでオムライスを崩しクリームソースに絡めてオムライスを食べる。
 デミグラスソースではなくホワイトソースをかけているがさてどうか。
 オムは柔らかくチーズのようなものがとけたクリームソースにオムライスが絡みあい凄くおいしい。俺のオム=デミグラスソースという方程式は崩れてしまうぐらい美味しかった。
 ジュースも果実の味がお互いにいやな風に混ざらなく爽やかで甘みのあるとてもおいしいジュースだった。
「……こんなにいいところなのにどうして人がこないんですか?」
 ご飯を食べ終わった後、俺は愛さんにそう質問していた。失礼だと思うが気になることは聞いておきたいのだ。まあわかってたら苦労して無いと思うが。
 でも上手いご飯、可愛い店員(愛さんしかいないから愛さんが店長かな?)、清潔で人が安らげる空間。グルメ雑誌に載りそうだと思うのに……どうして人が来ないのだろう。
 俺ならお金があれば毎日通うと思うのに。もったいないな。知らない奴は。

39 : ◆fyY8MjwzoU :2010/06/27(日) 23:05:21 ID:p2ZcKWO6
「えっと、たぶん宣伝していないので知名度が低いのと場所が場所なので」
「あ、なるほど。それはあるかも」
 確かに道は分かりづらい。あそこの道は気をつけないと分からないし通路が細いから人が気づきにくいのだろう。ここらへんの近所に家もないから立てているのにも気づかれずにいるからな。
 一番いいのは店の広告してくれればいいんだけどこの街ではちと厳しいかも。手続きとかあったはずだし。あと広告料もかかるはずだから金銭的な面でもきついと思うし。
 いや普通はそういうのも計算に入れるんじゃないのかな。すこし変な気がするぞ。ドジしたのか? まあいいか。
「やはり場所は安かったけど人がこないとダメですね。喫茶店の経営という夢って小学生からの夢だったのですけど」
「夢ですか?」
 なんかロマンティックだな。小学生から一途にここまで来たのは。出来るようで出来ないことだよな。
「ええ、夢。昔弟と約束してたのですよ。一緒に喫茶店やって店を盛り上げて雑誌に載るほど有名になるんだって」
「なんかいい話ですね。弟さんはどうしたんですか?」
「……いなくなっちゃったのですよ。昔に」
「すいません。こんなこと聞いて」
 つらかっただろうな。弟が死んでしまって。これって聞いたの薮蛇だったよな。でも凄いな。夢への妥協点を見つけて諦めないで夢を一人でもやろうとしてる。羨ましいな。
「気にしないでくださいね。もともと弟が手伝ってくれなくても喫茶店をやるつもりでしたしね。夢である喫茶店は開店できましたから私は幸せなんですよ……ジュースのおかわり入りますか?」
「あ、はいお願いします。って有料?」
「二杯目は今のところ無料ですよ。人が来ないですし食材が余っていますので」
「やっぱり赤字ですか?」
「建てたばっかりなんですがやっぱり赤字になります……ね」
 開店したばっかりだと貯金もあるだろうな。この人に限って無計画にやったとは思えないし。たぶん広告って存在忘れてるけど
「うーんおいしいし値段も手ごろだしいいところなのにうーむ」
「え、あ、えっと……なんで親身になってくれるんですか」
 困った質問が来た。どうして考えるのか。やっぱりアレしかないよな。はずかしけど」
「ここの料理がなんか……その……懐かしくて」
「懐かしいですか?」
 ほ、ほら! やっぱりキョトンとなってる! おかしいんだよね。きっと!
「い、いやまずいとか時代遅れとかじゃなくてなくて」
「え、あ、別に責めて無いですよ。つい嬉しくて。それにしてもおかしな人ですね。こんな必死に言い訳して」
「そうですか? ……あ、生徒会の皆にもよく言われる」
「やっぱりそうですか」
 生徒会の人数は俺あわせて10人だがたぶん俺のことをおかしいと思ってるのは九人中九人だろう。
 去年の運動会での借り物競争で動かないものでわざわざ人体模型取りに行ってたからな。
 あのあとクラスメイトとファミレス行って大笑いされた経験が……アレはなかなかつらい。
 そういえばあそこのパフェはおいしかったからついついいろんな人に紹介しちゃったんだよな。
「あ、そうだ!」
 愛さんはいきなり大きな声を出した俺を見て首をかしげる。
「どうしたんですか?」
 俺はキランとひらめいた。その手があった。そうすればなかなかいけるな。
「現状を改善する方法を考え付いた! 明日食材を用意して待ってくださいね!」
「え、ええいいですけど」
「なら決まりです!」
 そんな中携帯がなり始めた。着信は我が妹の杉岡茜からだった。まったくいいところなのに。

40 : ◆fyY8MjwzoU :2010/06/27(日) 23:05:44 ID:p2ZcKWO6
『兄貴! どこで油売ってんの!』
「どこって喫茶店でぐうたらしてるだけ」
『い、家に早く帰ってきなさいよ! あーもう! 兄貴のその頭は空っぽなの!? テストだって明日もあるんだし! 何! またあの生徒会長と話してるの!?』
「あーはいはい。どうせ頭空っぽですよー。ちなみに俺は一人寂しく飯食ってたよ!」
 俺はとりあえず返事をして通話を切った。めんどくさい奴から電話が来たものだ。今帰らないとうるさいよな。たぶん……。
 あいつストレス溜めやすいからなー俺が家にいないときに沸点ギリギリになると俺の部屋の者とっていってボロボロにするからな。なんか湿ってるときあるし。
 黒魔術でもあいつやってるのか不安になってきたな。マジで。兄としてはそれはやめてほしい。存在がイタくなるし、透明にして即死魔法を唱えていつ俺を殺すか分からないし。
「すいません俺家に帰りますね」
「こちらこそ長く留まらせてすいません」
「いえ! まったく気にしてませんよ! ええ。それじゃ明日また来ますね!」
 少し得した気分で俺は店から出て行く。こんないい喫茶店を発見したんだ。明日来るのが楽しみで仕方ない。それにあの作戦も楽しみだ。
「あ、まってください!」
「ほへ? なんですか?」
「えっと、その名前何というのですか?」
 あ、そういえば自己紹介してなかったな。俺は名札のやつで分かったし。ん? でも別に要らないような? いやこんな美人に名前覚えてもらえるだけでも素晴らしいことだな。
「えっと杉岡幸一です」
「幸一……さんですね。いってらっしゃい」
「はは、行ってきます」
 ちょっと照れくさくなって駆け足で店外へ行く。あのままいたら恥ずかしさで体が熱くなっていたかもしれないな。外の空気はそれ以上に俺の体を蝕んで暑かったけど。

41 : ◆fyY8MjwzoU :2010/06/27(日) 23:09:55 ID:p2ZcKWO6
以上です。下手な文ですいませんでした!

そういえば自分の友人の優美受けに毎週の土曜日の早朝に、赤い液体の入った瓶が入ってるそうです。
ヤンデレ関係あるかな?

42 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 23:12:00 ID:GmPRBQVe
自虐うぜえ

43 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 23:19:04 ID:+3SipACv
>>41
その優美が犯人じゃないのか。

44 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 23:20:10 ID:pwvqtttR
>>41
GJ!文章十分うまいよ
だがリアルの話はここでは御法度だぜ


45 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 23:21:32 ID:F2VmTIcr
田中優美清春香菜か‥

46 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 23:35:23 ID:aPnNXvPK
ヤンデレロボットVSヤンデレ男の娘とか見てみたい

47 :Sage:2010/06/27(日) 23:38:03 ID:x2Lo7IU2
ヤンデレ家族キター!!
このif話では兄と弟を好きな女性陣が逆転してるのかな?
てことは、藍川も弟の事が好きなのか
兄の方にフラグ立ってると思ってたから残念w

48 :名無しさん@ピンキー:2010/06/27(日) 23:53:39 ID:iIpL6H3c
>>47
名前

49 : ◆fyY8MjwzoU :2010/06/27(日) 23:54:24 ID:p2ZcKWO6
あ、郵便受けと間違えました…すいません。

50 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 00:09:58 ID:V3X1aLQ7
>>33
ちょっと捜しきれなかったんで、何話に澄子ちゃんと藍川がレイプに遭う描写があるの教えてくれないか?
頼む

51 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 00:11:33 ID:q3WLhkNW
>>41

これからの展開に期待してるぜ

52 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 00:27:04 ID:bSsN81+h
>>50ちなみに30ではないがw死闘編の14話と18話、但しレイプ描写では無く独白部分なので注意。

53 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 00:37:48 ID:+on6CcQQ
>>50
死闘編
後は自分でやれ

>>41
GJ!あと自虐は好意もたれないから止めた方がいい

54 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 01:02:57 ID:LJBlQ6ge
>>47
どんまい

後、妹も今は兄の方が好きだしそんなことは無いと思うが
本編ではその内女子全員が兄にデレるんじゃないかと思うと兄の周りが恐すぎるwww
そして弟がかわいそ過ぎる……

55 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 06:13:38 ID:mz9hYqX4
>>54
いや待て、弟と花火は両思いだし澄子ちゃんは弟しか見ていない。弟のファンクラブは兄が視界に入っていない。

本編の兄好きは葉月・藍川・妹くらいだし乗り切れる範囲のデレだろう。


56 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 08:46:40 ID:AsFFzZMn
別スレでもあったが埋めネタ期待してたりもするからAAで埋まったのはちょっと悲しいな
悪気はないんだろうけどさ

57 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 10:37:21 ID:D2lAjj0i
>>53 うざい


58 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 11:17:36 ID:LJBlQ6ge
>>55
ファンクラブは置いといて澄子ちゃんと花火はフラグたってる気がする

59 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 14:06:08 ID:+5ArJOwK
IFジミーは下手に記憶が残ってるのが問題かもな…
鈍さを乗り越えて女の子の気持ちに気づいても「俺は人を刃物で刺すような異常者だから」で誰ともくっつかん気がする
そんなジミーが「唯一普通なのは妹」と言う事は弟も変だって事だろうけどどこが変なんだろう

高校違うけどやっぱり弟ファンクラブは存在するんだろうか。あと…
>まだ身長は伸びると思うけど、このまま止まったら、演じられる役が絞られそうな気がする。
>戦隊ものの女性隊員役とかね。
戦う男の娘か…

60 : ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:19:24 ID:Gejk2pPM
第五話、投下します。

61 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:20:22 ID:Gejk2pPM
 放課後、私は斎藤ヨシヱの元を訪れることにした。
 まだ人の減らない本校舎を抜けて、一階の隅にある長い渡り廊下を目指す。
 本校舎と部活棟を繋ぐ通路は、この一本しかない。そのことが、部活棟の存在を更に希薄にしている気がした。
 そもそも、この高校は部活動があまり盛んでない。
 体育系文化系を問わず、どの部活も平等に弱小で、県大会出場はおろか地区大会一勝すらしたことがなかった。
 その上、まがりなりにも進学校で通っているため、大半の生徒が部活ではなく勉学に走ってしまう。かくいう私も、その内の一人だった。
 本当は、仲間達と共に汗をかき、切磋琢磨し合いながら部活動に打ち込んでいく、そんな学生らしいことに憧れていたりするのだが、自分じゃそういうことが出来ないのはわかっていた。私は、少し違う。
 渡り廊下に着いた。
 寒風から守ってくれていた本校舎を出て、寒空の下へと身を投げこんでいく。
 前々から言っていることだが、私は寒いの苦手だ。
 冬の寒さに首を縮こませながら、一刻も早く目的地に着いてしまおうと、足早に渡り廊下を進んで行く。
 そして、しばらく歩いていると、老朽化の目立つ、黒ずんだクリーム色の壁が視界に入ってきた。
 部活棟の壁だ。
 私は、目の前の建造物を見上げてみる。


62 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:21:30 ID:Gejk2pPM
 この部活棟は主に文化系部活のためのものだった。
 体育系部活に関しては、利便性を考慮してグラウンド前に設置されているプレハブ小屋が使われている。
 一般の生徒でこの部活棟を訪れる者は、まずいない。
 学内で仲間外れにされたように位置する此処は、校門とは真逆の方向にあるし、寄り道するにも少し遠すぎる。
 私自身、斎藤ヨシヱのことがなかったら一生訪れなかったかもしれない。
 ここの唯一の入口であるガラス戸を開け、中に足を踏み入れる。
 その瞬間、世界から全ての音が消えた。
 本校舎から聞こえていた居残っている生徒の声も、グラウンドや体育館からの部活動の喧騒も全て。
 どうして、放課後の部活棟はこんなにも静かなのだろうか。
 私はここを訪れる度にそう思った。
 廊下に連なる部室の扉の中にも、部活動に勤しんでいる生徒達が沢山居るはずなのに。辺りはまるで防音対策がされているかのように静まり返っていた。耳鳴りがしてしまうほどだ。
 やけに足音の響くリノリウムの床の上を歩きながら、茶道室を目指す。
 茶道室は、この部活棟の最上階である二階の一番奥に位置していた。
 階段を昇り、夕日が差し込むオレンジ色の廊下を歩いた。
 茶道室には直ぐに辿り着けた。
 私はサムターン式の鍵がついた扉の前に立ち止まり、ドアノブに手をかける。鍵はかかっていないようだ。
 なるべく音をたてないように、ゆっくりとドアノブを手前側へと引いていく。
 キィ、と金属が軋む音をたてながら、扉は開いていった。
 徐々にひらけていく視界。
 その中に、斎藤ヨシヱは居た。
 彼女は窓枠に肘をつき、湯呑みを片手に持ちながら、気怠そうに虚空を見上げていた。

63 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:22:37 ID:Gejk2pPM
 いつもの彼女だ。最後に会った時から何ひとつ変わっていない。
 なのに、私は彼女に声をかけることが出来ずにいた。
 この室内を支配する静寂を破ってしまうことで、目の前に映るこの優美な光景も壊れてしまう気がしたのだ。
 斎藤ヨシヱは美しい人だった。
 鋭い光を宿した切れ長の瞳。
 しみひとつ無い、白雪のように真っさらな肌。
 背中にまで垂れる長い髪は、その素肌とは対照的に墨を零したように真っ黒で、何を塗ったらそうなるのか白い光輪がとりまいている。
 およそ高校生らしい幼さの残る可愛さなどは微塵も無く、完成された美術品のような、気品を感じさせる美しさが彼女にはあった。
 呼吸をするのを忘れていたことに気付く。それほどまでに、目の前の光景に目を奪われていたらしい。
 しばしの間、斎藤ヨシヱの整い過ぎた横顔を見つめる。
 どのくらいの時間が経っただろうか。
 彼女は漸く私に気付いたようで、その切れ長の瞳をゆっくりと私の方へと移動させた。
 そして私を視認すると、薄く口角を吊り上げて、いつもの人を小馬鹿にしたようなシニカルな笑みを浮かべる。
「こんにちは。久しぶりね、タロウ君」
 氷を連想させるような、冷え切った声。
「こんにちは、斎藤先輩。本当にお久しぶりですね」
 私は軽く会釈をすると、靴を脱いで畳に上がった。
 そして部屋の隅に積まれている紫座布団を一枚持って、彼女の前でそれを敷き、その上に座った。
 それきりだった。
 二人の間に、特に会話は無い。
 斎藤ヨシヱは気が向いた時にしか私と話さないし、私自身も無理に彼女と話をしようとは思わなかった。
 一日中会話をしないまま、そのままお開きになるなんてことも、決して少なくはない。
 私は、彼女の側に置かれている急須等のお茶セットを見た。
 今日は、お茶を出してくれないみたいだな、と思った。
 茶道室を尋ねた時は、必ず最初に彼女がお茶を出してくれるかどうかを確認するのが常だった。
 斎藤ヨシヱは、機嫌が良い時は私にお茶を振る舞ってくれるのだ。
 今日は出してくれないみたいだけど、別段不機嫌という風にも見えないので、可もなく不可もなくといったところなのだろう。

64 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:24:05 ID:Gejk2pPM
 私は彼女の機嫌確認を終えてしまうと、何となく手持ち無沙汰になり、いたずらに視線をさ迷わせていた。
 ふと、斎藤ヨシヱの脚が目に入る。
 スカートから伸びる彼女の長い脚には、ソックスが着けられていない。
 そのせいか、陶磁器のように白い肌が、畳の緑色に反してよく映えていた。
 斎藤ヨシヱは畳に上がる時、必ずソックスを脱ぐ。
 理由は知らない。
 何故ソックスを脱ぐのかを聞いてみたかったりするのだが、彼女の脚に多大なる感心を寄せていることを悟られてしまうのは非常に不本意なことなので、未だに聞けずにいる。
 私が彼女の脚をまじまじと見つめていると
「二週間振りくらいかしら」
 と、斎藤ヨシヱが不意にそんなことを言った。
 一瞬、独白かと思って黙っていたのだが、彼女がちらりと私に視線を寄越したことで、どうやら話し掛けていたらしいことに気付く。
「ええ、そのくらいになると思いますよ」
 慌てて相槌を打ってみたけれど、彼女は何の反応も示さずに、黙ってお茶を啜った。
 会話を広げる気は無かったみたいだ。
 しかし、せっかく見つけた会話の糸口。このまま終わらせるのも少し惜しい。
 私は自分から話し掛けてみることにする。
「そういえば、斎藤先輩って茶道部なのにちゃんとしたお茶をたてたりしませんよね」
 私は、彼女の側に置かれている電気ポットを見ながら言った。
「もしかして、本当はたてれなかったりします?」
「別にたてれないわけじゃないわよ」
 私の問いに、斎藤ヨシヱはあっさりと否定する。
「ただ、お茶をたてるのには色々と準備が必要で凄く面倒なの。その上、大して美味しくもないからたててないだけ。最初に興味本意で一度やったきりで、それからは触ってもないわ」
「随分とまあ、茶道部員らしかぬ言い草ですね」
「そうね」
 そこで再び、彼女との会話が途切れた。
 毎度思うが、斎藤ヨシヱとの会話はいつも絶望的なまでに広がらない。
 彼女は基本的にお喋りじゃないし、加えて気まぐれだからなあ。それとも、まだ私との好感度が高くないのかしら。

65 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:25:25 ID:Gejk2pPM
 そうやって次の会話のタネを考えていると、ふと、頭の隅にひっかかるものがあった。
 そういえば、彼女に聞きたいことがあった気がする。
 なんだったっけ。
 しかし、意外とすぐにそれは思い出せた。
「斎藤先輩。ひとつ聞きたいことがあるんですけど、よろしいでしょうか?」
 斎藤ヨシヱは何も言わず、目だけで先を促した。
 それでは、と私は居住まいを直し、しっかりと彼女の瞳を見据えた。
 なるべく真摯な態度で聞かなければ、ふざけていると思われるかもしれないからだ。
 私は真面目っぽく、重々しい口調で言った。
「斎藤先輩は、私が誰かから好かれるような人間に見えますか?」
 ゆらゆらと湯呑みを揺らしていた彼女の手が、接着剤みたいにピタリと止まった。
 それから長い間をおいて、探るように聞く。
「それは、どういう意味の好きなのかしら?一概に好きと言っても、様々な意味の好きがあるけれど」
「うーん、そうですね……」
 私は、ふむと顎を撫でた。
「しいて言えば、ライクではなくラブのほうの好きです」
「Love」
 彼女は流暢な発音で言い直した。
「つまりは恋愛の好きということね」
「そうなりますね」
「そう」
 彼女は持っていた湯呑みをコトリと盆の上に乗せた。
「……そう」
 そして悲しげに目を伏せて、そっと口元を手で覆う。
 私に背を向けるようにくるりと半回転すると、小さく肩を落とした。よく見るとその肩は小刻みに震えている。
「……先輩?」
 斎藤ヨシヱの突然の異変に、私は大いに戸惑った。
 いきなり、どうしてしまったのだろうか。
 お腹でも痛くなってしまったのだろうか、と最初に思った。
 いや、そうじゃない。
 私は思い直す。
 どうせ私のことだ。無意識の内に彼女を傷付けることでも言ってしまったのかもしれない。昔から、そういうことは多々あった。
「すいません、先輩。気を悪くさせてしまったみたいで」
 私は思わず、彼女の肩に手を伸ばした
「……んっ?」
 のだが、異変に気付き、伸ばした手を途中で止める。
 何か、聞こえた。
「……ふっ、ふふふ……」
 それは、押し殺すような小さな笑い声。
 斎藤ヨシヱの口元から、くつくつと笑い声が漏れ出ていた。

66 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:26:45 ID:Gejk2pPM
「……やだぁ、おかしい……くくく……お腹、お腹痛い……たっ、タロウ君……ちょっと待って……」
 …………。
 待てと言われたので、おとなしく待つことにする。
 それから、十分後。
 そこには、いつも通りの皮肉な笑みを浮かべた斎藤ヨシヱがいた。
 しかし、その笑顔はどこか不自然に歪んでいる。というか、全然シニカルじゃない。頬の辺りがぴくぴくと引き攣っている。
「ちょっとタロウ君。いきなり笑わせないでくれるかしら。あたし、こう見えても結構キャラって重視するほうなのよ」
 そうだったのか、と私は思った。
 それなら随分と申し訳ないことをしてしまったみたいだ。
 すいません、と私は素直に頭を下げる。
「本当よ、全く。もうあんなこと言うのは金輪際止めてよね。あんな……あんっ……くっ……ふふっ……あはは」
 ……さらに十分後。
「ああー、笑った笑った。こんなに笑ったのは久しぶりね。ありがとう、タロウ君。おもしろかったわよ」
「……どうも」
 斎藤ヨシヱは急須を手に取ると、湯呑みにお茶を注ぎ、私に手渡してくれた。
 私は、ありがとうございますと礼をして、湯呑みを受け取った。
 どうやら機嫌が良くなったらしい。
 確かに、彼女は過去に例が無いくらい上機嫌に見えた。
 別にニコニコと微笑んだりしているわけじゃないが、何と無く楽し気なオーラが発せられているのを感じる。
「それで、質問だったわね」
 そんな和やか雰囲気とは打って変わって、斎藤ヨシヱの顔が急に真剣なものに変わる。
 切替の早い人だな。
 私も幾らか緊張しながらも、聞く姿勢を整えた。
「質問は、あなたが異性から好かれるかどうか、で合ってるわよね?」
「はい」
「そう」
 彼女はそこで、思い出し笑いのように一度笑ってから、ゆっくりと口を開いた。
 答が告げられる。
「そんなの、無理に決まってるじゃない。あなたみたいな人間が誰かに好かれるなんて、不可能よ」
 量刑を宣告する裁判官のような口調で、斎藤ヨシヱはそう断言した。
 彼女の宣布に、私の心がずんと沈むのを感じる。
 不可能、か……。
 薄々、そんなことを言われるのではないかと予想はついていたけど、実際に言われるとやはり傷付く。
 そんな、不可能とまで言わなくても……。もうちょっと、希望を残す言い方をしてくれてもいいじゃないか。

67 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:28:10 ID:Gejk2pPM
 しかし斎藤ヨシヱは、そんな傷心中の私にも構わず続けた。
「いい、タロウ君?人間関係に置いて最も重要なのは相互理解よ。相手のことを理解し、相手にも自分のことを理解してもらう。そういう感情的な対応を含む、個人と個人との関係において人間関係は成立しているの
「あなたにはわからないと思うけど、他者を理解するのはとても難しいことなのよ。自分ならともかく、相手を完全に理解するなんてそれこそ無理なのだから当然ね。
「けど、人間というのはそれでも相手を理解していこうとしていく。そういう性を持つ生き物なの。けれど、あなたは――」
 斎藤ヨシヱは、不敵に微笑む。
「他人どころか、自分のことすら理解していないじゃない。そんな人間が誰かに好かれるかだなんて、ちゃんちゃらおかしい話ね。本当、戯言も甚だしい」
 斎藤ヨシヱは、まるでそのことが不変の真理であるような言い方をした。
 一片の毀れも感じない、揺るぎのない自信を感じる。
 彼女はきっと、私が人に好かれるのと明日地球が滅びるのとじゃ、間違いなく後者を選ぶことだろう。
「……はぁ」
 私はそこで一度、大きく溜め息をついてみせた。
 勿論、わざとだ。
 自分の不機嫌さをこれっぽっちも隠そうともしない。
 こういう態度をとるのは我ながら珍しいことなのだが、しかし彼女の言い方はとても癪に障った。
 さすがに、今のはカチンときた。
「あら?どうしたのタロウ君。なんだか怒っているみたいだけど」
「怒っているんです」
 誰だって、二日連続で化け物扱いされたら不機嫌にもなるだろう。
 私は苛立ちを含んだ口調で言った。
「先輩は時たま、私のことを何の心も無いロボットみたいに言う時がありますけど、はっきり言ってそれは間違いですよ。全然違います。
「確かに、私には人がわからない時がありますよ。それは認めますけど、だからと言って、そのことが私に感情が無いということに繋がるわけではないでしょう?現に今だって、先輩の言葉に怒っているじゃありませんか」
「それも演技かもしれない」
「演技って――」
 腹の底から込み上げて来た言葉を、なんとか飲み込む。
 少し、熱くなりすぎていた。私らしくもない。冷静になれ。
 心を落ち着かせるために、長く、深い息を吐いた。

68 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:30:07 ID:Gejk2pPM
 斎藤ヨシヱは、そんな私の様子を冷めた目で見ながら、愚者を説き明かすように続けた。
「だっておかしいじゃない。感情はあるのに人がわからないなんて。はっきり言って矛盾してるわよ」
「矛盾?」
 私は繰り返した。
「そうね……」
 何やら思案顔で彼女は言う。
「タロウ君、あなた痛覚はある?」
「あるに決まってるじゃないですか」
「あら、そうなの?それは驚きね。けど、それなら話が早いわ」
 斎藤ヨシヱはそう言うと、いきなり自らの腕に爪をたて、思い切り皮膚を引き裂いた。
 荒々しい切傷が一つ出来、赤黒い血が一筋、白い肌を伝っていく。
「タロウ君。あなたはこの傷を見て、これがどの程度の痛みかがわかる?」
「えっ?ああ、はい」
 忽然の出来事に、呆気にとられていた。
「まあ、漠然とですが一応」
「そうよね。では何故、あたしが負っている傷を、当事者でないタロウ君が憶測することが出来るのか。それは、まず大前提としての“痛覚”それと“経験”があなたにはあるからよ」
「“痛覚”と“経験”、ですか……」
 何やらまた小難しい話が始まったな。
「あなたは今、過去に経験したことのある同程度の切傷を想像し、それをあたしに投影することによって一時的に痛覚を共感しているの。だから、この切傷の痛みがわかる」
「この言い方だと“経験”が絶対必要みたいに聞こえるけれど、実際はそうじゃない。実を言えば、この“経験”の方は大して重要じゃないの。
「なぜなら、相手と同じ経験をしたことがなくたって、過去に自分が経験したことのある“他の類似した経験”を相手に投影すればいいだけの話なのだから。十二分に用は足りるわ。
「つまり、マザーボードである“痛覚”さえあれば、後はいくらでも勝手がきく。そのことはわかった?」
 私は頷いた。
 多少こんがらがりはしているが、なんとか理解出来た。
 これは、生理痛を使って例証してみればわかりやすい話だ。
 女性固有の苦しみである生理痛を、男性である私が経験するのは身体の構造上不可能なことであるが、彼女の言うマザーボードである“痛覚”さえあれば、相手の眉をしかめた顔、お腹をさする動作などを見て
 今までに自分の経験したことのある、例えば腹痛などの痛みを想像し、それを相手に投影することによって、想像上ではあるが、一時的に生理痛の苦しみを共感することが出来る。

69 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:31:41 ID:Gejk2pPM
 他者との痛覚共感。
 彼女が言っているのは、おそらくそういうことだろう。
 けど――
「それがなんだって言うんですか?」
 話はわかるが、言いたいことがわからない。
 寓話のつもりで話しているのなら、何かしらの教訓や諷刺があるはずだ。
「相手を理解するというのも、それと同じことなの」
 斎藤ヨシヱの論説は続く。
「つまり、今言ったことを高度に応用させたものが他者を理解するということなのよ。自分の持っている“感情”を相手に投影し、共感する。簡素に言ってしまえば、そういうことになるわね。
「だから、そのセオリーでいけばおかしいのよ。“感情”があるのに、人がわからないというタロウ君が。
「さっきも言ったけど、大元の“感情”さえあれば、個人差はあるけれど、それなりに他者を理解することは出来るわ。普通、あなたほどの異常者は生まれない。
「“感情”があるのに人がわからない。タロウ君はそう言うけど、あなたはこれを矛盾と言わずに何と言うのかしら」
 斎藤ヨシヱはそう言って、貶るように私を見た。
 その瞳には絶対の自信を感じる。
 彼女は本当に自分に自信がある人なんだな、と思った。
 しかし、彼女のそれは、少し盲目的過ぎる気がした。
 斎藤ヨシヱは間違っている。私はそう確信する。
 確かに、彼女の言うことはそれらしく聞こえた。私自身、ふむふむと頷き返してしまった程だ。
 けど、それは只それらしく聞こえただけに過ぎない。
 なぜなら、彼女は私に心が無いということを前提に話を進めていたからだ。
 私には心がある。
 その反例が存在する時点で、まず話の前提自体が成立していないのだ。前提が崩壊しているなら、論理も崩壊している。斎藤ヨシヱの見解も、一笑に付すべきものであるのに違いはない。
 独断と偏見に満ちた教条主義的な考え。
 はっきり言って、先輩は間違っています。
 私が一言、そう言ってしまえばいいのだ。

70 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:33:28 ID:Gejk2pPM
 そう思っているのに、なのに――
 私は何も言えなかった。
 理由はわかっている。
 心の奥底で、彼女の言葉に納得してしまっている自分が居るからだ。
 きっと、その時点でもう駄目なんだろうな。
 認めたくはないが、私も異常者なのかもしれない。
「それでも、私にはちゃんと心があります」
 そう言う私の声も、どこか力弱く感じた。
 それから、気まずい沈黙が流れた。
 いや、それは思い違いだろう。
 気まずいと感じているのはきっと私だけだ。斎藤ヨシヱは、そういうことを気にするような人ではないし。
 そんな彼女が口を開いたのは、唐突だった。
「さっきはああ言ったけど、あなただって、もしかしたら誰かと付き合えるかもしれないわよ」
 そう言う斎藤ヨシヱの声には、幾らかの親しみが感じられた。どうやら、彼女なりにフォローしてくれているらしい。人を慰めるなんて、斎藤ヨシヱにしてはかなり珍しいことだった。
「そもそも人間というのは社会に適応するための表明的な人格、所謂ペルソナを着けて生きている。そのくらいは知っているわね?
「それを踏まえて言えば、恋愛なんてのは所詮、互いのペルソナを好き合っているのに過ぎないのよ。見ているのは相手の仮面だけ、中身なんて誰も見ちゃいないわ。
「だから、タロウ君も仮面を着けてしまえばいいのよ。視界を確保する穴さえ塞いでいるような分厚い仮面をね。いえ、あなたの場合は仮面どころか、甲冑でも着けなきゃ駄目でしょうけど
「でもタロウ君、忘れないで。嘘っていうのはつくのは簡単だけど、つき続けるのは至難の業よ。あなたは嘘に綻びが生まれぬよう、常に最大限の注意を払わなくてはいけない。
「幸い、タロウ君は決して容姿が良い方じゃないけど、壊滅的ってほどでもないし、あなただって頑張れば――」
 と、斎藤ヨシヱは、何故かそこで一度言葉をつぐんだ。
 それから独り言のように、ぶつぶつと呟き始める。
「いや……でも、タロウ君だしな……しかし……うまく騙せば……けど……やっぱり……厳しいか?………………」
 そして、遂に何も言わなくなった。
 フォロー失敗。
 なんだかなあ。人を慰めるなんて、慣れないことをするからだよ。

71 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:35:01 ID:Gejk2pPM
 しかし、斎藤ヨシヱはやはり泰然自若としていた。
「まあ、いいじゃない彼女なんか出来なくたって。タロウ君は今の所はまだ、クラスでうまくやれているのでしょう?だったらまずは、その奇跡に感謝しなくちゃ。そもそも、あなたが恋人だなんて高望みしすぎなのよ」
「そうかもしれませんね」
 と言いながら、私は出された湯呑みに手を出していないことに気づき、ぐいっとそれを飲み干した。
 お茶は既にぬるくなっていた。
「話は変わるけど」
 斎藤ヨシヱが聞く。
「どうして、突然こんなことを聞く気になったの?自分が誰かに好かれるかなんて、随分とあなたらしかぬ質問だったけど」
「ああ、それはですね。実を言うと、昨日私に人生初の恋人が出来まして」
「へー、よかったじゃない。さすが、たろうくんね」
「……信じてませんね」
「やあねぇ、信じてるわよ」
 そう言って、斎藤ヨシヱはけらけらと笑った。
 私は驚いた。
 嘲笑以外の彼女の笑顔を見るなんて、果たして何時以来だろうか。
 色々と辛辣な言葉を浴びせはしたが、やはり根っこの部分では相当に機嫌が良かったらしい。
 何がそんなに嬉しかったのだろうか。
「さてと」
 斎藤ヨシヱは近くで転がっていたソックスに手を伸ばし、それを身につけ始めた。
 どうやら、今日はもうお開きらしい。
 いや、今はそんなことはどうでもいいか。それよりも――
 私は彼女の下半身を凝視した。
 ソックスを履く時、斎藤ヨシヱがいい感じに膝を曲げているので、でスカートの中が見えそうになっている。
 見えそうになっているのだが、何故か見えない。
 これは、おかしい。
 私は首を傾げた。
 さりげなく首を動かしたりして角度を変えてみたりするが、やはりどの位置から見ても、うまい具合に彼女の足先が邪魔になってどうしても見えない。
 まるで全年齢対象のギャルゲーみたいだ。
 私がそうやって下着を見ようと四苦八苦している内に、斎藤ヨシヱはソックスを履き終えてしまった。非常に残念だ。

72 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:36:49 ID:Gejk2pPM
「それじゃ、片付けお願いね」
 彼女はそう言って立ち上がる。
 私のお茶を飲む飲まぬに関わらず、片付けに関しては私の仕事だった。
「わかりました」
 私も立ち上がり、紫座布団を元の場所に戻してから、片付けを始める。
 斎藤ヨシヱは、そんな私の横を通り抜けて、茶道室を出て行った。
 私がせっせと湯呑みや急須を盆の上に乗せて、片付けに勤しんでいる時。
 それは風に乗って、私の耳に届いた。
「それでもあたしは、タロウ君のことが大好きよ」
 後ろを振りむく。
 しかし、斎藤ヨシヱの姿は既に無く、パタリとしまる扉が見えるだけだった。
 私はしばらく扉を見つめた後、ぽつりと呟いた。
「大好き、か……」
 下手な嘘だな、と思った。
 彼女が私に好意を抱くなど、万が一にも有り得ないことだった。
 斎藤ヨシヱがこうやって私と会っているのは、彼女が私に興味があるからに過ぎない。
 飽きてしまえば、何の未練や惜別の念も無く、さっさと棄てられてしまうだろう。
「それは嫌だな……」
 私としても、たった一人の友人を失うことは非常に惜しいことだった。
 彼女とはまだ、友達でいたい。そう思った。
 けど、今はそれよりも考えることがあるか。
 斎藤ヨシヱは私の疑問をひとつ解消してくれたが、そのおかげで再び、新たな疑問がまたひとつ生まれてしまった。
 ――あなたみたいな人間が誰かに好かれるなんて、不可能よ。
 彼女は、そう断言した。
 別に斎藤ヨシヱの言っていることを全面的に肯定した訳ではないが、私が人に好かれ難いと言う点については同意出来る。自分のことは、自分が一番よくわかっていた。
 しかし私は、現在進行形で私のことを好いてくれている少女を、一人知っている。
 田中キリエ。
 彼女はどうして、私のことを好きになったのだろうか。
 畳に伸びる自身の影を眺めながら、しばらく考えてみたが、私にはやっぱりわからなかった。

73 : ◆lSx6T.AFVo :2010/06/28(月) 14:37:31 ID:Gejk2pPM
投下終わります。

74 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 16:20:24 ID:SJAW4wpD
GJ!!
斎藤さんもいつか病んじゃうのかな?

75 : ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:47:04 ID:xb21/6Dp
test

76 : ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:48:28 ID:xb21/6Dp
まさかこれほど早く永久規制が解けるとは思いませんでした。
投稿します。

77 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 18:49:33 ID:a1blzEo9
支援

78 :変歴伝 25 ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:49:39 ID:xb21/6Dp
「ねぇ、三郎。そろそろ彩奈に新しい服でもあげたら?」
誰もが寝静まったある日の夜、業盛の右側を占領する水城がそう言った。
話題に上がっている彩奈は、業盛の左側を占領し、
その豊満な胸を背中に押し当てて眠っている。
「服……、だが、彩奈は替えの服を持っていただろ」
「あんな同じ様な服しか持っていなかったら、一着しかないのと同じよ」
水城の言う、あんな、とは、男物の服の事である。
確かに、山での生活をしている時であればそれでもよかったが、
今は業盛の庇護の下、生活を保障されているのだから、
いつまでも男物の服を着ている必要はない。
彩奈も年頃の女なのだ。化粧や様々な服を着てみたいであろう。
水城の言わんとする事はよく分かった。
よく分かったのだが、業盛の表情はあまり冴えなかった。
「水城、すまない。俺、服の事はよく分からないんだ……」
文武両道の業盛でも、その方面の知識にはてんで疎かったのだ。
そんな業盛を察していたのか、水城は、
「三郎、服の事だったら私に任せなさい。
こんな事もあろうかと、反物を幾つか発注しておいたの。
明日の昼には届く予定だから、彩奈にでも取らせに行かせましょ」
と、笑みを浮かべながら言った。
業盛は水城の手際のよさに驚いたが、
なにぶん他にいい知恵が浮かばないので、その話に乗る事にした。
それにしても、と業盛は思うところがあり、
「なんで服を送ってやろうと思ったんだ?お前と彩奈は仲が悪かったはずだが……」
と、聞いてみた。
すると、水城は一瞬きょとんとした表情になった。そして、にっこりと笑い、
「いつまでもあいつと張り合っていても、気が張るだけで疲れるから、
そろそろ仲直りしようかなって思っただけよ。これがなにかおかしな理由かしら?」
と、言って、業盛のおでこを軽く弾いた。
弾かれたおでこを擦りながら、業盛は内心ほっとした。
このまま二人が険悪なままでいると、空気の流れが滞り、息もし辛くなってしまう。
水城の変心は、業盛にとってはとてもありがたいものだった。
「我の強いお前らしくない答えだな。成長したのか、頭でも打ったのか……」
「失礼ね。私はあんたよりも一歳年上なのよ。
いつまでも子供っぽい事なんてやってられる訳ないじゃない」
「はははっ……、それもそうだな」
失言をしてしまったと思った業盛は、水城の頭を撫でて宥める事にした。
しかし、どういう訳か、水城の表情は不機嫌なままだった。
「三郎、私がいつまでも頭を撫でられたら機嫌が直ると思っていたら大間違いよ」
そう言って、水城はそっぽを向いてしまった。
機嫌の直らない水城を見て、業盛は少し焦った。
「あぁ……、すまん。じゃあ、どうすれば許してくれるんだ?」
そう言いながらも、業盛は水城の頭を撫で続けていた。
しばらくして、水城が振り返った。その表情は、猫の様に愛らしいものだった。
「じゃあ……、私の事、ぎゅって抱き締めてくれたら許してあげるわ」
水城の要求は、先ほど言ってた事と真逆のものだった。
最近、水城の事が本気で愛おしくなってきた業盛は、言われた通りに抱き締めてやった。
水城が嬉しそうに胸板に顔を擦り付けるのを見て、業盛も嬉しくなった。


79 :変歴伝 25 ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:50:22 ID:xb21/6Dp
「彩奈、新しい服は欲しくないか?」
朝食を食べ終えた業盛は、食器を洗いに行こうとする彩奈を呼び止めた。
水城は既に食器を持って出て行っており、この場にはいない。
「服……ですか?別に私はこれでもいいのですが……」
「いやいや、仮にもお前は女なのだから、
少しぐらい洒落っ気を出した方がいいのではないか?」
「兄様が私の事を気遣ってくださるのはとても嬉しいのですが、
山暮らしが長かったせいか、その手の事にはどうにも疎くて……」
彩奈はそう言って、頭を垂らした。既に義兄妹の契りを破棄しているはずなのに、
彩奈は未だに業盛の事を、兄様、と呼んでいる。
それはかなり違和感があったが、今はさして重要ではないので突っ込まない事にした。
業盛は、項垂れている彩奈に、
「その事だが、実は水城が反物を仕入れてくれてな。
今日の昼にはそれが届くらしいから、お前に取りに行ってもらいたいんだ」
と、あえて水城の名前を出した。ここは自分が考えたというより、
水城の考えだと言った方がいいだろう、と業盛は思ったのである。
しかし、彩奈は水城の名前を出されると、あからさまに嫌な顔をして、
「水城……さんがですか……。あの人がそんな事をするなんて、なにか企んでるとしか……」
と、苦々しげな声を放った。
無理もない事だ、と業盛は思った。二人は今までいがみ合ってきた仲なのだ。
ここにきて、いきなりなにかを送られれば、警戒するのが当然である。
だが、せっかくの関係修復の好機が、その様な理由で潰えてもらってはたまらない。
業盛は、彩奈の疑念を払拭させようと口を開いた。
「水城は、ただ単純にお前と仲直りがしたいだけで、なにかを企んでる訳じゃない。
お前も、いつまでも水城と喧嘩なんてしたくないだろ。ここは水城の気持ちを汲んで、
贈り物を受け取って、お互いに今までの事を水に流した方がいいと思うのだが」
それは、説得にも似た内容の説諭だったが、彩奈はそれに耳を傾けてくれた。
業盛は、水城と彩奈の確執がどれほどのものなのかをいまいち把握していない。
そのため、この説諭が彩奈に届くかどうか業盛は不安だったが、
「分かりました。兄様がそこまで言うのなら、間違いないのでしょう」
と、言ってくれたので、その不安はいくらか解消された。
話が終わったと察した彩奈は、失礼します、と一言言って、外に出て行った。
部屋に一人取り残された形の業盛は、疲れたとばかりに小さく溜息を吐いた。
これまでにも、二人の事で業盛は頭を痛めていたが、
それが今日で終わると思うと、それはそれで寂しいものだと感じてしまった。


80 :変歴伝 25 ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:51:12 ID:xb21/6Dp
日が中天に昇った。
彩奈は指定された反物屋に向かっていた。
業盛の手前、彩奈は水城の事を信じる、と言ったが、実際はまったく信用していない。
彩奈にとって、水城という女は最愛の兄に寄生する害虫である。
兄に近付く害虫を叩き潰すことが妹としての使命である、と彩奈は思っている。
だが、彩奈の見る所、水城は一筋縄ではいかない。
彩奈は、今まで山の中で暮らし、羆やら猪やらを殺して生計を立てていたが、
それは知能が無に等しいからであり、罠や習性を使えば殺せた。
対して水城は、獣の様に無知ではない。
それどころか、幾度となく死線を掻い潜ってきたという威圧感がある。
別にそれが怖いという訳ではない。
以前、適当に水城を挑発したら、簡単に乗ってきて包丁を投げてきた事があった。
あの時は、すぐ近くに業盛が来ていたので、わざと水城に包丁を投げさせ、
業盛に包丁がいく様に仕向けたのだが、直前になって失敗した。
水城自身も、業盛の気配を感じたのだろう。
この事から、水城は激情を持ってはいるが頗る冷静な性格である事は疑い様がない。
この手の人間ほどやりにくい相手はいない。
自滅させようと挑発しても、すぐに冷静になられては意味がない。
ならば水城を斥けさせようと讒言をしても、おそらく業盛は聞く耳を持たず、
むしろ自分が排斥されてしまうであろう。
策はないかとひたすら考えていると、なにか硬いものに当たった。
顔を上げてみると、見るからに粗暴そうな外見をした男が三人立っていた。

一方その頃、やる事のない業盛は水城の膝を枕にして、うつらうつらとしていた。
そんな業盛を、水城はまるで子猫にする様に愛おしそうに撫でていた。
「なぁ……、水城。なぜお前が俺の枕になっているんだ?」
「三郎の事が好きだからよ」
「………………………………」
恥かしげもなく言う水城に、業盛は思わず絶句してしまった。
「どうしたのよ、私、別に変な事なんて言ってないわよ」
「お前、本当に水城か?そんな恥かしい台詞よく言えるな」
「好きなものは好きなんだからしょうがないじゃない。三郎は私の事、好きじゃないの?」
「別にそういう事を聞いている訳じゃ……」
「好きなのか嫌いなのか、はっきりしなさいよ」
有無を言わせない水城の勢いに、業盛は顔を紅くし、
「……きっ……嫌いじゃ……ないが……」
そう言って、顔を背けた。
「紅くなっちゃって、可愛いわねぇ〜、うりっ、うりぃ〜」
「やっ……、馬鹿、突っつくな!」
真昼間から外聞もなく二人はいちゃついていた。


81 :変歴伝 25 ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:51:53 ID:xb21/6Dp
彩奈は目の前に立っている男達を見上げた。
にやにやといやらしく笑っている様を見ていると、生理的な嫌悪感がこみ上げてくる。
すみませんと謝って横から行こうとすると、もう一人の男に道を塞がれた。
同様にもう一方も塞がれ、彩奈は男達に囲まれる形になった。
「なんなんですか、あなた達は!私は用があるんです!退いてください!」
彩奈が怒鳴っても、男達はその気味の悪い笑みを止めなかった。
「生憎だが、ここを退く訳にはいかないんだよねぇ〜」
男の一人が声を放った。気に障る様なしゃべり方だった。
それに続いて、左右を塞いでいる男達もしゃべり始めた。
「思っていた以上に美人だなぁ〜」
「金が貰えてこんな美女とやれるなんて、こんないい仕事はないぜ」
会話の内容から、この三人は誰かに雇われている事が分かる。
ぼんやりと浮かぶのは、業盛にくっ付いているあの寄生虫の無い乳女である。
しかし、その確証は今の所ない。
情報を引き出す必要がある、と彩奈は思った。
「さぁ、俺達についてきてもらおうか、彩奈さん」
「どうして私の名前を!」
腕を強引に掴んできた男に、彩奈はわざと驚いて見せた。
どうせ依頼者が教えているのだという事ぐらいは見当が付いたが、
ここで反応しておかないと、鈍い奴だと思われそうなので、敢えてそうした。
「あんたが知る必要はない。どうせ、これからそんな事どうでもよくなるのだから……」
下劣な笑みを浮かべる男は、彩奈を強引路地裏に引き摺り込もうとする。
彩奈は多少の抵抗をする振りをした後、男達のなすがままにさせた。

再びその頃。
「いっ……、みっ……水城、もっと優し……うぁ……」
業盛が苦痛の悲鳴を上げていた。
水城は業盛に馬乗りになって、満面の笑みを浮かべていた。
「駄目よ、三郎。こんなに堅いのに……、放って置いたらもっと悪くなるわよ」
「だからといって、こんな……んっ……」
「文句言わないの。後ちょっとなんだから、我慢しなさい」
水城の手の動きが荒くなった。その度に業盛の息も荒くなった。
「だっ……駄目……、みっ……水城……、もう……、ひぅ……」
「もっと楽にして。もうすぐだから……、えいっ」
「あっ…………」
なんとも間抜けな声を出して、業盛は床に突っ伏した。
「うぅ……、優しくするって言ってたのに……」
「だって、三郎の肩も腰も、ものすごく硬いんだもん。あれぐらいしないと効果ないわよ」
そう言って、水城は業盛の頭を撫でた。
実は、水城は最初は業盛の肩を揉んでいたのであるが、あまりの凝りの酷さに、
肩から背中に、背中から腰へと揉む範囲が広くなっていったのだ。
業盛は未だに床に突っ伏したままであった。
「それにしても……、……ねぇ……、三郎……」
水城の声が急に艶っぽい声になった。
「三郎の声、女の子っぽくて可愛いかったから、もっとやってもいいかな?」
「やってもいいよ……って言う訳ないだろ、この馬鹿ぁ!」
業盛の声は、涙で擦れてしまっていた。
「その目……、その声……。あぁ〜、もう!ほんっとうに可愛いなぁ〜」
「ひぃあ!抱き着くな!」
結局二人は、昼間の間中、ずっといちゃついていた。


82 :変歴伝 25 ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:52:27 ID:xb21/6Dp
ずるずると引き摺られた彩奈は、行き止まりの辺りで腕を放された。
「さぁてと、本当だったら、ここであんたを殺す事になってるんだが……」
「あんたみたいな美女を、味わう前に殺してしまうのは、非常に惜しいから……」
「せめて最後ぐらい、いい夢見させてあの世に連れて行ってやるよ」
男達がそう言うと、服の帯を解き始め、現れたのは、恥垢にまみれた男根だった。
「ひっ!」
あからさまに悲鳴を上げてみる。すると男の一人が近寄ってきた。
「ほら、俺のを綺麗に舐めるんだ」
目の前でいきり立っている赤黒いそれは、見ているだけでも吐き気がしてくる。
もうそろそろ演技をしているのも面倒臭くなってきた彩奈は、ゆっくりと男に近付いた。
右手は力強く握られている。
中腰にしゃがむ振りをして、男の人中に拳を叩き込んでやった。
骨の砕ける音と、呼吸が破裂する様な音が響いた。男は白目を剥いて倒れた。
残りの男達は、急な彩奈の反抗に驚き、押さえつけ様と猛然と駆けてきた。
彩奈は片頬を吊り上げ、一人はこめかみに回し蹴りを、もう一人には胸の中央を殴り付けた。
こめかみを蹴られた男は、勢いそのままで壁に顔面を打ち付け気絶し、
胸を殴られた方は、地面に倒れてぴくりともしなかった。どうやら死んでしまったらしい。
「私も、随分と舐められたものね……」
彩奈はそう言うと、気絶している男の頭に手をやり、明後日の方向にへし折ってやった。
これで邪魔者はいなくなったと思った彩奈は、最後に気絶している男に馬乗りになった。
「ほら、起きなさいよ」
言いながら、男の頬を強く引っ叩いた。子気味のいい音が間断なく路地裏に響いた。
何度かそれを続けていると、男が目を覚ました。彩奈を見て、小さく悲鳴を上げた。
「立場逆転……って所かしらね。それじゃあ早速、いくつか聞きたい事があるから、
ちゃんと答えてね。答えないと酷いから」
彩奈の言葉に対して、男は顔を背けてなにも言わない。
彩奈は人差し指を男の右目に置くと、思いっきり突き刺した。
「がぁあああ!!!」
「ちなみに言っとくけど、あそこで倒れている奴等が起きるのを待っても無駄だから。
時間稼ぎなんて下らない事を考えてるんだったら、今度は左目を潰すわよ」
悲鳴を上げている男を気にする様子もなく、彩奈は質問を続けた。
「私を襲えって依頼した奴は、誰?」
「しっ……知らな……いぎゃああああ!!!」
彩奈の指が、予告通り男の左目を潰した。
「ほっ……本当に知らないんだ!黒い服を着た男が、
三日後に彩奈という女が来るから殺してくれって……。ほっ……本当なんだ、信じてくれ!!!」
彩奈の手は、男の右耳に置かれていた。次は耳を引き千切ろうとしていたのだ。
彩奈は舌打ちをしながら指を離した。
「その男の特徴を教えてくれないかしら」
「こっ……これといって変わった所は……うごぉ……」
彩奈の拳が、男の右頬に叩き込まれた。顔面の右側がぐしゃりと潰れた所を見ると、
どうやら頬骨が砕けてしまったらしい。
「あんたの主観なんか聞いてないの。思い出した事でいいからしゃべりなさい」
「なっ……ない……んだよ、うっ……本当に……。
気付い……た時には……あぐっ……うっ……後ろにい……て、
いっ……依頼内容を……告げら……れたら……、
そのま……まいなくなったんだ。かっ……顔も、覚える暇なんか……」
「もういいわ、分かった」
彩奈は男の会話を遮り、男の首に両手を置いた。親指は喉仏に押し付けた。
「さようなら……」
思いっきり力を込めて首を絞めた。親指に感じるのは喉仏の軋む音だった。
ごりっという嫌な感触と音が同時に聞こえた。
結局、依頼人の事を聞き出す事が出来なかったが、
彩奈の頭の中には、水城の影がちらついて離れなかった。


83 :変歴伝 25 ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:53:10 ID:xb21/6Dp
あの刺客達は、間違いなく水城の差し金である。根拠はないが、彩奈はそう断定した。
水城が業盛を独占する上で最も邪魔になるのは、紛れもなく彩奈である。
刺客達の前に現れた黒服の男というのは、水城の家人であろう。
自らが動かなかったのは、足が出る事を嫌っての配慮だろう。
さらに水城の強かな所は、本当に反物屋に依頼して、反物を用意させていたという事である。
誰も反物を取りに来なければ、店の者が水城の下にやってくることは想像するに難くない。
おそらく水城は、業盛と共に死骸を目撃し、自身は潔白である事を証明しようとしたのだ。
またこの策は、仮に失敗しても、その時は災難だったと言って惚ける事も出来る。
言わば二段構えの策である。小ざかしい、と彩奈は思った。
ただ、彩奈が推測を立てても、如何せん証拠がない。
証拠がなければ、なにを言っても水城を弾劾する事は出来ないのだ。
「忌々しい……」
彩奈は爪を噛んだ。このまま真っ直ぐ水城の下に向かい、縊り殺してやりたい。
だが、業盛の傍に纏わり付いている水城を、人の目に触れない様に殺すのは難しい。
誰かに見られたら、それは業盛にも知られ、そうなれば、全てが終わってしまう。
殺すのならば、人目に付かない様な所でするのがいい。
「四人殺すのも、五人殺すのも、対して変わらない……か……」
彩奈はそう呟くと、道端に落ちている反物を拾い上げ、その場を後にした。
六波羅に帰ると、業盛が笑顔で出迎えてくれたが、
後から出てきた水城は、どんよりとした瞳で彩奈の事を見つめていた。
「お帰りなさい、彩奈」
「ただいま、水城さん」
お互い底冷えする様な挨拶を交わした。
部屋に入り際、彩奈は水城と擦れ違いざまに、
「水城さん、今夜、あなたと話したい事があるので、
皆が寝静まった頃に、高野川の河原で待っていてくれませんか」
と、言って通り過ぎた。水城の刺す様な視線を背に受けても、彩奈は身じろぎもしなかった。


84 :変歴伝 25 ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:53:41 ID:xb21/6Dp
夜になった。草木も眠る丑三つ時とはよく言ったもので、
水城と彩奈の立っている高野川の河原では、せせらぎ以外、獣の鳴き声も聞こえない。
「こんな時間になんの用よ。くだらない理由だったら、許さないわよ」
「たぶん、くだらない理由にはならないと思いますよ」
彩奈は笑っていた。ただ笑っていたのは口だけで、目は水城を睨み付けている様だった。
「今日の昼なんですけど、私、ごろつきに襲われたんです」
「へぇ……、それは災難だったわね。……でっ……、だからなに?」
じれったいと言わんばかりの視線で、水城は彩奈に冷声を放った。
「水城さんは、私の事、嫌いですか?」
「えぇ、嫌いよ」
話がいきなり逸れた。水城はいぶかしげな表情を浮かべたが、彩奈の質問に答えた。
「そうでしょうね。私が死ねば、兄様を独占する事が出来るのだから……」
「はぁ……、いきなりなにを言い出すのよ。確かに私はあんたが嫌いだけど、
殺してやりたいと思うほど嫌ってはいないわ。あんたを殺せば、三郎に嫌われるし……」
「それなのに、なんで私に刺客なんて差し向けてきたのですか?」
「……話が全然見えないわ。あんたの言っている刺客って言うのは、ごろつきの事よね。
そんな薄汚いごみと、私が繋がっている訳ないじゃない」
水城は大きくため息を吐くと、彩奈を睨み付けた。
しかし、相変わらず彩奈は笑ったままだった。
「そのごろつき達がですね、俺達を雇ったのは黒服の男だって言うんですよ。
私、誰かに恨みを買う様な事はしてないのに、なぜ目の仇にされなきゃならないのでしょう?」
「そんなの知らないわよ!その黒服も私の差し金だと言うの!?
いい加減にしなさいよ!その証拠がどこにあるっていうのよ!」
ついに水城は怒鳴り声を上げた。その言葉を待っていたとばかりに、彩奈は、
「その黒服が、あなたの屋敷に入ったと言っても、証拠になりませんか?」
と、笑うのを止めて、刺す様な目付きで水城を見つめた。
一瞬、水城が目を見開いた。それを彩奈は見逃さなかった。
「……あなた、よっぽど私を犯人に仕立て上げたいみたいね。そんな嘘まで吐いて……」
「嘘なんかじゃありませんよ。ごろつきの一人が黒服の後を付けて、
見たって言うんですから、間違いありません」
実際の所、彩奈は水城の屋敷など知らないし、ごろつきはそんな事は言っていない。
しかし、そんな事を水城は知る由もない。水城の顔を伏せてしまった。
「それが本当だとしたら、どうするっていうの?」
「この事を兄様に伝えて、あなたみたいな害毒女を、追い出してもらいます」
「へぇ……、そう……」
水城の声が小さくなった。だが、呟く声音には、微量だが殺気が漏れ出ていた。
水城が動いた。瞬間、彩奈の目の前に口を吊り上げて笑っている水城がクナイを握っていた。
「やれるものなら、やってみなさいよ」
電光の如き速さで、クナイが彩奈の胸に襲い掛かった。


85 :変歴伝 25 ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:55:15 ID:xb21/6Dp
クナイは、彩奈の胸を貫き、肉と骨が砕ける音が響くはずであった。
しかし、響いたのは甲高い金属音だった。
「やっぱり……、武器を隠し持っていたんですね」
クナイは、彩奈が懐に隠し持っていた鉈によって受け止められていたのだ。
「ちっ……」
水城はさらに一歩踏み込み、斬り掛かったが、彩奈は後ろに飛び退いてこれを躱した。
同時に鉈を取り出した。
「水城さん、ここと六条河原、どっちで日向ぼっこがしたいですか?」
言うなり、彩奈が凄まじい勢いで水城に接近し、鉈で横薙いだ。
異様な唸りを上げるそれを、水城は躱すと、
「どっちも遠慮するわ。あんたみたいに浅黒くなりたくないし」
と、言って、クナイを彩奈に投げ付けた。飛んでくるクナイを、彩奈は叩き落した。
彩奈が防御した隙を突いて、水城は右の太ももに隠していたクナイを取り出し、突進した。
「ねぇ、知ってるかしら。唐の国では仇敵を殺すと、その肉を食べるらしいわ。
私、それに倣ってみようと思うのだけど」
「そうですか、それはいいですね。でも、あなたは食べる所がなさそうですね」
二人の武器が激突し、丁々発止と斬り結んだ。断続的に辺りが明るくなった。
二人共、相手を押し返そうと渾身の力を込めたが、
どうやら互角らしく、お互い押し切る事が出来なかった。
二人は後ろに飛び退いて、再び距離を取った。
先に動いたのは水城だった。左の太ももからクナイを三本、
右の太ももからもう一本取り出すと、それらを間断なく彩奈に向けて投げ付けた。
「芸がないですね」
水城はそれを全て叩き落すと、今度は隙を作る事なく、前に駆けた。
水城は既に武器がないのか、徒手のまま構えているだけだった。
「もしかして、さっきので全部ですか?あっはは、接近戦では埒が明かないと見て、
遠距離の戦法を取ったのが仇となりましたね。
なかなか楽しかったですが、そろそろ終わりにしましょう、水城さん」
振り上げられた鉈は、水城の脳天に向けて振り下ろされた。
武器を持っておらず、防ぐ術もない水城は、笑っていた。
「そうね、そろそろ終わらせましょう」
「いっ!」
彩奈の手から、鉈が放れた。
水城が隠し持っていた石を投げ付け、それが彩奈の手に直撃したのである。
鉈の持ち主が、彩奈から水城に移った。
水城は、手を押さえて蹲っている彩奈に、鉈を向けた。
「私をここまで追い詰めた事は、素直に褒めてあげる。
でも、あんたと私とじゃ、場数が違いすぎたのよ」
水城の言葉に反応する様に、彩奈は顔を上げた。殺気の篭った瞳が、水城を強く刺した。
水城はにやりと笑った。
「ふふっ、いい目ね。……敵としてじゃなかったら、あんたを私の部下にしたかったわ」
水城は、彩奈の脳天目掛けて鉈を振り下ろした。
しかし、鉈は彩奈の頭上直前で止まった。誰かに手首を押さえられたのだ。
その誰かの顔を見て、水城も彩奈も青ざめてしまった。
なぜなら、手首を押さえている人物が、業盛だったからだ。
水城の持っていた鉈は、手から滑り落ち、金属音が辺りに響いた。

86 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 18:56:02 ID:oNoWB9eH
GJ!!!!
斎藤さんはもうかなりキテるんじゃ…

87 : ◆AW8HpW0FVA :2010/06/28(月) 18:58:15 ID:xb21/6Dp
投稿終了です。
業盛と水城のキャラが絶賛崩壊中です(不興なら止めます)。


88 :名無しさん@ピンキー:2010/06/28(月) 19:05:33 ID:XdZNd6h0
投下終了かな?
変歴伝GJです!これからも頑張ってください!

89 : ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:23:01 ID:i0VP7bYw
GJです!この投稿ラッシュに自分も乗ります。
こんばんわ。「きみとわたる」を投稿している者です。
埋めネタで出そうと思ったんですが、既に埋められていたので、
こちらでサブエピソード的に投稿します。暇な時にお読みください。

90 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:25:30 ID:i0VP7bYw
こんにちは。僕は藤川英(フジカワハナ)と言います。
とある高校の二年生をやっています。
そして趣味…まあ趣味ですかね。とにかく何でも屋みたいな物をやっています。
これが意外と最近有名になってきて、色々な依頼を受けるようになりました。
今回はその一つをご紹介しようと思います。




Case1『埋め女』




「埋め女の呪い?…聞いたことないけど」
放課後の生徒会室。
ここが僕ら、何でも屋の本拠地である。先に依頼主の話を聞いていた、
目の前の女の子でメンバーの白川潤(シラカワジュン)に依頼内容を説明してもらっている。
「知らないの英!?一年間ここで過ごしてきたのに!?」
「…むしろまだ一ヶ月しか過ごしてない潤が知っている方が驚きなんだけど」
「女の子は情報網が半端ないの!ま、英には分からないだろうね」
何故か胸を張る潤。…高一でこの発育、日本もまだ捨てたもんじゃないね。
「ははは、確かに女の子は色々知ってるもんね。で、その埋め女の呪いって言うのは?」
「うん。20年くらい前の話なんだけどね…」
随分古いね。そして何故トーンを落とす必要があるのだろう。
「ある日から学校の女の子が毎日行方不明になるって事件が起こったの」
「そりゃあただ事じゃないね」
「さらに同じ日から校庭の大きな庭に数字がかかれるようになったの。10から始まって毎日カウントダウンみたいに刻まれてゆく…」
「それで?」
「日に日に被害者の女生徒と数字が反比例して、ついにカウントダウンが0になると…」
「…なると?」
何故かためる潤。稲川ナントカの真似でも覚えたのだろうか。
「校庭の庭の花が一斉に血のように紅くなって、その庭の中から行方不明だった女生徒達の死体が見つかったの!」
潤はクワッ!と目を見開いて熱演する。最近ホラー映画でも見たのだろう。

91 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:27:03 ID:i0VP7bYw
「わぁ、ビックリだね」
「でしょ!?まさに学校の怪談よ!キタロウもビックリだわ!」
そんなに興奮することなのかな。というかキタロウは何か違う気がする。
「そうだね。それでその恐ろしい怪談が、今回の依頼と何の関係があるの?」
「それがね、依頼人の男子の家の庭が全く同じ状況なんだって!で、怖いから調べてくれっていう依頼です」
満足げに語る潤。…何か胡散臭いよ、その依頼。
「えっと…要(カナメ)は何て言ってたの?」
「"鍛えなきゃいけないからパス"だってさ。本当にビビりなんだから」
…逃げたんだね要。リーダーのくせに。
「じゃあ行こうか!」
「……僕らだけで?」
「こんなの私達だけで十分だよ!さっ、依頼人の庭に行くよ!」
僕は潤に腕を引っ張られて連れていかれた。…まともな依頼だと良いけど。



僕らは依頼人である2年5組、佐藤勇気(サトウユウキ)君の家の庭にいる。
「…確かにこれは数字だね。しかも…」
目の前の庭には大きく1という数字が書かれていた。というか掘られていた。
「もうカウントダウン、後僅かじゃない!」
「し、仕方ないだろ!?だって怪談を知ったのは昨日だし!そ、それにただの悪戯だと思って…」
まあ普通はそう思うだろうね。僕でもそう思う。
「と、とにかく頼んだからね!」
そう言うと佐藤君は家の中に入ってしまった。

92 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:28:14 ID:i0VP7bYw

時刻は12時ちょっと前。結局庭を調べても何も分からなかったため、
犯人がカウントダウンする現場を抑えることした。
「やっぱり張り込みにはパンと牛乳だね」
モフモフとパンを食べる潤。小動物みたいだ。その後ろでは佐藤君が震えている。
「…怖いなら部屋にいた方が良いんじゃないかな?」
「き、気になって眠れないんだよ!」
何だかやりにくいな。しかし本当に来るんだろうか。それよりお腹空いたな…。
「っ!英、誰か来たよ!」
「…本当に来たよ」
「ひぃ!?」
潤の指差す方向には確かに人影が見えた。しかもシャベルみたいな物を持っている。
こりゃあ現行犯だね。
「さ、出番だよ英っ!」
「…やっぱりですか」
「は、早く捕まえてくれっ!」
…佐藤勇気君は名前変えた方が良いかもね。佐藤意気地無し君とかに。
まあ文句を言っていても仕方ないので、犯人に近付く。
「カウントダウンは止めてもらえると助かるかな」
「っ!?」
声をかけると犯人はいきなりシャベルを振り回してきた。
「あらら」
「くっ!ちょこまかと!」
声からして、女の人だった。よく片手でシャベルを振り回せるなぁ。
…ウチの女性陣は別だけど。
「何かっ!佐藤君にっ!恨みでもっ!あるん!ですか!」
シャベルをかわしながら呼び掛ける。
「うるさいっ!彼の名前を気安く呼ぶなっ!今日は私と彼の記念日なんだ!」
「…記念日?」
「英、お疲れ様!」
「なっ!?」
後ろから潤の回し蹴りが犯人に炸裂した。犯人はその場に倒れる。
よく見ると女の子だった。ウチの制服を着ているので、生徒のようだ。
「ふぅ…。もう少し早く助けてくれると嬉しいんだけど」
「だって動機を聞きたかったんだもん。まあ結果オーライだね」
シャベルで追い回される気持ちにもなってほしいんだけど。
「つ、捕まえたのか!?」
佐藤君が近付いてきた。その声に反応したのか、犯人の女の子が立ち上がる。
「さ、佐藤君?」
「えっ?……安藤さん?」
「お知り合いでしたか」
「あれ?呪いは?」
どうやら何かありそうだった。

93 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:29:30 ID:i0VP7bYw

「記念日…ですか」
「わたしと佐藤君が…去年の今日、初めて出会った記念日なんです!」
興奮して話すのは2年4組、つまり僕のクラスメイトの安藤静香(アンドウシズカ)さんだった。
安藤さんはポニーテールを揺らしながら話し続ける。
「わ、わたしずっと前から…さ、佐藤君のことが…す、好きで…で、でも言い出せなくて…。だから気付いて…気付いて欲しくて」
だからって人の家の庭を勝手に掘って良いんだろうか。
「そ、それで…埋め女の話を思い出して…利用しようって」
「…安藤さん」
「き、嫌いに…なりましたよね?」
あれ?何でシャベルを掴んでいるのかな、安藤さん。
「き、嫌いになんてなってないよ!」
「さ、佐藤君?」
「お、俺も前から…安藤さんのこと気になってたんだ!」
「佐藤君…っ!」
「…チッ」
こら、潤さん。さりげなく舌打ちしないの。もっとやりなさい。
「もし良かったら…俺と付き合ってくれ!」
「…はい!」
抱き合う二人。…まあ大事にならなくて良かった。
「じゃあ今日から恋人だね!」
「ああ!」
「じゃあもう隣のクラスの佐川さんとも、同じ部活の中村先輩とも話さないよね!」
「ああ!…えっ?」
安藤さんの抱きしめる力が強くなった気がする。
「それに今週の土曜に約束していた馬場さんとのデートもキャンセルしてね!」
「…な、なんでそんなこと…」
佐藤君の顔が青ざめている。冷や汗も出ているようだった。
「何でって…。大好きだからに決まってるでしょ!絶対に逃がさないんだから!」
「あ、あ…」
何だろうね、安藤さんがポケットから出したあの注射器は。
「…依頼は完了したみたいだし帰ろうか、潤」
「…そだね。何か疲れちゃったよ」
「ま、待ってくれ!助け…!」
立ち去ろうとする僕らを佐藤君が呼び止めるが
「ありがとう!お二人のおかげで結ばれました!」
安藤さんが佐藤君の首に注射をして黙らせていた。
「「お幸せに〜」」
結局埋め女の呪いとは関係無かったようだ。

94 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:30:28 ID:i0VP7bYw

あれから一週間経った。
佐藤君と安藤さんは校内でも有名なラブラブカップルになったようだ。
…佐藤君の目に生気がないのは僕の気のせいだと思う。そして今日も生徒会室へ。
今度こそ、僕の知的好奇心を刺激する依頼が来ていることを願って。
「英、良いところに来たね」
生徒会室には透き通った白い髪が良く似合う、春日井遥(カスガイハルカ)がいた。
彼女もメンバーの一人だ。
「遥一人なんて珍しい。良いところって…もしかして依頼かな?」
「当たり。相変わらず勘が鋭いね」
来た。今度こそ良い依頼であることを神に祈る。
「一体どんな依頼なのかな?」
「その前にね、英」
「何?」
「…埋め女の呪いって、知ってる?」
「…………」
どうやら神は僕を見放したようだった。

95 : ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:33:01 ID:i0VP7bYw
今回は以上です。本編もなるべく早く投稿します。
読んでくださった方ありがとうございました!投稿終了します。

96 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 00:42:56 ID:/YGTmERg
実に面白い

97 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 02:24:54 ID:GbH3BsQ4
変歴伝は面白いな

投下遅いけど

98 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 03:55:22 ID:kOywROCm
>>97
うわぁ・・・

99 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 07:35:37 ID:j6JMNVGe
GJ!

本編も楽しみにしてます!

100 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 07:59:04 ID:lV+xNcrp
つうか変歴伝は平安時代とはいえ、いくらなんでも毎回安易に惨たらしく人が死に過ぎ。


101 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 08:40:02 ID:raJkeoHz
読ませて貰ってる立場なのにまさか批判する人が居るなんて…

102 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 10:18:56 ID:fdwJYc9e
作者の皆様GJです

最近長編作者様が羨ましい
なんか作品自体がヤンデレな気がするんだよな
「私のことずっと書き続けて」
「他の作品に浮気しちゃ嫌」
「終わるなんて許さないんだから、このまま作者と別れるなら一緒に心中(未完結)してやる」

全く羨ましい
ただ俺にはヤンデレに好かれる資質(文才)がないんだよな

103 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 13:00:16 ID:G0cJBJFr
>>100
ヤンデレは人を殺すって考えてる作者にはよくあること。
別におかしくない

104 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 14:43:11 ID:wYksagf9
応援とかはいいけど批判はやめとけ、そういう場所じゃない

作者は当然だが楽しみに読んでる奴にも不愉快なんだよ

105 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 15:42:54 ID:yKosGC1e
書き手を潰して読み手を遠ざけスレを廃れさせるゲームなんだよ、これは

106 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 15:45:47 ID:lGKFlnOU
修羅場スレみたいなもんやねw
悲劇やなw

107 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 16:01:08 ID:xciskfC5
ヤンデレスレ進行早いなー
人気ーに嫉妬

108 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 16:52:00 ID:PibqDhDZ
ヤンデレ対メカヤンデレ

109 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 17:20:57 ID:qLGuWqEo
前スレか前々スレに投下された同窓会で間違って告白しての奴を読みたいんだが保管庫にありますか?

110 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 18:26:12 ID:oIJfgz5d
>>109
おいおい「ありますか?」じゃないだろ
せめて自分で探して見つからなかった時に聞けよ

111 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 18:55:54 ID:kUgHeuFL
前スレの埋めネタのつもりで書き出したのですが
思いの外長くなったのと間に合わなかったので分割してこちらに投下します

一部ラブ+のパロディが含まれます。
苦手な方は『ヤンプラ+』でNGを

112 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 18:56:06 ID:qLGuWqEo
すいません見つからなかったんです

113 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 18:57:10 ID:qLGuWqEo
あっ被ってしまいすいません
10年ROMりますorz

114 :ヤンプラ+:2010/06/29(火) 18:57:21 ID:kUgHeuFL
「あー申し訳ございません、現在売り切れてしまっているようでして…」
「あーそうですか、わざわざすみませんでした」

今話題の彼女育成型恋愛シュミレーションゲームを、友人達がしつこく勧めてくるので、いざ買いに来たのはいいものの…。
やはり予約もせずに買おうと言うのが間違いだったか、既に売り切れの様子。
おとなしくネットで買うか、二次生産を待つか。

「あ、お客様!」
「あー店長さん、こんにちは」

帰り際に呼び止められ振り返ると、顔見知りの店長さんが現れた。
普段はFPSと言うジャンルのゲームばかりしているのだが、店長さんもこのジャンルには珍しい女性ながらもかなりのFPSゲーマーらしく、以前その話で凄く盛り上がったことがある。

「珍しいですね、お客様が恋愛シミュレーションなんて」
「いやー友達が偉く勧めてきたんで…。
ま、ネットか再入荷で買いますよ」
「あーそれなら、私の分取り置きしてあるんで、いります?」

店長権限というやつですか、なんかズルイな。
が、譲ってくれるというなら有り難い。

「いいんですか?」
「ええ、もともとあんまり興味無かったし、ネットで転売しちゃおうかと考えてましたから」

ここみたいなわりと小さめの店舗でも売り切れなぐらいだ、ネットじゃ多少値上がりしているんだろう。

「あーじゃあ、お願いします」
「はい、わかりました」



「これが噂のラヴ+かぁ…」

オシャレな感じすらするパッケージにヒロイン達が肩を並べている。
俺は年上好きなので、とりあえずお姉さんキャラ攻略を目指す。

115 :ヤンプラ+:2010/06/29(火) 18:59:28 ID:kUgHeuFL
「さーて起動させっかー」

ハードの電源をいれ、ソフトを読み込む。
始めに名前入力。

「た、つ、や、っと」

今更ながら本名は白戸 達也である。
別に甲子園に連れてくSouthちゃんと中の人が同じだからって選んだ訳ではない。
あだ名はもちろんタッちゃんに設定したが。

「うーむ、わりと普通だな」

プレイし始め10分ほど、得に変わったこともなく普通の恋愛シミュレーションと同じ展開だ。
主人公の立場と、ヒロインの出会い。
このゲームの主旨は別のとこにあるからまぁ、こんなもんか。

「ん?なんだこれ?」

校舎内のヒロイン達の位置を示すアイコンとは別に、『?』マークが存在した。
普通に考えれば何かのイベントがあるだけのはずなんだが…。

「ま、選んでみるか」

深く考えずに?をタッチ。

『キャッ!ご、ごめんなさい!』

主人公が誰かとぶつかったようだ。
ぶつかったのは…誰だ?コイツ。
ショートカットに大きめの眼鏡の女の子。
ヒロインは3人だけのはずなんだが…モブか?。
確認に説明書を開くがそのようなキャラは書いてなかった。
とりあえず進めよう。

『いたた…いえ、大丈夫ですよ』
『よかったぁ…』

謎のキャラは涙ぐんでいるようだ。かわいいじゃないの。

『そっちこそ、大丈夫ですか?』
『い、いえ、私は、だ、大丈夫ですぅ〜!』
(走り去ってしまった)

な、なんだったんだ。
没キャラのデータバグとか?
いやでもそんな話聞かないしなぁ。
などと考えながら進めて行くと、今度は謎のキャラがヒロイン達に混ざって現在地のアイコンが表示されている。
気になるので謎キャラを選択。
どうやら場所は図書館のようだ。

116 :ヤンプラ+:2010/06/29(火) 19:04:20 ID:kUgHeuFL

(誰かが寝ている…
この間ぶつかった女の子のようだ)
・突く
・揺さぶる
・隣で眺める

ここで選択肢か。
なんとなく揺さぶってみる

『う、うぅん……あ、アレッ?』
『おはようございます』
『お、おは…キャッ!』
(司書さんからの視線が痛い)
『し、静かに…』
『あ、ご、ごめんなさい。
あの…私、寝ちゃってました?』
『うん』
『うわぁ…寝顔、見られちゃったぁ…』

どうやら照れてる見たいだ。かわいいのぅ。

『ごめん、起こさない方が良かった?
一応下校時間そろそろだし、気になったから…』
『い、いえ、ありがとうございます』
『それじゃあ…』
(ぐい、と袖を引かれた)
『ま、待って…。
あ、あの、もう暗いし、時間も遅いし…』
(どうやら送ってほしいみたいだ)・送る
・途中までなら、と言って送る。
・断る

また選択肢。
まぁ、この状況で断っちゃいけねぇだろうなぁ。
一番上を選択。

『じゃあ、送ろうか?』
『い、いいんですか!?
ありがとうございます!』
(また司書からの視線が…)
『う、うん。
でもちょっと静かにね』
『あ、ご、ごめんなさい…』

117 :ヤンプラ+:2010/06/29(火) 19:05:50 ID:kUgHeuFL

(二人で学校を出る。
夏も近いとは言え、暗くなるのはまだ少し早かった。)
『あ、ありがとうございます…』
『いや、いいですよ。
夜道は女性の一人歩きには何かと危ないですしね』
『…本当に、ありがとうございます…。
私みたいな…地味で、眼鏡で…勉強以外取り柄もないのに…そんなこと…』

どうやらコンプレックスになっているようだなぁ。
外見的にはそんなことないのだけれど。

『そんなこと、ないですよ』
『え?』
『可愛いと、僕は思います』
『……』
(真っ赤になった)

可愛いじゃん。
バグか隠しキャラかわからんが、この子に路線変更しよう。

『……』
『……』
(会話がない…。
調子にのってしまっただろうか

『あの…ここです』
『え、ああ』
(どうやら彼女の家についたようだ
表札には神山とある)
『あの、本当に、ありがとうございました』
『い、いや、別に対したことじゃ…』
『いえ、たいしたことです。
すくなくとも、私には……』
『…じゃあ、俺は』
『…はい、さようなら…。
……また、明日』

(…また明日って言うのが、ちょっと嬉しかったな)



「ふぅ…」

ここでいったんセーブ。
なんだかんだ買ってきて正解だったかな。
おもっていたよりも楽しいし、なんだか自分の高校生活を振り返ってるみたいだなぁ。
ま、とりあえず今日はここまでだな。
そう思って、ぱたりとハードを閉じて、俺は布団に入った。


しかしこの時、ほんの少しの違和感と、『神山』という苗字に見覚えがあることを、俺はまだ自覚していなかったのだった。

118 :ヤンプラ+:2010/06/29(火) 19:07:18 ID:kUgHeuFL
今回は以上です。

119 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 20:30:58 ID:JE/4oIo3
GJ!

続きを待ってます。

120 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 20:31:14 ID:T+8jF7xP
GJ

121 : ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/29(火) 22:22:38 ID:5OwW6byE
こんばんは。触雷!の者です。
7話目を投下いたします。

122 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/29(火) 22:23:24 ID:5OwW6byE
何かの物音で、私は目を覚ました。
自室で机に突っ伏したまま、寝入ってしまったらしい。
窓の外は明るい。どうやら朝のようだ。
立ち上がり、部屋の外に出る。
「あっ、お嬢様」
「お早うございます」
秘書のエメリアとソフィが控えていた。
「お早う。朝から苦労をかけるわね」
「お嬢様。お顔の色が優れませんが、昨日はよくお休みになりましたか?」
エメリアが心配そうな顔で聞いてくる。
「……詩宝さんがどんな目に遭っているか分からないときに、おちおち寝てなんかいられないわ」
若干の気だるさを覚えながら、私は答えた。
3人で別室に移動する。
使用人に淹れさせた珈琲を飲みながら、私はソフィの報告を聞いた。
「……という訳で、詩宝様は昨夜も外出されませんでした。これで、我々が詩宝様のお宅を最後に訪れてから1日半、詩宝様は外出されていないことになります」
「そう……」
私は溜息をつく。

2日前の夕方。
詩宝さんの家に駆けつけた私は、世にもおぞましい光景を見た。
大きな図体のメイドが詩宝さんにまたがり、彼を犯しながら、醜い胸を無理やりに揉ませていたのだ。
いや、あれはメイドなんて上等なものじゃない。
詩宝さんを汚す最悪の害虫。
そう。巨大なコックローチ、ゴキブリだ。
ゴキブリは愉悦に顔を歪ませ、嫌がる詩宝さんを無理やりに凌辱していた。
詩宝さんは悲鳴を上げて、私に助けを求めている。
私の怒りは、すぐさま頂点へと達した。
一思いに蹴り殺そうとしたが、ゴキブリは小癪にも私の足を受け止め、スタンガンで攻撃してきた。
普通のスタンガンなら耐えられる自信があったのだが、ゴキブリのそれには改造が施してあったのだろう。威力が市販品の数倍も強力だった。
さしもの私も体が痺れ、足元がふらついた。
そのまま追撃されていたら危ないところだったが、詩宝さんが命がけでゴキブリを止めてくれたおかげで、私は車に戻り、屋敷に帰りつくことができた。
やはり詩宝さんは、いつでも私のことを大事にしてくれる。だが、それを喜んでいる場合ではない。
屋敷で回復した私は、すぐに詩宝さんの家へ舞い戻ろうとした。
身を挺して私を助けた詩宝さんが、あのゴキブリにどんな目に遭わされているか。
それを思うと、一刻も早く彼を救い出したかった。
私の乳房に触れてもらい、ゴキブリの胸の感触を忘れさせてあげたい。
ゴキブリの生殖器で汚れた詩宝さんの男根を、私の膣で洗い清めてあげたい。
しかし、エメリアとソフィに止められた。
「あのメイドが、どんな危険な罠を用意しているか分かりません」
そう言われると、私は強いて出て行くことができなかった。
極めて腹立たしいが、私はゴキブリの仕掛けた罠に、一度引っかかっている。二度も同じ轍を踏むわけにはいかない。
私はすぐに詩宝さんの家に行くのを諦めた。
その代わり配下の者達に、詩宝さんの家を24時間体勢で見張るよう命じる。
詩宝さんが出てきたら、即座にこの屋敷に連れて来させるため、車も待機させた。


123 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/29(火) 22:23:52 ID:5OwW6byE
しかし、そのまま一晩中待っても、ついに詩宝さんが出てきたという報告はなかった。
翌朝も、もちろん私は学校に行くどころではない。
屋敷で待機し、断続的に仮眠を取りながら、引き続いて報告を待った。
だが、相変わらず動きはなし。ゴキブリも出てこない。
報告によれば、ゴキブリは宅配で食料を届けさせているらしい。
長期戦に臨むつもりなのだろう。
私は、詩宝さんの携帯に連絡を入れてみた。
私の番号は着信拒否にされていたので、エメリアの携帯を借りてかけてみる。
すると、またしてもゴキブリが出た。他の携帯からかけても同じ。
許し難いことに、ゴキブリは詩宝さんの携帯を強奪しているらしい。
パソコンのメールアドレスにメールも送ったが、詩宝さんからの返信はなかった。

「……現在まで、詩宝様のお宅を訪れたのは、スーパーの宅配業者、および詩宝様と同じクラスの男子生徒、堂上晃のみとなっております」
「分かったわ」
結局これと言って収穫のないまま、この朝に至ってしまった。
すでに、丸一日以上を無為に過ごしている。
もはやこれ以上、手を拱いていることは許されない。
今この瞬間にも、詩宝さんはゴキブリに虐待されているに違いないのだ。
「どうしたらいいかしらね」
私は、エメリア、ソフィに意見を求めた。
するとソフィが発言した。
「いっそ人数を催して、詩宝様のお宅に突入しましょう。罠を張っていたとしても、相手は1人。精鋭を向かわせれば制圧できます」
タカ派のソフィらしい、過激な意見だ。
私としても、強行突入で一気に解決という手法には強く惹かれる。しかし……
「そう簡単には行かないわ」
エメリアが反対意見を述べた。
「今の段階では、我々が詩宝様のお宅に突入するだけの正当性はないわ。犯罪が行われているという、確たる証拠があるならともかくね。下手をすると、こちらが不法侵入になりかねない」
そうなのだ。まだ強行手段に打って出られるだけの情報が、こちらにはない。
不満そうなソフィに代わり、私はエメリアに尋ねた。
「エメリア、代案はある?」
「はい。ここはあのメイドを油断させ、詩宝様を外に出すよう仕向けることだと思います。例えば……」
エメリアが意見を言いかけたとき、ドアが開いて父が姿を見せた。
「失礼、邪魔するよ」
「「これは、会長……」」
エメリアとソフィが起立する。緊急にして重要な会議を中断させられた私は、イライラした。
「何、お父様?」
「舞華。今日も学校を休むのかな?」
「そうよ」
「それならちょっと、私の部屋まで来なさい。話がある」


124 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/29(火) 22:24:19 ID:5OwW6byE
皆様、初めまして。
紬屋詩宝様の忠実なるメイド、神添紅麗亜でございます。
詩宝様、すなわちご主人様にお仕えして今日で3日目。
ご主人様にお仕えできるメイドの幸せを噛み締めながら、精一杯ご奉仕しております。

私の両親は、私が幼い頃に他界しました。
ある親切な女性が私を引き取り、養育してくれました。
その方は、私の他にも2人の少女を引き取って育てていました。3人の中では、私が一番年長でした。
私達に血の繋がりはありませんでしたが、本当の親子、姉妹のように暮らしていました。
ところが、幸せな日々が唐突に終わりを告げました。
養母が悪い男に騙され、財産を失ってしまったのです。
失意のあまり、養母は病に倒れ、亡くなってしまいました。
残された私達3人は、すでに働ける年齢になっていましたが、養母の仇討ちをすることに決めました。
すなわち、メイドとしてその男の元に潜入し、寝首を掻こうと考えたのです。
私達はメイドとしての修行に明け暮れました。
立ち居振る舞いから家事全般に至るまで、メイドとして完璧になるまでに身に付けました。
さらに、復讐に備えて、格闘術、殺人術、諜報術、拷問術も密かに学びました。
修行の甲斐あって、私達3人は、男の家に雇われることができました。
表向き礼儀正しく、よく働く私達を、男はすぐに信用しました。
もちろん、指一本触れさせはしませんでしたが、色仕掛けで保険金と遺産の受取人を、私達に指定させました。
そして、男を事故に見せかけて殺害する計画を立て、実行に移す前日。
男は殺されました。
何のことはありません。男を恨んでいた者が他にもいたのです。
出会いがしらにナイフで刺すという、何の捻りもない方法で、男は死にました。
私達に残されたのは、莫大な遺産と保険金、そして、努力が水泡に帰した絶望感でした。
仇を討ち損ねた私達は、生きる目標もなく、抜け殻のように街を彷徨っていました。
そんなときでした。偶然に詩宝様をお見かけしたのは。
一目見て、確信しました。
この方こそ、私が一生をかけてお仕えするお方だと。
一緒にいた義理の妹2人も、同じ気持ちになったようでした。
すぐに飛び付いて、「私達をあなた専用のメイドにしてください」と言いたいところでしたが、メイドとは奥ゆかしくあるべきもの。そのようなはしたない真似は許されません。
一週間ほど、私達は詩宝様を尾行し、詩宝様の個人情報と生活パターンの把握に努めました。
3人で相談した結果、私が最初に詩宝様にお仕えし、後の2人は、遺産として例の男から奪った屋敷で、詩宝様をお迎えする準備をすることにしました。
そしてついに、私が詩宝様に接触する当日。
詩宝様とお近づきになるのは、実に簡単でした。
帰宅される時刻を見計らい、詩宝様の家の前に寝転がる。ただそれだけです。
空腹で倒れたと申し上げると、お優しい詩宝様は、すぐに私を家に入れて介抱してくださいました。
実際にはお金は無尽蔵にあるわけですから、空腹というのは、多少無理があったかも知れません。
いずれはばれるでしょう。しかし、一度お仕えしてしまえばどうにでもなります。


125 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/29(火) 22:24:48 ID:5OwW6byE
とは言え、全てが順調だった訳ではありません。
尾行していたときから薄々は分かっていましたが、詩宝様改めご主人様には、汚らしい雌蟲がたかっていました。
それも1匹ではなく、2匹です。
雌蟲その1については、今さら申し上げるまでもないでしょう。
中一条舞華とかいう、どこぞのお嬢様です。
あろうことか、雌蟲その1はご主人様とメイドの愛の巣に、土足で踏み込んできました。
私としてはその場で駆除したかったのですが、私と離れたくない一心のご主人様に止められました。
私はご主人様のご厚情に深く感謝いたしましたが、その後も雌蟲その1は、執拗にご主人様との接触を企ててきました。
私がお預かりしたご主人様の携帯に、何度も何度も着信を入れてきます。
雌蟲からの着信だと分かると、私は即座にその番号を着信拒否にしました。
しかし、雌蟲その1の執念は凄まじく、100以上の違った番号から、ご主人様の携帯にかけてきました。
雌蟲以外からの連絡であれば、ご主人様に取り次ぐつもりでいたのですが、こうなっては已むを得ません。
私はご主人様の携帯の電源を切りました。

雌蟲その2は、晃とかいう女です。
初めて私の前に現れたとき、男の姿をしていましたが、どこか違和感を感じました。
違和感の正体は、すぐに分かりました。
雌蟲その2はご主人様を見て、明らかに発情していたのです。
同性愛ではありません。
「この人の精子で妊娠したい。この人の子供を産みたい」という女の目です。
雌蟲その2は自分が女であることを巧みに隠していました。
並みの人間であれば、気付かなかったかも知れません。
しかし、修練を積んだメイドの目には、明らかにそれと分かります。
そして、本性を現した雌蟲その2は、私に喰ってかかってきました。
あまつさえ、ご主人様と2人きりになろうとしました。
おそらくご主人様に性行為を強要した挙句、私と縁を切るように脅迫するつもりだったのでしょう。
当然、私は体を張って雌蟲その2を止め、追い返しました。
ご主人様も、雌蟲その2が女であることは知っていたようですが、ご主人様に邪な思いを抱いていることは、ご存じないようでした。
お伝えしようと思いました。しかしご主人様が、雌蟲その2が女であることを知られたくない様子だったので、あえて黙っていることにしました。
よくできたメイドは、いつでもご主人様の思いを優先するのです。


126 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/29(火) 22:25:11 ID:5OwW6byE
ご主人様は魅力的な男性です。蟲がたかりたがるのも無理はありません。
私は心の広いメイドですから、百歩譲ってそこまでは認めます。
しかし、メイドがお仕えした時点で、メイド以外の雌は諦めるべきなのです。
ご主人様とメイドとの繋がりは、この世の何にも増して神聖であり、侵してはならないものだからです。
それを理解しない雌蟲の片割れが、懲りずに今日もやって来ました。
「詩宝に会わせろよ」
「ご主人様のご病気は重いのです。お引き取りください」
雌蟲その2です。確かに毎日来ると言っていたのですが、本当に来なくてもいいでしょうに。
「そんなに重いんなら、病院に連れてかないと駄目だろう?」
「そうですね。検討いたします」
「話にならん。今から俺が連れていく!」
そう言うと、雌蟲その2は強引に家に上がろうとします。私は力ずくでそれを押し止めました。
「いい加減にしてください! 警察を呼びますよ!」
「くっ……」
やっとのことで雌蟲その2は退散しました。
ご主人様をお守りするのは、当然メイドの職務ですが、こう毎日ではさすがに疲れます。
早く妹達に、ご主人様をお迎えする準備を整えてほしいものです。
ドアを閉める前に、ふと郵便受けを見ると、夕刊が入っていました。
ご主人様にお届けするために、私はそれを取り出します。
何気なく記事を見てみると、こんな見出しが目に留まりました。
『中一条グループご令嬢 婚約発表へ』
まさかと思ってよく見ると、雌蟲その1が写真に写っていました。
記事を読むと、雌蟲その1が婚約をしたようです。
お相手はさる大政治家の息子であり、近日発表されるとのこと。
ご主人様のご両親は政治家ではありませんから、お相手はご主人様ではありません。
雌蟲その1は、ご主人様には適当にちょっかいを出していただけで、本命は権力者の息子だったのでしょうか。
それとも、グループの勢力拡張のために、親が勝手に決めたのでしょうか。
まあ、どちらでもよいことです。
いずれにせよ、雌蟲その1がご主人様にたかることは、もうないでしょうから。
私はほっとした気持ちで、新聞をご主人様の元に持って行きました。


127 : ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/29(火) 22:26:09 ID:5OwW6byE
以上です。
なるべく早く、次回を執筆できるようにします。

128 :名無しさん@ピンキー:2010/06/29(火) 23:02:14 ID:0mq7bdrQ
GJ

129 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 00:19:25 ID:xebhJA22
触雷GJです

きっと日本も勝つでしょう

130 : ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/30(水) 02:08:10 ID:7J9UodzR
連続申し訳ありません。
触雷!の第9話です。短いですがよろしくお願いします。

131 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/30(水) 02:08:44 ID:7J9UodzR
父の話とは、新しく立てる系列企業の社屋を、ミリタリーグレーに塗るかオーシャングレーに塗るかという、世にも稀などうでもいい事柄だった。
「もう、お父様ったら」
真面目に対応するのが馬鹿馬鹿しいので、軽いローキックで突っ込みを入れる。
「うぐっ!?」
倒れて動かなくなった父を放置し、私は父の部屋を出た。
元の部屋に戻ると、エメリアとソフィが待っていた。
「お嬢様、会長のご用件は……?」
「もう済んだわよ。貴重な時間を浪費したわ。続けましょう」
椅子に腰を下ろす。会議再開だ。
「エメリア。さっき言っていた、ゴキブリを油断させる作戦だけど、何か案はあるの?」
先程の話題に戻り、エメリアの意見を求める。
「はい。お嬢様がご婚約をなさってはいかがかと」
「婚約ね……当然いずれはするんだから、今してもいいけれど、それであのゴキブリが油断するかしら?」
私が疑問を口にすると、エメリアはとんでもないことを口走った。
「いいえ。詩宝様とではありません」
「……何ですって?」
私が詩宝さん以外と婚約する。そんなことは太陽が西から昇ってもありえない。
それは分かっているだろうに。
エメリアは気が触れたのかと、私は思った。
彼女も詩宝さんのことは慕っていて、私が詩宝さんと結婚した暁には愛人になる予定だったから、ゴキブリの出現で錯乱した可能性はないでもない。
「エメリアさん、どういうことかちゃんと説明してください」
私と同じように思ったのか、ソフィがせき立てる。
エメリアは「失礼しました」と言い、説明を始めた。
「つまり……お嬢様の偽の婚約を発表して、あのメイドを騙すのです。これほど、あのメイドが喜ぶ知らせはありません。必ず引っかかって、油断するでしょう」
「なるほどね」
趣旨は分かった。確かにその方法なら、ゴキブリを欺くことはできるだろう。
しかし、私は気乗りがしなかった。
例え嘘であっても、詩宝さんに対して二心を抱くような真似は、プライドが許さない。
第一、今詩宝さんは、ゴキブリの暴虐に耐えながら、私の助けを待っているのだ。
そんなときに婚約など発表したら、詩宝さんの絶望はいかばかりだろう。
想像したくないが、最悪の場合、世を儚んで……ということだってあり得る。
「でもねえ……」
私が躊躇っていると、ソフィが発言した。
「ボス。偽の婚約を発表するのと同時に、それが嘘だと詩宝様だけに伝えるというのはどうでしょう?」
それなら、ギリギリで許容範囲内だ。
しかし、あのゴキブリの目を掻い潜って、そんなことができるだろうか。
私はその疑問を、素直に口にしてみた。
「どんな方法で、詩宝さんに知らせるの?」
「それはですね……」
ソフィは私とエメリアの耳元で、ゴニョゴニョとつぶやく。
私とエメリアは頷いた。
「それなら、うまく行くかも知れないわね」
「はい。危険はありますが、やる価値はあります」
こうして、詩宝さん奪還作戦は、そのスタートを切った。


132 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/30(水) 02:09:15 ID:7J9UodzR
「雌蟲は、ようやくご主人様を諦めたようです。やっと身の程が分かったのでしょう」
「うん……」
紅麗亜が持ってきた夕刊の記事を見て、僕は複雑な気分になっていた。
いつか、中一条先輩とお別れするのは分かっていた。
元々住む世界が違っていたのだから。
しかし、この婚約は、本当に先輩が望んだものなのだろうか。
そうであるなら、何も言うことはない。ただ祝福するだけだ。
だが、もし、周囲に強要されて婚約したのだとしたら。
そして、2日前のこの家での出来事が、それに少しでも関係しているのだとしたら。
僕は先輩に、とんでもなく悪いことをしてしまったことになる。
「…………」
何かを言おうと、口を開きかけた。
そのとき、玄関で呼び鈴が鳴る。
「出て参ります」と言って、紅麗亜が降りて行った。
誰が来たのだろうか。晃ではないだろう。さっき帰ったばかりだ。
(ちなみに、今日彼女が来たとき、僕は紅麗亜に「2階に上がって、絶対降りてこないでください」と言われたので、結局会えなかった。)
少しして、紅麗亜がまた上がってくる。
「申し訳ありません、ご主人様。郵便だそうなのですが、ご主人様に直接渡さないといけないそうです」
「うん。分かった」
大切な郵便物なのだろう。僕は1階に降り、玄関に出た。後から紅麗亜も来る。
待っていた配達の人に、僕は頭を下げた。
「ご苦労様です」
「紬屋詩宝様ですね?」
「はい。僕です」
「速達です」
そう言って、配達の人は封筒を差し出した。僕はそれを受け取る。
受け取ったとき、はっとなった。
封筒の下に、別の紙がある。
配達の人がいなくなると、紅麗亜は早速、「何の手紙ですか?」と聞いてきた。
咄嗟に僕は、踵を返して走り出す。
「ご、ごめん。ちょっとトイレ!」
一目散にトイレに駆け込んだ僕は、鍵をかけ、便座に座った。
まず封筒を見る。送り主は中一条家。
封筒に要件までは書いていなかったが、封は切らないでおく。
封をしたままで紅麗亜に渡さなければ、確実に彼女は怪しむだろうから。
そして、封筒の下に書いてあった紙を見た。
そこには、手書きでこう書かれていた。
『婚約は嘘です。一緒に送った招待状の場所に来てください。必ず助けます。
世界一大好きな詩宝さんへ 舞華』
中一条先輩の筆跡だった。


133 : ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/30(水) 02:10:56 ID:7J9UodzR
終わりです。
第9話でなく、第8話でした。済みません。
変則的な投稿になってしまいましたが、次回からは普通にしたいと思います(汗)

134 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 02:26:01 ID:cVm/KXyS
>>133
Gj!こんな遅くまでご苦労さん。
今一番楽しみなシリーズだけに速いペースの投下はうれしいぜ


135 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 02:34:38 ID:q7beypEV
>>133

メイドもの大好物だし続きが気になってたんだ

楽しみにしてます

136 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 06:11:26 ID:Wmiq6aia
一目惚れだったのか・・・
主人公にとってはとんでもない受難だな

137 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 19:28:44 ID:vEyq3jut
妹達も惚れているのか・・・
これからますますヒートアップしそうだな。

次も楽しみにしてます!

138 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 21:29:00 ID:vn1Rp1ZC
ヤンデレの団体戦っぽくて新しいな

139 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 22:44:30 ID:PjcatyYt
ヤンデレ大運動会という単語が浮かんだ

140 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 22:56:09 ID:bnT9u2FB
主人公が借り物競走で死にそうだな

141 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 23:10:55 ID:M6gCdkiF
「嫁」とだけ書かれてある紙を引いた主人公の運命や如何に!

142 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 23:22:54 ID:GxuGK8ch
ここで候補全員連れていこうとヘタレ発動するとゴール前で誰か1人選べともめる事に

143 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 23:32:18 ID:bnT9u2FB
ヤンデレが参加者側でもろくなことにならんな
どんなものが書かれてても主人公と関連付けて連れて行こうとするに違いない

144 :名無しさん@ピンキー:2010/06/30(水) 23:42:21 ID:n5Pyd+gp
堂上 晃がどうなっていくかがめっさ気になる


145 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 00:21:51 ID:ikyrYQxv
そしてゴールでは止まるまい。
どこに連れて行かれるのやら・・・

146 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/01(木) 00:59:30 ID:DpzJhmAP
こんばんはーこのまえの初心者の人です。第二話が出来たので投稿したいと思いますね
やはりタイトルはつけたほうがいいのでしょうか?
あと自虐はなるべくしないように気をつけます!

147 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/01(木) 01:00:59 ID:DpzJhmAP
「遅いクソ兄貴!」
 俺が家に帰ってきたときの玄関にいた妹の第一声がそれだった。どれだけ責めるのが好きなんだ妹。
「すいません。茜様マジすいません」
 ただ普通に過ごしてきて家に帰るのが遅くなっただけなのにどうしてクソとか言われないとダメなんだろうか。
 しかもなんで土下座なんかしないといけないのだろう。ちらりと俺を見下ろしている妹を見る。
 妹は可愛い。兄とは違いモテモテだし他人との付き合いも上手い。頭もいいし運動能力も悪くない。
 背が小さく胸も絶壁だがそれが一部のマニアには凄く受けてるし。本人は嫌ならしいけど俺も結構好きだ。どちらかというと胸はあった方が好みではあるが……。
 行動も小動物みたいで可愛いとイメージを強めるんだけど、どうしても綺麗というか可愛いという感じ。愛さんとは真逆だな。
「そういえば兄貴、アイ--」
「ないです。そんなもの」
「ス食べちゃった」
「返せェェええ!」
 我が家の冷蔵庫にあるアイスは一個しかないない。俺の今日の楽しみの一つであるチョコパフェアイスだけしかないのだった。
 昨日皆で最後のチョコミント食べたばかりだから家にはアイスがこれしかないのだ。まさか見つかるとはな。
 せっかく冷蔵庫の右奥の魚が置いてあるところの下に冷却材を壁にして上手く見え無いように配置して蓋には『俺のもの』とペンででかでかと書いていたはずだったのに。
 というか名前付けてるから食うなよ。
「俺の名前書いてあったろ」
 素直に聞くことにした。どう返すか。
「え、あのパッケージが俺のものなんでしょ? ちゃんと兄貴の部屋に入れてるよ」
 ……セコイよ、これ。世の中って理不尽じゃないかな。
「おいしかったよ。サンキュー兄貴」
「返せ! 何でも可愛けりゃ許されるって思うなよ!」
 俺は妹に飛び掛る。それを読んでいたのか妹は俺にカウンターでアッパーをした。俺は痛さで床をゴロゴロと転がり続ける。
「お母さん、兄貴が狂ったー」
 妹は笑いながらそんなことを言っている。酷いものだ。人にアッパーをしてこんな風にしたのに。
「元からでしょ」
「母さん! ひどいなおい!」
 実の親とは思えない言葉だ。まったく実は親違うんじゃないか。親父の浮気相手の子供とか。いやないか。
「兄貴、この『激辛HOT! とうがらしドリンク』あげるから許して」
「こんな暑い日に要らないよ! それゲテモノ系統のドリンクだろ! しかも冬に飲むようなものでしょ」
「ちなみに賞味期限は二年前」
「そんなもの兄に勧めるな!! 絶対腐ってるって!」
「大丈夫。二年ぐらいなら兄貴にとっては些細な違いだ。逝け! 我のために逝ってくれ!」
「そんなこと言っても飲まないよ! なにそのゲームの国王みたいなノリ!」
 この鬼畜妹の人気の理由が分からない。もし彼氏が出来たら彼氏にいってやろう。Mじゃないとやっていけないよって。
 それにしてもたぶん妹の猫かぶりは上手いんだろうな。だからモテるんだろ。話しかけやすい男とか軽い女とかが高校ではモテるからな。
 もしかして妹はもう処女じゃないのか!? 兄貴は悲しいぞ!! いや妹に限って無いか。

148 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/01(木) 01:02:03 ID:DpzJhmAP
 この妹は意外に夢見がちだしあの性格なら女の子とペアで行動してるだろうから無理やりやろうとしても誰か助けてくれるだろう。
 そもそも喧嘩では負けないだろうな妹は。並みの男より運動能力高いし無駄に戦闘するときにどうやって動いたら有利になるかみたいなの知ってるし。
 俺の下克上は確実にムリだよな。いや別にいいか。この生活も嫌いじゃないし。別に妹に罵られるのが好きなのではなく楽しいだけなのだ! 決してMではない!
「はぁ、まあいっか。とりあえず俺アイス買ってくるよ。冷たいもの食べたいしね。ほしいものあるか茜。買ってくるよ」
「え……と、特に何もない……けど。兄貴ってマゾ? 妹にアレだけ言われたのに何か買ってくるって」
 自覚ありかよ。もしや! これは俺だけに見せる素直な自分。つまり俺のことが好きなのか? いや妹に限って好意とかはないな。絶対に俺の位ってサンドバックだろう。
「いや、俺にとっては妹って可愛いからさ。それじゃ適当に買ってくるよ。一緒に食べような」
「兄貴……いきなりキモイ」
 俺は着替えしながら妹と話す。少し服がきついが大丈夫だろう
「一人で食べたらつまらないだけだからさー。キモイと言われようが俺は一緒に食いたいね。母さんもどうだー」
「あはは、わざわざ野暮なことはしないわよー私は少し出かけてくるわ」
 強欲な母が珍しいことを言うものだ。いつもなら食うのに許可ももらわず食べるのに
「仕方ないわね。寂しがり屋だから兄貴は」
「ツンツンしてるよりいいと思うけどね。それじゃ」
 何だかんだ言って結構兄思いなのかと思う。でも常日頃の責めがあるのでそんなことすぐに考えを改めさせられるのだけど。

149 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/01(木) 01:02:42 ID:DpzJhmAP
「珍しいな。卓也とここで会うなんて」
 スーパーで見知った顔を見つけた。我が生徒会の生徒会長兼我がクラス委員長の新條葵だ。愛称は男子からは会長、一部の女子からはお姉さまだ。
 頭脳明晰、スポーツ万能、容姿端麗。現実にはいないだろうと思うほど絵に描いたような人物。
 目は切れ長で髪は艶やかな黒髪。背が大きいのも魅力の一つだろう。
 愛さんのようにスタイル抜群ではないが控えめな胸とお尻が魅力を引き立てている。
 い、いや別に俺は胸に注目しているが別に変な意味では無いぞ。ただ胸は女性の中でも至高の……やめよう、この話は。
 自慢の黒髪は今はポニーテールにしており髪が揺れると花の香りが漂いそうだった。
「急いでるのでそれじゃ」
 俺は逃げるようにかごを取りに行く。入り口の近くだったからまだいると思ったら意外にいなかった。いつもの展開なら待ってそうなのに。
 会長が待っていなくてよかった。俺はそう思い店内に入る。急いでるのに話し込んだら少し時間がきついからな。さっきチラシ見たときに色々なタイムセール品があったのだ。
 俺は主夫の血を滾らせ獲物に向かっていった。

 獲物を獲得した後、寒くなるほどガンガンにかけられているエアコンを浴びてながら一通り店内をまわる。
 そんななかアイス売り場を真剣なまなざしで見つめている会長を見つけた。
 どうやら買うアイスを選んでいるようだ。こんな真剣な眼差しは久しぶりだ。ここ最近は見たこと無い気がする。というかアイスでそんなに真剣にならなくても。
「卓也か。どうしたんだ」
「会長こそ」
「アイスを何買うか悩んでいるのだ。宇治金時味もいいが抹茶ミルク味の棒アイスも捨てがたいしな。迷うのは当然だろう」
 やっぱりこの人どっかネジずれてるよな。天才と凡人のズレというべきかな。
「卓也のお勧めアイスはあるかな」
「俺? 俺ならこのいちごみぞれかな。安いしおいしいし」
「なるほどな。食べたことが無いから食べてみるとするか」
 ふと思う悩むほどアイスが好きなはずなのにどうして食べたことが無いんだろ? ……あーなるほど
「会長って抹茶好きなんですか?」
「ああ、大好物だ。苦いのも甘いのも」
 だからチョイスが抹茶中心なのか。それならいちごみぞれは未開拓だろう。
「ありがとうな。では私は行くとするよ」
 そういって会長はレジに行ってしまった。俺はとりあえず妹に食べられたチョコパフェアイスと安いアイスを数点選びレジに向かった。

150 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/01(木) 01:04:01 ID:DpzJhmAP
「ただいまー」
 俺は玄関を開ける。そこには何か小包があった。なんだろうなこれ。
「あ、兄貴お帰りー」
 妹が部屋から出てきたらしい。そんなにアイスが楽しみなのか?
「これお前の?」
「あ、届いたんだ……やっぱり……。あはは、お母さんも言ってくれればいいのに。うん私のものだから気にしないで」
 妹は隠すようにその小包をとり背中に回す。何を隠してるんだかな。別に妹が『実はエロゲーが好き』とか言っても気にしないのに
「ん? 兄貴その匂い何?」
 帰ってきて早々に妹に体臭について言われるとは……俺もう加齢臭がするかな……
「俺そんなに臭い?」
「確かに汗臭いけど花の匂いがするの」
 花の匂いか。なんだろうか。あ、そういえば会長の香水は確か花の香りだった気がするな
「会長と会ったんだよ。スーパーで。多分そのときかな」
「………………………………………………………」
 妹が急に険しい顔になった。何があったんだ? なんかぶつぶつ言ってるけど
「兄貴、シャワー使うといいよ。冷蔵庫にアイス入れとくから」
「あ、うんサンキュー……」
 急に優しくなった妹が怖い。いやむしろキモイ。どういうことなのだろう。とりあえず指示通りに俺はシャワーを浴びることにした。
 入らないと風呂に無理やり入れられ体洗われかねん。俺は着替えをとり手早く脱いでシャワーを浴び始めた。

 シャワーから上がると居間にはだれもいなかった。まあいいかと思い冷蔵庫からアイスとスプーンをとって指定席のソファに座った。
「あ、兄貴。シャワー上がったの」
 どうやら妹は二階にいたようだった。気のせいか少し青いようにも見える。
「茜、風邪引いたのか? 顔が青いが」
「気にしないで兄貴」
 そういうといつものように俺の膝に座ってきた。慣れているので気にしない。むしろ体重がちょうどよくて安心する。
 というか妹って俺のこと嫌いなんだか好きなんだかいまいちよく分からないな。学校では凄く冷たいのに。
「そういえば俺の服は?」
「洗濯機に入れといてあるよ。汗臭いし。なにより……」
 後半はブツブツ言って上手く聞き取れなかった。なんだかな。今日は結構多いな。
「ありがとな。俺の服やってくれて」
 俺はぽむぽむと頭を軽くたたく。妹はなぜか真っ赤になった。
「あ、あああ兄貴! 恥ずかしいからやめて!」
「え、えっとーすまん」
 手を払い俺と向かい合う。正直近い。
「な、なんだよ……」
「兄貴! 役に立たないのに気安く私の頭を叩かないでよ! もう!」
 そう言うと少し悲しそうな顔をした。どうしたんだろう。本当に

151 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/01(木) 01:04:43 ID:DpzJhmAP
「失礼な! 力仕事ならできる!」
 俺はそのぐらいしか出来ない無能なのでもある。
「米10kgお願い」
「ごめんなさい茜様」
 俺はすぐにDOGEZAをした。この妹は本気でやらせるところがあるから恐ろしい。逃げたらさらに困ることになるから謝るしかない。
 というか確実に俺≪妹だな。兄としての面目丸つぶれですよね。はい。
「分かればよろしい。兄貴は私がいないと何も出来ない無能なんだから」
「それは酷いよ」
 妹の言葉に軽く涙したくなるがグッと堪えるしかない。
「そうかな? まあ兄貴にしか出来ないこともあるかもしれないから少しは救いようがあるかな」
 俺はどれだけ妹の中でヘタレなのだろう。少し、いやかなり気になる。
「兄貴いじり飽きたから自分の部屋に戻るね」
「珍しいこともあるね」
 いつもならもう少しいじっていくのだが今日はソワソワしてるし何かあったのか? あの小包になにかあるのかな。
「気分が乗らないの。兄貴……もし私が……いややっぱりなんでもない。兄さんには関係ないもんね」
「珍しいな。兄貴じゃなく兄さんって」
「私だってたまには気分変えたいことあるの」
 今日の妹はなんかおかしいな。いつもとは違う。いや基本は同じだけどどこかがズレている気がしてならない。
「兄貴って私がどんなに汚れても妹に思える?」
「え、当たり前だろう? 妹は妹なんだからさ」
「ありがと」
「いやいや茜おかしいってどうした?」
 妹は何をしたいのだろう。まるでもう会えないかのように言っているけど……まさか自殺か?
「早まるな。自殺はやめてくれよ」
「どうしてそう思うの?」
「いや情緒不安定に見えるからかな」
「そう、なんだ。でも元気になれたよ。ありがと兄貴!」
 いつもどおりの妹に見える。うん、これなら大丈夫だろう。でも少し目が濁ってるように見えるけど気のせいか?
「それじゃ部屋に戻るよ。あたあとでね兄貴」
「ああ、うん」
 深く聞けなかったがいったいどうなってるんだ。妹に何が訪れているんだろう。俺はただ考えるしかなかった。
 けれども俺は無能だから何も思いつくことが出来なかった。妹にやはり聞かないとダメだ。そのぐらいのことしか思いつかなかった。

152 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/01(木) 01:09:04 ID:DpzJhmAP
以上です。今回少し書く時間短かったので少し消化不良気味かもしれません。
誤字とか多いと思いまし。
とりあえず少しヤンデレと別ベクトルに進んでいる気がしますがきちんとヤンデレ話です!
徐々にヤンデレになっていくように書こうとしているのですがなかなか難しいものです。

お読みくださりありがとうございました。

153 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 01:09:41 ID:5V2KqWYM
GJ!

154 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 03:23:53 ID:kExsYJ/c
gj 楽しみにしてる。

155 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 08:18:45 ID:GbKN38ab
TANOSHIMI

156 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 17:50:55 ID:NP3rmDZL
GJ!!!!

次回も楽しみにしてます!
会長に注目するぜ!!

157 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/01(木) 19:45:37 ID:A9nOo7hF
GJです!こんばんわ。遅くなりましたが7話を
投稿します。よろしくお願いします。

158 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/01(木) 19:46:56 ID:A9nOo7hF
屋敷に戻り一度部屋へ行こうとすると声をかけられた。
「やあ、姉さんの新しい召使さんかな?」
そこには藤川さんの弟が立っていた。スラッとしたモデル体型に端正な顔立ち。
髪は金髪の天然パーマだった。名前は確か…
「はい、自分は里奈様の執事の遠野と申します」
「知ってるよ。僕は弟の藤川英(フジカワハナ)。以後お見知りおきを」
「かしこまりました、英様」
「英様って…。まあたまには良いかな。…君、気に入ったよ。彼によく似ているし」
「彼…ですか?」
「ゴメン、こっちの話。それよりも一つ質問してもいいかな?」
「はい」
藤川英は笑顔を崩さぬまま俺に言った。
「昨日は何処へ抜け出したの?」
「……質問の意味がよく分かりませんが」
…落ち着け。ボロを出すな。相手の出方を窺え。
「そうかい?深夜、君が塀をよじ登って出ていったところを見たんだけどな」
「…………」
「ふふっ、身構えなくて良いよ。別に誰かに言ったりしないから」
「…………」
「ただ気をつけてね。桃花はそんなに馬鹿じゃない。もしかしたら君の脱走にも
気がついているかも。それを言いたかっただけだから」
「……分かりました」
「君は彼とどこか似ている。だからズルいかもしれないけど、助言したかったんだ。後は自分で頑張ってね」
それだけ言うと藤川英は立ち去って行った。
「…味方…なのか?」
とにかくもう見付からないようにしないと。
多分藤川英は"危険だから今日は行くな"と言っている。しかし…
「…行かなきゃならないんでね」
約束、そしてライムを守らないと。
「………あれ?」
また違和感。確か昼に聞いたのは……赤い……社長が殺されて……。
…俺は何を考えている?しばらく俺はその場から動けなかった。



夜11時頃。自室で準備をする。勿論ライムに会いに行くためだ。
あれからずっと考えていたが、やはりライムに直接聞いた方が良いと思った。
「……大丈夫だ」
聞いたら…聞いたら何かが壊れそうな気がする。
でも大丈夫だ。
俺は彼女の全てが大好きなのだから。そう自分に言い聞かせる。
「…今日は別ルートで行こう」
とりあえずライムに会いに行かなければ。全てはそれからだ。
一応、藤川英の忠告も考慮に入れて今日は裏から行くことにした。

159 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/01(木) 19:48:00 ID:A9nOo7hF

深夜。静まり返った屋敷の裏口から裏庭へ出る。裏庭はあまり広くないが、
今日一カ所登れそうな場所を見つけた。その先は横道があるのでまず見付からないだろう。
「…………あった」
目的の塀を見つけ近づこうとすると
「こんな時間にどなたですか」
後ろから声をかけられた。瞬間、全速力で走る。
「逃げられると思っているのですか」
後ろから聞こえる冷たい声は明らかに桃花のものだった。
「はぁはぁ…!」
間違いなく捕まったらただじゃすまない。
裏口からのルートは諦めて正面突破に切り替える。
"里奈様を悲しませるようなことをしたら"
「はぁはぁ…!こんな時にっ!」
「排除します」
「っ!?」
間一髪だった。声がした瞬間に角を曲がる。
後ろを振り返るとまさに直前に走っていた場所に桃花の蹴りが牙をむいていた。
「有り得ないだろっ…!」
桃花のポテンシャルは神谷を大学の正門前で軽く退けた時に確認ずみだ。
まともにやり合っても、到底勝てる相手じゃない。
「はぁはぁはぁ…!」
とにかく逃げるしかない。ようやく門が見えてきた。後少しで逃げ切れる。
暗闇だったし、顔は見られていないはずだ。
「急げっ!」
塀を素早くよじ登り思い切りジャンプする。バランスを崩したが大丈夫。
そのまま振り返らず駆け出す。
「お待ち下さい遠野様っ!!」
「っ!?」
思わず急停止する。着地の音がしたので桃花とは20m程の差だった。
「…分かってたのか」
振り返らず応える。近付いてくる気配はない。
「私を誰だと思っていらっしゃるのですか」
「…有り得ないっつーの」
「…どうしても行かれるおつもりなのですか」
「ああ」
「何故…何故分かって下さらないのです」
「………」
「里奈様を満たして差し上げることが出来るのは貴方だけなのに…。私では……出来ないのに」
気のせいだろうか。桃花の声が震えているように聞こえた。
「…ゴメン」
最近謝ってばかりだな、俺。
「どうして私ではいけないんでしょうか。貴方が…貴方が羨ましいです」
「…桃花」

160 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/01(木) 19:50:20 ID:A9nOo7hF
振り返ると目の前に桃花がいた。
「捕まえました」
「なっ!?」
足払いをされ体勢を崩した俺を、桃花は俯せに押さえ込んだ。地面に倒される。
「ぐぁ!」
そしてそのまま両腕を背中の後ろで押さえられる。
「油断大敵です」
「くっ…!」
抵抗しようとするがびくともしない。
「私が忠告して差し上げたこと、忘れてはいませんよね」
「………排除するのか」
「いえ、そちらは未遂です。しかしここは既に屋敷の外ですね。なので」
変な音がした。木が折れるような音。その瞬間
「っ!?ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
無意識に叫んでいた。意識が跳びそうなほど激痛が走る。
右腕を見ると普段とは逆に曲がっていた。
「申したはずです。この屋敷から逃げ出そうとお考えなら、腕の一本や二本は覚悟してください、と」
「ぐぁぁぁぁあ!!ぐぅぅぅう!!」
「さて」
桃花はおもむろに懐からナイフを取り出した。
「っ!!」
今度は左腕。必死に庇おうとするが右腕は折れているため使えない。
「ああ、貴方を刺すわけではありませんよ」
「えっ?」
じゃあなんでナイフなんか出す必要がある。
「これは里奈様の"特別"を傷付けた私への罰です」
そう言うと桃花は自分の右腕にナイフを刺した。何度も、何度繰り返す。
「……あ」
止めるべきなのに痛みと震えで声が出ない。
無表情で自分の腕を刺し続ける桃花を見て純粋に思った。

狂ってる。

「何をしているの!!」
桃花の動きが止まった。門の前にはいつの間にか藤川さんが立っていた。
「里奈、様」
「…ふ、藤川さん?」
藤川さんは門の横にある受話器で誰かを呼んでいた。
「…ええ、怪我人よ!今すぐ来なさい!」



ここは屋敷の医務室。医務室がある屋敷自体初めて見たが、
ここには常に医者がいると聞いてさらに驚いた。
「とりあえず固定したから。痛み止めも飲んだし、後は絶対安静だからね」
「…はい」
「じゃあ桃花さんの方診てくるから。お嬢様、後はよろしくお願いします」
「ありがとう、黒川」
黒川と呼ばれた医者は隣の部屋へ去って行った。ここには俺と藤川さんの二人しかいない。
「…痛む?」
「まあ…。でもマシになったかな」
俺の右腕はギプスで固定されていた。
「…逃げようと……したんだね」
「………」
「…どこに行くつもりだったの?」
「……ライムのところです。今からでも、行かないと」
俺は立ち上がる。約束したのだから。

161 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/01(木) 19:51:19 ID:A9nOo7hF
「…そっか」
「…すいません」
「何で謝るの?…行きたいなら行けば?」
意外な答えだった。藤川さんを見ると目には涙がたまっていたが、それでも微笑んでいた。
「…良いんですか?」
「アタシね、気付いたの。今まではね、亙を奴隷みたいにしてアタシの側に置けば、
いつか亙はアタシだけ見てくれるようになるって…そう思ってた」
「………」
「でも実際は逆だった。それにね、アタシが望んでたのは…こんなのじゃない。
もっと普通に…普通に…恋…人…みたいに…」
「…っ」
藤川さんは泣いていた。泣き声を上げず静かに。
「…だからね、もうおしまい」
涙を流しながら笑う藤川さん。俺は少しでも彼女の気持ちを考えたことがあったんだろうか。
「…ふじ……里奈」
「…えっ?」
藤川さん…いや、里奈がこっちを向く。
「…ありがとう。俺、里奈のこと全然分かろうとしてなかった。ゴメン」
「……変な人」
俺は純粋に嬉しかった。
里奈の気持ちは受け取れないけど、それでもただ嬉しかったんだと思う。



里奈が車と運転手を用意してくれたので、それでライムのマンションまで行くことにした。
「帰りはこれで連絡して。迎えをよこすわ」
奪われた俺の携帯電話を渡される。
「勝手にアタシのアドレス登録しておいたけど、良いわよね?」
「ああ。…色々ありがとな」
「とりあえず亙が帰って来るまでに荷物をまとめておくわ。まあ拉致してきたから、服と財布くらいしかないけどね」
時刻は既に午前2時過ぎ。早くしないとライムが不安がる。ただでさえ大変な時期なんだ。
俺が側にいてやらないと。
「わ、亙」
車に乗り込む俺に里奈が声をかける。
「ん?どうした?」
「……ううん、何でもない。気をつけてね」
「おう。じゃあな」
車は夜の闇に消えていった。



「…行っちゃったか」
屋敷の門の前でアタシは一人呟く。
「さて、準備しなきゃね」

162 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/01(木) 19:55:53 ID:A9nOo7hF
今回はここまでです。読んでくださった方、ありがとうございました!
次ももうすぐ出来るのでそうしたら投稿します。投稿終了します。

163 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 20:03:38 ID:zKvdezRp
GJ!きみわたktkr

次回激しく修羅場の予感

164 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 20:03:40 ID:gnWvHB/D
gj

楽しみにしてます

165 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 20:03:42 ID:0EzRcImY
GJ!
だんだん面白くなってくるね
続き期待してます♪

166 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 20:51:42 ID:NaBNGe+q
GJ! 

167 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 21:02:18 ID:8FIPy7sp
はで メイン 目立つ 濃い

168 :名無しさん@ピンキー:2010/07/01(木) 21:15:58 ID:8uK9KLqz
GJです!

きみとわたるは自分的にはかなりツボにハマってるので更新楽しみにしてました。今回も楽しかったです。

169 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 18:33:50 ID:qhGG1Fd/
wikiの題名の無い長編その十四の1話がだけが消えてるのと長編その十六と十七の1話リンクが一緒
wiki弄ったことないので誰か修正してくれないかな

170 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 19:24:00 ID:xWd2n23z
今回初めて書いてみようと思って作ってみました
駄目作な上に文章力もないのでどうしようもないです
批評やアドバイスも受け止めるつもりです
では勝手ながらあげさせてもらいたいと思います

171 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 19:26:47 ID:xWd2n23z
「あれ?ここはどこだ?」
今よくわからない場所にいる男の名前は中上雄介
高校を出た後、フリーターとして汗水垂らす生活を送っている
重労働というわけではないが人の数倍汗かきなため服などはいつもグチョグチョになる
「しかしまぁ・・・・・・・暗いな」
そう今いるところは漆黒の闇なのである
自分の体すら見えない闇の中にただ一人の声が反響する
「俺はどうしてここに・・・?」
まずは何をしようとしていたかを思い出す
「たしか・・・バイトから帰る途中で・・・それで何だっけ?」
それから何度も思考を巡らすが思い出せずに挙句の果てには
「あー考えるのがめんどくさくなってきた」
この男はかなりひどいめんどくさがりとして定評があるほどである
「ともかく・・・・・・はら減った」
いったいあれからどれくらい食ってないんだ・・・?
と呑気なことを考えていると一際大きい音が鳴り響いた
「なっ何だ?」
そして金属音がした後かなり眩しい光が差し込んで・・・
「立て」
そう一言屈強な男らしきやつが言い放った
ちょっと待てよ・・・
「俺って拉致されたのか?」
そして考え出そうとしたらいきなり何かで殴られた
「ぐふっ?!」
殴られた瞬間鈍い光を放つものが見えたがそれを知覚する前に壁に衝突し意識が途切れていった・・・
「こんなひ弱なやつのどこがいいと・・・・・」
そして雄介は男に担がれそのままその場所を後にした




172 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 19:28:22 ID:xWd2n23z
「んっ・・・こっここは・・・どこだ?」
雄介が気づいたときにはなにやら白い部屋だった
だがただ白いわけではなく
部屋全体が白しか『存在』しなかったのだ
その中で雄介とベットだけが浮いた状況だった
「まったく・・・・・・とんだ災難だ」
とため息をつきながら言った瞬間
「気がついたかしら」
と白い空間から白とは間逆の漆黒の服をまとった人が現れた


173 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 19:29:54 ID:xWd2n23z
「あんた・・・・・・誰だ?」
「いきなりそれはひどいと思うわよ」
とよく見たらかなりの美女である
少なくとも雄介がいままで見てきた中では群を抜いていた
と観察をしていると美女は一言
「見すぎ」
と『何か』で殴ってきた
「あがっ!?」
人とは思えぬほどの怪力の上になにやら生身なのか?と思えるほどの硬さである
そうして悶えていると美女は言い放った
「まったく・・・あなたの命はすぐに奪えるのよ?」
といいながら『何かを』見せながら近寄ってきた
その正体は・・・・・・
「あぁこれ?生まれたときから使えるのよ」
と言って綺麗な腕に戻した
「お前・・・何者だ・・・?」
それは見た目ならおそらく棍棒だろう
だが普通の棍棒ではなく突起物のついたほうであるが
「ほかにもこういうこともできるわよ」
と無視しながら鋭利な刃物のようなものに変えた
「この能力のおかげでいろいろと失ったわ・・・何もかもね」
と少し悲しそうな顔をしながら元に戻した
その間に雄介はいろいろと考えていた
俺はこんな女にあったことはない・・・だが認識がなければこんなこともしないだろう
しかしいったいどこで?
とりあえず探りを入れるところから入ってみた
「お前の名前は何なんだ?」
とダメージの残る腹を押さえながら聞いてみた
そうするとすんなりと答えは返ってきた
「覚えてないのは本当なのね・・・・・私の名前は聖城美姫(せいじょうみき)よ」
「せいじょう・・・みき?」
まったくもって聞いたことがない名前である
おそらくどこかの貴族なのだろうがわからないものは仕方ない
「残念ながら聞いたことないな」
そう言いながら起き上がろうとして
「がぁっ!」
顔を思い切り殴られた
「勝手に動いちゃだめでしょ?・・・でも覚えられてないのか・・・」
と言って近づいてきた
雄介というともはや身体的にも精神的にもボロボロであった
体は頑丈なほうではあるがさすがにバイト帰りのこともありいつ倒れてもおかしくない状況だった


174 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 19:30:45 ID:xWd2n23z
「がっ・・・がはっ!」
そして吐血をした後聖城をにらみつけた
「この・・・怪物め・・・!」
そして殴りかかろうとするが鞭のような物で足を引っ掛けられそのまま前のめりに倒れた
「まだ元気あるのね・・・・・・これも遺伝子かしら」
と言ってマウントポジションをとった
この状況ではおそらく逃げるのは困難だろう
更に化け物相手ならなおさらである
「何が・・・目的だ・・・」
息も絶え絶えに聞いてみると
「もちろんあなたを私のものにするためよ?」
と当然のごとく言ってのけた
「ふざ・・・・けるなっ!」
と身じろぎしたがまったく力が出ない
もはや体は限界を迎えていた
「そんなに暴れないの」
と頬を引っ叩いてきた
だが拳で殴られるよりも威力があり意識が飛びかけた
「いい?これからあなたは私の奴隷として生きてなんでも私の言うことを聞くの、そして子供もいっぱい作って世界を私たちだけの世界に変えるの、わかった?」
と耳に囁かれた
それはまさに悪魔の囁きであろう
だが雄介はもはや返事することもままならない体でなんとか否定しようとした
「言わせないわよ?」
と口を口で塞がれた
「んっ・・・・・っはぁはぁ・・・・・・っんん・・・」
とディープキスをしてきて何分経っただろうか
聖城のほうは頬を赤らめ息も上がっていた
雄介のほうは呼吸がまともにできなかったため失神してしまった
「もうこれからなのに・・・・でもこれで私のものよ・・・・念願のものが・・・・・ふふふっ」
ともう一度口付けをして雄介をベットまで運んだ

175 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 19:32:24 ID:xWd2n23z
なんかまじで駄目だなこりゃ・・・・・・
というかヤンデレになってるか不安

176 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 20:08:51 ID:iKho077X
>>175
続きが気になる程度には面白いよ

177 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 21:58:59 ID:M5va8FTP
>>175
保管庫にもこれヤンデレか?って短編あるからね

とにかくGJ

178 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 22:15:42 ID:w0ip7CL8
兵器の擬人化イラストを見たんですが、
M18A1クレイモア(地雷)がヤンデレっぽいジト目レイプ目でした。

ヤンデレとは地雷なのですか?

179 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 22:46:57 ID:kfkXh4pA
いろんな意味でな

180 :名無しさん@ピンキー:2010/07/02(金) 22:58:13 ID:xN95rqBQ
>>175
GJ面白いよ!続き待ってます

181 : ◆BaopYMYofQ :2010/07/03(土) 00:02:51 ID:LPHM4lRW
お久しぶりです、投下します

182 :赤と緑と黒の話 第三話 ◆BaopYMYofQ :2010/07/03(土) 00:13:18 ID:J2m6B0rY
「私、お父さんに犯されたことがあるの」

その一言の意味を、理解するのに数秒を要した。

四年前へと話は遡る。

湊は幼い頃から容姿端麗で、発育も早く、ある意味歳不相応に成長していた。
中学に上がってすぐに多くの男子生徒たちの視線が湊に集まり、女子生徒の友人も多くはないがそれなりにいた。
だが至って普通の、一人の子供にすぎなかったのだ。仮にもしこのまま平穏に過ごせていれば、湊は間違いなく幸せだっただろう。
湊の母が仕事で出張し、一晩家にいなかった日の夜。湊はすでに就寝しており、自室の扉が開かれ、誰かが忍び寄って来るのに気付くはずもなかった。
掛け布団をそっと剥ぎ取られ、寝間着のボタンを上から一つずつ外されている最中、湊はようやく目を醒ました。
最初は何をされてるのかわからなかった。だが湊は一応は中学一年なりに、そういった知識は持ってはいた。
故に、男の手が自分の乳房にかけられた時、自分がどういう状況に置かれているのかを理解した。そしてひとつの結論にたどり着く。この家には私ともう一人、お父さんしかいない、と。

湊は自らの腹部に、制服ごしに両手を当て、なぞる。

「"ここ"にね、父さんのものが何度も、数えきれないくらい…嫌だって言っても、やめてくれた事は一度もなかった」

湊は言う。何より辛かったのは、信じていた相手、すなわち父親に蹂躙されたことだと。
父親による凌辱は、一度では済まなかった。隙を突いては何度も身体を弄ばれ、何度も胎内に注がれた。
湊の父親は、一切の避妊行為をとらなかったのだ。
ほどなくして湊は、胎内に命を授かる。誰にも望まれずして宿ったその命に、当然ながら湊は嫌悪感…いや、もはや言葉に表しがたいマイナスの感情を抱いた。
しかしそれを、誰にも相談できずにいた。悪阻も次第に酷くなり、隠し切れなくなってようやく母親は、湊の妊娠を察したのだ。

「でもね、お母さんは私を心配してはくれなかったよ。むしろ、お父さんの"愛"を私が一身に受けていたと解釈してた」

まもなく湊は医療機関で堕胎手術を受けさせられる。母親は医者の、「誰の仔だ」という質問に対し「男遊びの報いだ」と答えた。
この時点で、湊はおそらく世界でただ一人、自分しか存在していないかのような強い虚無感を抱き始める。誰ひとりとして、信ずるに値しないからだ。
湊は自分の身体を「汚らわしい」と思い始め、白い肌が赤くなるまで身体を洗い、何度も人目から逃げて嘔吐もした。
そんな湊にも、救いの手は差し延べられた。それが、中学二年で出会ったとある男子生徒である。

「あの人は私の事を綺麗だ、って言ってくれた。こんな汚い私を、好きになってくれたの」

そして湊はその男子生徒と付き合い始める。身体の繋がりはなく、友達以上恋人未満と言えなくもない関係だった。
ただそれでも、辛いことを相談し、親身になってくれる。それだけで湊は充分幸せだった。
だが、その幸せは長くは続かなかった。

男子生徒は校内でもそれなりに人気があった。しかし対して湊は、虐待に遭って以来人を避けるようになっており、徐々に校内での印象も悪くなる一方。
故に、"相応しくない"と湊を妬む女子生徒は多くはないが、存在していた。
校内に噂が流される。湊が以前、堕胎手術を受けた、という噂が。
男遊びをして出来た子を、ゴミのように棄てたのだと、人を介する度に噂は悪質さを増した。
噂を知った男子生徒は湊に対して、掌を返したように吐き捨てる。嘘つき。騙しやがって。汚らわしい女。その言葉の痛みは湊にとっては、ナイフで腹をえぐる、という例えすら生ぬるいほどだった。
実の父親による、性的虐待。卑劣で、残忍で、この世のどんな罪よりも重い(と俺は思っている)行為。
加えて、信頼していた相手からの拒絶、裏切り。
身体も、心も深く傷つけられた筈。表情にこそ出さないが、傷は癒えたわけではあるまい。

「暗い所に独りでいるとね…さっきみたいに"思い出す"の」

それはいわゆるトラウマ、という物なのだろうか。心の傷は簡単には癒えない。何年経とうと、刻み付けられた恐怖、苦しみは突然に襲い掛かる。

183 :赤と緑と黒の話 第三話 ◆BaopYMYofQ :2010/07/03(土) 00:17:07 ID:J2m6B0rY
「ごめんね、がっかりした?」
「…何?」
「私の身体、汚れてるから…先生だって、嫌だよね」

果たして性的虐待を受けた経験がある人間は皆、自分を"汚い"と卑下するのだろうか?
今の湊にはいつもの快活さは今は微塵もない。声のトーンは低く、視線も伏しがちになっている。嫌われる事を恐れているのだと、一目で感じとれた。
だが俺は湊が思うほど、湊に対してマイナスのイメージを抱いてはいない。何故なら、湊の理屈なら俺は湊以上に汚れているからだ。
実の姉と愛し合った過去。それは俺の記憶からは一生消えず、その事実もずっと残りつづける。湊は望んで汚れた訳ではない。しかし俺は、自ら望んで"堕ちた"のだ。
それを抜きにしても、俺は湊を決して"汚い"と罵ることはしないが。ただ、解らない事がひとつだけ残っていた。

「どうして、俺なんだ」
「…?」
「俺は教師で、しかも生徒に一方的にキスした、ろくでもない男だぞ」

言うなれば湊は、俺に対して恋愛感情を抱いているのではなく、子供が親に甘えるようなレベルの感情を抱いているのではないか?
そういった疑念が、頭の中を交錯した。

「………言ったよね。先生だけは私に優しくしてくれたから、って」
「そんなの、教師として当たり前だ」
「ううん。先生はね、いつも正直。誰に対しても、言いたいことを言う。ずっと見てたからわかるよ。
先生の優しさは上辺だけ、言葉だけの優しさなんかじゃない。だから、キスされても嫌じゃなかった。むしろ、嬉しかったよ。
私の事を心から求めてくれたんだ、って思えたから」

都合のいい解釈。だが、そうでもしなければ堪えられなかったのかもしれない。
なぜ、信じられるのか。裏切られ、傷ついてもなお、信じることをやめない?

「湊、覚えておけ」
「え……きゃっ」
俺は湊を、ほんの少し乱暴に(と言っても少し雑に、というほどに)畳の上に押し倒した。

「男ってのはこういう生き物なんだ」

お前の父親も同様にな、とは流石に言葉には出さなかったが。

「んっ……」

強引に唇を奪い、それからブラウスのボタンに指をかけ、わざとらしくボタンを二つほどちぎってみた。

………それでも湊は、身じろぎひとつしない。

「…怖くないのか、俺が」
「うん。だって、これからいっぱい愛してくれるんでしょ?」

普通、嫌がるんじゃないのか? 少なくとも俺は、そういうリアクションを期待していたのに。
嫌がってくれれば、それでよかった。そこから、湊の想いを全否定することができたから。
なのに湊は、まるで玩具の箱を前にわくわくしている子供のような表情を見せる。
黒い感情が、かすかに自分の中に湧き出るのがわかった。…いっそ、俺のものに−−−

「………ああ、その通りだ」

もう戻れない。そうして俺は…俺達は、身体を重ねた。

######

俺達にはたぶん、普通の恋人同士のように過ごす事はできないだろう。そんな事は始めからわかっていた。…わかっていたんだ。
なのに人とは得てして、最悪の結果から遠ざかりたいと願い、都合の良い想像、願望を抱くものだ。それは俺達とて例外ではない。
少なくとも俺は、湊とは普通の恋人同士のようでありたいと願っていた。互いに消えぬ傷を抱え、社会上あってはならない関係であったとしても。それほどに、好きになっていたんだ。

184 :赤と緑と黒の話 第三話 ◆BaopYMYofQ :2010/07/03(土) 00:19:05 ID:J2m6B0rY
毎週水曜日、俺達は茶道部室で愛し合うようになった。その蜜時は俺達にとって数少ない、互いを全力で求め合える瞬間だった。
最初の一回目こそ用意は怠ってしまったが、以後は必ず避妊具を財布に忍ばせておいた。湊は「先生の子供なら産んであげる」とは言っていたが(どこまで本気かは計りかねるが)、俺はそんなつもりはなかった。
身勝手だとは思う。けれど、湊は過去に妊娠し、堕胎した経験がある。そんな苦しみを、味合わせたくはなかったから。

水曜日。今日も、雨が降る。

底冷えし、いよいよ冬らしくなってきた12月の初頭に降る雨は、室内にいようと容赦なく身体を震えさせる。
"クラスメイトの一人が欠けた"1年5組は、いつになく静かで、暗く重苦しい空気だ。

「……みんな、とっくに知ってる者もいるかもしれないが。…水城が亡くなった」

ざわざわ、とわずかに教室内がうごめく。

「詳細は、現在警察が調査中だ。…一応、我が校としては学年閉鎖も検討されたが、明日以降も授業は普通に執り行われる」

現在、空席は三つある。ひとつは水城。残り二つは、桐島と秋津のものである。生徒には一切の詳細を明かさないよう言及されたが、俺は大雑把には詳細を把握していた。
当事者たる二人は今、自宅で休んでいる。誰もが、不自然に思うだろう。桐島と水城が友達以上の関係にあったことは、周知の事実。
その水城が殺され、桐島だけならまだしも秋津も欠席しているのだ。嫌が応でも、想像はされるだろう。男女関係のこじれ、だと。

「…俺からは以上だ。一時限目の英語は、自習とする。なにかあったら、副担任に伝えろ」

話を打ち切り、教室を後にする。
俺は今から、二人の自宅に向かい、詳しい話を聞きに行かなければならないのだ。表向きはあくまで見舞いだが。

最初に訪れたのは、桐島の自宅。親御さんが不在の中、ガキ一人で暮らすには大きめな一軒家の脇に車を停め、ドアの前まで来て呼び鈴を押してみた。
…返事はない。出られないのか? と思ったが、数秒の間をおいて、解錠される音がした。
ドアは開かれた。顔を出したのは、なんと秋津だった。
いや正確には、ショートヘアにくりっ、とした裸眼。疲れこそ見てとれるが、整ったその顔立ちは昨今のTVで頻繁にお目にかかるそれと同じだった。つまり、彼女は"仮装"を解いた姿で俺を迎えたのだ。
だが俺はけして、"秋山"とは呼ばない。そんな生徒は、"うちのクラスにはいない"からだ。

秋津は無言で、俺を住居内へと招き入れた。

「なぜお前がいる?」

秋津は何も言わない。かと思えば、スカートのポケットからメモ帳らしきものを取り出し、すらすらとペンを走らせる。

(真司くんが心配だから来たの)
「筆談? …秋津、お前まさか…声が…?」

秋津は俺の問いに、こくりと頷いた。

(今の真司くんはとても傷ついてる。今もベッドの中で、うなされてるわ)
「一体、お前たちの間に何があったんだよ」
(・・・全部、私のせいなの)


『うわぁぁぁぁぁぁぁっ!』

突然、叫び声が聞こえてきた。
秋津はハッ、として寝室らしき部屋へと駆け出す。俺も慌てて、秋津についていった。
秋津が扉を開けると、そこには普段の桐島とは大きく掛け離れた状態の桐島がいた。

「来るな、来るなぁ…っ! 僕が悪かった! だから…やめろぉ…っ!」

桐島は空を仰ぎ見て、訳のわからない事を口走る。その姿は誰が見ても、気が触れたように見えるだろう。
秋津はそんな桐島へと駆け寄り、優しく抱きしめようとする。だが桐島には現実の判別がつかなかったようで、乱暴に引き離され、秋津は床に転げた。
…よく見ると、秋津の手足には痣が少し、目につく。どうやら、こういった出来事は一度や二度ではないらしい?

185 :赤と緑と黒の話 第三話 ◆BaopYMYofQ :2010/07/03(土) 00:21:13 ID:J2m6B0rY
「秋津、桐島。…恨むなよ」

俺は暴れる桐島の手を力任せに押さえつける。必死の抵抗を試みてきたものの、隙を見て俺は膝蹴りを鳩尾に入れた。

「ぐっ……!?」

うめき声をあげ、桐島は気を失った。

「…さて、詳しい話を聞かせてもらうぞ、秋津」

這いつくばる秋津に手を差し延べ、身体を起こしてやる。秋津は抗議と疑念の混じった視線を向けてきたが、無視して部屋を出た。

ひとまずリビングで落ち着いた俺は、秋津の入れてくれた紅茶を飲みながら、秋津の書いたメモに目を通していった。
秋津が桐島を好きで、水城から"奪い返そうとした"こと。
それを知り、水城が秋津を殺そうとやってきたこと。
そして、"のえる"という実の姉が、秋津を守る為に水城を殺したこと。
その結果秋津は声を失い、桐島は半狂乱状態になったこと。…すべて、繋がった。

「なぁ、秋津。お前は…いや、何でもない」

幸せなのか? と聞こうとしたが、やめた。だが秋津は俺の顔を見て、何を言いたかったのかを察したようで、新たに書き綴ったメモを差し出してきた。

(私には真司くんしかいないから。真司くんは私が守る)
(それは他人からしたら幸せとは程遠いかもしれない)
(でも、彼のためだけに生きる。それは私にとって、最高に幸せな事なの)

不思議と、微塵も辛い、苦しいといった風には見えなかった。
手足に痣はあれど、今の秋津の表情はまさに、幸せに満ちあふれているように見えた。

「そうかい…ま、俺にできる事があったら。何でも言ってくれ。…担任としてだけじゃない、俺個人としても、な」

果たしてこの二人の間に、その必要があるのかどうかはわからない。だが秋津はにこりと笑い、

(ありがとう)と、言った。

######

外に出てみると、いつの間にか雨が降り始めていた。それだけでなく、か暗雲が立ち込め、ゴロゴロと遥か彼方で轟く音もする。

「ははっ…雷雨かよ。傘なんか持ってきてねえって」

まあ構いやしない。どうせ車があるんだ。傘を差す必要など、殆どない。俺は脇に停めておいた車に乗り込んだ。雨が降っても慌てず、身体が濡れても特に急いだりせずに。

「やっぱ俺には、誰かを守るってのは無理みたいだよ。…姉さん」

今はもう何処かもわからない、かつての想い人に対して俺は呟いた。教職に就いて4年が経つが、こんなにも自身の無力さを痛感したのは初めてだった。
生徒一人、死なせてしまったこと。もしかしたら俺が特別、気に病みすぎているだけなのかも。それでも、胸は痛むのだ。
…こんなとき、湊ならなんて言ってくれるのかな? そんな淡い期待をしつつ俺は学校へ向けて車を走らせた。

学校に着いた頃には水曜の授業は全て終了しており、部活動が始まっている時間になっていた。
俺は職員室に荷物を置き、副校長へ簡単に口頭での説明を済ますと、すぐに茶道部室へ向かった。
さすがに湊は今日は帰ったのではないか、とは微塵も疑わなかった。何の抵抗もなく開いた茶道部室のドアが、俺の期待が無駄ではなかったと教えてくれた。

「おかえりなさい、刹那」

そう言って、可愛らしい笑顔で俺を迎えてくれたのは湊だ。
二人きりの時は名前で構わない、と言ったのは俺だ。知ってるだろう? 俺は堅苦しいのが苦手なんだ。
ただ今この瞬間だけは、名前で呼んで欲しくはなかった。少しばかりおセンチな気分だったから、嫌でも姉さんの事を思い出してしまう。それがまた、胸の奥の古傷をえぐられたみたいでたまらないのだ。

186 :赤と緑と黒の話 第三話 ◆BaopYMYofQ :2010/07/03(土) 00:23:38 ID:J2m6B0rY
「…ただいま湊。俺、お前に知っておいてほしい事があるんだ」
「…それは、辛いことなの?」
「今はそうでもないさ。ただ、知っておいてもらいたい。…それだけだ」

それから俺は湊に、俺と姉さんとの間にあった出来事を全て話した。
実の姉と愛し合い、引き離され、一時期は屍のようになり、うわ言のように姉さんの名前を呼んでいたことも、全部。
全てを話し終えてもなお、湊は一度たりとも目を背けなかった。それだけで、救われた気分だった。

「苦しかったんだね、今までずっと」
「…湊よりは遥かに楽だよ。俺は、好きで受け入れたんだから」
「私にもあるよ。好きで受け入れて、裏切られたこと。刹那は、好きで受け入れて…引き裂かれた。似た者同士だったんだね、私たち」
「ははっ…そうかもな」

外の雨は一向に止む気配を見せない。俺達はどちらともなく、互いに暖めあうように身をすり寄せた。

「ずーっと、こうしていられたらいいのになぁ」
「さすがに風邪引くぞ?」
「むー、そんな事言わないでよ。ロマンのかけらもないなぁ」
「安心しろ、手放す気なんてないから」
「あ………うん////」


俺達はきっと、普通の恋人同士のように過ごすことはできない。だけど、幸せにはなれる。この時はまだ、そう信じて疑わなかった。それ程までに、今が幸せだったから。
しかし俺は、決して忘れてはならなかった。俺達の関係が、どれだけアンバランスな位置にあるのかを。

全てが壊れ始めるのは、もう間も無い。

187 : ◆BaopYMYofQ :2010/07/03(土) 00:29:28 ID:J2m6B0rY
投下終了です。
今回は一段落つける感じの話です
このスレ的に、"純潔でない"ヒロインはどうか…と迷いましたが、純潔でないからこその心の闇を出せれば、と思いました。

188 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 00:34:43 ID:KwQAr7Yx
>>187
リアルタイムGJ!

心の闇を引き出せる。
確かにそうかもしれませんな。しかし個人的には……いえ、何でもありません。

いつかは私も何か書いてみたいものだ。

189 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 00:59:33 ID:juqkOX3C
うむむ、重いねえ…

GJを湊に捧げよう

190 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 10:47:06 ID:hHozi5u0
昨日駄目作を書いた175です
続きが気になると言ってくれるだけでものすごく嬉しいです
批判がすごいと思ってた分喜びもすごいです
そして一応題名が決まって次もできたのでやってみます


191 :非日常での日常:2010/07/03(土) 10:47:53 ID:hHozi5u0
拉致、監禁されてから数日
いや正確には半日かもしれないし一月経っているかもしれない
何せその景色が見えない上に飯の時間がかなりバラツキがある
日にちをわからせないための処置だろうがなぜそのようなことをするのだろうか
そして雄介は一人TVでよく見るような豪華な部屋で寝させられていた
「しかしまぁ・・・暇すぎる」
そう言って手首についている『金属』を鳴らした
「いっ・・・てぇな」
派手に動かすと内側についている針が刺さる仕組みになっている
「俺・・・・・ひどいことしてないよな?」
なんでこんなことに・・・と考えていると
「私を忘れてること自体がひどいことよ」
とまたどこからともなく漆黒を纏って現れた
「それはいいから早く帰りたい」
「それは無理な相談よ?」
とごく普通に話しながら会話していた
第三者から見ればおそらくカップルに見えるだろう
だが状況はかなり異質だが
「ここから逃げるなんてもってのほかなのよ?」
「俺は帰って早くFPSをやりたいんだよ」
雄介はそれなりのゲーマーでもある
特にFPSに関してはかなりの腕前を持っている
そしてその腕前は全国で5本の指に入る腕前でもある
ちなみに彼は主に軽機関銃を使うがスナイパーライフルもごく普通に扱う
「ゲームなんかよりもリアルのほうが面白いわよ」
「それはまっぴらごめんだ」
としかめっ面でいう聖城に対して雄介は無表情だった
「まぁ・・・私はあなたをいじめることが一番楽しいけど」
「どうも」
実に嫌な楽しみ方であると雄介は思った
「それよりもご飯にしましょう」
と言ってトレイを置いた
「今日もまたレトルトってか?」
「仕方ないじゃない、作ったことがないんだから」
今ここで少し聖城のことについて整理してみよう
髪は腰まできれいに伸びるストレートの白髪
瞳の色は右が赤の左が青
顔は綺麗に整っており10人中10人が美人だと答えるだろう
体は文字通りボンキュッボン・・・・・・かなり古いたとえだろうが
ともかくスタイルは恐ろしいほどいいのである
身長もかなりの長身でモデルをやったら簡単に一番になれるのでなかろうか
そんな美女の体があんなものに変形するなんて誰が想像つくだろうか?
おそらく普通なら考えられないだろう
そして今日もまたそれでいじられるのだろう
「じゃあ・・・・今日こそ犯してあげるわ」
「そうか・・・・だが断る!」
そうして聖城と雄介の攻防が始まった


192 :非日常での日常:2010/07/03(土) 10:49:21 ID:hHozi5u0
戦いが始まってから1時間
聖城をなんとか諦めさせた雄介は汗だくを通り越してもはや水を浴びた感じになっていた
毎回こんなことをしていたら干からびてしまう・・・
そんなことを息も絶え絶えに考えていると
「汗かいたからシャワー浴びてくるわ」
と言って聖城はそのままスッっと消えた
雄介はほっとしたが問題は山積みだった
ひとつは何と言ってもびしょ濡れの服と体だろう
これではかなり汗臭くなるに違いない・・・というか臭い
そしてもうひとつは
「手首血だらけじゃん・・・」
抵抗をしまくったおかげで棘が刺さりに刺さって腕は真っ赤になっていた
「しかも服もこのままっていやだなぁ・・・・・・」
上半身は少しの布切れしかなく下半身も短パン小僧みたくなっていた
その姿はまさに戦場から帰ってきたみたいになっていた
まぁある意味戦いだったわけだが・・・
そうして普通の生活をしていた頃を思い出していた
「あの時はこんなことになるなんて考えられなかったな」


193 :非日常での日常:2010/07/03(土) 10:50:01 ID:hHozi5u0

「おい雄介!サボらずにやれ!」
「はい・・・」
とだらだらしながらしている雄介に叱責している人物は
「まったく・・・お前の根性は腐っているな」
と見た目はかなり幼い気がしないでもないが上司なのである
更にはその上司が女だとはまさにどういうことだろうか
このロリ体型の上司の名前は浄財加絵(じょうざいかえ)というなんじゃそりゃという名前である
仕事をいつも完璧にこなす人なのだがなぜこのようなことを・・・力仕事関係のものをやっているのかと聞くと
「あたしは機械が苦手だから仕方なくやっているのだ!というより馬鹿にしているのか!?」
と体型と口調が合ってないので思わず笑ってしまうのだがこの人の蹴りはかなりやばいのである
「あーかったりぃ」
「・・・・・」
シュッ
「おがっ!?」
蹴るのがわからないのである
そしてその狙いはいつも正確であるうえに威力がそこらの男よりも強いという摩訶不思議
「これでもまだかったるいか?」
「イイエソンナコトハマッタクアリマセン」
「・・・・・」
ドゴォッ!
「あがぁっ!」
思いっきり溝を蹴られそのまま地べたに倒れた
「いつでも解雇できるんだぞ?それでもいいのか?」
「ご・・・・ごめんなさい」
こんなことはもはや日常の一環として他の皆には知られているのでおそらく問題はないだろう
「浄財さんこっちの荷物はどこに運びますか?」
「今そっちに行く」
と最後にわき腹を蹴ってその場を去った
雄介はというと
「あの・・・ロリ怪力女め・・・」
と死亡フラグを言ってその後は・・・誰でも想像出来るだろう
そんな毎日であるのでいつも帰りはボロボロになる
「あー・・・疲れた」
「疲れたというと余計疲れるぞ」
「誰のせいだと・・・・」
「何か言ったか?」
「・・・なんでもないです」
となぜか浄財と雄介は一緒に帰っていた
なぜかと言うと
「よし今日は彼女であるあたしの得意料理で楽しませてやろう」
これでも二人は付き合っているのである
出会いのきっかけは言わずともバイト先である
浄財は男以上の力を持っているので荷物はほとんど一人で運んでしまう
冷蔵庫なども家などから出したり入れたりする以外は一人で運んでしまう
そんな浄財の作る料理もすごいのか・・・と言う訳でもなくむしろ凄い
ちょっと具材さえあればびっくりするほどの料理を作ってしまうのである
その料理を食べることが雄介にとってはかなりの楽しみである
「おっ本当か?それだったら今日こそ・・・」
「誰がするか」
「そんなぁ・・・・」
この二人は未だに肉体関係を持っていないのである
理由は浄財曰く
「今のままが一番幸せだから」だそうだ
雄介には理解できなかったがそれもいいかと納得していた
そうして二人は自然と手をつないで家に帰った



194 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 10:52:51 ID:hHozi5u0
なにやら後に積んでしまいそうな予感・・・・
俺の想像力なんてこんなもんだなと実感している今日この頃である

195 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 10:56:51 ID:xoyva5AD
GJ


196 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 15:23:49 ID:JTQCm9m9
>>189
俺的にはいいと思うよ。
会話をもっと充実するといいと思うけど

197 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 15:37:19 ID:45v0y32z
GJ

198 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 15:39:24 ID:45v0y32z
>>195
>>196
⌒゚( ゚Д゚)゚⌒ サゲロ!!

199 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 17:09:44 ID:M07nsBDq


200 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 17:30:07 ID:vmb8+eEE
>>199〜〜〜(o_ _)ノ彡☆ポムポム

子供か……………WW〜

201 :名無しさん@ピンキー:2010/07/03(土) 22:57:45 ID:1Dqzu/6P
GJ!

>>200
荒らしの相手しちゃだめだww

あとくどいけど

■お約束
・sage進行でお願いします。

ってあるんだから気をつけようね。
それが理由で荒れる可能性もあるんだから荒らしと変わらないよ。

202 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:00:52 ID:i1zitTcv
こんばんは。7月4日日曜日、午前一時。
ヤンデレ家族を投下します。


203 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:02:33 ID:i1zitTcv
*****

「何が食べたい? 今日はお前の卒業祝いだから、なんでも奢ってやるぞ」
 住んでいる町にあっても普段はまず立ち寄ることのない、ファミレス。
 中学校を出て、家から中学校を結ぶ距離よりも長く歩き、私とお兄さんはそこにやって来た。

 お兄さんの言葉に甘えて、メニューに書かれてある値段を気にせず、やって来たウェイトレスの人に今食べたいものを注文した。
 ドリンクバーに、スパゲティカルボナーラに、サラダ。
 たったそれだけでいいのか、とお兄さんは言っていたけど、私にはこれぐらいの量で充分。
 お兄さんは、私の分まで食べるつもりでいるのか、あれもこれもと注文していた。
 これじゃ、まるでお祝いされてるのがお兄さんみたいじゃない。
 かと言って、私が負けん気を発揮するはずもなく、それぞれの注文は終わった。
 ウェイトレスが居なくなってから、お兄さんは立ち上がった。
「お前、何がいい? 飲み物入れてきてやるぞ」
 ウーロン茶、とだけ伝える。
 お兄さんが席から離れる。しばらく背中を目で追う。それから、空になった向かいの席を見る。
 見えるのはレストランの壁。不規則なパターンの模様をぼんやりと見つめる。
 
 そう。あの日はちょうどこうやって、お兄さんと二人きりで食事をした。
 お兄さんが病院を退院した帰り、二人で通り道にあったファミレスに寄った。
 その席で、葉月を振った、ってことを聞いた。
 意外でしかなかった。てっきりお兄さんは葉月と付き合うものだと思っていた。
 葉月は、同性の私から見てもレベルの高い女だ。
 出来る範囲の努力を重ねても同じレベルに到達できるかわからない、と私に感じさせた。
 葉月は外見がいい。それに、一時期一緒に登校するぐらい、お兄さんとも仲が良かった。
 だから、病室でお兄さんが葉月をベッドに押さえつけているのを見て、ああやっぱりって、納得できた。
 お兄さんはやっぱり葉月が好きなんだ。病院の中だってことを忘れるぐらい、葉月に夢中なんだ。

 けれど、真実は全くの逆だった。
 びっくりした。お兄さんが葉月を振っただなんて、信じられなかった。
 好きになれなかったから告白を断った、とお兄さんは言っていた。
 なに贅沢なこと言ってるの、馬鹿じゃない――と、あの時は咄嗟に言いそうになった。
 
 心のどこかで安堵のため息を吐いていたくせに。
 お兄さんは、まだ私の知っているお兄さんのままなんだと、構う女は私だけなんだと、思っていたくせに。
 あの時はわからなかったけど、今なら自分の気持ちの輪郭が掴める。
 私はお兄さんに変わって欲しくなかった。
 小さい頃みたいに、私だけを構ってくれる人のままで居て欲しかった。
 視線を、言葉を、気持ちを、差し伸べる手を、私だけに向けてくれる人であって欲しかった。
 そんな考えが、心の奥底には眠っていた。
 親に甘える子供に似た、ただの幼稚な独占欲だった。
 
 お兄さんを独占できたら――と心に問いかける。
 たちまち、顎の下あたりを甘い痺れに襲われる。何かに引っ掛かったみたいに息が吸いにくくなる。
 単純すぎる。たったこれだけのことで、幸せで満たされた気分になってしまうなんて。
 どれだけわがままで勝手なのよ。
 ついこの間まで、お兄ちゃんのオマケで家にいる人、って認識で見ていたくせに。
 心変わりが過ぎるのよ、あんたって女は。
 疑わしいったらありゃしない。

 あんた、本当にお兄さんのことが好きだと思ってんの?


204 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 01:04:28 ID:YlaKxk3K
紫煙

205 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:05:34 ID:i1zitTcv
*****

 どうも妹の様子がおかしい。
 いつもと違う。さっきから大人しすぎる。
 こっちから話しかけても、「そう」とか、「ええ」とか、短い返事しかしない。
 注文した品を食べ終わるまで、妹はずっとそのままの調子だった。
 まあ、たしかに食事しながらだらだら話し込んでいるのは、マナー違反と言えばマナー違反である。
 しかし、妹がそんなポリシーを持っているとは思えない。
 妹が弟と食事する時の様子を見ていれば、喋りはするし、身振り手振りのリアクションはする。
 マナー違反と聞くと、ずっと昔、もういつのものか思い出せないぐらい過去に読んだ漫画の内容が思い出される。
 内容は、食事中のルールについて説くものだった。いわゆる教育目的で書かれたもの。
 箸で食べ物を突き刺さない、自分の箸を用いて相手に食べさせない、机に肘をついて食べない、噛みながら喋らない、など。
 今でも、食事中に思い出され、態度を戒めさせる漫画である。
 今日の妹の態度は、あの漫画的には免許皆伝の出来であった。
 ふうむ。もしかしたらだが、弟と同席している時のマナー違反を自覚したのかもしれないな。
 気付かないうちにあの教育漫画を読んでいたのかもしれないし、今日卒業式を迎えたことで自分の態度を見つめ直したのかもしれない。
 それならそれで、別に構わないか。
 だったら俺は妹に合わせて大人しく食事するだけだ。

 いささか盛り上がりに欠けたまま、俺の分の料理まで無くなった。
 後は胃の動きが落ち着くまでここでゆっくりしていくだけである。
 ストローで紅茶をすする妹の顔を見る。特にすることが無かったからそうしただけである。
 というか、一緒に食事しに来ているんだから、向かいに座る相手を見ても構うまい。
 妹が俺の視線に気付き、半眼になる。
 俺を前にして自動的に嫌そうな顔を浮かべる機能は常時活動しているらしい。
「何、お兄さん」
「別になんでもない。……紅茶、美味いのかなって思っただけだ」
「美味しいわよ。ま、中学の友達から言わせると、ペットボトルに入って売られてる紅茶なんか紅茶じゃない、ってことらしいけど。
 でも私は紅茶の味に詳しくないし。こっちの紅茶の方が飲み慣れてるから好き」
「そりゃよかった。美味いならいいんだ、それで」
 ペットボトルで売られている紅茶は紅茶じゃない。
 カーモデルのキットにペイント済みボディを入れるなとか、あらかじめ細かく色分けされたキットは認めないとか、そういう考え方と同じだろうか。
 あれ、上から塗り直すのは気が引けるんだよなあ。
 そのまま組み立てるのにもいまいちなものも、たまにあるし。
 ちなみに俺は着色済みならそのまま活かす派。藍川はどんなキットに対してもサーフェイサーを吹く派である。


206 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:08:11 ID:i1zitTcv

「ねえ、お兄さん。一つ聞いても良い?」
「いいぞ。俺に答えられることなら、二つでも三つでも。遠慮するな」
「ありがと。じゃあ聞くけど……真面目に答えてね。
 私、お兄さんのことが好きなんだけど。
 今更こんなこと言って、お兄さんは私のこと、許してくれる?」

 妹の言葉が終わる。と同時に鳴ったベルの音に引かれて、俺はファミレスの入り口に目を向けた。
 女性が一人、来店していた。彼女の手に収まっているのは、ビニール袋。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「一人です。本を……いえ、壁際の席に座りたいのですが。それと、あまり人がいないところで」
「申し訳ございません。ただいま喫煙席しか空いておりません」
「ああ、それならそこで」
「では、ご案内いたします」
 そんなやりとりの後で、ウェイトレスと、担任の篤子女史に似た雰囲気を漂わせた女性は、視界に入らないところへ消えた。
 
 唐突に俺の耳が壊れた訳ではない。ウェイトレスと女性のやりとりは一字一句聞き漏らさなかった。
 俺の観察眼がなまったというわけでも、ない。
 さっきの女性が持っていた袋は、近所の本屋でもらえるビニール袋である。
 白地に緑色の文字が書かれてある袋は、この町ではあの本屋でしか使わない。
 そもそも、でかでかと本屋の名前が袋に刷られてあるから間違えようもない。
 うむ。やはり俺の目は鈍くも鋭くもなっていない。
 ということは、たった今テーブルを挟んだ向かい側に座っている少女は妹だ。
 もしも俺の目がおかしくなっていたら、妹と赤の他人の少女を見間違えた、と確信するところである。
 視覚と聴覚は平常通りであっても、俺の頭は混乱しっぱなし。
「なあ、妹よ。その質問の前提は何だったっけ。お前が俺のことを好き……だったか?」
 妹が頷く。視線は紅茶の入ったグラスに向いている。
 若干頬が紅くなっているように見えるのは、見間違えではないのだろうか。
 いっそのこと、今日見たものは全て幻なんだ、とでも言われた方が気が楽だ。


207 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:11:00 ID:i1zitTcv

 妹が俺を好き、ねえ。
 てっきり弟だけが好きで、俺のことは食玩に付いてくるラムネ程度の存在として捉えていると思っていたが。
 好きと言われたら、嬉しい。小憎らしい妹が相手であっても同じである。
 正直に言って、非常に現実感がなくて、疑わしく感じられる。
 だが、疑い続けてもこの現実がいつまでも終わらないので、疑問は放っておくことにする。

「で、えーと、なんだ。お前はラムネが好きなのだと、言いたいわけだな」
「は、ラムネ? ラムネじゃなくってお兄さんよ」
「ああすまん。それで、それが?」
「だから、私がそう言ったらお兄さんは私のこと、許してくれるのかなって」
 ああ、なるほど。
 俺がこんなに混乱してるのは、妹の質問が突拍子もないうえ、意味が分からなかったからだ。
 妹が俺のことを好き。そこまでは理解できる。
 続けて、好きだったら許してくれるか、と聞かれたもんだから理解不能になった。
「許すも何も、俺はお前に怒ったりしてないぞ」
「だって私、今まで散々辛くお兄さんにあたってきたじゃない。
 今更こんなこと言っても、お兄さんは許してくれないんじゃないか、って。
 都合の良いことを言って許してもらおうなんて、甘いんじゃないかな、って」
 そう言うと、また妹は俺から視線を逸らし、俯いた。
 まるで弟みたいな気のつかい方。妹は妹で、俺に対して気を遣いすぎだ。
 弟は俺に遠慮してる。伯母の一件が起こってからずっと。
 妹は俺が怒ってると勘違いしてる。これまでの自分の行いを省みて。
 どっちもどっちだ。俺のことなんか気にせずに、自分の好きにすればいいっていうのに。

 俯いた妹の頭を左手で撫でる。
 すると、上目遣いの瞳が俺へと向けられる。
「ちょ、っと……何? 何で撫でられてるの、私」
 俺は答えない。そのまま妹の髪のさわり心地を堪能する。
 ううん。こいつは落ち着く。
 そういえば、小さい頃の妹を泣き止ませるためによくこうしてやった。懐かしい。
「い、いつまで撫でるつもりなのよ……お兄さんの馬鹿」
 と言いつつも、妹は俺の手をはらう気配を見せない。
 それどころか、目を瞑り頬を紅くして、受け入れる体勢を維持したままだった。
 可愛いなこいつ。こんなに小さかったか? それに、俺に対して無防備すぎるんじゃないか。
 このまま隣の席に移って押し倒しても抵抗しなさそうな気がする。

 ――ふうむ。

 撫でる手を止める。妹はまだ目を開かない。
 妹の頬をつねって引っ張ってみることにした。うん、極上の柔らかさ。
 押し倒すわけがない。公衆の面前だし、そもそも妹相手にそんなことをするわけがない。
「ひょ? にゃにふるにょよ、ひきにゃひ!」
 今度はすぐに拒否反応があった。払われた左手を戻す。


208 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 01:11:53 ID:iTZc+8bd
当たる

209 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:12:49 ID:i1zitTcv

「人が真剣に聞いてるのに! どういうつもりよ!」
「今ので許すよ」
「はあ?」
「これまでお前が俺にやってきたこと、全部」
「今ので、って……お兄さんはそれでいいの? これまで、私にいっぱい馬鹿にされたのに。
 たったこれだけの仕返しで気が済むの?」
「ああ。これだけだ」
「どこまでお人好しなのよ。何されても無抵抗な男を、女は好きなんだって勘違いしてる?
 言っておくけど、そんな男、カモにされて捨てられるだけよ」
「でもお前は俺が好きなんだろ?」
 妹に右側の頬を張られた。
 仮に右腕がギブスから解放されていても反応できないぐらいの速度で。
「やっぱり真面目に聞いてないんじゃないの!」
「いいから聞け。台詞には続きがある」
 表情を固める。ちょっと怒っているように見せるため。
 妹は一瞬顔をしかめたが、聞く姿勢に移ってくれた。

「これだけの仕返しでいいのか、って言ったな」
「ええ、言ったわ」
「お前がこれまで俺にやってきたことは、俺にとってはその程度のことだった、ってわけだ。
 ちょっと頭を撫でるのと、一瞬頬をつねるのだけ。
 気に病むな。弟もそうだが、お前ら二人はどうも俺に気を遣いすぎてるところがある」
「で、でもでも」
「それに、だな。弟が俺に無礼な態度をとろうもんなら、張り倒すところだが――」
 兄貴っていうのも面倒くさいもんだ。
 我慢して、こんなこと言わなきゃいけないんだから。
 まあ、とっくに慣れっこだから、恥ずかしい台詞だって噛まずに言えてしまうんだけどな。
「お前が俺にやることは、どれも可愛いもんだ。
 遠慮するな。俺は抵抗しないって思って、堅く考えず、精神的に甘えてみろ。
 もちろん、全面的に甘えてくれても構わないけどな」 

 まるでお父さんみたい、と妹は言った。
 なんと不名誉な、あんな節操無しと一緒にするな、と言ってやりたかった。
 実の妹との間に子供を設けるなんて、俺は絶対に御免だ。
 どれだけ妹が可愛かろうと、手を出すなど兄貴失格というやつである。


210 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 01:13:30 ID:oba6P/os
支援

211 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:17:23 ID:i1zitTcv

 妹が食後のデザートのアイスクリームを食べた後、ファミレスを後にする。
 さて、この後は家に帰るだけなのだが、それをしてしまうともったいない気がする。
 だって、妹と二人きりで歩くなんていう珍しいイベント、今度はいつ発生するかわからない。
 二度と発生しない可能性だってもちろんある。むしろ、これまでの出来事を鑑みれば、そっちの方が可能性が高いだろう。
 そうだ。せっかくだから妹に卒業祝い――はさっきやったから、入学祝いをあげよう。
 これで口実はバッチリ。後は妹を誘うだけである。

「なあ、来月からお前、俺と同じ高校に通うことになるよな」
「うん、そうだけど。何回も言ってるじゃない」
「ならあれだ。兄としてはお前に高校で必要なものを買ってあげる必要がある。
 というわけで、これから買いに行くぞ」
「悪いけど、そういうのとっくに準備終わってるじゃない」
 言われてみればそうである。
 二週間ほど前から、妹の高校入学のための準備を家族で行ってきたのだ。
 だから理由としては弱いかもしれない。だが、ここで退くわけにはいかんのだ!
 決意を新たにし、妹を誘おうとしたときだった。
 妹が俺の手を握り、引っ張って歩き出した。
 俺の左腕と俺の胴体はがっちりくっついているので、引っ張られると身体まで一緒に動く。
「でも、そこまでお兄さんが言うからには準備してないものがあるわけね。
 一緒に行きましょ。ほら、早く早く」
「お、おう」
 妹が甘えてきてくれた。
 以前なら俺が説得を延々続けて、文句を言いながら渋々ついてきてくれるぐらいだったのに。
 ファミレスでの会話が、早くも実を結んだようである。

 妹は俺の手を握ったまま、人通りの少ない歩道をずんずんと前へ進んでいく。
 さっき妹は俺のことを、父――いや、父とはまったく別の、ごく一般的なお父さんみたいだと言った。
 ならば、お父さんの手を引いている今の妹は、娘というところだろうか。
 娘。連想。玲子ちゃん。
 玲子ちゃんは伯母と一緒に、祖母と両親の家族旅行について行ったのだろうか。
 俺だったらそのメンバーに混ざって旅行なんて行きたくない。伯母がいるから。
 だけど、玲子ちゃんだったら変な先入観を持っていないはずだから、旅行を楽しめるだろう。
 母だって、まさか九歳児を相手に妬いたりはすまい。
 先週俺の家にやってきた玲子ちゃんは何事もなく無事に帰っていったんだから、問題なしだ。
 土産を俺に持ってきてくれるなら、一人で家に来て貰いたい。
 伯母まで一緒だと、俺は顔も手も出せないからな。


212 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:20:44 ID:i1zitTcv

 ――とかなんとか考えてると。
「会ったりするんだ、これが」
「どうかしたの、お兄さん」
 どうかしてるとも、妹よ。
 なんていうかね、デパートの自動ドアを通過した途端に、藍川と一緒にいる玲子ちゃんがいるとか、
しかも入り口付近に居たから目がバッチリ合ったとか、奇妙な縁か、引力が働いているかのどちらかでしか考えられなくなる。
 もしそうだったら、この場合、誰と誰が引かれているんだろうか。
 俺と藍川? もしくは俺と玲子ちゃん? それか妹と藍川か? 妹と玲子ちゃんかも。
 目前の身長差アンド年の差あり過ぎペアと俺は、これまでに繋がりがある。
 しかし妹とは、どうだろうな。妹の顔を見る限りでは、藍川と玲子ちゃんを知っているようではなさそうだが。

 どうしようかね、この状況。
「あー、ジミーだ! ジミーが女の子と歩いてる! でーとだ!」
「へええ。ジミー君には彼女が居たのか。ふうん、そうか。よかったね」
 二人ともしっかり反応してるからスルーとかできないし。

 デートだデートだ、と玲子ちゃんは騒いでいる。
 藍川は大人しい。ただし、俺に向ける視線を除いては。
 睨んでいるとか、羨んでるとか、そういうのが一切無い熱意の籠もらない瞳。
 かといって冷たい訳でもない。
 どこかに違和感を覚えるのに、俺にはそれが何なのかがわからない。
「妬けるな、ジミー君」
「非常に薄っぺらくて嘘っぽいぞ、その台詞は」
「いやいや、これでも妬いているんだよ。異性と二人きりで買い物にでかける、なんてね」
 また、違和感。
 今度は藍川の言葉に、少しだけ感情が交じっていた。
 でもそれが一体何なのかがわからない。
 ボトルコーヒーに一滴だけミルクを垂らしたみたいに、あっさり飲み込まれて混じり合い、少しの変化ももたらさない。

「あっついなあ、なんでこんなに熱いんだろう。ねえ、ジミー?」
「さて、まだ春だっていうのに、どうしてだろうね。
 ちなみに玲子ちゃん、人生の先輩として言わせて貰うけど、熱いって言っても暑いって言っても涼しくはならないからね」
「熱くさせてる本人がなに言ってんの? 早くどっかいっちゃいなよ。熱いから」
「いいや、それはできない。暑さのあまり玲子ちゃんがその服を脱ぎ出して、脱ぎ終えるまでは」
「うわあ……そういうこと、ボクの前だけじゃなくてカノジョやお姉ちゃんの前でも言えるんだ、ジミーって」
「――は!?」
 シィット! やってしまった!
 この間、感情にまかせて玲子ちゃんに馬鹿なことを言って、澄子ちゃんの手で反省させられたばかりだというのに!

「あ、あのな、藍川」
「うん、ジミー君の言いたいことはわかっている。今すぐここに澄子を呼べばいいんだな」
「伝わってない! 頼むからやめてくれ!」
「しかしだな、今朝方澄子が言っていたんだ。そろそろ先輩が私に会いたがるころね、って」
「それ逆! あの子が俺にトラブルを持ち込みたいだけ! 俺怒られたくない!」
「怒られたくないなら発言を慎むべきだと思うのだが。
 まあ、そこまで言うのなら。反省会をやるのは私の家にしておけ、と澄子に頼んでやろう。
 よかったな。君の過ごし慣れた環境で反省会を行えるぞ。やったね」
「親指立ててんじゃねえよ! ちっとも良くないわ!」


213 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:23:16 ID:i1zitTcv

 妹を置き去りにして会話していることを、唐突に思い出した。
 左手首に圧迫感が無い。妹の手からいつのまにか解放されていたようだ。
 代わりに、疑わしいを通り越した、犯罪者を見る目が向けられていた。
 妹におそるおそる声をかけてみる。
「あ、あのな」
 妹が遠ざかる。声をかけただけで後退されてしまった。
 しまった、さっきのやりとりはなにも知らない妹からすれば、俺が変態みたいに見えていたかも。
 今日一日でせっかくここまで稼いできた妹の好感度ががっつり減ってしまったのではなかろうか。
「ご、誤解だぞ。俺はこの二人に何か言っても、直接何かしたりはしない」
「何かしそうになったことはあったが」
 黙れ藍川。今、俺の今後の人生がかかった説得をしているところなんだ。
 一歩踏み出す。すると、妹も後ろへ一歩下がる。
「そんな引かないでくれ。お前が心配してるようなこととかなにもないぞ。この二人と俺はなんでもないんだ」
「そうそう。ボクはただパンツ見られただけのヒガイシャだから、気にしないで」
 玲子ちゃんがさりげなく俺を追い詰める。
 いっそのこと妹の手を取ってこの場から逃げだそうか。
 なんて考えた瞬間だった。

 妹のまぶたがゆっくり閉じた。
 そして、しっかり見ていなければ気付かないぐらいの遅さで、身体が俺の方向へと傾いだ。
 二歩駆け寄る。倒れそうになっている妹の身体を抱いて支える。
「おい、どうした!」
 全体重を俺に預けたままの体勢で、妹は切れ切れに呟いた。
「お、にい、さん。その――」
「どうしたんだ。目眩がするのか、どっか痛いのか?」
「その子達、だれ、なの?」

 それきり、妹は黙り込んでしまった。
 俺は周りの目も気にせず妹に声をかけ続けた。
 藍川が近くの店員を呼んでくれるまで、ずっとそうしていた。
 医務室に連れて行くまでの間にも、医務室のベッドの上に運ばれても、妹は目を覚まさなかった。


214 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:25:18 ID:i1zitTcv
*****

 おそらく寝不足による過労ですね、とデパートの医務室の人は言った。
 寝不足。思い当たる節はたしかにあった。
 近頃は、お兄さんのことで悩んでいて、食事をまともにとれない、眠れないまま朝を迎える、ということが頻繁にあった。
 昨夜はしっかり睡眠をとりましたか、と聞かれても、わからないとしか答えられない。
 覚えていないんだ。お風呂に入って、布団に潜り込むところまでしか記憶にない。

 情けない。こんなことで倒れて、お兄さんに負担をかけてしまった。
 でも私が謝ったら、「気にするな、負担になんかなってない」なんて言うに違いない。
 お兄さんが、私に対してどれだけ甘いか、どれだけ優しくしてくれてるか、今日のことでわかった。
 おそらく、どんなことを頼んでもお兄さんは聞き入れてくれる。自分自身の良心に反しない限り。
 同じベッドで寝て、ってお願いしたら多分叶えてくれる。キスして、ってお願いしたら断る。
 そういう線引きをして接しているんじゃないかな。私に対して。

 倒れてしまった原因は寝不足に違いない。
 でも、倒れるスイッチを入れたのは、知らない女とお兄さんの会話。
 お兄さんの言葉と優しさに酔っていた時に、私を放って置いて女との会話を続けるお兄さんを見た。
 とてもじゃないけど、昨日今日知り合ったような関係の人間同士が交わす会話じゃなかった。
 葉月と花火ちゃん以外の女。私が全然知らない女。そんな女達と話すお兄さん。
 見ているだけで頭が痛くなった。声を荒げたくなった。
 気がついたら、私は倒れてて、お兄さんの腕で支えられてた。
 そしてまた目を瞑って、次に目を開けたら医務室のベッドの上に居た。

 お兄さんは目の届く範囲には居なかった。
 医務室の壁掛け時計は六時を差していた。
 食事をしたのが一時ぐらいだったから、デパートに着いた頃はだいたい二時ちょっと前。
 それからすぐに倒れたわけだから、四時間は眠っていたことになる。
 四時間はたしかに長い。お兄さんは私が起きるのを待ちきれなくなったのだろうか?
 ケイタイでお兄さんに電話をかけてみる。
 すると、着メロがすぐ近くから聞こえてきた。
 このタイミングで着メロが聞こえるってことは、すぐ近くにお兄さんのケイタイがある?
 発信を止めると、着メロも止まった。


215 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:27:21 ID:i1zitTcv

「よう、起きたのか。心配したぞ」
 お兄さんが白い仕切りの向こうからやってきた。
 手近にあったパイプ椅子を組み立てて、そこに座り込み、私と対面する。
 まず、ごめんなさい、と謝った。
 倒れた原因について、お兄さんは医務室の人に聞いて知っているはずだから言わない。
 寝不足になった理由は、悩みがあったから、とだけ伝える。
 お兄さんのことで悩んでいた、なんて言えない。
 どんな反応をされるか楽しみだから、言ってみたかったりするけれど。

「俺こそ悪かったよ。よく見てやってれば、お前が具合悪いことに気付いたはずだし。
 無理して連れてきて悪かったな」
「いいのよ。誘ったのはお兄さんだけど、それに乗ったのは私なんだから」
「それでも、だ。妹の異常に気付かないなんて、お前の保護者としてはダメダメだ」
「責任感が強いのね。
 ……じゃあ、一つ質問に答えてくれたら、お兄さんのダメっぷりを許してあげる、ってことにしようかしら」
 おうなんでも来い、と言ってお兄さんは腕を組んだ。
 本当はこの質問は、ファミレスでしようと思っていた。
 お兄さんは私を許してくれるのか、って質問の後で。
 許してくれるどころか、もっと甘えろと言われてしまったから、続けて問うことができなかった。
 でも今なら、お兄さんの目を見て問いかけられる。
 これまでのお兄さんの言葉を聞いていて、どんな答えが返ってくるかわかるけど、どうしても聞きたかった。

「お兄さんは、お兄さんは……私のこと、好き、なのかな」


216 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:30:26 ID:i1zitTcv

 すぐに返答されるとは最初から思っていなかった。
 お兄さんは毎回、大事な質問をされたら熟考する時間を置いて、答えてくれる。
 今回もそう。今頃お兄さんの頭の中ではいくつもの言葉が飛び交っているはず。
 ここでお兄さんの邪魔をしたら、ファミレスの時みたいに、ラムネとか、とんでもない答えが返ってくるんだろうか。
 悪戯心が働いた。制服の胸元のリボンを解いてみる。
 続いて布団をどけて、女の子座りをしてお兄さんと向かい合う。
 お兄さんは私の動きを見ていたけど、面白いリアクションをとってくれることはなかった。

 そのまま、一分か二分、時が経過する。
 これ、おかしくない? もしかしてお兄さん、固まっちゃってる?
「お兄さん? 答え、待ってるんだけど」
 はっ、とお兄さんが目を覚ます。頭をぶんぶんと振り、私と目を合わせた。
 大丈夫かな。ちょっとやり過ぎた?

「俺は、家族としてお前が好きだ」
 返答は、さっきまで固まっていた人とは思えないぐらいしっかりしていた。
 家族として、か。
 まあ、そんなものよね。
「お前が傷つくぐらいなら、俺がキャッチボールした方が気が楽だ」
 ……はあ?
「きゃっちぼーる? だ、大丈夫、お兄さん?」
 キャッチボールって、球を投げ合うあのキャッチボールのこと?
 それとも、何かの隠語?
「あの、もうちょっとわかりやすく言って欲しいんだけど」
 要求すると、お兄さんは逃げるみたいに立ち上がって、私を見た。
 人差し指を私の顔に向け、言いたくないのか、歯噛みしていた。
 やがて、決意が固まったのか、その口が開いた。

「俺はお前を大切に思ってる! 大好きだ!
 だけど勘違いするんじゃないぞ! 俺の義務だからやってるだけなんだからな!」


217 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:31:34 ID:i1zitTcv

 勢いのいい音と一緒に、医務室のドアが閉まった。お兄さんが出て行ったのだろう。
 まったく、あんな大声で言わなくてもいいじゃない。今の告白、お店の人に聞かれてたんじゃないかしら。
 告白。正真正銘の告白だった。
「ふふ、大好き、ですって。ふふっ……」
 私もお兄さんのこと、大好きよ。

 でもね、さっきの告白で、気付いてしまったの。
 お兄さんがあんなに顔を紅くして告白するのって、私にだけ。
 葉月に対しても、今日会った女に対しても、あんな顔はしない。
 それは、私が妹だから。
 妹に正直なことを言うとか、ましてや告白とか、お兄さんぐらいの歳の人には恥ずかしいことのはず。
 あのお兄さんの顔を、他の女にとられたくないなあ、なんて思っちゃった。
「ごめんねえ、お兄さん。告白、断っちゃって」
 恋人同士にはなれないわ。
 お兄さんは私のこと好きでも、妹と付き合うなんて嫌って言うだろうし。
 でも、お兄さんが私のこと、そんなに好きなら――ずっと一緒に居てあげる。もちろん、妹として。
 今なら、微笑むぐらいの余裕を持って、こう言える。

「駄目よ、お兄さん。私たちは兄妹なんだから、ね」

 目の前にお兄さんが居るつもりで声にしたから、医務室の外に居るお兄さんに聞こえたかもしれない。
 それでも構わない。これが私の気持ちだから――表面上のね。

 じゃあ、そろそろ帰ろうかしら。
 お兄ちゃんの待つ、私たち兄妹の家へ。
 気分が良いから、今日だけは私が晩ご飯を作ってあげるからね、お兄さん。


218 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 01:32:51 ID:i1zitTcv
以上で妹懇編は終わりです。
支援してくれた人、どうもありがとう。

次回から、新編に移行します。

219 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 01:35:23 ID:ROh3YHRJ
リアルタイムGJ!
妹にも腹違いの妹?に対してもシスコンなジミーを見るとなんだか安心する

220 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 01:37:40 ID:DosNmdkm
GJ!



妹がついにジミーに…………どきどきが止まらない!

221 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 01:38:28 ID:zEq/r3ze
GJ!!!

222 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 01:42:26 ID:V4UJ6HbL
キタ ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!妹デレ
玲子や藍川との絡みは新章に期待します。藍川はIF編のようになるかも?ジミー=兄は我等のヒーローだ!!!GJ×3

223 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 01:44:49 ID:i1zitTcv
おつかれー
皆がジミーを好きになっていきそうw

224 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 01:45:29 ID:NUYjRyM/
次のお話にドキドキワクワク・・・心臓がもちそうにない

225 : ◆KaE2HRhLms :2010/07/04(日) 02:04:06 ID:i1zitTcv
>>223
うわ、同じ日にIDが被ってる……

226 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 02:09:00 ID:pbPRZE3S
GJ!!!
ジミはいいやつだなw

227 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 02:31:24 ID:SoytNWj+
>>222
ガキは書き込むな

228 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 02:40:29 ID:S/mSm6ug
根拠のわからない突っ込みする前に、下げくらい覚えてから書き込んだほうがいいんでないか

ヤンデレ家族の投下乙です

229 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 02:41:36 ID:f6XwncRG
G_J! なあ、いもうとの誕生日が近いんだがなにをしてやればいいと思う?

230 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 03:04:04 ID:Hc3Njd5r
GJです!
兄貴格好よすぎる!
新章も楽しみです!

231 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 04:07:27 ID:aHyzYSd/
夏だな
って言うのも野暮か

232 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 06:42:53 ID:NcpVCmsh
まぁ、夏だからな

233 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 09:01:41 ID:hkTKi3ms
夏って誰よ!?

234 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 09:19:22 ID:h/jLyTUi
三日連続で書き込んでしまっているものです
とりあえずできたので投下します

235 :非日常の日常:2010/07/04(日) 09:20:46 ID:h/jLyTUi
「加絵・・・・・・」
かなり痛かった思い出でもあるがやはり楽しい思い出でもあった
それ故に今の状況をどうにかしなければと考える思いも強かった
「しかし・・・どうやって脱出するか?」
脱出するまでにはいろいろと問題が山積みである
その今の問題は
「この手錠・・・・なんだよな」
特殊な手錠を見ながらふと思った
「ここは日本か?というより・・・・・・」
「現実か?という問いならYESよ」
と聖城が花の香りを漂わせながら現れた
「お前・・・・・」
「どう?似合うかしら」
いつもと違う服の色に雄介は驚いた
漆黒の闇とは正反対の純白の服を身に纏っていた
その姿はまさに天使と呼べるだろう
なら漆黒を纏った姿は堕天使と呼ぶだろう
そうして唖然としていると聖城は頬を赤らめながら
「そんな熱い視線で見ないでよ・・・・・もしかして食べてみたい?」
と微笑しながら聞いてきた
「いや・・・・だが綺麗なのは確かだ」
と雄介は本当にびっくりしていた
だがよく見たら何か違和感を感じていた
そうよく教会で見るような・・・・・・
「なぜウェディングドレスなんかを?」
「私が着てはだめかしら?」
「そうではないが・・・・・・・・」
雄介は少し警戒して身構えた
「別に殴ったりしないから身構えなくてもいいわよ」
とムスッとした顔で近づいてきた
「俺の予想が外れることを祈るが・・・・・・・結婚式とかわけわからないことを意識してないよな?」
そう聞きながら外れることを祈った
しかし
「あらよくわかったわね、ご褒美として妊娠してあげるわ」
「黙れこの痴女!」
頬を真っ赤にして笑っていた
だがその目はどこか濁っているようにも思えた
「別にいいじゃない、それともまさか・・・・・」
といきなり真顔になり雄介は恐怖を覚えた
「なっ・・・・何だ?」
と恐る恐る聞くと
「私よりも男の人のほうがいい?」
「・・・・・・・・・・・・はっ?」
「女の体よりも男のケツのほうがいいのかしら?目の前にこんなにあなたを・・・・・・雄介を思っている人がいるのに男のほうがいいの?もしそうならこの世の男なんか全員殺して男なんかに興味を持たないように調教してあげるわ」
そうしてブツブツいいながらゆっくりと手を伸ばし
「!?」
腕を鞭のようにし体を縛り付けて一言
「誰にも渡さない」
そういった後ものすごい力で縛り上げてきた
「ぐぁあああ!!!!」
体中が音を立てて軋み雄介の絶叫がこだまする
「誰にも・・・・・・・・誰にも渡しはしないわ」
そうしていきなり離し雄介は解放された
そして闇の中へ意識を沈めていった
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・

236 :非日常の日常:2010/07/04(日) 09:22:31 ID:h/jLyTUi

その同時刻
雄介の部屋に一人泣きながら雄介の名を呟いてる女がいた
「ゆう・・・・・ぐすっ・・・・すけぇ・・・・えぐっ・・・・・」
浄財は一人名前を呟き続け泣き続けていた
もはや声は枯れたが涙だけは枯れなかった
「どこに・・・・行ったんだよぉ・・・・」
そしてずっと泣いていたらふと真顔になり
「・・・・・・・・久しぶりにあれを使うか」
とどす黒いオーラを身に纏わせて不敵にわらった
「ふふふっ・・・・・・絶対に見つけるからな・・・・・・」
そうして笑いながら雄介の部屋を後にした


237 :非日常の日常:2010/07/04(日) 09:24:40 ID:h/jLyTUi

「うぅ・・・・骨の節々が痛い・・・・」
「ごめんなさいね、これじゃ妻として失格だわ」
「結婚すらしてないしするつもりもない」
「いいじゃないの、こんな美人と毎日イチャイチャできるのよ?」
多分一方的だろうな・・・と言いかけてやめておいた
あまりにも否定しすぎると先ほどのようなことになりかけない
しかしなぜ俺なんだろうか?という疑問を聞いてみることにしてみた
「なぁ」
「何かしら?ア・ナ・タ」
「だめだこりゃ・・・・」
一瞬で聞く気が削がれたためやめた
「はぁ・・・・加絵」
と思わず呟いた瞬間
「!!?」
物凄い威圧感ともダークフォースとも取れるものがすぐ隣から感じられた
「せっせい・・・じょう?」
チラッと見た瞬間震え上がった
なんと本当に黒いのが体中から出てるではないか
そして体の半分以上が原型から大きくかけ離れていた
「おっおま「誰その女」あっ・・・・それは」
目の光なんてとっくのとうに消えており底知れぬ闇になっていた
「誰なのよ?そいつはどこの雌猫?それとも泥棒猫?いえ・・・・・どこの寄生虫かしら?なんでそんな寄生虫の名前を呼ぶの?」
「私がそばにいるじゃないなんで?なんでなのよ?私よりもそんな寄生虫のほうがいいっていうの?あなたのためなら何でも捧げることもできるのに・・・なんで?そんなゴミはどうせあなたを捨てるに決まってるわよ?」
「そんなこともわからないの?」
そしてその体で上に乗っかってきた


238 :非日常の日常:2010/07/04(日) 09:25:09 ID:h/jLyTUi
「ぐぐぐ・・・・」
おそらく大きくなった上に腕なども重くしてあるのだろう
重さはおそらく軽く100キロは超えてるに違いない
「ねぇ・・・・・誰?」
顔の距離はもはや鼻と鼻が触れるほどに近かった
「どこにいるのか言ってよ・・・・・・ころすから」
「やらっ・・・・せ・・・・な・・・い」
重さによって呼吸ができない上にこの威圧感のせいで意識が朦朧としてきた
「・・・・・わかったわ」
そう言って雄介の体から降りた
「修羅」
そう言うとあの屈強な男らしきやつが現れた
「雄介に寄生しているゴミを殺処分してきて、そして塵も残らないぐらいに燃やしなさい」
「わかりました」
と抑揚のない声で返事した後消えた
雄介は頼りない意識で修羅と呼ばれるやつのことについて考えてみた
身長はおそらく175以上はあるだろうと思う
だがなぜらしきやつなのかというとその声にある
その声はどうも男の声とも女の声ともとれるのである、というかどちらの声も聞こえる
それ故でわからない上にパワースーツみたいなのをつけているのでどうしようもない
今はそれぐらいしか考えることができなかった
「さて・・・・と」
聖城は落ち着いたのか体を元に戻しながらこちらを見て言った
「すぐにそんな記憶忘れさせてあげる」
そして消えた
「・・・・・・・・俺はどうすれば」
そうして意識を手放した

239 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 09:26:25 ID:h/jLyTUi
更新されないからまさかと思えば最新50押すべきだったのね・・・・・
と初心者丸出しの俺

240 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 15:55:08 ID:NUYjRyM/
急に思いついた

自転車に乗っている
    ↓
  墓を通った
    ↓
後ろが急に重くなった
    ↓
止まって後ろを振り向くと・・・
    ↓
「ずっと見てたよ」と女の子が虚ろな目でこっちを見ていた
     

241 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 16:25:07 ID:hzawvr94
そりゃ違うやろw

242 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 17:22:33 ID:fZqhz4IH
他の作者様たち、GJです!日曜の夕方にこんばんわ。今回は8話を
投稿します。ちょっぴり病み少なめですが、よろしくお願いします。

243 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 17:24:15 ID:fZqhz4IH

車だと僅か20分程度でライムのマンションまで着いた。
運転手に礼を言って彼女の部屋へ急ぐ。
「待ってろよ」
部屋の前までたどり着き左手でインターホンを鳴らす。右腕はしばらく使えない。
「………?」
応答がない。もしかしたら何かあったのだろうか。嫌な汗が頬を伝う。
「まさか…」
嫌でも思い出してしまう。事務所の関係者が殺された。
犯人は近辺にいる可能性があって…。もう一度インターホンを押すが反応はない。
「…ライム!」
痺れを切らして扉を叩こうとした瞬間
「…わ、亙?」
扉が開き中からバスタオル姿のライムが出て来た。
「ライム!…良かった。…つーか何でそんな格好なんだ?」
「眠気覚ましにお風呂入ってたの。そしたら急に誰か来たから、亙だと思ってとりあえず出て来たんだ」
「そっか、悪いな…遅れちゃって」
「ううん、約束守ってくれて凄く嬉しい」
どうやら杞憂だったみたいだな。



「じゃあ仕事中に骨折しちゃったんだ」
「ああ、目茶苦茶痛かったけど事故だからな。仕方ないよ」
右腕のギプスについて聞かれたので答える。メイドに折られたなんて言ったら、
さらに混乱するから事故にした。…まあある意味自然災害的な要素あったし。
「そっか。まだ痛む?」
「痛み止め飲んだから今は平気だ。それよりいつまでバスタオルなんだ?」
ライムは俺の隣にいるが何故かずっとバスタオルのままだ。
「着替えるの面倒臭くなっちゃった。…それに出来るだけ長く、亙の側にいたいから」
頬を赤く染めながら言うライム。…くっ、我慢するんだ俺!目的を忘れるな!
「そ、そういえば聞きたいことがあるんだけど…」
「何?」
…聞かなければ。大丈夫。ライムを信じよう。
「今朝のニュースで…その…ライムの事務所の社長やマネージャーがさ…」
「…殺された事件?」
ドキッとする。ライムが知っているのは当然のことなのに。
「…そう。それで…」
「私も今朝警察から連絡があってね。そこで初めて知ったの。その後事情を話しに警察に行ったけど…。
私ずっと部屋にいたから何も知らなくて…。すぐに帰されちゃった」
ずっと部屋にいた?…昨日雨の中、何処かに行ったんじゃないのか?
何で…何であんなにも体中真っ赤で…。
「…亙、どうかしたの?」
ライムに声をかけられ我に返る。
「い、いや…何でもないんだ」
「……嘘」
「……っ」
ライムに見つめられる。お互いの気持ちが分かるから、だからこそ聞けない。
多分彼女は"聞いて欲しくない"と思っているから。

244 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 17:25:22 ID:fZqhz4IH
「…良いよ。何でも聞いて?」
「………ライムはさ」
「うん」
覚悟を、決める。
「…昨日、どこに行ってたんだ?」
「…昨日?」
「昨日、俺がライムとこの部屋の前で会った時さ、ライム、びしょ濡れだったよな?」
「………」
「…どこ、行ってたんだ?」
「……一日中亙を探してた」
「…俺を?」
「うん。…だって急にマネージャー辞めるなんて言われて、納得出来なかったから」
「…そうだったのか」
「でも途中から疲れちゃって。転んで痛かったし、ペンキ缶に突っ込むし、途中から雨降ってくるし…」
「……ペンキ缶?」
「…笑わないでよ?その…赤いペンキ缶の山に躓いて突っ込んじゃって…すごい恥ずかしかったんだから!」
…つまり何か?ライムは一日中俺を探してくれていただけで、事件には無関与。
ただの俺の、思い込み…。
「…ぷっ!あははははは!!」
「ちょ!?わ、笑わないでって言ったでしょ!?元はといえば急にいなくなった亙のせいなんだから!」
「わりぃわりぃ。安心したら気が緩んじゃってさ」
「安心って何よ?」
「俺はてっきりライムが事件に関係してるんじゃないかって、不安になってさ。本当馬鹿だったわ」
そう。要するに俺の妄想だった訳だ。
「…へぇ」
「でも良く考えたら、ライムがそんなことするはずないもんな」
「…うん」
「何か安心したらお腹空いちゃったわ」
「…じゃあ前食べてもらえなかった手料理、今度こそ食べてもらおうかな」
「よっしゃ!右腕骨折した甲斐があったな」
「ふふっ、大袈裟なんだから」

245 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 17:25:49 ID:bjMVTWtr
シンデレ

246 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 17:26:23 ID:fZqhz4IH

「ごちそうさまでした!めっちゃ美味かったです」
「あ、当たり前でしょ。どれだけ練習したと思ってんのよ」
ライムが作ってくれた料理はどれもこれも美味しかった。
「いやぁ、マジで今まで食べた料理の中で一番だな!」
「…褒めても何も出ないわよ」
照れながら俺の隣に寄り添うライム。久しぶりに平穏が戻ってきた気がした。
ライムと一緒に過ごしてきた半年。俺達はもう一度戻れるのだろうか。
「…戻れるさ」
「どうしたの?」
ライムをそっと抱き寄せる。戻ってみせる。
もう一度ライムのマネージャーになって、そして彼女を世界一のアイドルにするんだ。
「亙?」
「何だ?」
「あのさ…その…昨日亙にホットミルク作ってもらったでしょ」
「ああ、あれか」
「…飲みたいな」
「おう、気に入ったのか。そんなんで良ければ…?」
立ち上がろうとするとライムに止められた。
「そ、そうじゃないの!そ、そうじゃなくて…わ、亙のが…」
「……はい?」
「だから!わ、亙のホットミルクが飲みたいの!!な、生絞りでっ!!」
夜中の3時半に下ネタを大声で叫ぶライム。こんなアホな子じゃなかったはずなのに…。
「…ネットか?ネットで調べたのか?」
「だ、だってこういう台詞、男の人は好きだってネットで書いてあったから!」
ライムは顔を真っ赤にして反論する。やはりネットか!何でこんなアホな子、好きになったんだろうか。
「…ライム」
「で、くれるの!?く、くれないの!?」
「…何を?」
「ホ、ホ、ホットミルクに決まってるでしょ!!」
「…はぁ」
「な、な、何よ!?」
「とりあえず」
「ひゃっ!?」
ライムを思い切り抱きしめる。右腕が使えないのがもどかしい。
「今日は寝かさん」
「えっ…ふぁ」
もう真っ赤を通り越して茹でダコになったライムにキスをした。

247 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 17:29:00 ID:fZqhz4IH

「んっ…」
「こ、腰が…」
時刻は午前5時。前回と対照的に今回はひたすらライムに攻められた。
右腕が使えなかったのが影響したのかもしれない。つーか腰が痛すぎる。
「亙、もう一回…」
「い、一体何度目だ、その台詞。とりあえずそろそろ帰らないと」
「…泊まっていかないの?」
「まだ正式に辞めた訳じゃないんだ、執事。それに出来ればマネージャー復帰まで他の仕事で繋ぎたい。里奈なら多分雇ってくれそうだし」
「里奈…」
「ん?」
「…ううん、何でもない。確かに亙が無職じゃ私も困るよ。しばらくは活動出来ないだろうし」
「だろ?…じゃあちょっと風呂入ってくるわ」
「うん」
俺はベッドを出て風呂場に向かった。…腰が半端なく痛いんですが。



風呂から上がるとライムが俺の携帯を見ていた。
「それ、里奈から返してもらったんだよ」
「えっ!?あ、ああ、そうなんだ」
ライムは俺に気付いた途端携帯を手放した。
「ん?どうした?別に携帯見られたくらいじゃ怒らないぞ」
「そ、そう?…ゴメンね、何か気になっちゃって」
「だから怒ってないから大丈夫だよ」
ライムの頭を撫でてやる。髪がさらさらしていて心地好い。
「ふぁ…。…ありがと」



里奈に電話して迎えを寄越してもらった。
あの後桃花の傷の処置も終わり、今は寝かせているらしい。後遺症が出ないか心配だそうだ。
「おっ、来た」
マンションの前で待っていると車が停まった。
「亙、次は…いつ会えるのかな」
俺の手を握るライム。不安な気持ちが伝わってきた。
「流石に毎日は無理だと思うけど…なるべく行けるようにするよ。ほら、携帯で連絡取れるし」
「そうだね。じゃあ…寂しくなった電話するね」
既に寂しそうに微笑む。…本当に分かりやすいな。
「…夜だったら11時くらいから暇だから、電話するよ」
「本当っ!?…あ、いや…暇だったらで、良いからね?」
「…無理すんな」
「し、してないわよ!」
待たせると悪いので車に乗り込む。
「じゃあ待たな」
「…うん」
車はマンションを後にした。

248 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 17:32:49 ID:fZqhz4IH
今回はここまでです。次回くらいから本格的ヤンデレタイムになるので
よろしくお願いします。読んでくださった方、ありがとうございました!
投稿終了します。


249 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 17:38:22 ID:hirXnn3+
次が本格的にか!gj!

250 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 17:39:24 ID:W83XWNYq
GJ!!日曜だけど家にいた甲斐があった!

ライム可愛い。次も楽しみにしてるので頑張ってください!

251 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 18:49:58 ID:Zs9ZweXA
嵐前の静けさと言う奴か、「きみとわたる」の作者……あんたは神だな!

252 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 19:47:19 ID:SoytNWj+
>>251
ガキは書き込むな

253 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 20:03:59 ID:iR/L3rWi
どうでもいいからおまえらsageろや

254 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 20:13:02 ID:NcpVCmsh
>>253
お前おちょくってんのか。

255 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 20:38:46 ID:Zs9ZweXA
>>252
ププッ、カワイソρ(..、) ヾ(^-^;)

256 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 20:39:05 ID:hirXnn3+
>>253
おまえもな

257 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 20:44:33 ID:i0RcwmJd
>>255
sage出来ない馬鹿は黙ってろよ

258 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 20:56:50 ID:DosNmdkm
>>551>>557のやり取りはもうコントに近いな

259 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 21:00:01 ID:2ByCB0yo
>>258
おまえがいうな

260 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 21:00:11 ID:V4UJ6HbL
夏に成ると変な虫が湧いてくるようで・・・
話は変わって>>248GJ次回のライムに期待!!

261 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 21:04:49 ID:hirXnn3+
そうか!わかったぞ!
これはヤンデレのもっとわたしを見てというアピールという事なんだよ!

262 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 21:39:26 ID:ROTZfzJa
>>261
まじでだまってろ


263 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 21:43:22 ID:C6Z3PpFP
>>262
sageような厨房

264 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:22:45 ID:3g2yNYBh
_
┼─┨| | | | | |、//         |              ┠─┼─
┼─┨| | | | | | //、 ミーン    ∂,, チリーン .. ... .,.. ┠─┼─
┼─┨| | | | | |||ミ、   ミーン   ...       ...,     ┠─┼─
┼─┨| | | | | ||、m           .,..    ....,..  ┠─┼─
┼─┨| | | | | ||| ^         .... ........  .........  .,... ┠─┼─
┷━┫| | | | | |||ミ               ...     . ┣━┷━
    ┃ /_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ┃
━━┛. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ┗━━━
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.,.,........,,,,,...        ┌──────────── .......,,,,
          ∧ ∧ < あぁ 蝉の声、夏だねぇ・・・
   ..,,,.    (.,゜Д゜)_ └──────────── ...  ) )
     / ̄ ̄∪ ∪ /|  ,,,,,.....,.,.,,,,    .. . ..,,,,,,,,,    ( (
,.,,,, /.∧ ∧    //|| .                     ))
  /___(゜д゜)_// ┌───────────     ‐=i=-
 || ̄ ,,/  つ  ||.  < 皆さんマタ〜リしてねぇ・・・      ̄
 ||  (__丿   ||   └───────────
  ⌒,....., .....,..,.,....... ,.........,.,.....,...,. ...................,

265 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:23:30 ID:PK0gqA51
糞スレだわ
どうしてこうなった

266 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:34:48 ID:0PZH+F2V
まあ夏だしな
イライラするよな
でもそういう時こそ他人を思いやるのが大事だと思うよ

267 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:35:01 ID:hzawvr94
板全体でも一番勢いがあるスレだからかな
蟲を呼び寄せやすい
夏休みが終わるまでの辛抱さ

268 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:35:49 ID:iTZc+8bd
ある

269 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:35:57 ID:jYFKaQpq
だんだん投稿しずらくなってきたな

270 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:38:20 ID:GT9zBZ8G
ん、連投支援で皆雑談してるんだと思ってたんだが
ガチでやってたのか?w

271 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:39:24 ID:SoytNWj+
>>267
スレが生きている限りガキは消えない
だから一度死なないといけない

272 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:48:14 ID:3g2yNYBh
修羅場スレは荒らしがつぶした(笑)だもんねー
まぁ目立つスレはしょうがない…

273 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:50:26 ID:C6Z3PpFP
Part32で終焉かまあ結構持ったほうだったな
修羅場スレ潰されていつこっちに来るのかヒヤヒヤしてた

274 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 22:54:41 ID:FSA2xWXe
>>248
GJ!
次回からの本格的ヤンデレタイムに期待

275 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 23:04:49 ID:fZqhz4IH
こんばんわ。連投になってしまうのですが9話が出来たので
日曜スペシャルということで投稿させてもらいます。前回見てくださった方、
コメントくださった方ありがとうございました。よろしくお願いします。

276 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 23:05:50 ID:fZqhz4IH
「…執事を続けたい?」
「今のところ右腕が使えないから、あまり役に立たないかもしれないけど…」
里奈の部屋。俺は執事を続けたいと里奈に言った。やはり仕事はしていたい。
「…別にアタシは構わないけど、亙はそれで良いの?」
「むしろ他に働き口がないんだ。出来ればここで働きたい」
里奈は少し考えているようだった。
まあそりゃあ片腕骨折している奴が雇ってくれなんて言っているのだ。拒否されるのが普通だと思う。
「…良いわよ。じゃあこれからも今までと同じ感じでお願いね」
「あ、ありがとう!本当に助かるよ」
「ううん、むしろありがとう。色々酷い事したのに、まだ普通に接してくれて…」
「…そんな酷い事された覚えはないけどな」
「本当に……変な人」
里奈は微笑んでいた。



桃花は2、3日は出られないようなので代わりの運転手が俺達を大学まで運んでくれた。
里奈は居酒屋のバイトがあるので、昼食を食べた後俺だけ帰ることにした。
「俺だけのために車呼ぶのもな…」
正門前で歩いて帰ろうか迷っていると
「先輩っ!こんにちは…ってどうしたんですかその腕!?」
回文もとい、神谷が近付いてきた。相変わらず真っ赤なツインテールが目立つ。
「神谷か。ちょっと事故にあってな」
「事故って…。まあ良いですよ、それで。どうせ答えてくれないでしょうし」
「それより神谷は授業出なくていいのか」
最近毎日神谷と会っている気がする。
「授業なんかより先輩と会う方が大切ですから」
「…授業出ようよ」
「冗談ですよ。授業はちゃんと出てます。今日はたまたま早く終わっただけですから」
「意外だな。神谷が真面目キャラだったなんて」
「そういえば今日も藤川センパイ待ちなんですか?」
若干スルーされた気がする。まあたわいのない話なのだが。
「いや、今日は一人で帰ろうかと」
「ということは先輩は今日フリーなんですか」
「まあ…フリーだな」
一応仕事中ではある。決して忘れているわけではない。
「じゃあわたしとデートしません?」
「…悪いけど遠慮しておこうかな」
「良いじゃないですか。たまには二人でどこか行きましょうよ」
「でもなぁ…」
「何か奢りますから。お願いします!」
「うーん…」
別に何か予定があるわけではない。
それに里奈の件で、もっと他人を分かろうとすることの大切さも学んだ。
神谷のことも毛嫌いしてきたが、彼女のおかげで殺人事件のことを知れたのも事実だ。
「じゃあ…夕方までなら良いよ」
その瞬間、神谷は目を輝かせていた。
「本当ですか!?やったぁ!じゃあ早く行きましょう!!」
左手をしっかり掴まれ引っ張られる。
「お、おい!そんなに急がなくても…」
「夕方まで後4時間程しかありませんからね!善は急げです!」
そのまま俺は神谷に引っ張られた。…止めておけば良かったかもな。

277 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 23:06:59 ID:fZqhz4IH

大学を後にした俺達は駅前のショッピングモールに来ていた。
というか神谷の買い物に付き合わされたと言った方が正しい。
雑貨屋や洋服屋、アクセサリー屋に化粧売り場、本屋にビーズショップと歩き回ったが神谷は結局何も買わず、
ただウィンドウショッピングを楽しんでいた。まあ神谷が楽しいならそれで良いし、
俺自身も駅前にはあまり来たことが無かったのでそれなりに楽しめた。

一通りウィンドウショッピングした後、近くにある『向日葵』という喫茶店に入った。
流石に神谷も歩き疲れたのだろう。店内はお洒落な雰囲気で俺と神谷は奥の方の席に座った。
「今日は暑いですね〜。もうすぐ初夏ですもんね」
神谷は頼んだアイスティーを一気に飲み干す。
「おいおい、一気に飲んだら腹こわすぞ」
「いやぁ、暑さには勝てませんから」
「ったく。そういえば何も買わなくて良かったのか?片腕だけだけど、ある程度なら荷物持てたけど…」
「いえいえ。わたしは藤川センパイと違って貧乏なんで。見るだけで十分なんですよ」
「…そうだったのか」
「今からする話は他言無用ですからね。先輩だから話すんですから」
「分かってるって」
「わたしは元々母子家庭だったんです。それでも母は身を削って大学に行かせてくれて。
だから授業も絶対にサボらないし、藤川センパイみたいなお嬢様を見ると…嫉妬しちゃうんですよ」
「それであんなに噛み付いてたのか」
「まあそれだけじゃないですけど…」
俺の顔をチラチラと見る神谷。
「ん?俺の顔に何かついてるのか?」
「はぁ…。いいえ。だから自分でバイトも…あ」
何かマズそうな顔をする神谷。もしかしたら…。
「なあ神谷。お前、何のバイトしてるんだ?」
「ぐっ…!」
やはりか。何か危ないバイトしてるんじゃないだろうな。
「…人に言えないようなバイトしてるのか?」
「ち、違いますよ!………モデルです」
拍子抜けした。もっと危なげなバイトかと思ったんだが。里奈と同じとはな。
「別にモデルなんか隠す必要ないだろ」
「……14歳までなんです」
「…えっ?」
「だ、だからっ!わたしがモデルしてる雑誌は本来14歳までしか出られないんですっ!
でもスカウトされちゃって"君ならごまかせる!"とか言われちゃって…。結構お金になるし…」
髪の色と同じくらい顔を赤くして俯いている。確かに神谷は150cmもないし、顔は童顔だ。
胸も…まあ慎ましいし、一部の層にもろストライクなルックスであることに間違いは無かった。
「全然知らなかったよ」
「当たり前です!もし誰かに言ったら殺しますよ」
有無を言わさぬ迫力を前にして、思わず頷いてしまった。

278 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 23:08:56 ID:fZqhz4IH

「じゃあ藤川センパイの屋敷には自分の意志で勤めているんですか」
喫茶店『向日葵』店内。窓の外には夕日が輝いていた。
「ああ。こんな腕じゃ中々雇ってくれないだろうし、里奈も根は良い奴なんだよ」
「…本当に先輩は単純ですね。そこが良いところでもあるんですけど」
「単純?」
「とにかく!油断大敵ですよ、先輩。またいつ藤川センパイが本性を見せるか分かりませんから。特にあのタイプは裏の裏まで考えてそうですし」
「せいぜい気をつけることにするよ。…時間だからそろそろ帰るわ」
「あっ、会計はわたしが…」
「たまには先輩に感謝するんだな。可愛い後輩に奢ってやるからさ」
「…ありがとうございます」
何故か神谷は少し照れていた。



「ではわたしはこっちなので。今日は付き合っていただきありがとうございました」
駅前で神谷と別れる。少し急いだ方が良いな。
「こちらこそ。楽しかったし、良い気分転換になったよ」
「あ、そういえば先輩、昨日の鮎川らいむの事件。気になってましたよね?」
「ああ、でももう大丈夫だよ。俺の勝手な思い込みだったみたいだし」
「そうですか。新しい情報が出たんですけど…まあ噂ですし先輩がいいなら要らないですね」
「俺なんかのためにありがとな。じゃあまた」
「はい。また会いましょう!」
俺は神谷と別れて駅前を走っていった。



神谷は亙が走っていった方向をしばらく見ていた。
そして満足したのか反対方向に歩き出した。
「これ、要らなかったな…」
神谷はメモのような物をポケットから取り出した。
「せっかく睡眠時間を削ってまで調査したのに…」
ここ3日程、ほとんど寝ていないことに神谷は気がつく。
「まあこんな情報、何の役にも立たないしね。もっと先輩の役に立てること、見つけないと」
神谷はメモを丸めると近くにあったごみ箱に捨てた。
「赤い…縁起でもない」
書いてあったことを思い出す。

"殺害現場付近に赤いペンキの跡あり"

「嘘っぽいわね…。大体ペンキって何よ」
言っても信じてもらえないだろう。やはり言わなくて正解だったのかもしれない。
夕日を見ながら神谷は思った。

279 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 23:09:59 ID:fZqhz4IH

屋敷の門まで来た時にはすでに5時を過ぎていた。急いで門に近付くと、何故か門が開いていた。
誰か閉め忘れたのだろうか。一応鍵を内側からかけて、庭を走っていると人影が見えた。
「誰だ…?」
近付くと二人の影が見えた。一人は背中を向けていて分からないが、もう一人は里奈だった。
地面に膝をついて腹部を押さえている…。
「っ!?里奈っ!!」
里奈が腹部から出血しているのが分かった俺は、もう一人の方に思い切り体当たりをする。
そいつは不意打ちに耐えられず横に転がった。
「おい里奈!?しっかりしろ!」
「っ…!わ、亙?来て、くれたの?」
里奈は腹部を押さえて出血を止めているが、効果は薄そうだ。どうやら刃物で刺されたらしい。
「一体何があった!?誰にやられたんだ!?」
「…あ、あの人が急に…アタシを…」
やはりさっきの奴か。里奈が指した方向には俺が突き飛ばした奴がいた。
「お前がやったのか!?一体何のつも……えっ?」
影が近付いてくる。顔がはっきり見えた。
「亙、気をつけて!」
里奈が叫ぶがそれどころではなかった。なぜなら
「いきなり突き飛ばすなんて…いくら亙でも怒るよ?」
血がついたナイフを持っているそいつは
「…ラ、ライム…?」
「また会えたね、亙!」
俺に向かって笑いかけたそいつは、間違いなくライムだったから。

280 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/04(日) 23:14:46 ID:fZqhz4IH
今回はここまでです。本格的とかいって導入部分で終わってすいません。
次からは頑張ります。読んでくださった方、ありがとうございました!
直後投下も全然大丈夫です!投稿終了します。

281 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 23:16:26 ID:jYFKaQpq
GJ!俺もこれぐらいの物を書いてみたい

282 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 23:17:36 ID:3g2yNYBh
GJ
投稿者が見捨てない限りこのスレは荒らしに負けない
これからもいろんなお話の投下お願いします

283 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 23:21:24 ID:i0RcwmJd
GJ!
乙です、次回期待して待ってます

284 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 23:23:17 ID:FSA2xWXe
GJ!
続きも期待

285 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 00:05:25 ID:1f79EmEx
>>273
こんな事で終わるか。

286 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 00:10:15 ID:uV1cWrXx
GJ!!連続でお疲れ様です。毎回楽しみにしてるので次も期待してます!

287 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/05(月) 00:11:51 ID:HP3nHyK7
はい、こんばんわ。まだあんまり誰も病んではいない小説を書いてるものです。
(一応妹は初期から結構病んでる設定だったはずなんだけどな)
タイトル決まったのでタイトルをつけて投稿しようと思います。
ではよろしくお願いします

それにしても夏ですねー

288 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU :2010/07/05(月) 00:13:16 ID:HP3nHyK7
「おーいしょうへいへーい」
「誰だよ……」
 遠くからとある奴が走ってくる。あの毎回綺麗に立っているアホ毛を揺らしながら俺に近寄るのは一人しかいない。
「卓也の前世ー」
「俺の前世がそんな最近の人物の名前じゃないだろ、正敏」
 小柄で女の子みたいな感じの男、神崎正敏《かんざきまさとし》である。俺の小学校から親友だ。
 チャームポイントは一本だけ目立つように立っているアホ毛。どうやっても直らない。
 中学の時の修学旅行で俺が直してみたけど直らなかったからキャラ立てではないらしい。
 いつもは女々しいが意外にも頼りになることが多い。俺と会長のドジをよく返上してくれるから大助かりだ。
 けど俺と正敏が週間ランキングBL部門で上位に入り始めた頃は死にたくなった。今では気にして無いが。
「卓也〜今日は遊べるか〜い? SFCのボンバー5やろうよ〜僕はあのぶよぶよが好きだよーハンドあると不規則な方向に飛ぶから〜」
「う〜んそれもいいけどさ。せっかくテスト終わったんだからお疲れさま会しないか?
「いいねえ〜ぼくはいくよ〜。他に誰誘うの〜?」
 正敏は基本断らないからうれしい。まあ向こうも時々無茶振りなこと要求するからお相子だな。
「基本は生徒会のみんなかな」
 正直一時期の売り上げ確保はこういつだけでも十分いける。将来フードファイターになれるかもと言われた胃だ。
 本気で食うと普通に在庫をなくすほど食えるかもしれない。食べた分の栄養がどこにいっているか分からないけど。
 あのアホ毛かな。でも今回は広めるのが目的だから一人じゃ意味無いんだよね。
「どうやって呼ぶ〜?」
「あー俺が一応声かけるよ」
「あ、そうだ〜僕がやるよ〜まかせてくりー」
「わかったよ。まあくれぐれも穏便に頼むね」
「あいあいさ〜」

289 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU :2010/07/05(月) 00:13:51 ID:HP3nHyK7
 テストが終わり放課後、今日は例の作戦の開始だ。それにしてもどうやって役員集めるんだろうな。
 ピンポンパンポン
『えー生徒会です。生徒会です。今日、臨時報告会を開くため暇な生徒会役員は生徒会室に集まってください。
 繰り返します。今日臨時の生徒会のみで開かれる報告会を開く予定なので暇な生徒会役員は生徒会に集まってくださいYO! by副会長の代理がお送りしました。では』
 ピンポンパン
「あのヤロウ!」
「ふふふ、なんだあの原稿は?」
 後ろから般若の声が聞こえた。俺のせいではないのになこれ。
「可笑しいな。ああ、とっても可笑しい。私の許可なしに臨時とは……」
 後ろの般若は確実に俺をKillするつもりだろう。肩が掴まれているがこれはかなりの握力だ。骨がきしむ音がしている。
「声は正敏君かな? まったく正敏君も悪乗りが過ぎているな。副会長の卓也の意見しか聞かずにやるなんて」
 段々と右肩の感覚がなくなってくる。危険だ。確実にやられる。
「会長。誤解です。本当に誤解です。俺は別にそんなつもりは無いんです」
「いまさら遅いだろ? by副会長って言ってる時点で確実にOUTだな。ああ、可愛そうにここに一人の男眠る。か……」
 洒落になっていない。この人は本気だ。本気で俺の魂を刈り取るつもりだ。
「すいません、謝るからゆる……いたいたいたたたたた!!」
 肩が壊れている気がする。というかむしろ肩を捥がれている気がする。
「仕方ないだろう。これは生徒会の信用問題なんだからな。こんなバカ一人で評価はがた落ちになるのか。
 政治の尺図だな。汚職している政治家が一人でもいれば評判は下がる。そんな感じだな。
 だからこういうのはとかげのしっぽのように切るしかないか。腐ったミカンは捨てろともいうしな」
「あ〜ただいま〜……あ、プロレスごっこ? 大変だね〜。それじゃ先に生徒会に行ってるね」
 諸悪の根源が会長が俺の肩を外すところをみて逃げていった。あいつあとで半殺しにしないと。
「さぁもっと肩を壊してあげる。反省するまで」
「ぎぃやぁぁああああ!!!」
 俺の声が虚しく響く。俺の断末魔の声がなりやんだあと三年生のテストを始める鐘がなった。

290 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU :2010/07/05(月) 00:14:27 ID:HP3nHyK7
 俺が今一番会いたかった愛しの彼はいつもの指定席に座って本を読んでいた。タイトルは『必読!殺人鬼から逃げる方法TOP50。ポロリはないよ』
 実用性はあまりないだろう。殺人鬼なんて今この場所には二人しかいないと思うし。とっさに反応できないと思うので。というわけで
「死ねェェ!!!」
「うわ!」
 正敏は華麗に横にずれた。攻撃は紙一重であたらなかったが後ろを取っていた会長による踵落としによって床に沈んでいく。
 しかしそれが命取りだ。会長の恐ろしさはここからはじまるのだ。
 会長は体を捻ってその遠心力を使い蹴りを繰り出した。その蹴りは正敏にクリーンヒットする。
 その蹴りは普通の蹴りより威力は桁違いに高いだろう。蹴りがあたった正敏は真横に吹っ飛び壁に激突する。(よい子は学校の壁に人をぶつけたらダメだよ。お兄さんとの約束だ)
 壁に激突している正敏。最初はひくひくと動いていたが2分ぐらいたった後動かなくなった。
 正敏を壁から剥がして服をひん剥いていく。剥いたあとは掃除ロッカーに入れ、穿いてたズボンから財布と携帯をとりだした。
 携帯SDカードを抜き財布からはお金と数枚にカードをぬく。確実に犯罪臭がするのだが気にしない。俺たちは友達だからな。
「やったな会長!」
「ああ、私達の勝利だな」
 俺と会長は諸悪の根源である男を倒し幸福を感じていた。こんなにも清々しいなんて思いもしなかった。
「さて」
 会長がこちらに向き合う。妙に清々しい笑顔でこちらを見つめている。
 俺の心の危険を示す値が赤になっている。これはやばい。確実に。
「諸悪の根源を倒した後必ずしないといけないと思うことが私にはあるんだ」
「会長、それはなんですか?」
 俺は落ち着いているように話しかける。ものすごく冷や汗かいてるけど。もしかしたら脂汗もだらだらと出ているかもしれないけど。
「ああ、諸悪の根源を倒しても必ずその意志を継ごうとするものが出てくるだろう。それは大変危険だと思う」
「俺もそう思いますね。こういうのは早めに対処しないと危ないですし」
「だから意志を継ぎそうなやつらを倒すべきだとおもう。ということはだ。次私がやることは--」
 ああ、今すぐ逃げよう。俺の人生の灯火が確実に失われる。
「--残党退治だ」
 気がついたら俺は般若から逃げるために無意識のうちにフルスロットルで走っていた。

291 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU :2010/07/05(月) 00:15:36 ID:HP3nHyK7
「ところで集めた理由はなんだ」
 俺たちへの制裁が終わったあと生徒会室に戻り集めた理由を聞かれていた。普通制裁よりこっちが先だろう。
「いやー生徒会って忙しいからさ。俺のおごりでお疲れ様会開こうかとおもってさ」
 おごりにしなければ今俺の首は吹っ飛んでいるだろう。
「慰安のようなものか。まあそういうものも大切だな。店は決まっているのか?」
「ええ、とってもお勧めなところが一見あるんだ。一応デザートに抹茶系統のものもあったし」
「なら行こう。奢りなら気兼ねしないで食べれるからな」
 すいません。遠慮はしてください。さすがに10人前+デザートたくさんはさすがに財布がきついです。
「生徒会の全員で〜10人だよね〜1万5千円ぐらいかな? 大変だねー」
「まあ俺の500円貯金箱第二号の1割だから気にしなくていいぞ」
「なら遠慮なくゴチになりますよ〜遠慮なんてしたらもったいな〜い」
 正敏は飛び跳ねて喜んでいる。こういうのを見ると男じゃなくて女の子に見えてしまう。
「他の役員が来るまでもう少し時間がかかるかもしれないな。紅茶でも飲むか?」
「お願い〜」
「頼みます」
 会長は沸かせていたお湯をティーポットに入れ茶の準備をする。
「どうして緑茶は無いのだろうか。私はどちらかといえば緑茶派なのだが」
 そうは言いながらも会長はおいしい紅茶を入れている。というか緑茶のみたいなら自分で道具持ってくればいいと思うのだが
「それなら〜会長は〜どうして紅茶を〜入れるの上手いの〜?」
「それか? 私は凝り性でろう。緑茶の練習をしているときに思ってな。紅茶の入れ方も上手くなれば緑茶もさらにおいしくいれる方法が見つかるかもしれないと思ったからだ」
 その執念が凄いな。自分の好きなことを極めるためなら他のことも吸収するって。
「うーん俺にはまねできませんよ」
「そうかもしれないな」
 入れた紅茶を飲みながら会長は答える。
「だけど自分を下卑はするな。私は卓也をきちんと評価しているんだからな。私と正敏を救ってくれたのは卓也だからな」
「そうだね〜あはは〜懐かしいや」
「いやなんでシリアスな雰囲気に……」
「『自分は役立たずだ』と思っていないか? そんなことはないぞと伝えたいんだ」
 会長の言葉にギクリとする。今日のテスト中ずっと考えていたことだった。
「自信をもて。困ったときは頼れ。自分が悪いことしていなければ人はついてくる。私はそう思ってる」
「まあ警察や権力者に〜目つけられたら助けてくれる人は極端に減るけどね〜」
「それは当たり前だろうな。みんな捕まるって聞いたら手のひら返しそうだし」
「けど、卓也。君は最後までその人の味方をするだろう? 悪いことをしていないなら」
「それは……うん」
「誇れる長所だよ。それは。私は無能扱いにはしない。そして卓也に仇名す人がいたら守るさ」
「僕もだよ〜あはは〜」
「なんかここの会話だけだと中二病くさくないか?」
「いいじゃないか」
「ね〜」
 まったくこいつらって変だよな。さすが俺の友人だな。まあ家が普通じゃないしな両方。
「こんにちはー」
 どうやら一人来たようだ。俺たちは話をやめみんながくるまで資料整理することにした。

292 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU :2010/07/05(月) 00:21:12 ID:C8rFDNOR
「いらっしゃいませーって幸一君?」
 というわけで喫茶店に着たが愛さんは幸一といっている。俺卓也だけどな。どうしてだろう
「愛さん。俺卓也なんですが……」
「え? だって昨日幸一って名乗った……」
「泣かした〜みんな〜副会長が綺麗なお姉さん泣かしてるよ〜見ものだよ〜。そもそも幸一ってーぷくく、人に〜中二病っていってるのに偽名って〜ぷくく」
 おかしい俺卓也って言ってたはずなのに幸一? どうしてだろうな
「ま、気にしないことにします。卓也……さんですね。次もまた違う名前って言うのは無しですよ」
「ええ、さすがにそんな間違えませんって」
「そうですね。えっと10名ですね。ではこちらの席へどうぞ」
 俺らは店の広い団体用らしきテーブルに案内された。
「ここはなかなかいい場所だな」
 会長が珍しく褒めていた。いつもなら埃があって掃除が粗末とか明かりがたりないとか言うのに
「だね〜隠れた名店って感じ〜」
 正敏はいつもどおりだ。特に変わらない。殆どの喫茶店で言うからな。
「これがメニューです。ゆっくりしていってくださいね」
 メニュー3冊をもってきてテーブルに置く。そのときに一緒に水を渡していた。
「メニューが決まったらお呼びくださいね。それでは」
 そういうと愛さんはどこかに行ってしまった。俺は会長と正敏と一緒にメニューを何にするか考えていた。
「俺は昨日と一緒でいいなーオムライス上手かったからね」
「私はビーフシチューかな。肉じゃがの原点ともいえるし結構好きなんだ。デザートは抹茶パフェ」
「僕は〜そだな〜リゾットかな〜デザートはあんみつでー」
「ここはなかなかメニュー多いな」
「だね〜僕は気に入るかも〜」
「だろ。味もお勧めなんだよ」
 少し話していると他の皆も大体決まったらしい。
「ほかのみんな決まった?」
 確認のために俺は聞いておく。頼み忘れとかあったら少し面倒だしね
「「「決まりました」」」
 決めるの早いなー。人のこと言えないけど。
「すいませーん愛さん」
「はーい、何にしますか?」
「デミグラスオムライス1つに魚介クリームオムライス1つ、ビーフシチュー1つ、リゾット1つでパスタのオニオンときのことアサリ。
 デザートは抹茶パフェ2つにチョコパフェ1つ、クリームあんみつ2つ。ドリンクは全員特製フルーツジュースで」
「わかりました。オムライスのデミグラ1つにクリーム魚介1つ、ビーフシチュー1つにリゾット1つ、パスタのオニオンときのことアサリですね。
 デザートはパフェの抹茶2つにチョコ1つ、あんみつクリーム2つ、ドリンクは特製フルーツですね」
「はい、すいません量多くて」
「いえいえこういう仕事なので気にしてませんよ。では調理に入りますね」
 愛さんは厨房に向かったようだ。後姿を見て相変わらずスタイルいいよなーとしみじみ思う。
「さて、料理来るまでの暇つぶしとしてたが。そうだ。今回はテストの慰安とのことなのでテストの出来具合でも聞こうか」
 このご婦人機嫌が悪いんですか?
「う〜ん僕から言うね〜僕はなかなかいったと思うよ。自己採点したけど平均92だった〜数学Bが少しダメだったね〜」
「あーわたしも数学Bがダメダメだったよーそれにしても正敏さんって結構頭いいんですね」
「そ〜でも無いですよ〜僕なんてまだまだです。あと自己採点だから少し甘いかもしれないしね〜」
 正敏に話しかけたのは隣のクラスの腐女子で有名な女の子、伊藤美弥子だった。正敏が好きらしいという噂を聞いたがどうなんだろうか。
「そうなんですか? あ、そういえば卓也さんはどうなんですか?」
 俺に振らないでほしい。

293 :軋んでいく歯車 ◆fyY8MjwzoU :2010/07/05(月) 00:22:11 ID:C8rFDNOR
「まあ、待て卓也は最後だからな。私は正敏と同じぐらいだと思う。平均94点ぐらいだな。英作文や文章は一応丸にしているが先生次第ではバツになるから気がぬけないな」
「私は多分平均点スレスレの87点ぐらいだと思いますよー」
 美弥子さん。平均点ってそんなに高くないと思います。どっちにしたってどうせ俺には届かない栄光だよ。平均点なんて。
「あたしはそうだなー70ぐらいが高いかなー」
 次に答えたのが少し不良っぽい見た目の女子、秋中楓さん。面倒見がよく後輩には姉御と呼ぶ人もいるそうな。たしか好きな人がいるそうだったけど、あー隣に座ってる人だ。
「俺はまだ判断できませんね。自己採点はまだしていないので」
 彼はもう一人の会計である若葉雫。インテリの眼鏡でイケメン。俺としばしば話すことがあったが家庭菜園がいける口なので驚いた。
 それを知った日から俺たちは家庭菜園仲間になった。じゃがいもとか芋系が好きらしい。あの蒸した芋のほくほく加減が好きだ。とかいってたなー。
 そういえばやはりもてるけど告白は断ってるらしい。心に決めた人がいるそうで。それでも告白が途絶えないのはな……ある意味すごいね。女の執念って。明確にして無いから私かもって思わせてるのかもしれないけど。
「そういえば〜会長は〜告白したんです? 雫くんに〜」
「私は雫には興味ないな。私はその……なんだ。気になる奴はいるけど……告白は……」
「だよね〜会長はね〜凄くにやにやしちゃうよ〜」
 どうやら好きな人がいるそうだ。やはり会長も人なんだよなー。会長なら告白すれば確実にOKもらえると思うけどな。
「会長。困ったことがあるなら俺に相談してくれよ。ちゃんとバックアップするから」
「「「はぁ……」」」
 あれ? みんないきなり溜め息ついたぞ?
「その彼が鈍感という絶対防御壁を持っているのがだるいね〜」
「そうだよねーまったくーどうにかならないのかな」
「ああ、アタシもあれは無いと思う」
「俺もそう思うな。壁が分厚すぎるのは困りものだ」
 そんなにその人は鈍感なのか。
「なおさら手伝うよ! 絶対その人を振り向かせるの手伝うさ!」
「「「はぁ……」」」
 またみんなの深い溜め息。うーんついていけない。やっぱ俺ってそんなに頼りないかな。
「もういい。そこの女子Aはどうだ」
「私イニシャルって適当じゃないっすか! 酷いっすよーあーさんー」
 彼女は亜紀 呉《あき くれ》と言う。多分日本探してもめったにいないと思う名前だ。柔道部と報道部とを掛け持ちらしい。というか会長が生徒に生徒会をよく知ってもらうためにいれたそうだ。
「私は今回は70点ぐらいっす。先輩方には追いつきませんっすよ」
 正直凄いと思うな。自己主張激しいボーイッシュな奴だ。
 他にもいるのだが他は用事があるので帰ってしまった。まあこのメンバー以外はあんまり来ないのでいいと思うが。
「最後は卓也だ。さぁ白状しろ」
「ええっとーその赤点スレスレ……かなぁ?」
 なんかシラーっとなった。よくない。この空気よくない
「たくやんってよく副会長になれましたね」
 呉さんの同情の視線が痛い。
「卓也さんと正敏さんのカップリング……やっぱりいいね……頭がよくない卓也さんに正敏さんが個人レッスン……そして徐々にエスカレートして……にへへ」
 一人変な人がいるかもしれないけど気にしないでおこう。
「まったく卓也は困るな。次の期末テストの時は勉強一色にしないといけないか」
「手伝うよ〜」
「まて落ち着け。正敏。俺は勉強しなくても」
「僕は〜上からの命令は断りません〜」
「なら無理やりするな!」
「それはダメですよ〜卓也のためにならないから〜」
 上からの命令なのに
「あと〜会長のほうが位は〜上なので〜どっちにしろ無理ということで〜」
「うわ、いらつく。こいつ」
 今日は正敏を殴りたくなる一方だ。珍しい。
「おまたせしました。こちら特製フルーツジュースとなります。食事はもう少ししたら出来ますので少々お待ちくださいね」
 ありがとう、愛さん。あなたは女神に見えて仕方がありません。
「それにしても面白い話ですね。そのときは私のお店でやってくださいね」
 俺の女神は実は女神の仮面を被っていただけの悪魔だった。

294 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/05(月) 00:25:50 ID:C8rFDNOR
以上で投稿終了です。皆様夏バテには気をつけてくださいね。
なるべく早く丁寧に書けるように頑張りますね。

295 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 00:31:17 ID:rEjGZ9sx
ヤンデレ世紀の二次作品みたいなのを考えているがこれって投稿していいのかな?

296 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 00:35:25 ID:y1gX6MXu
投稿してもいいんじゃない?

297 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 00:44:22 ID:Enki9ccA
軋んでいく歯車GJです!!!
職人さんも夏バテに気をつけて頑張ってください!
次回も楽しみにしてます!!!

298 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 01:12:31 ID:0P4RWJ6d
GJ!続きを期待して待ってます

>>297
夏バテか…
ヤンデレっ娘なら、食欲不振な男に精力がつく料理を大量に作って食べさせた後、襲うんだろうな。

299 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 01:20:28 ID:uEkW8/xC
>>294
GJ!



最近の作品を見て勢いで書きました。誤字などあったらすいません。投下します。

300 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:24:02 ID:uEkW8/xC





おい、貴様今『妹最高!』とほざいたな!?馬鹿か?妹ほど怖くおぞましい存在はいないぞ!?

よし、一つ作り話を語ってやる。よく訊いておけよ?




301 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:25:25 ID:uEkW8/xC
 今日は我が校の入学式。そして俺の愛の入学式になる日である。
俺、市川 一機(いちかわ かずき)は今日我が学年アイドルである朝日さんに告白することを決意し、昨日メールで入学式終了後1年10組に来てくれと送ったのだ。

朝日さんは今までこの高校に入学してから、49人の男女を振り、今日の俺の告白で50回目となる。

朝日さんは俺と同じクラスで1年10組の盛り上げ役でもあり、男女問わず人気があった。
7月には俺達の中で学年トップアイドルとして決まり、人気はさらに急上昇。うなぎ登りだ。
それまで数人には告白はされていたらしいがトップアイドル認定後は告白のペースが速くなり、クリスマス付近には一週間に5回も告白されていたようだ。

しかし、イケメンだろうがブサメン、先生、女子?だろうがズバズバと振っていった。
そんな朝日さんに何故告白を決意したかというと昨日の占いが原因である。




302 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:26:24 ID:uEkW8/xC
その日の朝のテレビの占いで星座、干支、血液全ての占いで一位を取ったからからである。
本当はその日に告白しようとしたが、明日だと効果百倍!と後付けされていたので普段から占いに頼って生きている俺にとって最高の吉報だった。
だから勢いにまかせて朝日さんにメールをし、『明日、入学式終了後に教室に来てくれ』と送ったのだ。

昨日は本当に準備が大変だった。なんのだ?って髪型やその他もろもろだよ。

さらに妹の奈穂(なほ)に『なんて告白されたら嬉しい?』と訊ねた。兄である俺が言うのも何だが奈穂は美人いやかなり可愛いのだ。

奴は身長はあまり低いわけではないはずなんだが、顔があまりにもベビーフェイスに近いため実際の年齢よりも幼く見える。俺的にはあの大きな垂れ目が好きだな。
多分今まで奈穂に告白、好意を抱いていたやつはあの目にやられただろうな。




303 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:27:28 ID:uEkW8/xC
だから奈穂に訊けば今まで告白してきた男子の台詞でいいのがないかわかるからだ。

妹は顔を真っ赤にしながら今までの体験談を語ってくれた。
………こいつそんなに告られていたのか!兄である俺は皆無なのに…

まあしかしながら結果は自分で考えた想いを言ってほしいと妹が言ってくれた。

「………私待ってるから////」

顔をさらに紅潮させる我が妹。爆発するのか?と心配になってしまうぐらいの真紅さだ。

それ以前に俺は感動した。妹が俺のために練習台になってくれるからだ。

先ほどの『待ってる』は本番失敗しないためにの“練習やってあげるから”的な意味と俺は理解し

「ああ、ちゃんとまとまったら俺の(朝日さんに対する)想いを聞いてくれ。」と感謝な気持ちを持ちながらそう言った。

妹は早足で自分の部屋に戻っていった。ボフッ と音が聞こえたのは俺の幻聴だろう。




304 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:28:39 ID:uEkW8/xC
1時間以上かけても定まらず、夕食の時間になり、それから風呂と来て統計3時間も時間をかけてしまったが、やっと告白の言葉が完成した。

よし、後は妹に聴いてもらい変な箇所がないか指摘してもらうだけだ。

妹の部屋に行くと何故か軽く化粧を済ましている妹がベッドの上で背筋をピンと伸ばし正座をしていた。
こんなにも可愛くなるなんて兄としては嬉しいのやら寂しいのやら。

まあ、化粧をしている件は後回しにして、先程から静止している妹に俺の朝日さんに対する想いの大きさを聴いてもらった。

「いくぞ」
「うん////」

「好きです!!大好きです!!あなた以外のことなんて考えられなくなるぐらい大好きです!!俺と結婚を前提に付き合って下さい 朝日さん!!!!」

決まった………後は奈穂の意見を待つだけだ。

「……………」

妹の様子がおかしい。駄目だったか今の!?




305 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:31:37 ID:uEkW8/xC

「……あ‥朝日さんて兄ちゃんの好きな人?」

あ‥そうだ、奈穂に名前を言うの忘れていた。
「そうだ。」
「………」
「………」
気まずい。

「…ど、どうだった?」
「………明日告白するの?」
質問を質問で返すな!
「そうだが…」
何故だろう?急に周りの温度が冷えた感じがするが…

「やめた方がいいよ。明日は入学式なんだよ。私が兄ちゃんと同じ学校に行ける日なんだよ?」
奈穂が険しくなりながら俺にそう訴えた。
なる程。明日は入学式だから私を祝いなさいと。そうだな、明日は奈穂を祝う日なんだから祝う方が兄の恋を祝うなんておかしいよな。

「わかったよ。」
「え!?ほんと!?」

いつも通りに戻る妹。

「ああ、悪かったな、変なことに付き合わせて。」
「良かった〜〜!!」

安堵している妹。部屋の温度も戻ってきた。

「よし、じゃあ今度高いの奢ってね♪」
「高いのは確定か?」
「兄ちゃんのせいだよ。」

ごもっとも。



306 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:34:07 ID:uEkW8/xC

「はいはいわかった。んじゃ、お休み。」
「お休み〜」





と、こんな感じのコントを昨日行い、今日が来たわけだ。
ん?てか、いつの間にか昨日の回想に入ってしまっていた。しかし、奈穂には内緒に朝日さんに告白する俺。駄目兄貴だな全く…
教室に行くとなんと朝日さんが待ってくれていた。これはもしや!…

「あ、あの朝h「あ、市川君!告白だったらごめんなさい。あなたの気持ちには応えられない。」 … 」

一刀両断だな。

「そ、そうか。悪かったなわざわざ呼び出して…」
「ううん…私こそごめんなさい。」

朝日さんはすぐに教室から出て行った。そして俺も心ここに在らずな状態で帰宅した。
途中51人の老若男女が現れ俺を慰めてくれた。………俺、52人目だったんだな。




307 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:35:56 ID:uEkW8/xC


51人は慰めてくれたが後ろにあった凶器は何に使うつもりだったんだか…

家に着くと家の明かりが一つもなかった。
そんな家に不気味だと思いながら鍵を開け中に入った。 あれ?、リビングに明かりがついている。そうか。シャッターを下ろしていたから明かりが見えなかったのか。
しかし、何故もうシャッターが………まあいいか。

リビングには父と母がいなく、妹である奈穂が新しい我が校の制服姿のままでソファーで寝ていた。

起こすのも悪いので、テーブルの方に向かうと一枚の紙が置いてあった。

『父さんが急に海外に転勤になったので、母さんも付いて行くことにしました。あなた達の仲だったら大丈夫だと思っての決断です。お金は毎月振り込んでおきます。 母より』




308 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 01:37:09 ID:VjybbKn/
支援

309 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:37:10 ID:uEkW8/xC

「グッドタイミングだよね〜」

怖気がした。そして先ほどから熟睡していたはずの妹が起きていた。

「兄ちゃん、今日さ朝日って人に告白したでしょ?」
「ああ…」

何故こいつが知ってる!?

「昨日約束したのに……………なんでよっ!!!!」

妹が突然怒鳴ってきた。初めてのことだったので俺は近くにあった椅子にもたれかかった。

「お、おいどうしたんだ!?そ‥その告白したことについては悪かった。昨日の朝から決まっていたから…」
「ふ〜ん。まあ、そんな約束破りをする兄ちゃんにはお仕置きが必要だね♪」
「えっ!?」

バリバリッ

「な…なに …をす‥…る…」
おれのいしきはそこでとだえた。







310 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:39:33 ID:uEkW8/xC








目が覚めると部屋にいた。…俺の部屋ではないな。

そうだ俺はいきなり、奈穂に抱きつかれたと思ったら体中に電撃が流れて………

「やっと起きたね。兄ちゃん♪」

そうだ。こいつのせいで俺は気を失って…!!!!

「何なんだよこれは!?」

俺は首に首輪、足にはガムテープ、手にはお決まりの手錠がかけてあり、いわば拘束されている状態であった。

「兄ちゃんは私の想いに気付かないのと他の女に盛った罰として、自由を無くしました。」
「嘘だろ…!?」
「兄ちゃんがいけないんだよ。…けど良いじゃない。私が世話してあげるから♪下の方もね///」
「冗談はやめて早く外せ!!今なら特別になかったことにしてやるから!」
「いいよ。私はあったことにしたいし。」
「父さん達にバレたらまずいって!」
「あー、大丈夫。お父さんたち帰って来るの私が成人になって結婚したら、結婚式の日に帰るって言っていたから。まあ兄ちゃんと一緒にいるから一生結婚しないけど。」




311 :想い出入学式:2010/07/05(月) 01:42:06 ID:uEkW8/xC

「あっ!?けど兄ちゃんと結婚するんだった!」
いろんなことが起きすぎて頭がついていけない?学年一桁の俺が!?

「兄妹は違法だ。」
「禁断の愛っていい響きだよね〜」

駄目だ。思考がいかれてやがる。くそ!妹に愛されるなんて!

「それじゃ、一つになろう。一機さん♪」

その日、妹は高校に入学し、俺は童貞を卒業した。それから俺の最悪な監禁生活が始まった。






いいか?だから『妹に愛されて〜』なんて変な妄想は捨てろ!!わかった?よし、なら気を付けてな。

よし、俺もそろそろこの街から離れるか。



『みぃーつけた♪』

後ろから迫り来る闇に気づけず、男は今度こそ表社会から消えた。


「子供は男の子がいいな〜♪」



end

312 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 01:43:26 ID:uEkW8/xC
投下終了です。





313 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 01:44:43 ID:rEjGZ9sx
Gjいいね!なかなかのキモウトって感じがあって。なんか投稿しにくい。どうしよう

314 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 01:50:30 ID:2vFnZnNH
皆様GJ!

>>313
せっかくだから今宵の投下ラッシュにのっちゃいなよ

315 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 01:54:47 ID:uEkW8/xC
>>313
是非投下を





そして、質問なんですが、『ヤンデレ世紀』とこういった短編集、どちらを書き続けるべきか?

316 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 02:12:08 ID:uIuCKSjc
大量の作品投下が嬉しい
作者の皆さんぐっじょぶ!

317 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 02:19:28 ID:rEjGZ9sx
313です。初投下しますタイトルはPeople WHO SAVES MEN(PSM) 男性を救う者たちです。

318 :PSM!PSM!:2010/07/05(月) 02:20:35 ID:rEjGZ9sx
ヤンデレ症候群

過去二十年前に日本で流り出し今現在では世界中に広がり表の世界には男がほとんど居なくなってしまった。
表の世界に居ないものは殆ど監禁されている。しかし表に残った世界中の男の人は自分たちで監禁された男
達を助けるため裏で組織を創った。組織名はPERSON WHO SAVES MEN(男性を救う者)通称PSM。
そしてこの世界でPSMに所属する世界一チート並みに強い結崎雪の愛と怒りと血と悲しみの青春物語である。

319 :PSM:2010/07/05(月) 02:46:25 ID:rEjGZ9sx

「毎日毎日監禁されていく人多すぎだろ。こんなんじゃ人で足りないぜ」
何か愚痴ている男 この男は結崎雪。職業は高校生とPSMのメンバー。
「うーん。PSMメンバー減ってんじゃん。前は500人ぐらい居たのに今は20人ぐらいじゃん」
愚痴ている雪に発言した男の名は源優(ゆう)。雪とは昔からの縁で女のような顔をしている。
「うーん。そろそろこの組織辞めようかな。金稼ぎのためにやったけどもう要らんほど溜まったし」
「やめたらいいじゃん。その仕事死ぬ可能性あるでしょ。いい加減潮時だよー」
うん確かにと言いた瞬間携帯が鳴り携帯を開くとメールが来ていた。メール内容は殆どが変換せれていなかった。内容はこうだった
たすけてくれ!
奴に追われている。このままじゃこのままじゃ。場所は○○公えんだ
雪はめんどくさそうに立ち「ほな行ってくる」と言って校舎の3階の窓から飛び降りた。


320 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 02:47:47 ID:gRGqC1cm
>>317
……? 寝落ちかな……?
まあいいや、また次の機会に投稿お願いします。

……ああ、それと。
名前欄にタイトルつける余裕があるなら、ちゃんとsage進行で行こう?

321 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 03:23:09 ID:rEjGZ9sx
その頃○○公園では・・・
腰を抜かして動けない制服を着た少年と電気スタンガンを持ってじりじり少年にちかずいていく少女がいた。
少年の名は竜輝 少女の名前は月。二人は幼馴染だった。しかし彼女はヤンデレ状態で目が濁っている。
「なんで・・・なんでこんなこんなことするんだよ月!」「あなたが好きだからよ。愛しくて愛しくて壊れちゃうぐらい」
彼は手で後ろに下がるが公園のトイレのところまで下がり遂に逃げられなくなってしまった。
「これで逃げれなくなったね。じゃあ二人だけの愛の巣に行きましょ!」「誰かーーー!」
月が竜輝にスタンガンを当てようとした時「やめろ」と叫ぶ声が聞こえり月が振り向くと雪がいた。
「なにかしら。急いでるの」「悪いがその男を連れていくぞ」「駄目よ。彼は今から私と一緒に出かけるの。邪魔させないわ」
「改造スタンガン持ってか。凄いデートだな。しかしその男は連れていく。」「そう・・・出来るもんならやってみなさいよ!」
いきなり声のトーンを上げて雪の方向に高速で走ってきた。「死ね!私と竜輝の邪魔するものは!」雄たけびのように叫びこっちに向かって来たが雪は動かずその場
で攻撃の態勢に入った。そして彼女がスタンガンを上げ雪に当てようとした瞬間に雪は避けて足にかなりの力を込めて
女の腹を蹴った。彼女は思いっきり飛んでいきベンチあたりに倒れた。そのあと彼女は立ちあがる事はなかったが気絶しているようだあった。
雪は竜輝に近付いて手を貸し「支払金額5600円ね」と言った。

322 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 03:24:46 ID:rEjGZ9sx
一応第1話は終わりです。なんか頭にある事がキーボードに打ち込めないからきついです

323 : ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/05(月) 06:44:02 ID:DMr/6fCk
おはようございます。
触雷!第9話を投下します。

324 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/05(月) 06:44:52 ID:DMr/6fCk
「…………」
僕は便座に座ったまま、先輩からの手紙を見つめていた。
先輩はどうやら、僕が紅麗亜に監禁されていると思ったようだ。(確かにその通りではある。)
それで偽りの婚約を報道して、紅麗亜を油断させ、僕が外に出られるように計らってくれたのだろう。
――ありがたい。
手紙を拝むようにする僕。そしてすぐに、細かく千切って便器に捨てた。
先輩直筆の手紙だ。勿体ないことこの上ないが、これを紅麗亜に見られたら全てが台無しになる。致し方なかった。
さて。
手紙の文面から察するに、封筒の中身は婚約披露会の招待状と言ったところだろう。
その招待状の指定する場所に行けば、おそらく先輩に会える。
そこで僕がうまくやれば、紅麗亜がこの家で働くことを、先輩に認めてもらえる見込みがある。
問題は、紅麗亜が僕の外出を認めてくれるかどうかだ。
先輩は他の男性と婚約して僕を捨てたという設定だから、紅麗亜も前ほどは、僕の外出に気を立てることはないだろう。
しかし、僕を遠くの館に拉致しようとしている紅麗亜のこと。先輩がどうかに関わらず、僕の外出にいい顔をしない可能性はある。
そのときは、どうにかして説得しなければならない。
覚悟を決めた僕は、水を流してトイレを出た。
すぐそこに紅麗亜が待っている。
「大丈夫ですか? ご主人様」
「うん」
僕は頷いた。
「先程のお手紙を見せてください」
紅麗亜が手を出すので、封筒を渡した。彼女はすぐに封を切り、中身を読み始める。
「…………」
やがて紅麗亜が顔を上げたので、僕は彼女に尋ねる。
「何だって?」
聞かなくてもおおよその見当は付いているが、分からないふりをするのが得策だと思った。
下手なことを言って、「なぜ分かるのですか?」などと聞かれることになったら、捨てた手紙の存在が露見してしまいかねない。
「雌蟲は、婚約披露パーティーを開いて、婚約相手を公表するそうです。パーティーへの招待状が同封されています」
やっぱりそうかと思った。
「そ、そう……」
「やはりあの雌蟲は、ご主人様と私の間に、入り込む隙が全くないことに、ようやく気付いて身を引くことにしたのでしょう。この婚約披露パーティーは、雌蟲の敗北宣言に違いありません。蟲ながら、少々の知能はあるようですね」
相変わらず散々な言い方だが、婚約披露パーティーに対する紅麗亜の印象は、必ずしも悪くないようだ。
それに勇気を得た僕は、招待に応じることを切り出してみた。
「それじゃ、行ってこようかな……」
「その必要はありません」
「えっ……」
いきなり大否定された。


325 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/05(月) 06:45:20 ID:DMr/6fCk
予想はしていたものの、やっぱりショックは大きい。
しかし凹んでいる暇はない。ともかく理由を聞いて説得しないと。
「な、なんで……?」
「確かに、雌蟲の敗北宣言は殊勝と言えなくもありません。しかし、それなら他の男と婚約するだけで十分です」
「…………」
「ご主人様をパーティーに呼び付けるということは、ご主人様とメイドの貴重な交わりの時間を奪うということです。明らかに不埒な行いです。それに気付かない辺り、所詮雌蟲は雌蟲ということでしょう」
「で、でも……」
僕は食い下がった。ここで紅麗亜を説得できなければ、一生まともに外出できないかも知れない。必死だ。
「この様子だと学校のみんなに招待状送ってるだろうし、僕だけ欠席する訳には行かないよ」
「世間体など、気にする必要はありません。ご主人様は、ただメイドを受け入れることだけ考えていればいいのです」
まずい。取り付く島がない。
僕は懸命に、他の理由を考えた。
「で、でも……」
「今度は何ですか?」
紅麗亜の声が低くなり始めた。この件に関して僕が何か言えるのは、次が最後だろう。
それ以上続けたら、確実に紅麗亜は激怒して、僕を折檻する。
どうか紅麗亜が聞いてくれますように。祈りを込めて僕は言った。
「どんな人が先輩と結婚するのか、見たいな……なんて」
理由としては、弱いかも知れない。でも、思い付いたことを言うしかなかった。
ところが、紅麗亜の反応は予想外に上々だった。
「確かに、あの雌蟲がどんな男に身を売るのか、見てやる価値はあるかも知れませんね」
「で、でしょ? だから行ってこようかなって……」
「かしこまりました。では、私も警護として、同行させていただきます」
「え……? あ……」
喜びから一転、僕は焦った。紅麗亜について来られたら、先輩と話せないかも知れない。
いやむしろ、先輩の家で揉めてしまう可能性大だ。
しかし、紅麗亜に留守番をしていてもらう理由も思い付かない。
下手に同行を断ろうとしたら、パーティーに行く許可自体、取り消されてしまう恐れがあった。
かくなる上は、現地で何とかするより仕方がない。
消え入りそうな声で僕が「よろしく……」と言うと、紅麗亜は再び招待状に目を落とした。
「場所は雌蟲の自宅ですね。時間は……明日の午前中です」
ずいぶん急だった。確かに明日は休日なのだが。
これでは、来賓の人達はスケジュール調整が大変だろう。
ただし、僕に限っては、早いのがありがたかった。時間をおいていたら、紅麗亜の館に連れて行かれてしまうからだ。
できれば、この家にいる間に決着を付けたかった。
もちろん、そんな思いは口に出せないので、当たり前の感想を言っておく。
「ず、ずいぶん急だね」
「あえて無理な日程にすることで、誰が雌蟲の家に従順か、試しているのかも知れません」
「そ、そうかもね……うん。きっとそうだよ」
という具合に話を合わせておいて、その日は寝た。


326 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/05(月) 06:45:48 ID:DMr/6fCk
翌日、僕は紅麗亜と共に家を出た。
久しぶりの外出だ。気のせいだろうが、いつもより景色が生き生きして見える。
ちなみに服装は、僕が学生服で、紅麗亜はメイド服。
メイド服の紅麗亜と一緒に歩くと、案の定通行人の視線が集まった。
恥ずかしいと言えば恥ずかしいが、紅麗亜はメイド服以外の服を持っていない。さすがにクレームの付けようがなかった。
――今日のことがうまく行ったら、紅麗亜に服でも買ってあげよう。
と思う。もっとも、メイド服以外の服を、紅麗亜が着るのかどうかは分からないけど。
お屋敷の前に到着すると、黒服を着た、見るからに屈強そうな男性が何人かいて、来賓の受付をしていた。
すでに来賓はかなり来ていて、門のところで行列を作っている。
礼服を着た大人から、制服姿の、僕や先輩と同じ高校の生徒までいた。
彼らのうち何人が、先輩の婚約をカムフラージュだと知っているのかは分からない。
だが、何にしろ、わずか1日でこれだけの人を集めてしまうのだから、中一条グループの実力は、やはり大したものだ。
僕達も列に並んで順番を待つ。やがて僕達の番が来た。
「ここですか? 負け犬の雌蟲を飾り付けて見物する会場は」
ギャー!!
いきなり紅麗亜が、黒服の人に向かって嘯いた。のっけから挑発全開だ。
僕は慌てて紅麗亜を押し止め、急いで招待状を取り出すと、怪訝そうな顔をする黒服の人に見せた。
「ありがとうございます。どうぞ」
紅麗亜の挑発は、スルーしてもらえたようだ。事なきを得て、ほっとする僕。
だが、僕に続いて紅麗亜が中に入ろうとすると、黒服の人に止められた。
「申し訳ありません。招待状のない方はお通しできません」
よく考えてみれば、それが普通だった。
招待状は僕の分しかないから、入れるのは僕だけだ。
紅麗亜があまりにも当然のように“付いて行く”と言ったので、僕はついそのことを忘れていたのだ。
しかし、もちろん紅麗亜は、大人しく引き下がるタマではなかった。
「私はご主人様の所有物です。ご主人様がご自分の物を持って入るのに、何の不都合があるのですか?」
「いや、そういう訳には……」
紅麗亜に喰ってかかられた、黒服の人が苦笑する。もっともだ。
「付き添いの方のための会場も用意してございますので、そちらにご案内いたします。おい……」
黒服の人が、近くの同僚を呼ぼうとしたとき、突然紅麗亜はキレた。
「ご主人様から離れろと!? この私に!」
悪鬼の形相で黒服の人を睨み付ける。
「ひっ……」
黒服の人の股間から、見る間に液体が迸った。のみならず、口から泡を吹いてその場に昏倒してしまう。
倒れて動かなくなった黒服の人を、紅麗亜は路傍の石でも見るかのように見下ろした。
「フン。ご主人様とメイドの間を断とうとする者は、皆こうなるのです」
吐き捨てた紅麗亜は、傲慢な態度で周囲を見回した。
黒服の人は他にも何人かいたが、皆凍り付いたように動かない。
紅麗亜は満足そうに微笑むと、僕と手を繋いで、中に入ろうとした。
「さあ、参りましょう。ご主人様」
「「お待ちください!」」
そのとき、僕達の前、正確には紅麗亜の前に、2つの人影が立ちはだかった。
2人とも白人の女性だ。どちらも紅麗亜に劣らない長身で、過激なまでの体の凹凸が、服の上からはっきりと分かる。
片方はウェーブのかかった長い赤毛、そして赤のスーツ。
もう片方は短めのブロンド、そして青いスーツ。
言わずと知れた先輩の秘書、エメリアさんとソフィさんだった。


327 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/05(月) 06:46:21 ID:DMr/6fCk
「困りますね。勝手に入られては」
胸を張って紅麗亜に詰め寄るエメリアさん。凄い迫力だ。
「招待状のない方の来訪はお断りしますと、お手紙に書いてあったはずですが?」
ソフィさんも、威圧感が半端ではなかった。
「ですから、私はご主人様の所有物であって、招待状は必要ないと申し上げています」
もちろん紅麗亜も負けていない。言い返してエメリアさんとソフィさんを睨み付ける。
しかし黒服の人と違い、秘書の2人は微動だにしなかった。
「奴隷制度のあった時代ならいざ知らず、現代の日本でそんな理屈が通用するとでも?」
笑みさえ浮かべて、紅麗亜に反論するエメリアさん。彼女の言い分の方が、理屈は通っている。
紅麗亜にもそれが分かるのだろう。別の主張を始めた。
「私はメイドとして、ご主人様の警護をする義務があります」
「屋敷内のセキュリティは万全です。どうかご安心を」
「こんな人達を雇っているのにですか?」
失禁して倒れている黒服の人を、指差す紅麗亜。これについては、紅麗亜の方に分があるか。
僕個人としては、紅麗亜に対抗しろと生身の人間に言う方が、無茶に思えるのだが。
「「…………」」
「…………」
それはさておき、一歩も退かず、視殺戦を続けるメイドと秘書。
来賓の人達は、遠巻きにして見ている。
このままじゃいけない。僕は紅麗亜に話しかけた。
「あ、あの、紅麗亜……」
「はい。ご主人様」
「今日のところは、家に帰って待っててくれないかな?」
「しかし、ご主人様!」
「おやおや。ご主人様のご命令に逆らうのですね。よくできた所有物ですこと」
ソフィさんが、嘲るように言う。
ここに来て、ついに紅麗亜は折れた。
「……かしこまりました。ご主人様」
そして、秘書の2人に向かって言う。
「ご主人様のご命令ですから、忠実なメイドの私は服従いたします。しかし、ご主人様に僅かでも危害が及んだら、そのときは覚悟していただきます」
「「ご心配なく」」
エメリアさんとソフィさんは、微笑を浮かべて返した。
「ご主人様……非常に不本意ではありますが、ここで失礼いたします。パーティーの終わる頃に、お迎えに上がりますので」
「う、うん……」
僕は頷いた。
家の鍵は紅麗亜が持っているから、普通に入って待っていられる。
繋いだ手を放すと、紅麗亜は何度もこちらを振り返りながら、僕の家の方へと歩いて行った。凄く恨めしそうだ。
気の毒だが、ここは我慢してもらうしかない。
そして、彼女の姿が見えなくなったとき。
「「詩宝様」」
両側から僕を呼ぶ声がした。
見るとエメリアさんとソフィさんが、僕を挟んで立っている。
2人とも、満面の笑みを浮かべて僕を見下ろしていた。
「あ、あの……」
僕は何か言おうとするが、右腕をエメリアさんに、左腕をソフィさんに、ガッシと組まれた。
2人の巨大なバストの感触が、僕の両腕に伝わってくる。
「さあ、参りましょうか」
「ボスが首を長くしてお待ちです。フフフ……」
そして、僕は強引に屋敷の敷地に引っ張られていった。(ちなみに、例の失神した黒服の人も、同時に他の黒服の人に運ばれていった。)
僕の体は半ば浮いており、あたかも、2人の女看守に連行される罪人のようだ。
「あの……1人で歩けますから」
「お姫様抱っこで運んで差し上げた方がいいですか?」
「何なら、正面から抱きかかえて運んでもいいですよ?」
「…………」
2人の“脅迫”に、僕は沈黙した。
先輩に会って紅麗亜のことを話し、紅麗亜が僕の家で働くのを認めてもらえば、きっと事態は好転するはず。
そんな思惑を持ってやってきたのだが、果たしてよかったのだろうか。
言い知れない不安を抱えながら、僕はとうとう先輩の屋敷の玄関に入った。


328 : ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/05(月) 06:46:57 ID:DMr/6fCk
以上です。
ありがとうございました。

329 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 07:12:14 ID:EOJHRwv2
>>322
メモ帳に書いてからコピペしてはどうでしょうか?
内容は期待が持てそうです。頑張ってください。

330 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 08:15:51 ID:rEjGZ9sx
GJ!

331 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 10:38:32 ID:bWLeGndi
なんという投下ラッシュ
新しい作者から古参の作者まで、みなさんGJです

332 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 12:50:27 ID:5QZH/I2b
>>328
まとめ読んできたけど面白いよー
身長180の長身怪力メイドとか俺得すぎる
体格のいい女性陣が並んで壮観だわ
一番期待してる作品なんで、これからも頑張ってほしい
欲を言うならもっと過激な逆レイプを希望


333 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 13:40:30 ID:1B1BFSb2
GJすぎる

334 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 14:35:40 ID:CuG+akvq
ヤンでて強くてメイドさん…Mにはたまらんなこれわ

335 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 16:41:15 ID:3Lu0weJZ
なんというか・・・・・こうまでもいい小説を見た後は投下しにくい;;
だが俺はくじけない!
ということで投下します

336 :非日常の日常:2010/07/05(月) 16:42:25 ID:3Lu0weJZ
今雄介はどこを見渡しても雲ばかりの夢を見ていた
その雲はすべて白い雲ではなく雷雲で雷が縦にも横にも走っていた
「なんだ?この夢は」
雄介はおそらく普通の人よりも悪夢を見ている回数が多いだろう
何せ2回に一回は悪夢なのだから
しかしこの手の悪夢は見たことがない
というよりこれが悪夢なのかすらわからないが
「んー・・・・・・この場合はどうしようか」
と考えて・・・・・・疑問に思った
「なぜ普通に考えれるんだ?」
起きている時みたいにごく普通に考えれるのである
普段はただなりゆきを体感するだけでへんな感じに陥った
「でも一応自由に動けるみたいだな」
そしてすこし動いてみようとすると
「あれっ?」
体がまったく動かずに・・・・・それどころか下に落ちているような感覚である
そして下を見ると
「あ・・れは・・・・・加絵?」
目に隈を作った加絵が下の空間に見えた
そして加絵が笑い
「見つけたぞ雄介」
加絵の声が周りに響き頭の中を揺らす
そのとき雄介の中には安堵ではなく・・・・・・・恐怖があった
何故なら加絵の声は普段聞いているような感じではなく抑揚のない本能的に恐怖を覚えさせるような声で自分の名前を呼ぶのである
おそらく誰でも恐怖を感じるに違いない
そして雄介は咄嗟に言葉に出してしまっていた
「くっ来るな・・・・!」
そう言って必死に上へ上がろうともがくが体は動かない
「なぜ逃げようとする?あたしはお前の彼女だろう?彼女を泣かせた罰としてはやく抱きしめてくれ」
そう言って加絵の顔が大きくなる
「う、うわああああああああ!!!!」
そう叫んだ瞬間
「雄介!」
とその空間にひとつの白い手が現れた
いや、正確には白い手のようなものだろう
だが今の雄介にはそれが救いの手にしか見えなかった
その瞬間、ほんの少しだけ体の縛りが緩んだ
それを利用し腕が引き千切れるのではないかと自分で思うほど手を伸ばした
だが下からはそれを阻止しようと数多くの触手らしきものが伸びてきていた
「届けぇぇぇぇ!!!!!」
そして指に届く瞬間に稲妻が雄介の体を直撃した
「がぁああああ!!!!」
そのまま力も抜け腕から遠ざかってゆく
「雄介ぇぇぇぇ!!!!」
「うるさいハエめ」
と加絵がその腕に向かって稲妻を何本も飛ばし触手を鋭くし一気に貫いた
「うぐっ!」
血を垂らしながらもまだ何とかその場に残っていた
「これで消えろ!」
と一際巨大な稲妻がその腕に直撃した
「きゃあああああああ!!!!!!!!!」
その絶叫で雄介の中の何かが『切れた』
「てめぇ・・・・加絵ぇぇぇぇぇ!!」
そして雄介の手に一本の細長い槍らしきものが現れ、それを加絵の顔に向かって投げた
その槍は一直線に飛んでいき顔に吸いこまれていった
「なっ・・・・やめろ!」
そして顔に当たった瞬間その空間が崩壊した


337 :非日常の日常:2010/07/05(月) 16:43:23 ID:3Lu0weJZ

「・・・・・・・はっ!」
思いっきり飛び上がり腕の手錠の棘が刺さり悶えていると
「ゆぅ・・・・・すけぇ・・・」
「なっ!聖城!」
聖城は左腕の肩から先がなくなっていて蹲っていた
「ぶじ・・・・・だったのね・・・・?」
「ばかやろう!それよりも早く治療しろ!」
その間にも血が滴り落ちておりどんどん顔色が悪くなっているのがわかった
「おい!誰か!・・・・・・修羅!」
呼んでも意味がないと思っても雄介は叫んだ
「うるさいぞこの軟弱者」
そして修羅はその場にいつもみたく急に現れた
「はっ早く!治療をしてやってくれ!」
「そのことについてはまったくもって大丈夫だ」
「何言ってんだよ!腕が・・・・・え?」
そう言って聖城を見ると既に腕は戻っていた
ただ少し全体的に赤いのは気になるが
「ごめんなさい・・・・・少しすれば治るの、心配かけてごめんなさい」
とどこか疲れた様子で聖城は謝った
「いや・・・・・俺こそ勝手に騒いですまない・・・・だが大丈夫なのか?」
「まだ血が足りないけど輸血すればどうにかなると思うわ」
「そうか・・・・・・」
どこで輸血するかはあえて聞かなかった
今は腕が治ったという事実をかみ締めておきたかった


338 :非日常の日常:2010/07/05(月) 16:44:04 ID:3Lu0weJZ
「・・・・・・・」
ガスッ
「いたッ!」
「美姫様に馴れ馴れしく口を利くな、貴様は下僕であり奴隷だ」
どっちも似たようなもんじゃないか・・・・・とは言わなかった
言ったら殴られるのは目に見えているから
「しかし・・・・・・」
と修羅はいきなり腕をつかみまじまじと見てきた
「いきなりなんだよ?」
「いや・・・・・・・お前まさか・・・・・・な」
と言ってみていたかと思えばいきなり腰の所から何か・・・・・容器のようなものを取り出した
それをおもむろに腕に刺してきた
「いっ!」
「我慢しろ、後で検査結果を教えてやる」
とよくわからないことを言って血をその容器の中に満たした
よし、と言って腰にそれをしまうと聖城に近づき何かを耳打ちしていた
そうしたら聖城は驚いた顔をし修羅を見ていた
修羅は頷き、立って背中を向けて言った
「喜べ中上雄介、ようやく美姫様の役に立てるぞ」
と言いその場から消えた
「あー・・・・疲れた・・・・・・」
「私も疲れちゃったわ・・・・・一緒に寝ていいかしら?」
「ん・・・・わかった」
そう言って雄介は少し端によろうとしたが
「そのままでいいわよ」
と聖城が言ってそのまま雄介の体を抱くように寝た
「ものすごく落ち着くわ・・・・・・」
「そうか?それならしばらくこうしておけ」
と雄介はどこか寛大な気分になっていた
おそらくそれは疲れから来るものなのか、もしくは心にゆとりが持ったものなのか
本人にはわからなかった
「でも寝るとまたあの夢見そうだなー・・・・・・」
「大丈夫よ雄介、また助けてあげるから」
「んー・・・・そうか」
雄介は何かが引っかかったままだが安心したのかそのまま寝てしまった
「おやすみ・・・・・雄介」
そして聖城は頬に軽く口づけをしそのまま眠りについた

339 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 16:46:11 ID:3Lu0weJZ
厨二病全開な作品になってきてる・・・・
いつも投下した後に後悔するんだよなぁ・・・・

340 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 16:53:12 ID:5QZH/I2b
誘い受けウザい
後悔するなら二度と投下すんな
目障りだ
他の作者さんをダシに使って慰められようとしてんじゃねーよ

341 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 17:52:56 ID:nQ3LvKY1
>>339
あんまり愚痴は言わない方がいいと思う
変なのが付くからね。良いじゃん厨二病で自信を持って投下すれば良いでしょう?
まあそれはそれとして

>>340
十人中九人は貴方の方が目障りだと思いますよ。
言い方ってもんがあるでしょうに・・・

342 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 17:57:24 ID:5QZH/I2b
そうは言うがな
こういう自虐系の誘い受け野郎には、早めにズバッと言っておいたほうがいいんだぜ
本人のためにもな
正直、下手くそだし、筆を折られても惜しいような作者ではないしなあ

343 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 18:07:06 ID:hUu2xIO7
正直、下手くそだし、筆を折られても惜しいような作者ではないしなあ(キリッ

344 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 18:12:37 ID:1f79EmEx
>>342
偉そうなチンパンジーだな、おい。

345 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 18:31:52 ID:RLYsRlca
GJ!

>>344
お前マジうまいこと言った

346 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 18:33:01 ID:rEjGZ9sx
Gj!

347 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 18:40:45 ID:hIM633Pl
>>339
厨二で大いに結構。そのまま続けてくれ。偉そうなチンパンジーは気にするな



348 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 19:09:36 ID:3Lu0weJZ
賛否両論・・・・・・・・なのか?
とりあえず自信を持ってやるべきということはわかりました
自虐はもう癖みたいになってたから直すつもりではいたがこの際に改善することにします

349 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 19:09:44 ID:rEjGZ9sx
PMSの者です。今から投稿します。見にくいかもしれませんがお許しを

350 :PMS:2010/07/05(月) 19:11:15 ID:rEjGZ9sx

俺は今待ち合わせ場所にいる。これから人はデートとか言う事をする。相手は優だ。優は外見は女子に見えるし中身もMである。
でも所詮は男である。他人から見たら羨ましく見えるのだろう。(普通に出歩いていることについて)。
でも俺的にはホモに見られるのではないかと恐ろしく思っている。なぜ優とデートをする事になったかは昨日の昼休みのことであった。
教室で自分の机でクエスト内容見ていたら優が近付いてきていきなり電波みたいなことを言ってきやがった。「デートしようぜ」
この瞬間自分の耳を疑った。俺とデートだと?遊びに行くのではなく? 「誰がお前とデートするんだ?」
「雪と」こいつ笑顔で言いやがったよ。頭のねじ100本飛んだのか?そう思ってしまった。
「嫌だ!なぜいきなりお前とデートせなければいけない。それにPMSからの緊急のクエストだって来るかも知れないのに」
PMSはいつもは好きな時に仕事を選んで開始できるが時々緊急のクエストがあり人がたくさん殺してしまう可能性あるヤンデレがいる場合など危険度半端ない時に来る。
これは近くに居るPMSメンバーが処理する。危険度が高いヤンデレに関して 実弾も使用していい。むしろ俺を除き他の奴らは使わなければ対抗できない。
それはさておきこの馬鹿野郎をどうするべきだ。頭を抱えて考えっていたら「別にほっとけばいいじゃん。それより俺よりほかの奴らのほうが大切なの?」目を濁らせて答えにくい質問しやっがた。
「それに別に嫌だったらいいけど雪が欲しがっていたときめピー2のヒロインの限定ポスターあげないから。あ〜あもったいないなーほんともったいないなー」わざとらしく声をあげて言ってくる優。
俺はどうしてもポスターが欲しく仕方なく了解した。
てなことがあった。

351 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 19:11:37 ID:/szHLNsN
紫煙+sageて

352 :PMS:2010/07/05(月) 19:13:32 ID:rEjGZ9sx
しかしあいつが一向に来ない。もしかしてすっぽかされたとか。いやあいつに限ってそれはないな。あいつは約束事は守るほうだからな。
10分後・・・
いくら待っても来ないので帰ろうとしたら「おーい。まったー?ごめーん」とあいつの声が聞こえた。しかし周りにはあいつの姿がない。代わりにものすごい美人の女性がこっち方面向いて走っている。
周りをきょろきょろ探しているが見つからない。気が付いたらあの綺麗な人が目の間にいた。彼女は口を開きあいつの声で話してきた。
「なにきょろきょろしてるの!変な人に見られちゃうよ」俺はまさかと思った。彼女の顔じっくり見た。他人から見たら!するような顔で。そうすると美女からあいつの顔の面影が見えた。
しかしもしも間違えてしまったら面倒なので一応聞いてみる。「もしかして優?」彼女は笑いながら「そうだよ♪」と悪魔のような微笑みで笑った。
「ごめんねー。少しメイクや洋服選んでいたら遅くなっちゃって。そうだちょっと待って!」優はバックに手を入れてdvdを出した。
「はいこれ。雪が欲しがっていたやつ。」俺はそれ受け取った。タイトルはデュアルぱられるんるんstoryだった。「おおこれは第一巻じゃん。欲しかったんだ」
俺はそれをバックに入れそろそろ行こうぜと言って行こうとしたら手を握られて「手を繋いでいこ///」と言われてどきってなった。時刻は一時半。

同時刻とある島の施設にて

「奴が覚醒しやがった!どうすればいいんだっ!」
「あきらめるな。奴に現代兵器のレーザーやプラズマ弾や実弾を撃ちまくれ!殺さなければ俺たちが殺されるぞ。殺される前に殺すんだ!」
「「おおっーー!」」
pmsメンバー達は奴に実弾など撃ちまくり全員の弾薬が切れた。しかし奴は健在だった。むしろピンピンしていた。
「そんな物で私を殺そうなんて無駄無駄。仕返しよ。死になさい」
奴は手を上げて手に力を込めた時手が光その光を浴びたもの消滅した。
「ふふ。こんな物で死んじゃってつまらない人達。まあいいわ、雪待ってて3カ月後にそっちにいくわ。同じ力を持つ者だから一緒にいなきゃいけないのよ」
奴は手を上げて巨大な氷柱を作り天井に大きな穴を開けて飛んでいった。


353 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 19:16:24 ID:rEjGZ9sx
これで投稿終わりです。前回の優の扱いがあんまりだったので
なんとかしました。あとsageしているのですがもしかして出来てないですか?

354 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 19:18:41 ID:geRTgs+j
>>342
ならなんか書いてみろ
少なくともスレ見てるとお前のほうがよっぽど文才無さそうだが
本人のため?ハァ?
ただ批判しただけなのに?
お前がそこまで書く権利無いし バカなスレ書くな目障りだ
>>339
GJ

355 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 19:22:00 ID:rEjGZ9sx
psmのもです。すいません何回も329 意見ありがとうございます


356 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 19:24:38 ID:/mtQQ7VW
>>355
>>1にも書いてあるけどsage推奨であとトリつけたほうがいいかも
頑張ってください

357 :354:2010/07/05(月) 19:27:05 ID:geRTgs+j
>>349
なんか無視したみたいになって申し訳ない
いつのまにか更新されてたので
GJ!!

358 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 19:28:52 ID:5QZH/I2b
>>354
お前が言いたいのってスレじゃなくてレスのことじゃね?

359 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 21:53:16 ID:8q8i2rpw
>>354
アホ丸出しやね・・・・自分に文才がないからって・・・・ひがみですね

360 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 21:56:54 ID:m4ZjLzVC
今までの薄い経験から言わせてもらうと
書き物系のスレでは書き手さんは投下に努めてあんまり顔出さない方が無難かもね
時と場合とによるとは思うけど。

361 :サトリビト ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:15:45 ID:EReNh1BU
こんばんは。サトリビトを書いているものです。
何やら投下祭りらしいので、自分も参加させていただきます。
よろしくお願いします。


362 :サトリビト ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:16:36 ID:EReNh1BU
あれからどれくらいの時間が過ぎたのだろうか?
家を出たときはまだ人が歩いていたこの道も、今では僕一人しかいない。
「・・・姉ちゃん・・・」
自分のしたことは分かっている。もちろん、後悔もしていない。
だってこれは姉ちゃんのためなんだから。
しかし頭では理解できたが、体の方は理解できていなかった。
目の前には見慣れた我が家。
結局のところ、僕の居場所はここだけのようだ。
玄関のノブに手を掛ける。
今は午前3時を過ぎていた。きっと姉ちゃんも寝ているころだろう。
できるだけ音を立てずにドアを開ける。
その先、家の中の明かりはすべて消えていた。音も聞こえない。心の声さえも。
「・・・やっぱり寝てるか」
姉ちゃんがいないことを確認した後、目的の物を探すことにした。
案の定、それは予想通りの場所から出てきた。
ゴミ箱に入っていたそれは原形をとどめておらず、周りには他のゴミも付いている。
でもそれを口に入れることにためらいはなかった。
姉ちゃんが僕の事を思って作ってくれたおにぎり。例えゴミ箱から出てこようとその事には変わりないのだから。
まるで何日も食べていないかの如く、僕はそれに喰らいついた。
はっきり言って食べれたものじゃない。
今度はご飯が固すぎる。固くて噛むのに一苦労する。
でも僕にとっては最高においしかった。次から次へと手が出てしまうくらいに。
とそのとき、後ろで何かが動いた。
心臓を跳ね上げて振り返るが、誰もいなかっ―――いや何かいる。
ソファの上に何か大きなものがある。
恐怖に駆られて電気をつけると、そこには信じられない光景が映し出されていた。
「・・・ぃ・・・・・・・・は・・・・らい・・・・・」
「ね、姉ちゃん!?一体いつからそこにいたの!?」
ソファに座っていたのは紛れもなく姉ちゃんだった。
だがどこか様子がおかしい。
「・・・は・・・らい・・・慶太は・・・が嫌い・・・慶太はウチの事が嫌い・・・慶太は・・・」
電気をつけたことにも気が付いていないように、そして僕にも気付いていないように、ずっと姉ちゃんは膝を抱えて震えていた。
同じ事を呟きながら。
「お、おい・・・」
「慶太はウチの事が嫌い・・・慶太はウチの事が嫌い・・・慶太はウチの事が嫌い・・・」
姉ちゃんの様子はまるで、あのときの恭子ちゃんそのものだった。
僕の大嫌いという言葉がそれほど姉ちゃんを傷つけたのか?
何か大事なものが壊れてしまった気がする。それも一つじゃなくいくつも。
それほど今の姉ちゃんは別人だった。
だけど僕にはどうする事も出来なかった。
今はつらいかもしれないけど、ここを乗り越えたらもう僕の事で悩まなくなる。
もう・・・僕の事なんか興味がなくなる・・・んだよね・・・
姉ちゃんを一人リビングに残したまま、僕は自室に戻って行った。

363 :サトリビト ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:17:06 ID:EReNh1BU
だが姉ちゃんの事が気になって結局眠れなかった。
そのまま朝を迎える。
僕が部屋に戻ってからも姉ちゃんが2階に上がってきた気配はなかった。
眠たい目をこすりながらも階段を下りていくと、やはりというか姉ちゃんの声が聴こえてきた。
(慶太はウチの事が嫌い・・・慶太はウチの事が嫌い・・・慶太はウチの事が嫌い・・・)
だがそのセリフはやはりどころではなかった。
僕は慌ててリビングに向かう。
そして・・・数時間前と同じ格好でソファに座っている姉ちゃんの姿を見つけた。
驚いたなんてもんじゃない。あまりの異様さに、夢じゃないと気がつくのに時間を要したくらいだ。
「姉ちゃんっ!」
だが今回は僅かながらにも僕の声に反応を示してくれた。
姉ちゃんは声の聞えた方に向こうと視線を彷徨わせる。
そして僕を見つけた。
「あ・・・慶太・・・」
(あれ・・・?慶太はウチの事が嫌いになって・・・出て行ったんじゃ・・・?)
「・・・ただいま」
「っ!?」
(慶太が言葉を返してくれた・・・ただいまって言ってくれた・・・!)
姉ちゃんは徐に立ち上がると、フラついた足で僕に近付いて来た。
「あ・・・あぁ・・・お帰り・・・慶太・・・」
(そうだよ・・・慶太がウチの事を嫌うはずないじゃないか・・・だってあの時、ウチの事好きだって言ってくれたじゃないか・・・)
ゆっくりとだが一歩一歩確実に、まるで昨日の夜にできた溝を埋めていくように、こっちに向かってくる。
揺らいでしまう気持ちを抑え込むかように、そんな姉ちゃんを僕は拒絶した。
「勘違いすんなよ。ただ学校があるから帰ってきただけで・・・姉ちゃんを嫌いな事に変わりはないから」
痛む心をおくびにも出さず淡々とそう告げる。
「・・・一日で姉ちゃんの事、好きになるわけないだろ」
「あ・・・あぁ・・・」
(そんな・・・一体ウチが何したって言うんだよ・・・!慶太のためにおにぎり作っただけだろ・・・!)
「っ!・・・こ、これからは学校で話しかけてくんなよ!」
「な!?・・・」
(・・・なんでだよ・・・なんでいきなりそんな事言うんだよ・・・!)
姉ちゃんがすごい形相でこっちに歩み寄ってきた。
殴られる事を覚悟したその時、突然姉ちゃんの姿が視界から消えた。
いや、なんてことはない。ただ―――あの姉ちゃんが僕に頭を下げただけだった。

「悪かった!お前に暴力をふるった事、悪かった!謝るから・・・謝るから、そんな事・・・言わないで・・・お願いだから・・・」

姉ちゃんが頭を下げた姿を初めて見たかもしれない。
いつも天上天下唯我独尊な生き方をしていた姉ちゃんだ。
そんな姉ちゃんが頭を下げた。
それの意味する事は僕が誰よりも理解できる。
だからこそ、僕はこう答えた。
「ふざけんな!今さら謝られて、はいそうですかってなるか!いい加減にしろよ!」
「足りないのならもっと謝るから!何でもするから!だから・・・ウチのこと嫌わないでくれよ!」
「無理だっつってんだろ!お前なんか大嫌いだ!」
「・・・どうしても・・・ダメか・・・?どうしても・・・ウチのこと・・・嫌いにしか・・・思えない・・・か・・・?」
(嫌だ・・・慶太にだけは・・・他の誰に嫌われてもいいから・・・慶太にだけは・・・)
「ぐっ・・・思えない!嫌いにしか思えない!もう家でも俺に話しかけてくんなよ!」
「・・・そっ・・・か・・・」
(もう駄目だ・・・完全に・・・嫌われてる・・・)
それを機に僕たちの間で会話がなくなった。
朝ごはんのときも、家を出る時も、姉ちゃんが僕に話しかけてくる事はなかった。

364 :サトリビト ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:18:12 ID:EReNh1BU
「今朝何があったの?」
いつものように陽菜を迎えに行った際、開口一番にそう訊かれた。
「・・・え?なんで?」
「さっき、慶太の家から大声が聞こえてきたから・・・嫌い、とか」
「あぁ・・・聞こえてたのか。・・・実は―――」
僕は昨日の晩から今までに起こった事を全部話した。
陽菜にこんな事を話して、僕は一体どうしたいのだろうか?
慰めてもらいたいのだろうか?それとも・・・
僕の言葉に神妙な面持ちになった陽菜は、それから考え込んでしまった。
気まずい沈黙が続く。
そしてそろそろ耐えられなくなってきた僕を察するように、陽菜は口を開いた。
「慶太ってさ・・・私の味方なんだよね?私の事・・・何があっても助けてくれるんだよね?」
「え?」
質問もそうだが、なにより陽菜の表情の変化の方が唐突だった。
「・・・最近の慶太って、なんだかいい加減だな〜」
「!」
「だってそうでしょ?結局、慶太はみんなにどうなってほしいの?」
「お、俺はただ全員が不幸にならないようにって―――」
「そんな抽象的な事聞きたいんじゃないの!もっと具体的にどうしたいのよ!どうなってほしいのよ!」
「っ!?」
具体的。そう言われると何も浮かんでこない。
「もしかして・・・最後には私にも冷たくするの?」
「そ、そんなことない!俺は何があろうと絶対に陽菜の味方になる!」
「・・・今の慶太じゃ信じられないよ」
「・・・」
確かに陽菜の言うとおりだ。言ってる事とやってる事が大きく矛盾してるんだから。
そんな奴のセリフのどこに重みがあるって言うんだ。
「・・・どうすればいいのかな・・・どうすればよかったのかな・・・?」
もう子供じゃない。こんな大事なことは自分で考えて行動するしかないと分かっている。
でもその先が全く分からない。
僕の焦燥しきった顔にあきれ果てたのか、はたまた同情したのか、陽菜が語り始めた。

「・・・一人の人間が幸せにできる人間の数は一人だけ。どんなに綺麗事を言ったとしても・・・たった一人しか幸せにできない。何人
もの幸せを願ったら、一人も幸せにできないんだよ。もし慶太にとって特別な人がいないのなら、別に構わないのかもしれない。だけど慶
太にとって本当に大事な人がいるんなら、その人の事だけを考えないといけないんじゃないの?その人がどんな事をしたら喜ぶか、どんな
事をすればその人が幸せだと感じられるか、そう言う事をもっと考えなくちゃいけないんじゃないの?」

「ま、私の考え何だけどね」と最後は軽口で締めくくった。
だが僕にはなぜか有無を言わさない重みを感じた。
たった一人・・・それ以外は幸せにできない。
確かにそうかもしれない。
恭子ちゃんや岡田、そして姉ちゃん全員の希望をかなえる事は出来ないのだから。
「ありがとう、陽菜。肝に銘じておくよ」
「どういたしま―――っ!?」
会話の途中で急に陽菜の目が見開いた。
「ごめん慶太!私今日風邪で学校休むって事にしといて!」
そしてそのままどこかに走り去ってしまった。

365 :サトリビト ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:19:16 ID:EReNh1BU
学校に着き自分のクラスに入ると、僕の横の席に姉ちゃんがいた。
いや、正確には今朝の姉ちゃんと同じ表情をした岡田だった。
「あ!早川・・・君、おはよ・・・」
「・・・おはよ」
無愛想に挨拶を返す僕に岡田はどう感じただろうか?
席に着いてから一度も岡田の方を見ようとしない僕に岡田はどう思っただろうか?
(どうしよう・・・やっぱり冷たい気がする・・・)
岡田がチラチラと僕の様子を窺うように見てくる。
(それとも私の勘違いかな・・・声・・・かけても大丈夫かな・・・?)
「・・・そ、そう言えば陽菜ちゃんは?今日は一緒じゃないんだね?」
「・・・今日は風邪をひいたから休むんだって」
「そ、そうなんだ〜・・・」
「・・・」
会話が終わる。
もしクラス全員がサトリだったら、僕はあっという間に非難されただろう。
それくらい―――岡田は心の中で泣いていた。

授業が終わり下校組と部活組とが分かれる時間がやってきた。
下校組の僕が帰ろうと席を立つと、隣から声をかけらる。
「これから陽菜ちゃんのお見舞いに行くの?」
今朝の陽菜は明らかに風邪をひいたとは思えないくらい元気だった。
あの様子からすると、きっと今日しか売ってない物とかを買いにでも行ったんだろう。
だから陽菜の家に行くつもりはなかったが、岡田がそう訊いてくるなら僕の予定は変更だ。
「そうだけど?」
「あ・・・あはは!そ、そうだよね〜!なんたって愛しの陽菜ちゃんが寝込んでるんだもんね〜・・・」
(な、泣いちゃだめ!あきらめないって決めたんでしょ!ここで泣いたら・・・あの子に負けを認める事になる・・・!)
ごめん岡田。僕は決めたんだ。これからは陽菜の事だけを考えていくって。
「・・・もう行ってもいいかな?」
「え?・・・う、うん!な、なんか変な事言ってごめんね!」
(・・・どうして・・・どうしてあの子の事がそんなに好きなの・・・どうして・・・私じゃないの・・・)
岡田は泣いてこそいなかったが、その手は小刻みに震えていた。
こんな時どうすればいいか僕にだってわかる。サトリじゃない普通の人だって分かるはずだ。
でもそれはきっと間違いだ。
僕には陽菜を不幸にすることはできない。
「じゃあな」
そう告げて帰る・・・つもりだった。
「待てよ早川。ちょっとついて来いよ」
だけどできなかった。
なぜか太郎君が僕の腕を強引につかんで引っ張っていったからだ。
太郎君は目的地も明かさないまま、教室を出て、階段を上がっていった。
「ここらへんで・・・いっか」
屋上につながる扉の前。僕たち以外誰もいない空間。
そこで僕は胸倉を思いっきりつかまれた。
「いいかげんにしろよ!」


366 :サトリビト ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:19:51 ID:EReNh1BU
「・・・何の事?」
「とぼけんな!さっきお前と岡田の話を聞いたんだぞ!」
「それが・・・何だって言うのさ?」
「お前と岡田は付き合ってんだろ!それなのに佐藤の家に一人でお見舞いに行くなんて・・・てめぇ何考えてんだよ!」
ここでようやく太郎君が僕を呼び出した理由が分かった。
「何って・・・お見舞いだって聞いたんだろ?」
「俺は彼女を置いて他の女の家に行く事を言ってんだよ!」
太郎君は今までに見たこともないくらい激昂していた。
きっとそれほどまでに岡田の事が好きなんだろう。だからそんな岡田を悲しませている僕が許せないのだろう。
その時、僕達の後をついてきたのか岡田が現れた。
「ちょっ、何やってんのよ二人とも!」
岡田は僕たちが喧嘩しているように見えたみたいだ。実際、間違ってはいないのだが。
「さっきの二人の様子がおかしかったから後をつけたら・・・何で喧嘩なんかしてるの!?」
信じられないといった表情で僕たちを見つめてくる。
「コイツが岡田と付き合ってるのに、のこのこと一人で佐藤の家に行くって言ったから・・・」
「そ、それは太郎君には関係ないじゃない!」
「関係ないけど・・・けど俺は岡田が好きなんだ!だからそんなことを淡々と告げたコイツが許せなかったんだ!」
「っ!?」
あまりの出来事にこの場にいた全員が口をつぐんだ。
そしてさっきまでの勢いを完全に失った太郎君は、辛苦の目を岡田に向けながら思いの丈を打ち明ける。
「そうだよ・・・俺は岡田の事が好きだ・・・なぁ、岡田もこんな奴の事諦めて俺と付き合わないか?」
太郎君の目が真剣なものに変わっていく。
「俺は絶対にこんなことは言わない・・・だから・・・」
「・・・ごめんなさい」
申し訳なさそうに岡田はそう答えた。
僕もいたたまれなくなり俯いてしまった。
だから一瞬反応が遅れた。
「なんでだよ!」
太郎君が岡田の肩をおもいっきりつかんだのだ。
「俺よりこんな奴のどこがいいって言うんだよ!」
「あ・・・あぁ・・・」
「頼むよ!絶対に後悔はさせないから!」
太郎君は自分の事でいっぱいになっていたから岡田の変化に気が付いていない。
「・・・あ・・・ぅあ・・・」
「やめろ!」
思いっきり太郎君を突き飛ばす。
「な、何すんだよ!?」
今にも殴りかかってきそうな太郎君を無視して、僕は岡田をなだめる。
「大丈夫だ!ここには岡田を傷つける人は誰もいない!」
「・・・あ・・・ぅあ・・・」
(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い・・・)
「ほら、ちゃんとこっちを見て!俺だよ!分かるだろ?」
「・・・は・・・早川・・・?」
「そう早川!だから何にも怖い事ないだろ?」
「・・・う・・・うん・・・」
岡田がぎゅっと僕の制服を掴む。
「お、おい、今のって―――」
「ごめん、太郎君。この事は誰にも言わないで帰ってくれないか?」
今までしてきた事を考えたら、僕が口にしていいセリフでもなかったが、それでも岡田をこのままにはできない。
「お願いだから・・・この事は内緒にして帰って下さい」

367 :サトリビト ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:20:28 ID:EReNh1BU
「もう大丈夫か?」
「う、うん、ごめんね?『また』助けてもらっちゃって・・・」
あれから太郎君は僕のお願いを聞いてくれた。
そうして今はこうして二人っきりになっている。
「・・・なら帰るか」
さすがに『あの』状態になった岡田を一人で家に帰すのは危険だ。
これでは朝陽菜に誓った事に反することになるが、でもやっぱり岡田を見捨てる事はできなかった。
「あ!ち、ちょっと待って!」
岡田は立ち上がろうと足に力を込めるが、なかなか立ち上がれそうにはなかった。
「あ、あはは///腰が抜けちゃった・・・みたい・・・」
恥ずかしそうに顔を赤く染める岡田を見たのは初めてかもしれない。
それからもチャレンジをするが、一向に腰が上がらなかった。
そんな岡田の前に、僕は背中を向けた。
「・・・え?」
「嫌だったら別にいいけど・・・おんぶ」
「う、ううん!ぜ、全然嫌じゃない!」
岡田の手が僕の首にかかった事を確認して一気に立ち上がる。
「わ、わわ!・・・っと」
なんとか岡田の方もバランスを取るくらいはできたようだ。
「歩けそうになったら言えよ?さすがに誰かに見られるとまずいからな」
「う、うん、分かった!」
僕は背中に岡田を感じながらゆっくりと階段を下りて行った。
その間、久しぶりだった岡田の嬉しそうな声を聴きながら・・・


「ありがとう。もう大丈夫だよ」
玄関まで来た時、岡田はそう言った。
岡田を下した背中が、なぜかさびしく感じる。
「せっかく陽菜ちゃんのお見舞いに行くつもりだったのに・・・私のせいで・・・ごめんなさい」
(どうしよう・・・さらに慶太に嫌われちゃったかな・・・)
岡田の言った陽菜と言う言葉に、僕はある事が気になった。
この世で幸せにできる人間はたった一人だけ。陽菜が僕に教えてくれた摂理。
それに対しての岡田の答えが無性に訊きたくなったのだ。
「・・・なぁ、もし・・・もしもこの世で一人だけが幸せになれるとしたら・・・誰にそうなってほしい?」
「え?」
「友達?家族?恋人?それとも・・・命の恩人?」
「う〜ん・・・難しい質問だな・・・全部はダメなんだっけ?」
「一人だけで」
岡田はそれから必死にその質問に考え込んでいた。
僕の質問一つに対してでもこんなに真剣になって考えてくれる。
そんな岡田の気持ちが嬉しかった。
当の本人は結局、自分の家についてもはっきりとした答えを出さなかった。
「多分好きな人なんだろうけど・・・命の恩人も捨てがたいな・・・」
「いや、そんなに考え込まなくてもいいよ。どうせくだらない質問なんだから」
「待って!思いついた!」
岡田は自信満々に答えた。
「やっぱり全部だよ!」
「だからそれはなし―――」
「ううん!慶太が言ったのは『たった一人』でしょ?なら友達でもあって家族でもあって恋人でもあって命の恩人でもある人だよ!」
岡田の出した答え。
それは僕にとって予想外の答えだった。

368 :サトリビト ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:20:58 ID:EReNh1BU
岡田を送った後、僕は自分の家に向かっていた。
ずっと一つの事を考えながら。
友達でもあって家族でもあって恋人でもあって命の恩人でもある人。
確かに全部該当する人がいれば間違いないかもしれない。
でもそうだと陽菜は不適合になる。陽菜は家族ではないし、ましてや恋人でもない。
なら僕が陽菜の事だけを考えるのは間違いなのか?
「・・・分からない・・・」
そうやって考え込む間に家に着いてしまった。
家に着いたという事はまた姉ちゃんと顔を合わせると言う事。
憂鬱な気持ちになりながらも家に入る。
「・・・ん?」
いつもなら玄関に脱ぎ捨ててあるはずの姉ちゃんの靴が見当たらない。
僕が学校から帰るころには、必ずと言っていいほど家にいるはずなのに。
なぜか嫌な予感がする。
「姉ちゃん!」
叫んでもやっぱり返事はない。
嫌な汗が止まらない。
とにかく姉ちゃんの部屋に直行する。もし中にいたらぶち殺されるかもしれないが・・・
「姉ちゃん!」
叫ぶと同時にドアを開ける。
やっぱり誰もいない。
「くそっ!・・・ん?」
だがベッドの上に置いてある一通の便箋が目に入る。
咄嗟に手を取って中を見る。
「っ!!そ、そんな・・・嘘だろっっ!?」
僕は帰ってきたばかりにもかかわらず、慌てて家を飛び出した。
部屋に残された便箋にはこう書かれていた。

[慶太へ

 今まで本当に迷惑をかけたな

 謝ってすまないかもしれないけど、本当にごめん

 もう2度と慶太の事殴ったりしないから
                                    
 もう2度と慶太にクソ不味いご飯喰わせたりしないから

 もう2度と慶太の目の前に現れないから

 そして今度生まれ変わったときは、お前に優しくするよ

 だから、その時はよろしくな! 

 p.s.

 嘘でも慶太がウチの握ったおにぎりをおいしいって言ってくれた時、すごくうれしかったよ
                                                  
                                                  祥子]


369 :サトリビト ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:22:29 ID:EReNh1BU
以上投下終了です。
読んでくださった方ありがとうございました。

そして本日はパラレルの方も連続で投下します。
よろしくお願いします。

370 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:23:28 ID:EReNh1BU
「只今よりベスト・ドレスアップ・コンテスト女性の部本戦を行います」
「「「「「「「「「「「「うおっっっーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」」」」」
ワールドカップの決勝でも始まるかのような歓声が会場全体に響き渡った。
異様な熱気。轟く地鳴り。しびれた僕の体。
「僕はいつまでしばられているんだろう・・・っと余計なことは考えちゃだめだったな」
僕の飲まされたもの・・・それは思った事が口に出るという、僕史上最恐の化学兵器だった。
「では本戦開始前に、ここでルールを説明します。まず本戦の仕組みですが、それぞれ3つのお題を課せられ、その中で合計得点の高かった
人が優勝となります」
「ふ〜ん、でかい大会の癖に普通なんだな・・・」
「・・・え〜、ゴホン・・・次に審査ですが、今回はこちらが特別に用意した審査員の個人的主観によって行います」
「お!この司会者チャック全開だよ!超ウケ・・・ご、ごめんなさい」
「・・・・・・・・・・・・・それでは審査員を紹介していきます。私から向かって右側は・・・」
司会者が何気ない素振りでチャックを閉めながら仕事をこなしている。
会場の目は彼に同情の視線と、僕に「アイツさいて〜」という視線を送っていた。
でもさっきも言ったと思うけど、現在の僕は椅子に縛られているのだ。
口をふさがせないため、そしてここから逃げないようにするため。
だからこれはしょうがない事なのだ。
「そして最後は・・・本日のメインゲスト、ガービッジ・オブ・レジェンドこと早川慶太君です」
どこかカッコイイ響きの肩書きで紹介されたが、意味は最低だ。
「「「「「「「「「「ブッーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」
分かっていた。こうなる事は分かっていた。
「だけど・・・あんまりじゃない?僕だって一人の人間。心ってものが・・・感情ってものがあるんだよ!!」
だがブーイングは鳴りやまない。
それにいらだった僕は過ちを犯してしまった。
「ったく、嫉妬は醜いんだよ!!この負け組どもめが!!・・・あれ?僕ってばこんな事考えたっけ?なんで口―――!?」
ボカッ!グシャ!ドスッ!
・・・バタッ・・・
「ふぅ〜!いい汗かいた!それではいよいよ予選を勝ち抜いた絶世の美少女達の入場だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
最後にそんな言葉が聞こえた気がした。

371 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:24:19 ID:EReNh1BU
「・・・もうすぐだなぁ〜」
私は元来、こういうコンテストにはまったく興味がなかった。だって他の人からどう思われようと関係ないのだから。
だけどこうして出場し、本気で優勝を狙っている。

この大会で優勝することができたら、お兄ちゃんを一人占めできる。

そう考えただけで体がポカポカしてくる。
「まずは何してもらおっかな・・・」
頭をナデてもらうのもいいかもしれない。
やっぱりおもいっきり抱きしめてもらおっかな?
それとも―――

慶「おいで、恭子」
私「う、うん・・・///」
恥じらいながらもお兄ちゃんに近づいていく私。
そしてある程度の距離になったところでお兄ちゃんがいきなり私に抱きつく。
私「ひゃっ!」
慶「ほ〜ら、捕まえた☆」
私「・・・あぅ・・・///」
慶「あ〜・・・やっぱり俺の恭子は世界一かわいいな・・・もう離したくないよ」
私「そ、そんな・・・か、かわいいだなんて///」
慶「なぁ恭子・・・お前、俺だけの女になれよ」
私「っ!?」
慶「いいだろ?俺はもうお前なしでは生きていけないんだよ」
私「・・・ぇ・・・っと・・・///」
慶「フフ、これでもまだ迷うの・・・か?」
私「きゃっ!ちょ、どこさわってるんですかぁ!///」
慶「嫌か?恭子は俺に触られるのは嫌か?」
私「!・・・嫌・・・じゃないです・・・けど・・・」
慶「他の女なんてどうでもいい。お前さえいてくれたら、もう何も、誰もいらないよ」
私「ほ・・・本当です・・・か・・・?///」
慶「あぁ誓うよ。俺は恭子だけを愛してる。一生、お前だけを愛するぜ!」
私「ふああぁぁ・・・私も・・・お兄ちゃんだけを愛しています!」
慶「恭子!恭子!恭子!」
私「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
そして・・・そして私たちはそのまま―――

「な、なんちゃって〜///」
いけない。あまりの悦楽にトリップしてしまいそうになった。
もうすぐ本番が始まるんだから、しっかりと準備を整えなくっちゃ。
「早川恭子さーん。まもなく本戦が始まりますので、スタンバイの方お願いしまーす」
「あ、はーい!」
待っててねお兄ちゃん!必ず優勝してあげるからね!
そしてその時は―――兄妹を超えた究極の家族になろうね!

372 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:24:44 ID:EReNh1BU
控室で私は一枚の写真を手に取る。
それは慶太の寝顔。
宿に泊まった時の慶太の寝室は悪魔どもによって難攻不落になっているが、野宿となればそんな事はない。
その時撮った写真は私の宝物。きっとこれからもずっと。
「慶太、私頑張るからね?応援ちゃんとしてね?」
写真にキスをする。
たかがラミネート加工された紙の癖に、私に形容できない幸福感を与える。
「えへへ〜♪優勝したら慶太は何て言うのかな〜?」

慶「お前が優勝するのは分かりきっていたけど、おめでとう結衣。これで名実ともにお前は俺のものになるんだな」
私「え?ものって・・・?」
慶「分かんないのか?ったく・・・いいからこっち来いよ」
私「な、なんだか慶太ってば怖いよ・・・?」
慶「いいから来いっつってんだろ!俺の言う事が聞けないのかよ!」
私「ご、ごめんなさい!!」
慶「だめだ。お仕置きだな。後ろを向け」
私「な、何するつも―――あっ!」
慶「おい、何座ろうとしてんだよ!俺がいつ座っていいって言ったんだよ!」
私「で、でも・・・ふぁ!あっ・・・まっ、まって!は、激しっ、いっ、よっ!」
慶「ふん!これくらいで根を上げんじゃねぇよ!本番はここからなんだからな!」
私「いいっっ!?あっ!だ、ダメ!!ダメだってっ、あっ、だ、だ、あ・・・あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
慶「いいか!お前は俺のおもちゃなんだからな!勘違いするんじゃねぇぞ!」
私「あぁぁ・・・は、ハイ・・・私は・・・慶太のおもちゃ―――あんっっ!!!」
慶「誰が呼び捨てで呼んでいいなんて言った!?俺の事は慶太様って呼べよ!」
私「あ・・・す・・・すいません・・・慶太・・・様・・・」
慶「そうだ!良く言えたな!そんなおもちゃには褒美をあげないと・・・なぁ!!」
私「あんっっ!!だ、だから、激し、す・・・ぎっ!ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
慶「とどめだ!」
私「ひゃああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「でへ♪・・・っは!わ、わたしったら///」
気がついたら服を脱ぎ散らかしていた。口からは涎も垂れている。
何やってるんのよ私・・・
いそいそと服を着て化粧の続きに戻る。
それにしても慶太は凄かった。
二次元で見ても、妄想の世界でも、私を幸せにしてくれる。
もしこれが現実の世界で起こったら私は耐えられるのだろうか?
「まずいな・・・今からでも心の準備をしとかないと」
あと数時間後には確実に現実になるのだ。
「早川結衣さーん。まもなく本戦が始まりますので、スタンバイの方お願いしまーす」
え!?もうそんな時間なの!?
「も、もうちょっと待ってもらえます?」
「いえ、無理です。早くしないとこちらからドアを開けますよ?」
「ま、まって!」
私はろくに着替えてもいないし、顔だってですっぴんだ。だから絶対に開けるな!
「・・・開けさせていただきます」
い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

373 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:25:16 ID:EReNh1BU
「さてと・・・どうしましょ?」
勢いで私も参加してしまったけど、一体どうすればいいのでしょうか?
一応私も女なのだから美を競うコンテストで優勝したい気持ちもあるのですが、もしそうなってしまった場合、慶太さんを陽菜さん達から
奪ってしまう事になります。
私のせいでパーティの仲を険悪にするのは不本意です。

・・・コン、コン・・・

おや?誰か来たようですね。
「は〜い、どなた―――っ!?」
「やっぱり・・・祥子お姉さまでしたか」
え・・・まさか・・・
「僕です。弟の山田輝です」
そ、そんな・・・
「先ほどの予選で見たときに気がつきました。やっぱり姉さんだったんだね」
私は涙を流しながら驚きました。
「・・・俺も・・・姉さんにまた会えてうれしいよ」
目の前の少年も涙を流していました。
でも私のそれとは意味が違います。
私が泣いてしまった理由―――それはこんなにも弟がさえない男に成長していたことです。
たしか記憶ではもっとかわいらしかったと思います。
それなのに・・・なんですか、このインテリぶってるけど実はロリコンっぽいオーラは。
そうです。こんな奴は私の弟なんかじゃありません。
「また一緒に暮ら―――」
「黙りなさい。あなたなんて弟じゃありません」
「な、何言ってるのさ!正真正銘僕は弟ですよ!?」
「いいえ。確かに私には弟がいますけど、それはあなたではありません。慶太君です」
「弟に君付けなんておかしいだろ!?それにアイツの名字は早川だろ!?」
「・・・今から私の名前は早川祥子です」
「ふざけないで下さいよ!僕はずっっっっっと姉さんの事を探し回っていたんですよ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うるせぇな」
「へ?」
「・・・うるせぇって言ってんだよ!百打留子!」
「うっ!」
まったく、なんて聞きわけの悪い子なのでしょう。親の顔が見てみたいものです。
「山田祥子さーん。まもなく本戦が始まりますので、スタンバイの方お願いしまーす」
「分かりました。あ、ところで一つ伺いたいのですがよろしいでしょうか?」
「いいですよー。なんですか?」
「私の名前なんですが・・・山田祥子から早川祥子に変更していただけないでしょうか?」
「?分かりました」
フフ、待ってて下さいね慶太君♪
この大会が終わった頃には本当の姉弟になりましょうね?

374 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:25:43 ID:EReNh1BU
あ〜退屈。
慶太と一緒にいられないなんて退屈以外のなにものでもないわ。
「あ、あの〜・・・」
それにしてもあのクソガキ、よくも人のものに向かって大好きとかほざきやがったな。
「え〜っと・・・陽菜様・・・?」
結衣とかいう他の男に媚びるビッチは置いといても、祥子の方は油断できない。現にさっきの慶太も少しあの女に魅了されていたし。
「わ、私はいつになったら会場に戻れるのでしょうか・・・?」
「あ〜もう、うるさいな!」
「ヒィッ!ご、ごめんなさい!」
何かの役に立つかと思ってここに連れてきたけど、もういっその事憂さ晴らしに・・・あ、そうだ!
「ねぇ太郎君、私が毎日あげている姿が戻るキノコの粉末・・・これを一日1gから5gに増やしてあげようか?」
「ほ、本当ですか!?」
やっぱりこの男は単純だ。
「そのかわりね?・・・」

・・・ごにょごにょごにょ・・・

「っ!?そ、それはさすがに・・・」
「できないの?なら眼羅象―――」
「いえやります!僕にやらせてください!」
「フフ、ありがと♪」
我ながら良い作戦を思いついた。
太郎君を部屋から追い出した後、準備に取りかかる。
現時点で私はあの3人に容姿が劣っている。これは紛れもない事実だ。
ならどうやってこのコンテスト勝ち抜く?
答えは簡単。あいつらの容姿を悪くすればいいだけの話。
「フフフ・・・」
楽しみだな。
あの慶太があの3人をまるで豚でも見るかのような視線で見つめたとき、アイツらはどう思うだろう?
絶望する?発狂する?
いっそのことそのままショック死すればいいのに♪
「アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
「ど、どうかされましたか!?」
「っ!い、いえ、なんでもないですよ〜?」
危ない危ない。
「ならいいんですが・・・あ、佐藤陽菜さん。まもなく本戦が始まりますので、スタンバイの方お願いします」
「は〜い、今いくね〜」
醜い自分を奥に引っ込めてから、私はゆっくりと部屋をでた。
待っててね慶太。
あの豚共を処理した後で、至福の時間を過ごさせてあげるね♪

375 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:26:47 ID:EReNh1BU
僕が目を覚ました時、綺麗な女性が5人いた。ただ一人は即席で化粧していたのがバレバレだったが。
「おや?やっと審査員の一人が目を覚ましたようなので、これより第一ステージの説明をしたいと思います」
急な展開についていけない。
「えっといき―――」
「「「「「「「「「黙れ!」」」」」」」」」」
まだ5文字しかしゃべってないのに怒られた。
「最初は『自分の恋愛話』対決!各々の恋愛自伝を語っていただき、より可愛らしさ、一途さ等を競っていただきます。ちなみに審査は個
人的主観なのでそこのところはよろしく」
「ずいぶんと適当なんだな」
「そしてここからが重要なところです。審査員一人のポイントは1点が原則なのですが、今回は特別!慶太君のポイントは10点分とします」
「なに!?審査員は5人しかいないのにか!?」
「それでは予選通下位から順にお願いします!」
「ま、待ってよーーー!!」
どうやら僕の意見はここでも通らないらしい。
「・・・一体僕って・・・」

姉ちゃんは今まで恋愛をしたことがないようで今回は棄権した。
「よかった・・・もし姉ちゃんに好きな人がいたなんて聞いたら僕は死んでしまうかもしれない」
「あら、慶太君ったら・・・それはどういう意味かしら?」
「だってお姉ちゃんが僕以外に目を向けるなんてそんなの・・・た・・・たえ・・・られ・・・ない」
この毒は信じられないくらい強力だった。
なんせ大魔王様達の邪眼をまともに喰らったのに、まだこんな発言をしてしまうのだから。
「どうやら慶太君は祥子お姉ちゃんの事が大好きなようですね!」
司会者がニヤニヤしている。
「成程・・・これが目的か・・・」
どうせ死ぬなら楽に逝きたい。
「そうだよ!僕は祥子姉ちゃんが大好きさ!愛してると言っても過言ではない!」
会場全体が目を見開いた。
「どうだ!ついに言ってやったぞ!フハハハハハ・・・ハハ・・・ハ・・・や、やっぱり死にたくないよ〜!」
渾身の力をもってしても、僕を縛る縄はほどけない。
「た、助けてよみんな!助けてよお姉ちゃーーーーん!」
「そ、そんな・・・///あ、愛してるだなんて・・・///」
「・・・お、終わりだ」
姉ちゃんが助けてくれないとなった今、僕は死を覚悟した。
だが予想に反して3人ほ女性は微笑んでるだけで何もしてこない。
「慶太ったら・・・かわいそうに、芽堕派煮でもかけられたのかな?ウフフフフフ・・・」
「お兄ちゃん・・・もう少しだけ待ってて下さいね?エヘヘヘヘヘヘヘ・・・」
「慶太も随分と高度な恋愛テクニックを使うようになったね♪でもね?程々にしといた方がいいよ?アハハハハハハハ・・・」
「・・・ごめん、お願いだからもう焼いて?そんなセリフを笑顔で言われるくらいなら、もういっその事地獄の業火で焼きつくして?」
そんなこんなで序盤中の序盤が終わった。
まだ4人残っている。それに2つのステージ分を入れると合計14回。
「・・・よし!薬草がまだ15枚残ってるぞ!なんとかいけそうだな!・・・あ、しばれてるからどうせ食べれないのか」
・・・てへっ☆


376 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:28:37 ID:EReNh1BU
「続きましてイルカ姫の登場です!」
ごく一部から歓声が上がる。
それもそのはず。この姫様とやらは全くと言っていいほど胸がない。
こんなのに歓声を上げるのはごく一部、僕の知っている中では山田君くらいだ。
「主らは幸せじゃな!よもやこのわらわの恋情を知ることができるとはのぉ!」
「なんだあの胸なし?ものすごく偉そうだ・・・ごほんっ!」
「・・・ほう?お主、その胸なしとは誰の事を指しておるのじゃ?」
「あんた・・・以外・・・にいるか!ってこの毒は思った事だけじゃなく、僕の本音も勝手に言っちゃうの!?」
不気味に笑う司会者。
「マジでお前死ねよ!」
「・・・・・・・・・お主・・・・・・・・・いい度胸じゃな・・・・・・・?」
「いや、まって、命だけは・・・!」
こっちに歩み寄るイルカさん。
「まぁまぁ落ち着いて?慶太も冗談で言ってるんだから?」
なぜかものすっごい笑顔の陽菜と岡田。
それに比べて深刻な顔で自分の胸をもんでいる恭子ちゃん。
「お兄ちゃんは・・・やぱり大きい胸の女の人の方が・・・いいんですか・・・?」
「え?僕は胸なんかで女の人を判断したりしないよ?ま、顔では判断するけどね」
世界中の女性に殺されそうなセリフを言ってしまった。
会場全員が、味方のはずの陽菜たちまでが、どこか遠いところに行ってしまった。
「・・・お主・・・最低じゃな・・・」
イルカさんの言葉に観客が頷く。
「誰も顔だけで判断するって言ってないだろ!」
「なら他には何で判断するのじゃ?」
「例えばスタイルとか服装とか!あ、あと髪型とか!」
「・・・・・・・お主・・・・・・本格的に最低じゃな・・・・・・」
イルカさんの言葉に陽菜たちまでもが頷く。
「・・・葬ってくれるわ・・・」
「まって!何だか話が変な方向に変わってきてない!?これはイルカさんの恋愛話を語る時間だよね!?それなのに何でこんな展開になる
の!?」
だがイルカさんの歩みは止まらない。
そのまま舞台から飛び降りようとした時、躓いたのかイルカさんの体が大きく揺らいだ。
「きゃ、きゃっーー!」
可愛らしい悲鳴とともに、なぜか僕の上に落っこちてきた。
「いでっ!」
「す、すまぬ!」
僕に向き合うように体をくっつけているイルカさんの顔が赤くなっていた。
それから僕を見上げてきたかと思ったら、変な事を口走り始めた。
「わが身をかばってわらわを助けてくれるなんて・・・///」
「いや、あんたが勝手に僕のところに落ち―――」
「・・・なんじゃ?このいいようのない幸福感は?」
何となく嫌な予感がする。
「もしかして・・・恋!?」
「おかしいだろ!今のどこにキュンと来るシーンがあった!?それと危ないから早く僕からどけ!」
「な!?わらわに命令するとは100年早い―――」
「眼羅巳」「遺悪羅」「雷出陰」
「お、遅かったか―――って僕までギャーーーーーーーー!!!」

377 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:29:18 ID:EReNh1BU
なんとか薬草をイルカさんの従者(?)に食べさせてもらった僕たちは一命を取り留める事が出来た。
ただその代償に薬草を6枚も使ってしまったが。
「節約していかないとな・・・」
残り13回の修羅場を9枚乗りきらないといけない。
「・・・無理じゃね?」
「さ〜て、次は早川結衣さんです!どうぞ!!」
岡田、いや早川さんの番が回ってきた。
「私の好きな人(ちらっ)との出会いは真っ暗な洞くつで〜(ちらっ)私が迷子になっていたときに〜(ちらっ)・・・」
「お願いだから陽菜も恭子ちゃんも、そしてえ〜っと、イルカさんも落ち着いて」
「しかもその人が毒に侵されていたいたときにぃ〜キスをしちゃって〜・・・」
「本当にお願いだから落ち着いて!手から炎とか出すのやめて!」
「それからその人は私を押し倒したと思ったら、急に真剣な目で「いいんだな?」って言ってきて〜・・・きゃっ〜!!///」
「マジで!マジで危ないから!もう僕には薬草が9枚しかないんだから!」
「以上がが私と私の夫との恋愛話です!!きゃ、恥ずかしかった///」
「・・・や、やっと終わったの・・・か・・・?」
良かった。なんとか岡田は無傷、僕は右腕一本で済んだ。
「いや〜実に羨ましくてその夫とやらに殺意が沸く話でしたね!」
岡田の話が終わったと思った僕は油断していた。
「では講評の方、慶太君おねがいします!」
「な、なにー!」
「先ほどの結衣ちゃんの話・・・特に後半部分は本当ですか?」
陽菜の目が細くなった。
「本当だよ!・・・く、くそっ!・・・あの時は確かに・・・・結衣とやりたいって・・・お、思ったよ・・・」
「そうですか♪では改めて結衣ちゃんの魅力はなんですか?」
恭子ちゃんの顔が能面に変化している。
「まずは・・・顔がいい事・・・そして・・・スタイルがいい事・・・ち、違う!こ、これは僕の意思じゃない!」
「そうですか。では最後に結衣ちゃんとさきほどの祥子さん、イルカ姫・・・この3人のことをどう思っているか、率直にお願いします」
その瞬間、岡田の目がつり上がった。
姉ちゃんの口端が嫌な吊り上がり方をした。
イルカさんが目をつむってうんうん、と頷いた。
「ぐっ!・・・恋人にするなら姉ちゃん、エッチするなら結衣、イルカさんは別に何とも思わない」
一つだけ分かった事がある。
この毒は思った事を口にするだけじゃない。本心を強制的に言わせるだけじゃない。
それもあるが・・・この毒の一番恐ろしい特性はそれじゃない。
「僕の心を邪悪にするのもだったのか・・・!」
司会者が笑う。
「・・・言いたい事はそれだけかえ・・・?」
「やっぱりイルカさんは恐ろしいほど胸がないね!・・・あの、もう勘弁して下さい・・・」
「他には?」
「姉ちゃんはやっぱ最高に美人だね!・・・あ・・・あぁ・・・」
「私には・・・?」
「結衣はなんかな〜・・・恋人にはしたくないタイプって奴?・・・ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!・・・あ、そう言えば前回優勝者さんは
どこに行ったんですか―――」
ふぅ、まったく・・・僕はマゾじゃないんだぞ☆
あ、ちなみにこれはあの世で言った言葉です。


378 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/07/05(月) 22:32:16 ID:EReNh1BU
以上投下終了です。
読んでくださった方、ありがとうございました。

本編のほうですが21話前後で完結予定です。一応おおまかなあらすじは考えました。
パラレルの方はすべてにおいて何も考えていません。あしからず。

379 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 22:40:07 ID:oQ9PXQbr
連投お疲れ様そしてGJでした。
本編の方は重いね〜 本当に慶太は正しいのか…自分としては、陽菜より岡田やお姉さんの方に肩入れしたくなるねぇ〜本編は後数話との事ですが楽しみにお待ちしていますわ。



380 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 22:51:45 ID:XxOHbGN/
GJ!
お姉さん(´・ω・)カワイソス
とてもおもしろかったです

381 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 23:09:49 ID:GwML/kCQ
パラレル大好きです
楽しみに読ませて頂きました(・∀・)


…本編は少し気力を充実させてから読みますm(_ _)m

382 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 23:13:07 ID:lyhSmgHy
太郎に肩入れしたくなるのは俺だけか?
今回だってやってる事はイケメンなのに…
スピンオフでもなきゃやってられないっすよ

383 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 23:17:22 ID:RtS78oTD
太郎乙

384 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 23:18:01 ID:NaGfcllp
GJ!
いや、お姉さんかわいそだね〜
なんとか全員幸せになる方法は無いものか・・・

パラレルはサイコーに面白いですね!!
次回も楽しみにしてます!頑張って下さい!!!

385 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 23:43:10 ID:geRTgs+j
勢いづいてるな
こんどは誰がくるのか


386 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 23:54:53 ID:rEjGZ9sx
GJ!

387 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 00:25:01 ID:JG1x3bOE
太郎!太郎!

388 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 00:38:57 ID:zJ5LNtt3
>>378
GJ!
本編が重いだけに、その後のパラレルで
落ち着くことが出来てよかった。


389 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 01:54:08 ID:A0qGBSzp
思わず叫んでしまうほどの投下ラッシュじゃないか

みんなGJ!!!

390 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 02:07:16 ID:S78ZZRBK
>>378
GJっす!ついに姉ちゃんがパラレルでも覚醒した・・・。

391 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 02:50:00 ID:7kfMu/5B
>>378
二本立てGJ!
本編とパラレルのギャップがw
パラレルの姉ちゃん何かのきっかけで慶太が弟と分かって覚醒って展開だと思っていたら・・・・
裏切られた気分だぜw

392 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 03:01:07 ID:bXSSxdCe
触雷きてた

紅麗亜成分が足りなくて困ってたところ

393 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 07:59:55 ID:NhwLkN2P
誤字脱字が多すぎて話に集中できん
落ち着いて、もっと時間を置いてから投稿するべきじゃないか?

394 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 09:42:12 ID:dkhvxmiC
それは頭が歳でかたくなってきているってことらしいぜ
気楽に楽しめよ

395 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 12:42:52 ID:pzlH2WE4
推敲に時間かけろってことだろ>>393は間違ったことは言ってねーぞ
ペース落ちたってだれも責めないんだからさ

396 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 13:36:00 ID:dkhvxmiC
正しいとか間違ってるじゃなくて

397 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/06(火) 15:39:50 ID:AcSUhNXl
作者様の皆さん、GJです!こんな投下ラッシュ久し振りで嬉しいです!
ということで自分も投稿したいと思います。今回は10話です。
前回コメント下さった方、そして編集の方ありがとうございました。

398 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/06(火) 15:41:22 ID:AcSUhNXl

ライムは右手に血がついたナイフを持っていた。
そして俺の後ろには刺された腹部を押さえている里奈がいる。
誰が見てもライムが里奈を刺したということは明らかだった。
「…ライム、ここで何してるんだ?」
それでも俺は信じられなかった。ライムがこんなこと…するはずない。
「えっと…まあゴミ掃除かな」
「ゴミ…掃除?」
「うん。亙の後ろにあるでしょ?大きなゴミが。それを掃除しようと思ったの」
「後ろ…里奈のことか?」
「里奈?何言ってるの、亙。ゴミに名前付けるなんて変だよ」
クスクスと笑うライム。おかしい。何かが決定的におかしい。
「お前…本気で言ってるのか」
「亙こそ、私をからかうのは止めてくれないかな。早く掃除したいから、そこをどいて?」
「…断る」
「…亙、私のこと嫌い?」
「…大好きだよ」
「じゃあ…」
「でも今のライム、おかしいぞ!お前は誰かを好き好んで傷付けるような奴じゃねぇだろ!!目ぇ、覚ませよ!」
「……亙もそのゴミに汚染されちゃったのかな?ゴメンね。もっと早く気がつくべきだったよ」
ゆっくりと近付いてくるライム。
「亙っ…!」
里奈が後ろで俺の袖を掴む。大丈夫だ。絶対に傷付けねぇ。里奈も…ライムもだ。
「…ゴミの分際で亙に触るな!」
ライムが一気に俺達との差を詰める。狙いは里奈か。
「止めろライム!」
俺はライムを止めようと里奈の前に立つ。
「どいて亙っ!掃除できな…っ!?」
一瞬だった。ライムが俺達に突っ込んで来た時、銃声がした。
次の瞬間、ライムの華奢な身体は吹き飛ばされ鮮血が舞った。
「なっ!?」
「っ!!!」
ライムは直前で身を翻したらしく、肩を撃ち抜かれたようだった。
「ライムっ!?おい、ライム大丈夫か!ライム!」
ライムに駆け寄ろうとする俺を
「亙、危ない!動いちゃ駄目よ!」
里奈が制した。
「でもっ…!」
「だ、大丈夫だよ…亙」
声がする方を見ると吹き飛ばされた反動でさっきより随分遠くにライムがいた。
肩からは血が出ており到底大丈夫には見えない。
「今日は失敗しちゃったけど…次は必ずやり遂げるからね」

399 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/06(火) 15:42:24 ID:AcSUhNXl
「ライム!?待てよライム!!」
ライムは走り去っていった。追おうとした俺を
「お待ちください遠野様!」
今度は桃花が呼び止めた。右手には狙撃銃を持っている。
「お前が…お前がライムを撃ったのか!?」
「はい。本当は頭を撃ち抜くつもりでしたが…。右腕の怪我のせいで逃しました」
つかみ掛かる俺に対して桃花は冷静に答える。
「いくらなんでもやり過ぎだろ!?」
「向こうは殺人未遂ですよ?正当防衛です。里奈様、ご無事ですか」
桃花は俺の手を掃い里奈に近付く。
「…っ!だ、大丈夫よ…これくらい」
里奈は汗をかき、顔色も悪かった。我に返る。里奈は刺されているんだ。
「大丈夫じゃないだろ!?桃花、医者は!?」
「もう準備しております。里奈様、歩けますか?」
「ちょっと無理…かな…亙」
里奈は困ったようにこっちを見る。
「ああ、任せておけ」
俺は里奈をおぶって屋敷まで連れていった。

400 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/06(火) 15:43:10 ID:AcSUhNXl

これで何度目だろうか。電話をかける。繋がらない。またかける。繋がらない。
メールはもう送った。返事は…ない。
「…っ!も、もしもしっ!?」
「おかけになった電話番号は現在…」
「くそっ!」
出ない。…出るはずがない。分かっているのにかけるのを止められない。
もう2時間は続けていた。やはり追いかけるべきだったのかもしれない。
「遠野様」
「…里奈は?」
隣の部屋から桃花が出てくる。
「幸い命に別状はないそうです。今は眠ってます」
「そっか…良かった」
本当に良かった。里奈は無事だったんだ。
「…それは里奈様が助かったことに対してですか?」
「他に何が…」
「それとも」
桃花は俺に詰め寄って来る。
「それとも鮎樫らいむが殺人犯にならなくて良かった、ということですか?」
「な、何言って…」
「貴方の役割だったのですよ」
何が?なんて馬鹿な質問はしない。俺は…里奈を守れなかったんだ。
「……ゴメン」
「謝れば済む話ではありません。貴方はどちらの味方なのですか?里奈様ですか。…それとも血だらけだった鮎樫らいむですか」
桃花の静かな怒りを感じた。要するにどちらにつくか、ハッキリしろということなのか。
「それは…」
ライムの味方。少なくともついさっきまではそう思っていた。でも今は…
「…分からない」
「そうですか」
分からない。何でライムはあんなことをしたんだ。昨日会った時は確かに信じられたのに。
もし俺の知っている彼女じゃなくなっていたとしたら…?
「……どうすればいいんだ、俺は」
「それは御自分でお決めになること」
「桃花…」
「一つだけ確かなのは、里奈様は貴方を必要としている、ということです」
「………」
「明日の夜まで猶予を差し上げます。誰に味方するか、ゆっくり考えてください」
そう言うと桃花は隣の部屋に戻って行った。
「……俺が、決める」
結局その日は、ライムと連絡が取れずに終わった。

401 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/06(火) 15:45:20 ID:AcSUhNXl

次の日、俺は駅前の喫茶店『向日葵』にいた。座っている席は昨日と同じ奥の方の席。
そして待っている人物も
「お待たせしました、先輩っ!」
昨日と同じ、神谷美香だった。
「悪いな、わざわざ呼び出しちゃって」
「いえいえ、早速呼んでくださるなんて感激です!連絡先交換しておいて良かったですよ」
神谷は機嫌が良さそうだった。何か良いことでもあったんだろうか。
「…神谷、早速だが聞きたいことがある」
「…やっぱりそういうことですか。良いですよ、わたしが知っていることなら何でも答えますよ!」
神谷と昨日一緒に過ごしたのは正解だったのかもしれない。
「ありがとう。まず神谷が昨日言ってた"鮎樫らいむの事件"に関する新情報を教えて欲しい」
「…良いですけど、期待ハズレだと思いますよ」
神谷は少し申し訳なさそうな表情をしていた。
「期待ハズレでも良いんだ、教えてくれ」
「…分かりました。実は確かな情報ではないんですが現場付近に赤いペンキの痕跡があったそうです」
「…赤い…ペンキ?」
「あくまで噂ですからね!?わたしだってこんな話信じて…先輩?」
何だよ、それ。現場付近に…何だって?昨日ライムは何て言ってたんだ?
…駄目だ、何か駄目だ。どうすれば良いんだ…。
「…ぱいっ!?先輩っ!?しっかりしてください!」
「…あ、ゴメン」
「……本当は聞かないつもりでしたけど、もう我慢出来ません。一体今まで何があったんですか!?」
「…それは」
「先輩の力になりたいんです!真実を話してください!」
「……分かった」
結局、俺は神谷に全てを話すことにした。

402 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/06(火) 15:46:17 ID:AcSUhNXl

「……そう、だったんですか」
すでに外は夕暮れで『向日葵』の中は閑散としていた。
「ああ…」
簡単にだが全てを話した。
鮎樫らいむと出会って、それから半年間ずっとマネージャーをしていたこと。
クビになって藤川里奈の屋敷で働かされたこと。
その後色々あったが里奈と和解出来て、元通りの生活が出来ると思った直後、昨日の事件が起こったこと。
今日中に決断しなければならないこと。
俺が話している最中、神谷は黙って話を聞いていた。
「……ありがとうございました。話してくれて、嬉しかったです。…そしてごめんなさい」
「えっ?」
次の瞬間、左頬に衝撃を感じた。店内に音が響く。
突然のことで、神谷に思いっ切りビンタされたことに気がつくのに時間がかかった。
「先輩って、本当に単純で馬鹿ですよね」
「…何すんだよ」
「そんなにらいむさんのことが好きなら、答えは決まってるじゃないですか」
「そんな単純じゃねぇだろ…」
「何て言ったんですか?ハッキリ言ってくださいよ」
「…そんな単純じゃねぇって言ってんだよ!」
今度は大声が店内に響いた。
「俺だってライムを信じてたよ!今だって信じてぇよ!でも…でもあいつは変わっちまったんだ!!もうあいつは俺の知ってるライムじゃねぇんだよ!!」
「男なら!!」
神谷が思いっ切り机を叩いて立ち上がる。
「男なら本気で惚れた相手が、どんなに変わっちまっても信じてやるもんだろうが!!それともお前はそいつの身体が目当てだったのかよ!!」
俺の中の何かが切れた気がした。思わず神谷につかみ掛かる。
「そんなわけねぇだろが!!俺はあいつと半年いたんだ!!あいつの全てが好きだから!!」
「だったら受け止めてやれよ!!その女の全てが好きなら全部受け止めろよ!!最後まで信じきれよ!!たったそれだけのことが、何で出来ねぇんだ!!」
「っ!?」
いつの間にか神谷は泣いていた。そして…俺も泣いていた。
「…何でわたしに言われなきゃ…気がつかねぇんだよ」
「……わりぃ」
俺は…俺は…何を迷っていたんだろう。

403 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/06(火) 15:47:07 ID:AcSUhNXl

お互い涙を拭いていると店長が来てコーヒーをサービスしてくれた。
てっきり怒られると思ったので二人で謝ると「若い時はぶつかり合うのが1番だから」と言って微笑みながら去って行った。
「……日、暮れちゃったな」
「…はい」
「……目、覚めたよ。ありがとな」
「…不出来な先輩を持つと後輩は苦労しますね」
「全くだな」
「…先輩のことですよ?」
「知ってる」
「……はぁ」
「神谷?」
神谷はため息をつくとサービスされたコーヒーを一気に飲み干した。
「お前また…」
「ふぅ。スッキリしました」
「…トイレかよ」
「良いツッコミですよ先輩。…とりあえず今後ですが」
「いきなり話変えるなお前は…」
「先輩はらいむさんを信じるんですね」
「ああ、勿論だ」
「だったらまずらいむさんに連絡をとり続けてください。そして真犯人を探しましょう」
「…真犯人か」
「はい。らいむさんが社長達を殺していないなら、他に殺した人物がいるはずです。それから、らいむさんが藤川センパイを刺した件ですが…」
「あれはどう見てもライムだったけど…」
「いえ、そうではなくて。もしかすると誰かがらいむさんを罠に嵌めた可能性があります」
「罠に…嵌めた?」
「いくら何でも一日で様子が変わり過ぎじゃありませんか?」
「誰かに…何か吹き込まれたのか?」
「あるいは嘘の情報を教えられたかもしれません」
「一体誰が…」
「とりあえず、可能性はいくらでもあります。藤川センパイが警察に届けないのも、世間体以外に何かあるかもしれませんし」
「…里奈が…」
「とにかく先輩はらいむさんと連絡を。わたしはもう少し情報を集めますから」
「…なあ神谷」
「何ですか?」
「何でお前は…こんなに協力してくれるんだ?」
ずっと疑問に思っていたこと。何故神谷は赤の他人の俺に力を貸してくれるのだろう。
「…本当に先輩は馬鹿ですね」
呆れたように俺を見つめる神谷。
「し、仕方ないだろ。分からないんだから」
「…単純に興味があるからですよ、この事件に。それだけです」
「…そっか」
…やっぱり俺の思い過ごしだったみたいだな。

404 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/06(火) 15:49:24 ID:AcSUhNXl

「では今日はこれで!」
「おう、また連絡するわ!」
わたしは先輩と別れて歩き出す。
「…何で協力してくれるのか、か」
…遠野先輩はわたしの兄にそっくりだった。
もう兄さんは死んじゃったけど、わたしは兄さんが大好きで…好きで仕方なかった。
そんな兄さんが死んでしまって絶望していた時に、先輩に出会った。少なくともわたしは、それで救われた。
「…そっくり、なんだよね」
顔だけじゃない。不器用で朴念仁で鈍感で。でも優しくて凄く暖かい。
死のうとまで思っていたわたしを変えてくれた。だから…
「先輩の幸せのためなら…これでいい」
先輩を罵って葛を入れて。大好きな人を取り戻すために協力する。きっとわたしにしか出来ないことだから。
「後…後少しだけ、良いよね。兄さん…」
神谷が見上げると、そこには満天の星空が広がっていた。



「…そうだよ、信じるしかないんだ」
神谷と別れた後、亙は星空を見ながら考えていた。
「…また神谷に迷惑かけちゃったな」
何だろう。神谷のこと、今なら信頼出来る気がする。ただの毛嫌いだったようだ。
「絶対に守ってやるからな…」
最初にライムを抱いた時、いやもっと前に決めていたこと。
そんな基本的なことを今まで忘れていたなんて…何が全てが大好きだ。笑わせる。
「ライム、今どこにいるんだ?」
例え血まみれだったとしても俺は彼女を…。
「…血まみれ?」
何か違和感を感じる。血まみれ…いや、本当はあれは赤いペンキだったはず。
だからこそ問題なんだ。…じゃあ何で俺は血まみれだなんて言った?
「…何だ、この違和感」
今まで以上に強く感じる違和感。まるで違和感の正体がこの殺人事件に繋がるような…。
「………分からない」
考えなくては。この違和感の正体を。

405 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/06(火) 15:53:39 ID:AcSUhNXl

今回はここまでです。神谷さんはキレると凄いんです。
読んでくださった方、ありがとうございました!
10話まで書けて良かったです。これからもよろしくお願いします。

406 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 15:55:33 ID:j54/OOll
桃花には是非死んでほしい

GJです!!

407 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 16:31:37 ID:cz6xkmPS
GJ!!一番好きな作品だから投稿楽しみにしてた!!ヤンデレライムがもっとみたい!

投下ラッシュが桃花ラッシュに読めた俺って…

408 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 16:58:49 ID:gDUaBgjk
幼なじみが好きな主人公が屋上でキスしている幼なじみをみて距離を置く

って作品探してるんですがわかる人居ませんか?

409 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:42:42 ID:mgrICTuS
>>408
しゅらばスレで見た気がする。タイトルはわからない。

410 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 17:43:35 ID:qv+KHRCZ
GJ!保管庫から読んでたけど面白いね!次も期待してます!

411 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 18:36:26 ID:Yuyxd1kI
この流れに乗って投下してやろう・・・・・と思ったドアホですよ
5話が先ほどできたので投下します
確認作業はしましたが誤字・脱字がありましたらお知らせください

412 :非日常の日常:2010/07/06(火) 18:37:21 ID:Yuyxd1kI
二人が眠りについた頃、たくさんの薬品や研究機材が置いてある部屋で一人もくもくと研究をしている人物がいた
「ふむ・・・・・これはすごいな・・・・・」
修羅はあの時雄介から採取した血液を入念に調べていた
ぱっと見ではただの血液なのだが修羅には違うように見えるようだった
「最初のときに採取したときと比べて・・・・・すべてにおいてが変異している・・・・か」
数々の血を見て浴びてそして『飲んできた』修羅にはかなりわかるのだろう
「そして・・・・あの腕から感じるあれは・・・・・・・遺伝は本当か」
修羅も聖城とは違うタイプではあるが体などを変形させることができた
今来ているパワースーツらしきものも体をそう変形させたものである
そして修羅の場合、硬くはできても聖城のように鞭みたく柔らかくする事はできなかった
修羅はそこが改善できればと訓練を重ねて数多くの薬を開発し自分に使ってきた
声はその代償のひとつである
だがその努力ほどの成果は出ずに精々腕を逆に曲げるぐらいまでしかできなかった
それ故に今は諦めて硬く変形させることに集中して訓練をしている
そしてなぜ修羅が聖城を慕っているかは過去の惨劇に関係していた


413 :非日常の日常:2010/07/06(火) 18:38:16 ID:Yuyxd1kI
時は13年前に遡る
そこは小さな王国で修羅はそこの王の娘として大切に育てられた
修羅は優しく育ちどこかの王族の王子と結婚し幸せに暮らすかに思われた
だが・・・・現実はひどく厳しく血に染まった
「姫!早くこちらに!」
そう親衛隊の一人が誘導し隠し通路を使って逃げていた
「くそっ!やつらはすぐそこまで来ている!」
「なら俺が足止めをしておくからその間に行け!」
「頼んだ!」
そう言って親衛隊の一人が後ろにいる敵に向かって剣をかざし言った
「われの名はガルス・ジャルス!貴様らはここで血に沈むのだ!」
「はっ!言ってくれるぜ!細切れにしてやるよ!」
そう・・・・・・修羅の夫となるだろう者の王国の兵士が言った
「死ねぇぇぇぇ!!」
そして兵士は輸入したと思われるAK-74をガルスに向かって発砲した
「そのような鉛球なんぞ効かぬ!」
ガルスが地面に剣を刺した瞬間、目の前を石の壁ができすべて防いだ
「くそっ!封鎖されたぞ!ダイナマイトだ!」
向こうで慌しく動いている気配がする一方で
「これでしばらくは時間稼ぎできるが・・・・・・・どうしたものか」
ガルスは一度だけしか石の壁を作れなかった
それはつまり壁が爆破された瞬間死を語っていた
「姫・・・・・どうか気をつけて・・・・・」
その瞬間壁が爆破され銃弾がガルスの体へと当たり肉という肉が削がれ血と言う血が辺りを染めた
「ガルス!」
修羅は戻ろうとしたが親衛隊の一人に止められた
「だめです!ガルスは命を懸けて姫を守ったのです!今戻ってはその命が無駄になります!」
「いや!ガルスを助けるの!」
「姫!」



414 :非日常の日常:2010/07/06(火) 18:38:51 ID:Yuyxd1kI
ズダダダダ!
「ぐはっ!」
「あっ!」
親衛隊の一人が倒れ、兵士がぞろぞろとやってきた
「まったく手間をかけやがって」
「あっ・・・・・」
そう言って兵士は値定めするように見ると
「中々いい女じゃねぇか、殺す前に一発俺の種を植え付けてやるか・・・へっへっへ」
そう言って服を破きその場にいる兵士の全員に犯され、ボロボロになった
どれだけ泣き叫ぼうと口に男のモノを入れられ、どれだけ抵抗しても無理やり抑えられた
「くっくっく・・・・・いい感じに締まってよかったぜ?じゃあこれで終わりだ」
そして拳銃を取り出し頭に狙いをつけ引き金を引く瞬間
「うっ・・・・・・うわあああああああああああああああ!!!!!!」
兵士はそのまま後ろへと尻餅をついて動けなくなってしまった
何故なら修羅が・・・・・・・異形の者へと変わっていたからである
その後はその場にいる兵士はすべて原形を留めないほどにぐちゃぐちゃにされ外にいる兵士もすべて皆殺しにされた
そして修羅の姿が戻ると体全体が真っ赤に染まっていた
修羅は力が抜けて、その場で泣いた
泣き叫んでも誰もいなかった
それはこの王国の人もすべて修羅が殺してしまったから
殺している間は慈悲も何も・・・それどころか快感まで覚えていた
そうして泣いているとひとつの人影が見えた
修羅が顔を上げるとそこには漆黒の闇を身にまとった聖城がいた
「あなたもその力に目覚めたのね」
言葉はわからなかったが自分と同じ・・・・・・・それ以上の禍々しいものを感じた
だがそれはなぜか安らげる雰囲気でもあった
「あっ・・・・・あっ・・・・」
「言おうとしなくてもわかるわ・・・・・私の名前は聖城美姫よ」
と自己紹介しながら近づき頭を撫でながら言った
「もしもすべてを清算したいなら・・・・・私と一緒に来てくれないかしら?」
その笑顔に魅入られた修羅はすべてを懸けて守ろうと修羅は思った
そして頷くと聖城は修羅を抱きかかえて歩きながら言った
「あなたを過去を清算するために・・・そして忘れないためにも新しい名前を与えましょう」
そう言いながら聖城は周りを見渡し考えて・・・・・・
「あなたの名前は・・・・修羅よ」


415 :非日常の日常:2010/07/06(火) 18:39:26 ID:Yuyxd1kI
そうしてそれからは聖城にその力の使い方などや言葉なども教わり徐々に力をつけていった
あの時はまさに一目惚れだったのかもしれない
この研究などもすべて聖城のために独学で覚えたものだ
資金などはすべて聖城が払ってくれた
聖城には本当に返しきれないほどの恩を受けた
だからこそ聖城の信頼を一気に勝ち取った雄介が憎かった
なぜあそこまで信頼されているのかまったくもってわからない
この甘ったるい国で育った根性の腐った男のどこが・・・・・
まったくもって理解できなく恨みに恨んだ
怒りにおそらく集中力が欠けていたのだろう
近くにあった紙の下にあるペーパーカッターで指を切ってしまった
「いっ・・・・」
普段は普通の人間と変わらないため簡単に切れてしまう
それに今は研究中なのである意味普通とも言える
自分の血を舐めながら雄介から採取した血を見た
そうすると何故か無性に舐めたくなったが、理性でどうにか押さえ込もうとした
「これはだめだ・・・・・美姫様に渡す大切な・・・・・・」
しかし結局好奇心とも言える感情に負けてほんの一滴ぐらいなら・・・・・と舐めた
「・・・・・・特に何もない・・・・・・・ってあれ?」
声が心なしか元に戻った気がする
「まさか・・・・・もう一滴だけ・・・・・・」
そして舐めるとやはりほんの少しだけ声が戻っている
そのことに修羅は喜びを感じ・・・・・・そして怒りがこみ上げてきた
「あんな男の血で治るなんて・・・・・とても許せん・・・・・」
しかしこれでこの血の効果がわかった
これを美姫様に・・・・・・と思ったが悪戯心がなぜか出てきて
「せっかくだから私の血も・・・・・数滴だけ混ぜようかしら」
そう言ってペーパーカッターで手首を切り数滴だけ落とした
その間の修羅の顔はどこか幸せそうだった


そのまま戻ってみると二人とも見事に熟睡していた
雄介にいたってはもはや爆睡とも取れるほどのいびきをかいていた
「むー・・・・・・」
どこか羨ましそうに見ていて・・・・・また悪戯心が出てきた
「こんな男の顔なんて・・・・・」
そう言いながらたまたま研究のときから付けっぱなしにしていたポーチの中から油性ペンを出して雄介の顔に落書きを始めた
途中で聖城が起きかけ固まったが起きないのを見てまた再開した
次に起きたときにどんな反応かな・・・・・と思いながら加絵のことについて情報を調べるためまた研究室にもどった

416 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 18:41:28 ID:Yuyxd1kI
修羅のキャラが少しずつ崩壊してるような・・・・・というか初期よりも思いっきり変わってるw
まぁとりあえずこの後の展開をだらだらと考えて見ますかな

417 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 18:43:03 ID:puf54ulj


418 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 19:12:53 ID:NhwLkN2P
保管所にあった「髪の話」って面白いな
文章がしっかりしているしキャラも魅力ありそう
もう更新なさそうなのが残念だが
作者の人、もうここ見てないかな

419 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 21:05:02 ID:0G9Od5Iq
ヤンレデ世紀の中林の話が見たいけど作者さんもう居ないのかな?

420 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 21:59:42 ID:0G9Od5Iq
GJ!

421 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 22:17:55 ID:ng9KksJT
SA☆GE☆RO!

422 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 22:26:35 ID:9LuZKcZ1
もう夏か……通りでsageない訳だ……

423 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 23:10:03 ID:rHgudWcz
いつの間にか、きみとわたる来てた!GJ!これで今週も頑張れるわ

424 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 23:38:48 ID:NhwLkN2P
きみとわたるにGJ

425 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 01:00:54 ID:YoIqN8Pn
>>416
GJ



今日は七夕だったので、速急にネタを作ってみました。誤字脱字などがありましたら、教えて下さい。


投下します。

426 :変わったの日・七夕:2010/07/07(水) 01:02:34 ID:YoIqN8Pn

昔ならば梅雨の時期が過ぎて、夏の本格的な暑さがやってくる頃合いなのだが、最近話題の地球温暖化のためかまだじめじめ感がある梅雨の時期だ。

今日は七夕。月日でいうと7月7日だ。近くの商店街では、竹がたくさん飾られ、その竹に願いを叶える短冊が吊されている。短冊は多くはないが色鮮やかに吊さられている。

「短冊か。」

よく小さい頃には短冊に夢見がちな馬鹿な願いを頼んだもんだ。
だが今はそんな非現実的なことも考えたりしないつまらない人間へとなってしまった。
もっと言えば、そんな自分に何の違和感もないぐらい自分は自分の意思を隠してしまった。いや、どこかに消えてしまった。

「帰ったら、センターの過去問題集をやらないと。」

青春の汗を流す花の高校生活と言う人は言うが、自分にとっては大学のための勉強場所にしか過ぎない。自分の通っている学校は偏差値は高いが、トップというほどでもない。

ちなみに自分は自慢ではないが県内最難関高校に行けることはできた。しかし今通っている高校は家から20分の場所にあったので、勉強出来ればどこでもいいと考えていたので、近くの方にした。




427 :変わった日・七夕:2010/07/07(水) 01:03:42 ID:YoIqN8Pn

学校には、不良の真似でもしたいのかだらしない服装で生活する奴らもいるが、それでもなお流石と思うべきかしっかりとした者がほとんどだった。

文化祭での盛り上がりもなかなかだが、自分にとっては邪魔な行事の一つでしかなかった。

帰り道である商店街を抜け出し、自分の家まであと少しという所まで来た。

部活に所属していないので、他の人よりは早めの下校だが、いや…もう3年生だから部活に入ってなくて当然か。まあ、それでも4時は過ぎている。

冬になるとこの時間帯でさえも暗くなるので、自分にとっては不愉快に感じる。
………いっそのこと今日は七夕なのだから短冊に『冬でも夏と同じ時間帯に暗くなってほしい』とでもやってみるか。
と、普段では考えもしないことが頭によぎってしまった。
別に七夕なんかに特別な事もあったわけもなければ、中学の時からは、こんなこと考えたこともない。

「勉強のやりすぎか。」

高3年になってからは本当に勉強日和だったからな。




428 :変わった日・七夕:2010/07/07(水) 01:04:41 ID:YoIqN8Pn
まあ、今日ぐらいは帰ったら、復習だけして寝るか。
頭おかしくまでなりたくないので今日だけはあまり勉強しないことにした。

そして家に帰宅し、先ほど思っていたこと通りに今日という日を過ごした。









昨日いつもより早く寝たためか朝起きるとどこか清々しい気分になっていた。

「……たまにはいいかもな。」

1階のリビングに向かい、親が用意した朝食を食べながら

「今日はなんかいい天気だね。」

「あら?珍しいじゃない。さー君が自分から話すだなんて。」

母だけではなく、自分も驚いた!無意識とはいえ、自分から会話を提供するなんて!

それから奇跡は続き、今日の朝食は会話が途切れることなく、有意義なものとなった。母と父とあんなに喋ったのはいつが最後だったかな…

いつもより少し遅く家を出た。行く際も母が『行ってらっしゃーい』と今まで一方通行だったが

「行ってきまーす」

今度は自分の意思で言った。今日はなんか本当に変な日だ。

学校に向かう途中、久しぶりの人物に会った。




429 :変わった日・七夕:2010/07/07(水) 01:11:04 ID:YoIqN8Pn
「おはー♪」

隣に住んでいる幼なじみの上竹 楓(うえたけ かえで)がいたのだった。

彼女はこの県内最難関高校である星南高校に進学したのだ。

中学の頃は同じ中学でテストの時によく自分の家に来て勉強を教えていたのでよく彼女の頭のできのことを知っているが、中3の春まではとても馬鹿だった。どれぐらい馬鹿かというと割り算が出来なかったぐらい馬鹿だった。
しかしながら夏休み相当苦労したのだろう。秋には、自分と楓で1、2位を独占していたぐらい開花したのだった。

そして、星南に受験して見事合格。しかし当の本人はすごく落ち込んでいた。

『……裏切りが…』

凄い目つきで自分を睨み付けながらそう呟く楓は殺人鬼そのものに見えた。
本人は自分と同じ学校に行きたかったらしい。多分また俺と独占しようと計画を立てていたのか。まあ、正直自分にはどうでも良かったことだったので特に気にしなかった。




430 :変わった日・七夕:2010/07/07(水) 01:15:25 ID:YoIqN8Pn

だが、今考えると楓に酷いことしたなと後悔している。

「おはー、久しぶりだな楓。今日はどうした?こんな遅く出て?」

星南は最寄り駅から30分した所の駅からさらにバスで30分と遠い場所にあるので、楓が遅刻しないか心配した。

「咲元があたしを心配するなんて…頭打った?♪」

何故だろう………久しぶりに会ったせいか楓の姿を見るとドキドキする。あっ余談に自分の名は松下 咲元(まつした さきもと)。
確かに楓は可愛い。茶毛で軽くウェーブのかかった髪は最後に会ったままで、しかし容姿は3年の年月によって、大人っぽい感じがあって良いと思う………!!!!

「お・俺は何を考えている!」
「どうしたの?」

楓が上目遣いで俺を見てくる///

「な…なんでもない!!」
「ふ〜ん…まあ、良かった♪咲元と今日逢えて!!」

そんなことがあり商店街の中を通る5分間は楓と登校した。とても楽しかった。




431 :変わった日・七夕:2010/07/07(水) 01:16:06 ID:YoIqN8Pn

初めてかもしれない。勉強がはかどらなかったのは。

学校があっという間に終わり、帰るため校門をくぐり抜けると一人の女子が俺に近寄って来た。

「松下君!」
「は・はい!?」

いきなり大きな声で呼ばれたのでびっくりしてしまい、声が変になってしまった。

「ちょっとこっちに…」

言われがままに人気のない道に連れていかれた。
しかし、視線が感じるのは気のせいか?

「松下君のことが好きでした!私と付き合ってください///」

いきなり告白された。……誰が?……俺がか!?

「えっと本当に俺?」
「はい!!本当はもっと早く想いを告げようとしたのですが、近寄り難くて……けど、今日の松下君はいつもと雰囲気が違っていつも以上に引き寄せられちゃって///」

確かに朝からいつもと違うことには気付いてたが、まさか告白されるまで変わるとは!!





432 :変わった日・七夕:2010/07/07(水) 01:18:15 ID:YoIqN8Pn


さらに告白してくれた子はかなりの美人ちゃんじゃないか!?楓とまた違ったタイプだな。
ヤバい……またドキドキが……

「あの…返事は?」
「逆に俺なんかでいいの?」
「そんな!?松下君は知らないかもしれませんが松下君、結構女子から人気あるんですよ。今日告白した理由はそこにもあって、他の子に取られるぐらいなら………と思ったからでもあるんです!」

今、目が淀んだのは気のせいか?それと先ほどからある視線が冷凍ビームにランクupしたような……

「俺なんかでよければ…」

今、楓の顔が頭に浮かんだ。しかしすぐに消え今いる女子のことで頭いっぱいになった。

「付き合ってくれるんですね!!」
「おう!…えっと?名前何だっけ?」
「寺島 杏(てらしま あんず)です。」
「よし!俺は寺島のことをたくさん知るよう頑張る。」
「わ・私はもっと松下君のことを好きになってみせます///」

こうして俺と寺島は今日から付き合い始めることになった。
今日は本当に生まれ変わった感じだ。

俺と寺島は手をつなぎ一緒に帰った。









「……裏切りが!!…」





433 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 01:20:21 ID:YoIqN8Pn
前半終了です。後半は途中なので出来れば早く投下します。


わからないところは後半で明らかにする予定です。


夜遅くすみません

434 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 01:25:28 ID:TJ+NIxdC
<<433
GJ!
期待してます

435 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 01:26:54 ID:t3KuU46T
gj
前後編だけってのが寂しい
かなりそそられる雰囲気だから
もっと書いてほしいと思う

436 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 01:37:18 ID:2w8SU7A0
GJ!

437 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 09:43:53 ID:w8kb48zL
出来ればでいいから♪や!はないほうがいいと思います。作品自体は良いからもっとよくなると思う

438 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 10:59:48 ID:nbGsko1r
なんかいろいろ初々しくて良いな

GJです

439 :自宅警備員の姉:2010/07/07(水) 13:42:03 ID:qEEzgbiy
うちの姉さんは美人だが27歳・自宅警備員である。
俺が学校に行っているあいだ、姉さんはなにをするでもなく自室でだらーんと過ごし、適当に俺の作っておいたメシを食い、柔らかい布団に包まれて惰眠を貪り、ただただ無為に一日を消化する。
姉さんは美しいが、最近、体重が増えてきた。
長年に渡る激務(自宅警備員としての)が祟ったのだろう。
「姉さん、働けとは言わないけど、少しは運動しないと身体に悪いよ」
「うん、そのうちね」
姉さんはベッドに寝転んだまま、やる気のなさそうな返事をした。
やれやれ。
「じゃあ学校に行くから」
「いってらっしゃい。6時までには帰ってきなさい。お腹がすくから」
「姉さん、そのことだけど、今日はちょっと遅くなるよ。悪いけど夕飯は出前でも」
「だめよ」
姉さんはけだるそうに言った。こちらを嘲るような薄い笑みを浮かべている。
「わたし、おまえの料理でないと食べたくないし、おまえに身体を洗ってもらわないとお風呂に入る気もしないし、おまえと一緒でないと生きていく意味も見つからないの」
「姉さん・・・」
「同級生との楽しいデートから帰ってみたら姉の死体が転がってましたなんて、嫌でしょう?」
まただ。
姉さんには俺のすべてがお見通しということらしい。
同級生でクラスメイトの三原さんとデートの約束をしていることも、俺が姉さんのことを見捨てられないということも。
姉さんは余裕の表情を浮かべて言う。
「いってらっしゃい」
「・・・いってきます」
姉さんは俺に対して極めて強く依存している。
日常生活のすべて、寝起きはもちろん、食事も、風呂も、排泄に至るまで、すべて俺の世話が介入しないとまともにやってくれないのだ。
もしも俺が姉さんを見捨てたなら、姉さんは間違いなくそのまま死んでしまうのだろう。さっきの台詞ははったりでもなんでもないのだ。
幼いころに両親を失った俺たちにとって、お互いが唯一の肉親だ。見捨てることはできない。
それ以上に・・・。
「ちゃんと早く帰ってくるいい子には、たっぷりご褒美をあげるわよ」
いつの間にか忍び寄ってきていた姉さんの腕が、背後から俺に絡み付いた。
白く繊細な指先が俺の股間を愛撫する。
脳裏にフラッシュバックするのは、姉さんの白く滑らかな裸体、豊かな乳房、丸くて柔らかい桃尻。
俺の股間はすでにいきり立っていた。
姉さんの身体で遊ぶ禁断の快楽を教え込まれた俺は、餌付けされたペットも同然。
逆らえるはずがない。
耳たぶを甘噛みされる刺激に喘ぎながらも、俺は、三原さんとのデートを断るための上手い言い訳を考えはじめていた。

440 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 13:44:31 ID:qEEzgbiy
以上。携帯で軽く短編を書いてみた
ヤンデレ風味が薄いかな。難しいわ。


441 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 15:56:55 ID:2w8SU7A0
GJ !続きは?

442 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 16:29:27 ID:qEEzgbiy
ないお

443 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 18:13:58 ID:kV/67Eed
GJ!

444 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 18:59:29 ID:YakutI4J
>>439
GJ!
あれか?体重が増えてきたってのは胸のボリュームがパワーアップしたって事か!?

445 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/07(水) 19:21:22 ID:J4CtRE3C
GJです!今日は七夕ですね。
こんばんは。今回は11話を投下します。
読んでくださる方、編集してくださる方に感謝です!

446 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/07(水) 19:22:47 ID:J4CtRE3C

鮎樫らいむが藤川里奈を襲撃した事件から、二週間経った。
世間は鮎樫らいむがアイドル復帰出来ないのは、事務所の関係者を殺害した犯人がまだ捕まらないからだとして警察の調査を批判していた。



アタシは今とても幸せだ。
確かにここ数週間色々なことがありすぎて、とても疲れた。
挙げ句の果てにはお腹をナイフで刺されて、死にかけた。
でもアタシは幸せだ。なぜなら…。
「里奈、大丈夫か?」
「うん。もうかなり良くなったって先生が。予想よりも早い回復力でビックリしてたわ」
アタシの隣には彼、遠野亙がいてくれるから。
「見かけによらずタフだな、里奈は」
「亙がずっと看病してくれたおかげだよ」
彼はふざけるがアタシは知っている。
刺された後、疲労が溜まっていたのか高熱が出てしまったアタシを、亙が看病してくれていたこと。
だから彼の前では自然に笑えるのかもしれない。
「ははは、それは光栄だな」
「もう!ごまかさないでよね。まあ良いけど…」
たくさん酷いことをしたアタシを、それでも亙は許してくれた。
…勿論彼の中に鮎樫らいむがまだいるのは分かっている。
「これでやっと我が儘なお嬢様からも解放されるな」
「アタシだって、亙の不器用な看病なんて二度と受けたくないんだから」
でもいつの日か、彼があの子のことを忘れられる日が来るなら…。
「俺が気にしていることをぬけぬけと言いやがって!」
「病人に暴力は禁止よ!桃花助けて!」
「なっ!?」
「はい、里奈様。成敗です」
「ま、待ってくれ!俺が悪かった!だ、だから命だけは……ぐはぁ!?」
その時、隣にいるのがアタシだったら良いなって思う。

447 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/07(水) 19:23:48 ID:J4CtRE3C

一通り桃花の洗礼を受けた後、俺は出かける準備をしていた。
別に執事の仕事をサボっているのではない。ちゃんと半日だが休みを貰ったのだ。
「お出かけかな?」
振り向くとそこには藤川英が立っていた。
「はい。英様もですか?」
「ううん。僕は今帰って来たところ。やっと調査が進んでね。また少ししたら出かけなきゃならないんだけど」
迷惑そうに言う割には、藤川英は楽しそうだった。
「調査、ですか?」
「ああ。言ってなかったよね。僕は学校の仲間達と何でも屋みたいな物をやっているんだ。その調査だよ」
「そうなんですか」
「色々な依頼が来るんだ。くだらないものから、興味深いものまでね」
こんなに楽しそうに語る彼を初めて見た。
どうらやその"何でも屋"は、彼の生きがいのようだった。
「って、君に言いたいのはこのことじゃないんだ」
「言いたいこと?…俺にですか」
「お礼を言おうと思ってね。最近の姉さん、憑き物が落ちたみたく楽しそうなんだ。遠野さんのおかげなんだよね?」
「…俺はただ、彼女の側にいるだけです」
「それで十分だと思うよ。本当の姉さんを見てくれる人なんて、今までは桃花くらいだったからね」
「本当の…ですか」
「皆姉さんの家柄やルックス、頭の良さ…つまりは付属品にしか興味を示さなかったから。勿論お父様もだけどね」
「………」
「…はは、何か変だね僕。こんなこと言ってもしょうがないのに。とにかくお礼が言いたかったんだ、ありがとう」
「……はい」
微笑みながらお礼を言う藤川英の眼を、俺は見ることが出来なかった。

448 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/07(水) 19:24:40 ID:J4CtRE3C

喫茶店『向日葵』。
この二週間、俺は時間を作っては頻繁にここに足を運んでいた。理由は一つ、神谷美香と会うためだ。
「ここのコーヒーも随分飲んだな…」
今では常連と言っても過言ではないかもしれない。いつも座っているこの席にも、愛着が沸きつつある。
「ゴメンな!ちょっと長引いちゃってさ」
「…本当に時間にルーズだよね」
「まあまあ、結局来たんだからそれで良いじゃねぇか」
「生徒会も遅刻するようなら、何か罰を課さなければな」
「いつも遅刻してるわけじゃないですから!」
俺の他にもこの店が気に入っている人がいる。
例えば今後ろにいる4、5人の高校生らしき若者達は、大抵毎日この店にいるのだ。
今は学生がいるには早い時間帯だが、話を聞いているとどうやら今日から定期テストのため、午前中に終わったようだった。
「先輩!お待たせしました!」
そんなことを考えていると、いつの間にか神谷が来ていた。
「おお、また呼び出しちゃって悪かったな」
「いえいえ、先輩とのデートなら大歓迎ですから」
「デートってお前…」
「冗談ですよ、冗談。それで頼まれていた件なんですが…」
何故神谷と会うか。勿論ライムの件でだ。
神谷が二週間で集めてくれている情報を元に、事件の真相へたどり着くことができれば…。
「…やっぱりどこにも?」
「はい。そんなニュースはやってませんでした。一応ローカルも調べましたけど、どこにも」
「じゃあ…」
「先輩の予想した通りですね」
「…そうか」
……"真犯人"の目星はついた。後はライムと連絡が取れれば良いのだが。

449 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/07(水) 19:25:37 ID:J4CtRE3C

「いやぁ、面白かったですね!」
「そうか?俺にはヒロインが病んでるようにしか見えなかったが」
駅前の映画館。話が一段落ついたので気晴らしがてら神谷と映画を見ていた。
…決してデートではない。
「何言ってるんですか!あれは一種の愛情表現ですよ!」
「愛情表現…?明らかに主人公の兄貴、殺されかけてたけどな」
ちなみにタイトルは『僕は妹に恋される』という恋愛物で、神谷が見たがっていた。
「殺したいほど好きだってことですよ!…あんなに一途な想いを貫けるなんて、羨ましいな」
「お前は結構貫けるタイプじゃないか?俺を思いっきりビンタしたわけだし」
「…何か根に持ってます?」
「いや全然」
「…まああれは先輩が悪かったので。でもわたしだって貫けない想いくらい…ありますよ」
神谷は俺の少し前を歩いているので、彼女がどんな表情で話しているのか分からなかった。
「神谷でもあるんだな、そういうこと」
「わたしだって女の子ですからね。忘れてました?」
「…ゴメン。そういうつもりで言ったんじゃ」
「冗談ですよ。本当に単純なんだね、駿にぃ…あ」
「…駿にぃ?」
神谷に追いついて並んで歩く。
「…すいません。先輩が兄と似ているので…つい間違えちゃいました」
「お兄さんいたんだな」
「はい。先輩と似て鈍感で単純で馬鹿でどうしようもなく頼りなくて…」
「おいおい…」
「でも優しくて凄く暖かくて、一緒にいたいって思える人でした」
「…今は、どうしてるんだ?」
「…今は一緒じゃないんです。ちょっと遠くに行っちゃって」
神谷はどこか遠くを見つめていた。
「遠くって…海外とかか?」
「そんなとこです。実はこの事件が片付いたら、兄に会いに行こうと思ってるんです」
「そっか…。何か悪いな、こんなに付き合わせちゃってさ」
「気にしないで下さい。会おうと思えばいつでも会えますし。それにこれはわたしの意志ですから」
「でも…」
「…じゃあ、一つお願い聞いてくれますか?」
「神谷には随分世話になってるからな。俺に出来ることなら何でも言ってくれ」
「じ、じゃあ…あの…。今日だけで良いので…その……しゅ、駿にぃって言って良いですか」
神谷は顔を真っ赤にしながら言った。もしかすると兄に会えなくて寂しいのかもしれない。俺は神谷の兄に似てるって言っていたし。
「別に神谷がそれで良いなら」
「…わたしのことも…み、美香って呼んでください…」
「分かったよ、美香」
「駿にぃ…」
神谷…いや、美香は俺の手を握ってきた。俺もその手を握り返す。
「美香の手って…凄くちっちゃいんだな」
「な、何言ってんの!?駿にぃ、馬鹿じゃない!?」
「悪い悪い。嫌なら離そうか?」
「……別に嫌じゃない」
「ゴメン、声が小さくて聞こえなかったんだけど…」
「別に嫌いじゃないって言ったのっ!!」
耳元でめっちゃ叫ばれた。
「ぐはっ!み、耳がぁ!」
「…駿にぃとじゃなきゃ嫌なんだからね」
結局俺達は手を繋いだまま駅前を散策した。
美香は終始恥ずかしそうにしていたが、それでも手を離そうとはしなかった。

450 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/07(水) 19:26:26 ID:J4CtRE3C

神谷と別れて屋敷に戻り仕事をこなした。黒川という医者の話では里奈の腹部の傷は完治したようだ。
明日からは大学に復帰するようなので、俺も忙しくなる。
「ふぅ…」
仕事を終え部屋に戻る。もうライムと連絡が取れなくなって二週間以上経った。
日々不安だけが心を支配してゆく。
「ライム…」
もう一度彼女の笑顔が見たい。声が聞きたい。抱きしめたい。
でも待つことしか出来ない自分が情けない。
「考えていても、仕方ないか……?」
携帯が震える。神谷からだろうか。開くとメールが一通来ていた。送信者の名前は…。
「…鮎…樫……らい…む」
一瞬頭が真っ白になった。携帯を持つ手が汗ばむのが分かった。
ゆっくりと下へスクロールしていくと本文が目に入った。覚悟を決めて読む。


題名:無題
本文:今夜12時、アクアポート屋上。一人で来て下さい。


「………」
アクアポートといえば駅前のモノレールから行ける海上娯楽施設、『アクアマリン』で建設中のビルだ。
ここからだと1時間ほどでつける場所だった。
「アクアポートか…」
ライムが初めて出したシングルが大ヒットした時、その記念で二人っきりでアクアマリンに遊びに行った。
彼女の正体が周りにばれないか心配だった俺に対して、当の本人は生まれてから一度も
娯楽施設に行ったことがなかったらしく、異常なテンションではしゃいでいた。
「…また約束か」
一通り施設を回った後、俺達は建設中のアクアポートの前にいた。
島の端に位置し海が一望できるテラスが屋上には出来るようだった。
ライムはアクアポートが完成していなかったことで落ち込んでいたので、俺は彼女に言ったのだ。
「今度は完成したら来よう」と。
するとライムは大喜びして「約束だからね!」と俺と指切りをした。
「…………」
もしかするとライムは覚悟を決めているのかもしれない。
二人の思い出の場所で待っている。嫌な予感しかしない。
「…俺が必ず守ってやる」
でも俺も決めたんだ。どんなことがあってもライムの側にいることを。
「待ってろよ」
俺は携帯を握り締めた。決着をつけなければならない。

451 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/07(水) 19:29:42 ID:J4CtRE3C
今回はここまでです。連日の投下になってしまい申し訳ありません。
ちなみに後3話で完結するので、もう少しお付き合いください。
読んでくださった方、ありがとうございました!夏の暑さに負けず頑張りましょう。

452 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 19:36:56 ID:lDpBQ/5Y
GJ!

453 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 19:36:58 ID:0/Pigxz8
連日投稿キタ!GJ!!更新早くて大好きだわ。つーか後三話か…なんか寂しいな。

454 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 19:42:55 ID:9D3R4MtW
>>444
俺は出来ちゃった方面と予想

>>451
gj
後何話くらいと言われると寂しくなるぜ

455 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 20:04:11 ID:e08poOet
リアルタイム投下ktkr

GJ!きみとわたる好きだから終わって欲しくないな…。次も期待してます!

456 :sage:2010/07/07(水) 20:19:30 ID:iUZSxJj8
GJ!!

きみとわたるすごく面白くて投稿も早いから最近は毎日が楽しみだったのに残念です…

残りも頑張ってください!

457 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 20:44:18 ID:wsBTWGjX
何故だ・・・最初から主人公が誰かを好きな場合必ず
逆のヒロインが好きになってしまう・・・

ともあれGoodJob

458 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 21:35:22 ID:xhcpK8io
それでも確かに完結してくれる方が良い
GJ!!

459 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 21:39:08 ID:ZNwDrSxb
きみとわたるだ!gj!次も期待してます!神谷の妹キャラ最高だ!

460 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 22:16:55 ID:e08poOet
今読み返して思ったんだが結局真犯人って誰なんだ?
俺は普通にライムが事務所の人達を殺したと思ってたんだが…。

まあ考えておくか

461 :名無しさん@ピンキー:2010/07/07(水) 22:50:13 ID:nbGsko1r
>>460

まあそこがこの話のキモだからな
のんびり全裸ネクタイで待機しましょうや

462 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 00:35:54 ID:wTLyvMui
>>443
ご懐妊にきまってるだろjk

463 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 02:42:38 ID:FIGflbcd
ごめん
姉は普通にデブってきただけ
でもほとんどの栄養は胸とか尻にいってるから安心するがよいよ

464 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 02:52:37 ID:xUtTobCT
三原さんの逆襲に期待

465 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 02:53:27 ID:pQ55OiDi
誰か>>456に何か言ってやれよ

466 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 04:04:12 ID:Ava+/zMs
sage分からないのかいってこと?
あまり得体のしれないのに構うとめんどいんだよな〜
あまり他の人に押し付けないでよ
いやだよなんか

467 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 04:11:53 ID:dz7P5rZP
sage分からないのかいってこと?
あまり得体のしれないのに構うとめんどいんだよな〜
あまり他の人に押し付けないでよ
いやだよなんか

468 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 05:00:21 ID:3Gc1hIEg
>>467
おまえじゃね?

469 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 08:07:33 ID:YsAudm77
ヤンデレ家族読み返してきた

花火に兄デレして貰いたい
しかし、そうすると弟が‥‥

470 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 08:25:39 ID:F7ENBU5Z
つか、でもあれって妹は普通の子になっちゃたんだろ?
妹だからなんとかって…あれで読む気が減った。もっといい意味で狂ってると思ってたわ

471 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 09:56:05 ID:FIGflbcd
つーかあの世界には警察とか存在しないのか?
花火とか後輩とか捕まって当然かと思うんだが
作者の人はそういう部分は意図的に無視してるんだろうか

472 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 10:09:05 ID:Z8c/z9lc
娯楽にリアリティはナンセンス

473 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 10:09:36 ID:WQuoxNye
街中で登場人物があれだけ人を殺しても何のお咎めもない変歴伝があるスレでヤボをいうなよ(笑)

474 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 10:18:46 ID:FIGflbcd
変歴伝やドラゴンファンタジーは舞台の時代が古いからなー
なんとなく「ああ、そういうもんなの?」と思うんだわ
けど、ヤンデレ家族は現代日本が舞台だろ?
どんな暴力沙汰が起きてもお咎めなしの登場人物を見てると、「あれ?警察は?」ってどうしても思っちまうんだわ
リアリティつか、常識の問題なんよ
常識を無視してると物語が読者を置いてきぼりにして空回りするんだよなー
ヤンデレ家族は面白いけど、往来で人殺ししてもお咎めなさそうな雰囲気があるのが凄くひっかかる


475 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 10:34:32 ID:crzsD4fA
474 どこを縦読み?


476 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 10:45:53 ID:xdmvXr4z
このスレのSSに、警察とかPTAとか出てきて説教してるシーンが欲しいかい?
きっと裏でめたくそに怒られてるんだよ。
お話をつまらなくする秘訣は、なんでもかんでも描写することだ、って聞いたことあるぞ。

477 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 10:56:38 ID:FIGflbcd
保管所に、ヤンデレが警察に捕まる展開のあるSSがあったけど
ああいうのはこのスレ的に駄作って事か?

478 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 10:56:54 ID:rR0abS2n
変歴伝と同タイプな作品だろ、ヤンデレ家族は。
文の書き方は軽めで、ギャグ有り、
キャラが無茶苦茶やりまくりの破天荒な作風だから、
警察を完全無視していても何もおかしくあるまい。
作品の世界観に合致している筈だ。

無論、世界観的に無視出来ないような、
重苦しい作品で無視したら違和感まみれになるが。

479 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 12:07:34 ID:/a0B59Ag
投下してくれてる作者に軽くアドバイスするならまだしも
投下もせんでバックヤードや描写の範囲にまであれこれと口出すんはあまりいくないと思うんだがどうだろうか?

ss挑戦したことのある身でぬるい言い訳みたいなこと言わしてもらうと…濃いキャラ書いてると常識的な描写を記述する分にまででばって来てしまうんだよ

意図的に省く場合もあるし、話の根幹に関わらないなら無くてもいいのではないかね?

480 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 12:17:39 ID:FIGflbcd
いんじゃね
なにを省いたっていいし、めんどくさいならキンクリかましてもいいんだよ
けど、読者に違和感を与えることにも繋がるから作者の自己責任でな、って感じ
なんも感じない読者もいれば、どーもしっくりこないと感じる読者もいる

481 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 12:27:29 ID:O28m1EBv
常識的ではないキャラクターと状況を扱うスレでリアリティーを計算するのがギャグ

482 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 12:28:16 ID:4JnJ65pp
> ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
> ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

とりあえずテンプレを読もうか

483 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 12:32:21 ID:FIGflbcd
ごめんね

484 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 14:13:34 ID:USYUCzGr
また夏の虫さん達が自治房うぜーとか言いそうだから話題を変えた方が良い

485 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 15:50:05 ID:9uBelfjf
やたら指輪のサイズを会話に盛り込むキモウト

486 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 15:50:37 ID:Ic4bDJiA
ヒロインを殺されたときに、主人公及びヒロインの親兄弟がヤンデレに復讐をする展開が少ないのは
上記の展開をやると、さまよう刃や告白など既存の作品と被るからでしょうか?

487 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 16:19:06 ID:2vL0LnS+
つまり・・・・・・どういう事だってばよ!?

488 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 16:40:58 ID:Tyv931kj


489 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 17:19:01 ID:/VKmFEyZ
そういう問題じゃなく、単純にその展開の扱いが難しいからじゃないかな
どちらもヤンデレ的なハッピーエンドには持っていきにくいから

490 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 18:16:21 ID:WJ6s/7f9
読みたい

491 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 18:52:50 ID:FSvkgqYN
ヤンデレをうまく飼い慣らす主人公はいないのか!!!

492 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 19:18:38 ID:rZyuRxSk
>>491
ヤンデレが上手く飼い慣らされたら、ヤン要素がでないんじゃね?
ちょっと過激なデレデレにならないか?

493 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 19:33:54 ID:pQYFsOTm
>>492
ヤンというかキモデレかバカップルってかんじだな

494 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 19:43:37 ID:zS8j5T+w
くだらない雑談ばかりで作者が投稿し辛いような空気作った馬鹿は死ねよ

495 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 20:02:03 ID:FIGflbcd
だな
スレはあくまでも作者の作品のためにある・・・
その大切な事実を忘れたスレはいずれほろん部

496 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/08(木) 20:02:46 ID:jvrutDJI
はい、暑くなってきましたここ最近。軋んでいく歯車を書いてる者です。
第四話書き終わったので投稿します。
なんかグダグダしたコントのような感じになりましたがよろしくです。

497 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/08(木) 20:03:27 ID:jvrutDJI
「さて我が校は毎年夏休み前に文化祭があるのだが……出し物決まっていないクラスはどこだ」
「ウチです」
 期末テストが終わりもう一ヶ月で夏休み。我が校では文化祭と一緒に終業式をする。
 俺的には準備期間に夏休みも加えて増やしてほしいという本音があるが学校側の予定だし仕方が無い。
 まあ祭りの準備期間になったため6時間目の授業は全部LHRに変わったのだが。いいのかこれ。
 そんななか俺たちのクラスはまだ決まっていなかった。
 一年前は即決したのだが今回は人形劇がいいとかお化け屋敷がいいとかという感じにまとまらない。
 そのため会長という権限を使い、生徒会室でクーラーを浴びながら考えているのだが。
「そうだな。我がクラスは今回は非常にまとまりが悪いというかやりたいものが多いというか」
「でもいいことだよ〜。知り合いの〜ところなんて〜誰も意見出さなくて〜やるものが俳句になったときがあったそうだよ〜」
「それは嫌だな」
 せっかくの文化祭に俳句って……まあいいかもしれないけど盛り上がれないよな。
「まあそうしないためにも今第三候補まで書いたアンケート用紙の処理をしているんじゃないか」
 そういって会長は手元の紙に数を書き込みつづける。喋りながら出来るのはすごいよね。
 俺も調べるのを再開した。えっと5番はたこ焼き屋、お好み焼き屋、焼きソバ屋。
 いかにも祭りの出店みたいなものだなー。
 それでー6番はタコ無したこ焼き屋、ロシアンルーレットたこ焼き、たこ焼き屋
 どんだけたこ焼き!? しかもタコ無しタコ焼きってお好み焼きを丸くしたようなものだよね! しかも第三候補が普通のたこ焼き屋!?
 突っ込みながら統計していく。とりあえず俺のほうはこのタコ三連続でたこ焼き屋が多くなった。
 もくもくと作業を続けとりあえず統計終了後俺のほうではたこ焼き屋が一番多かった。
「会長。俺のほうでたこ焼き屋が多かったです」
「そうか、さてどうするか」
 会長は紙を見ずアイスを食べていた。……横を見ると正敏も食べていた。あっれ……
「俺のぶんのアイスって無いのですか?」
「「ない」」
「俺のアイス生徒会専用冷蔵庫に二つ入ってたと思うけど」
「幻覚だ」
「そうだよね〜」
「そうかー」
 気のせいか二人の持っているアイスが俺のアイスな気がするんだが。
「俺のアイス……」
「男がめそめそするな。ほら私の分の仕事あげるから元気出せ」
「わーいありが……ってなるか!」
 誰がアイスじゃなく仕事もらって喜ぶ奴がいるんだ。
「まったくバカだな。私の指紋つきだから私のファンクラブに売れば高値だぞ」
「まあたぶん〜卓也の指紋ついたやつなら〜価値は半減するとおもうけどね〜」
「お前等グラウンドにでろや!」
 ここまでバカにされちゃ引き下がるわけにはいかない。
「いい度胸だな。私は手加減というものをいまいちわからないから本気でいくぞ。いいな」
「心のそこからごめんなさい」
 プライド何それ食べられる?

498 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/08(木) 20:05:13 ID:jvrutDJI
「さて〜ミニコントもしたし〜のど疲れたでしょ〜。は〜いコーラ」
「炭酸でノド痛くするよ!?」
「大丈夫だよ〜。いらないなら僕飲むし〜」
「もらう」
 ペットボトルの蓋をあけると炭酸の抜ける音が気持ちよく出た。コーラを一気に飲み込む。炭酸がノドに一気に来て少しむせかけたが気持ちよい。
「ぷは、少し炭酸抜けてるけどおいしいね。コーラは」
 いきなり正敏が頬を赤く染める。何が起きた。
「間接キスだね。卓也くん……」
 上目遣いの潤んだ瞳で俺を見つめてくる。さすがに悪いことしたな……
「って! 別に男同士だからいいだろ! キショイ!」
 というか開封済みだったのか!? あ、さっき蓋開けるとき硬くなかったから……はめられた!
「キャ!」
 肩を掴むが勢いあまって床に押し倒してしまった。
「あ、悪い」
「先輩……無理やり押し倒すなんて、僕……」
「『お前が火をつけたんだろ?』俺はそういうとYシャツの第一ボタンをあける。男とは思えない柔肌が……」
「会長自重! BL小説みたいな文をいれない!」
「そのままのながれでいってしまえばよかったのに」
 会長ってBL趣味があるのか? ちょっと悲しくなってきたよ。
「僕は……いっても、いいよ……」
「お前は黙れ! あ、いやいいや。めんどい」
「そうだ〜。BL喫茶って〜どうかな〜?」
「真面目に考えやがれ!! というかやっぱ黙ってろ!」
「ならコスプレ喫茶で。はい決定」
「俺の意見は徹底的に無視ですか!? それにお前らの思考は本当にアブノーマルだなおい!!」
「いやそこまでアブノーマルじゃないと思うぞ」
「そ〜だよね〜」
 何いってるんだろう。確実に普通の人の感覚ではないと思うんだが。
「とりあえず〜コスプレ喫茶は〜服を自前にすれば〜みんな〜乗り気になるよ〜。ノリとかいいし〜負けず嫌いな奴が多いから〜」
「だろうな。お祭り好きでもあるからな我がクラスは」
「そうだな。俺もそう思うよ」
「その筆頭は〜卓也〜だけどね」
 俺が筆頭……なぜに!?
「その筆頭は会長だろ! いや正敏か」
「私は文化祭であんな格好をしない」
「あれは俺は何もしていない! 女子と正敏が勝手に!」
「何言ってるの〜たはは〜。自分は〜ただ卓也をスタンガンで気絶させたあと裸にひん剥いて女子の制服に着替えさせかつらもかぶせて化粧しただけだよ〜」
「それが原因なんだよこのクソ野郎!」
 こいつって本当に俺の友達なのか疑うときがある。
「でもさ〜起きたら〜普通気づくと思うんだけどね〜そのまま学校を〜歩いて〜『可愛い女子を探せin文化祭』に〜引っ張られて〜体育祭のステージで全力でアニソンを歌った卓也が悪いよ〜」
「そうか……そうかもな。っていや絶対前半が悪いだろうが! しかもアニソンは歌ったら商品が出るって言ったから全力で歌っただけだ!」
「正敏ここのスペース開くんだが」
「そうだね〜スペシャル席にすればいいと思うよ〜。追加料金で指名者といろいろできる場所的な〜」
 俺の訴えは無視ですか……
「しかし性的なものをしたらどうするのだ」
「もし性的なことをしたら知らせるアラームをつけましょ〜。ボタンでポチッって感じの〜。もししたら屋上に全裸でつるすことにすればいいと思いますよ〜」
「その案がいいな。よしそれで行こう」
 なんか不穏な会話が聞こえる。会話をきらないとさらに変な方向にいく気がする。

499 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/08(木) 20:05:43 ID:jvrutDJI
「その前にそっちのアンケートはなんて書いてあったんだ?」
 たこ焼き屋の追悼代わりに聞いてもいいだろう。
「男子、新撰組喫茶をやりたい、軍人喫茶をやりたい」
 確かにコスプレ喫茶にするのが妥当かもしれない
「全裸喫茶をやりたい--以上」
 なんか斬新な……って
「最後おかしいだろ!?」
「次、女子」
「スルーかよ!?」
「書いた奴にきけ」
「ごもっともですよ、この野郎!」
「さて気を取り直して女子。メイド喫茶、執事喫茶、奴隷喫茶などなど」
「どれだけコスプレしたいんだよお前等! しかも奴隷って! というか一つのくくりでまとめていいだろ!?」
「喫茶店しか共通点ないじゃないか」
「十分だよ! 男子は戦争喫茶に女子は従者喫茶にひとくくりできるじゃねぇか!」
 会長はどんな方向に行きたいのか分からなくなった気がする。
「兄貴……いる?」
「おーういるよー」
 突然妹が尋ねてきた。いつものはっちゃけ度がないのでなんか違和感がすごい感じる。
「おやおやこれは妹様。麗しのお兄様は現在仕事中だからお引取りしてくれないか?」
 仕事中じゃないんだけどな
「いいじゃない、いたって……」
 珍しく妹が会長に普通に抵抗した。どうしたのだ。いつもならもっとねちっこい攻めするのに。
「ああ、いてもいいぞ。紅茶飲むか?」
「結構……」
 なんか妹がいつにもまして不機嫌だ。いつもなら嫌になるほど砂糖を紅茶に入れさせその紅茶を会長にぶつけるのに。
「ふむ、今日は茜は不機嫌だな。……さて私はこのコスプレ喫茶の案を先生に提出してくる。今日は茜もあわせて四人で帰ろうか。いいかな茜」
 茜はプイと横を向く。苦笑いをしながら書類を纏めて会長は出て行った。
「って勝手にコスプレ喫茶にするんじゃねぇ!」
 しかし声は返ってこなかった。クソ……間に合わなかったか。
「兄貴……兄貴ってさ、会長のことどう思ってるの」
 椅子に腰掛けた妹がいきなり変な質問をしてきた。どうしたんだ急に。会長か……会長は……
「そうだな。頼りになる人だと思うよ。性格はサドだけどね」
「そういうこと聞きたいんじゃないの……」
 なら何を聞きたいんだろ?
「まあまあ。そんなのどうでもいいじゃん〜」
 妹の話をきって正敏は話しに入る。
「まっさんは平和そう」
 正敏も苦笑いをした。たぶんいつもの妹と違うからだろうな。なんか絶望しかけてるという感じかな
「うん平和だよ〜。少しスリリングなことに首を突っ込みたいぐらいだしね〜」
 少し妹は笑いすぐに暗くなる。
「それにしても卓也って鈍感さんだよね〜」
 正敏はかばんから枕を取ってソファに横になる。
「それじゃお休み〜会長来たら起こしてね〜」
 正敏は睡眠に入ってしまった。え、なにこの罰ゲーム。この鬱妹と話すのって少し怖いんだが。
「兄貴……兄貴って私がどんなに汚れても妹に思える?」
 前と同じ問い。俺はどうなんだろう。妹がどんなに犯罪行為をしても妹だと思えるだろうか。
 うん。俺は思えるな。どんなに犯罪を犯していても妹だと。
「当たり前だろ。当たり前のこと何度も聞くな」
 頭を撫でると少し笑顔になった。俺は会長が戻ってくるまで妹の頭を撫でていた。妹は嫌がりもせずただ撫でられていた。

500 : ◆fyY8MjwzoU :2010/07/08(木) 20:09:58 ID:jvrutDJI
以上です。とりあえず文化祭終了したらヤンデレになるはず! 分からないけど…


501 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 20:16:10 ID:asAiYcBx
投稿おつかれっす

502 :自宅警備員の姉:2010/07/08(木) 23:40:20 ID:FIGflbcd
俺こと桐沢誠司が通う高校は、家から歩いて20分ほどのところにある。
どうということもない普通の学校だ。
自分の教室に入ると、セミロングの髪の毛が特徴的なクラスメイト、三原優香がさっそく俺を見つけて笑みを浮かべた。
「おはよう、桐沢くん」
「ああ、おはよう」
「昨日の約束、覚えてる? 今日の放課後、あたしと・・・」
「悪い、三原。そのことだけど、行けなくなった」
「えっ? ど、どうして?」
「いや、いきなり家の用事が出来て・・・ほんと悪い。埋め合わせは今度するからさ」
「うん・・・」
なんとなく気分の沈んだ様子の三原。
すまない。
三原の横を通り過ぎて、窓際の自分の席に座る。
「相変わらず、罪つくりな男だねぇ」
後ろの席から声をかけてきたのは、ニタニタとした笑みを浮かべる女だった。
獄楽寺涼子という名の女で、長い黒髪をポニーテールにして背中に垂らした、涼しげな美貌の持ち主だ。
しかしこの女、身長190センチ、鍛え上げたムキムキのプロボクサーのような肉体を誇る、スーパーマッスルレディである。
ありとあらゆるスポーツと格闘技をマスターしていて、将来は国立の有力体育大学に進学してオリンピック選手にでもなるか、格闘技の大会に波乱を巻き起こす風雲児となるか、そちらの方面の業界から熱い期待を寄せられているらしい。
が、そんなことはいまこの場では関係なく、ただの俺の悪友にすぎない。
「なんだよ、罪つくりって」
「言葉の通りの意味だよ。さっきの三原さんの顔を見たかい? 幸福に満ちた状態から一転、期待を裏切られて絶望へ。まさに天国から地獄だ」
「・・・用事が出来たんだから仕方ないだろ」
「どうせお姉さんのことだろう?」
な、なんでそれを。
涼子の笑みが深くなる。
「すべてお見通しだよ。きみは考えてることが顔に出やすいからねぇ」
くそっ・・・反論できない。
涼子には、姉さんが自宅警備員であること、とにかく手のかかる姉であること、そして、俺が重度のシスコンであることまで知られてしまっているのだ。
切れ長の瞳でこちらを見つめてくる涼子。まるで心を読まれているかのような居心地の悪さだ。こいつに隠し事はできない。
「そうだよ・・・姉さんの具合が悪いらしくてさ、看病してやらないと」
「看病ねぇ・・・くっくっく」
意地悪く、ニタニタと笑う涼子。
「なんだよ」
「べつに? それよりも、放課後がダメでも昼休みは空いてるだろう、誠司?」舌なめずりする涼子の表情は、蛇を連想させた。
軟弱な毒蛇などではなくて、太く長く逞しい肢体で獲物に巻き付き絞め殺す、大蛇のような女である。
「今日も、きみのために弁当を作ってきたんだ。もちろん食べてくれるね?」
ああ、姉さんと同じ眼だ・・・。
余裕と狂気が入り混じったような双眸。
俺はこの眼に逆らえない・・・。

503 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 23:42:12 ID:FIGflbcd
以上。暇だったから続き書いた
ケータイで書くのキツイ

504 :名無しさん@ピンキー:2010/07/08(木) 23:49:05 ID:JlDZukT6
GJ!

505 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 00:09:45 ID:Tm9dG8O4
GJ!!!
ぜひ続けてくだされ!!!

506 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 00:34:10 ID:TaGpb9rl
GJ!

自分も続きが見たいです!




そして七夕の続きが終わったのですが、まだ1時間も経ってないので投下しないほうがいいですよね?

507 :503:2010/07/09(金) 00:42:24 ID:r/DVOfC3
俺のことなら気にせず投下してよだお


508 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 00:47:28 ID:TaGpb9rl
すいません。


では投下します。

509 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 00:49:14 ID:TaGpb9rl

あれから一週間俺は昔の面影が消えてしまうぐらいに変わってしまった。
まず一週間前に現彼女である寺島 杏に愛の告白をされ、その夜には幼なじみの楓が家に晩飯を食べるため来るようになった。
しかしその晩から楓の眼を見るとあの太陽のように輝かしい眼ではなく、妖しく輝く眼となっていた。
態度も心なしかきつかったのもそのせいなのか。

次の日も楓と会い、商店街まで一緒に歩いていった。だが、俺は彼女がいるせいか楓との会話が少し歯切れの悪いものとなってしまった。

楓と別れ、学校に着きげた箱で靴を履き替え、我が教室の3ー1組に入るとクラスの奴らが俺の周りに集まって来て

「お前、杏ちゃんと付き合ったんだって!?」
今までろくに会話もしたことない奴らが俺と寺島の件についてかなり訊いてきた。
小学校の時も俺は静か系な方だったのでこんな体験は初めてだった。あまりに緊張してしまったので俺は変な声でついこう言ってしまった。

「さいです!!!!べらぼうめぃ。」

この時、俺は過去の俺をかなり呪った。…………………………なんで今までろくな対人関係やっておかなかったんだよ俺は………




510 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 00:50:23 ID:TaGpb9rl

俺の緊張感丸出しの反応は思わぬ方向に転がってくれた。

「ぷっ。何だよ今の反応www」
「松下君って面白かったんだね。」
「意外だな。」

この機を機会に会話皆無に等しかった俺はクラスに打ち解けた。気持ちがスッキリしたのは嬉しいと感じたからだろう。

その日からだろう学校生活に充実感を感じたのは。
今までも充実はしていたものの、心から達成感いや存在感を満たされたのは初めてのことだった。

下校時は帰りのホームルームが終わるといつの間にか寺島がいて

「帰ろう。」

と甘いお誘いがあったので、二回返事をして一緒に帰った。

最初はどちらもぎくしゃくとしていたが、寺島とは意外と意気が合いとても良い時間を過ごせた。もっと道が長ければいいのにと思う気持ちは彼氏持ち、彼女持ちの方々だったらわかるだろう?

寺島の家は高校からそう遠くはなかった。俺の家から比べるとそれなりの距離があり、通学方法は自転車で40分はどおしてもかかるらしい。

しかし今日の寺島は自転車ではなく徒歩で1時間近く時間をかけて登校して来たのだ。
何故だか訊いてみると

「帰りに松下君と長く一緒にいたかったから///」

とまあ、嬉しいことを簡単に言ってくれますよ。





511 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 00:51:06 ID:TaGpb9rl


寺島の家の前まで着き、そこで寺島とさよならをした。

その先に待っていたのは自分の家まで1時間と30分との戦いだった。
肥満気味の人には是非教えたいと思った。本当に。

また朝が来て、うつらうつらと下のリビングに向かうと楓がいて、また朝食を一緒に摂った。

この日は朝食の時から話していたので、前日みたいなことにはならなかった。

商店街を抜け、楓と別れ学校に向かうと校門に一人の男が立っていた。

「貴様か!?寺島さんの彼氏とは!?」

声を聞く限り綺麗な声だなと思うのだが、無理やりか声を荒げながら喧嘩口調で俺につっかかってきた。
他にも生徒がいるというのに…

「そうだけど………誰です?」

よくよく見ると声だけではなく顔も綺麗だな…多分女子からも人気があるだろう男は「待ってました!!」と………って、言っちゃったよこの子…

「俺は3年2組で寺島さんと同じクラスの石坂 浩平(いしざか こうへい)だ。」

なるほど、寺島さんは隣だったのか。よし、いつか遊びに行ってみるか。

「で?石坂が俺に何の用?」

まさかこいつ、寺島のことが好きで寺島をかけて決闘だ!!なんて言ったりしないよな?




512 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 00:54:07 ID:TaGpb9rl

「お前が寺島さんの彼氏なんて認めん!彼氏の座をかけて勝負だ。」

こいつは俺の思考通り動くのか!?

そんなことより予想通りに決闘を申し込んできた。俺、喧嘩強くないけどどうしよう。

だが、今度は予想外の展開が起きた。

「ぐはっ!?」
「しつこい男は嫌われるよ、石坂君?」

校舎の方から俺のエンジェルである寺島が気配を消してか?石坂の背後まで来て、手刀で首をチョップし石坂を気絶させた。

「おはよう松下君。」
「おはー。」

なんだかんだで寺島と合流した形だったので一緒にクラスまで行った。

クラスからはちょうど校門が見えるので覗いてみるとまだ石坂が気絶していた。………誰か起こしてやれよ……

面白かったのでそのまま観察していると鐘が鳴り、ホームルームの時間になった。石坂はまだ気絶したままだった。

ホームルーム後、窓側の奴から聴いた話しだが、石坂はあのまま気絶したままで、先生方5、6名が来て起こされて説教を喰らってたとか。
うちの学校にも不良もどきだけでなく、痛い子もいるとは思わなかった。そして寺島の隠された強さを知った。




513 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 00:54:52 ID:TaGpb9rl

休み時間は予習の時間にしていたがクラスの奴らが『親しみやすくなった』と理由に俺と雑談しに来た。
会話が続くか心配だったが、俺は本当に変わったらしい…鐘がなるまでずっと雑談をしてしまった。

授業はいつもより長く感じた。頭に内容は入るがクラスの連中と雑談したい!という気持ちがあり、休み時間がものすごく待ち遠しかった。

そんな楽しい学校も終わり、寺島と合流し、明後日はテストだと勉強の話になってしまったが、どちらも飽きることはなかった。

寺島を送って家に帰宅し、家族全員で晩飯を食べていると突然母親が『最近帰り遅いけど、彼女でもできたの?』と悪意丸出しの笑みをしながら訊ねてきた。
それに父親が便乗して『可愛いかい?』とこちらも悪意丸出しの笑みをして訊ねてきた。

返答が遅れたせいか、その日の夕飯は食欲がなくなってしまった。恥ずかしいな思い出すだけで。

4日目も起きるとリビングに楓がいた。
朝食を食べている時両親二人がニヤニヤしていたのは流石に腹が立った。




514 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 00:55:48 ID:TaGpb9rl

最近お決まりになりかけている楓との登校。寺島がいるからそろそろ女子二人と登校はやばいだろうと思い楓に今日いっぱいでやめようと言おうとした時

「咲元さ、明日テスト何でしょう?だからあたしが夜教えに行ってあげるよ。」

待て!?確かに最近変わってきた俺だが、勉強は愚かにしてないぞ?

しかしタイミング悪く商店街を抜けてしまい

「とゆーこで、じゃねー。」

駅まで走り去ってしまった楓。断ることができなかったから夜あいつは来るだろうと思い、少し鬱になりながら学校に足を向かわせた。

いくら幼なじみとはいえ、夜に女の子を家に上げるのはまずいだろう。

学校に着き教室に向かうと明日がテストのためかみんな今までの復習やら何やらで机とにらめっこ状態だった。

俺はこんな空気には慣れていたので今日はあまり面白いことはなく学校が終わった。

寺島と合流し、一緒に帰っていると明日がテストなだけにお疲れな感じだ。
『松下君は全然疲れてなさそうだね』と言われたが、変わってからわかるが家での勉強はかなりの疲労を感じる。いや、学校の授業もかなりしんどい。




515 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 00:56:59 ID:TaGpb9rl

今まではそんなこともなく、疲れていて愚痴ってる奴を見るたびに見下していたが、今なら思う。以前の俺はおかしかったと。

よく勉強のやりすぎで頭がおかしくなるというがその通りだった。
俺も後もう少し無理していればそうなっていただろう。
5日前の俺はただ寂しかったから強がって意地を張っていたのだろう。

寺島の家がそろそろだと思った時、寺島は俺が学年一桁と知っていたためか

「今日さ、私の家で明日のテスト勉強しない?」

めちゃくちゃ嬉しく、“はい”と応える前に今朝の楓との約束を覚え出した。

『咲元さ、明日テスト何でしょう?だからあたしが夜教えに行ってあげるよ。』
「悪い。テストの時だけは一人で勉強させてくれ。」
「あ……うん…わかった。」
「悪いな本当に。」
「じゃあ、テスト明けにその………デートしよ!」

初デート。やったね。不幸中の幸いってやつか?
いつかはデートしたいなと思ってはいたが、まさか付き合ってこんなに早くデート出来るとは。

「ああ。じゃあテスト明け楽しみにしてるよ。」
「うん///私も楽しみ///」

家に帰宅すると玄関前にまるで鬼嫁のように仁王立ちしていた楓がいらっしゃった。




516 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 01:00:46 ID:TaGpb9rl


「おそーい。こんな時間まで何してたの?」
こんな時間と言っても10時とかそんな遅い時間ではなくまだ暮れた直前ぐらいだと思うんだが。

「いや、その…あれだ。本買いに行ってたんだ。なんか明日のためにと思い。」
「じゃあ、買った本見せてよ。」
「いや、結局いいのがなくてな。だから楓の指導に全てを任せた。」

あぶないあぶない。言い訳が矛盾するところだった。

「………てたくせに………」

楓が下向きながらもごもごと何か呟いていたが、無視し夕飯を食べて勉強に取りかかった。

ちなみに親の性格が大ざっぱなことに気づいた17の夕飯。ある意味尊敬するよ…父さん母さん……

楓でに勉強を教えてもらっているとこいつの頭に改めて驚かされた。流石最難関の星南に行ってるだけはある。もう俺なんかを超えてしまっている。うちの高校に行ったら絶対に学年一位だろう。

教え方も上手く、手こずっていた場所もやすやす解けるようになった。

2時間半ぶっ通しでやったので頭が疲れ、眠くなってしまった。そんな時に




517 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 01:01:17 ID:TaGpb9rl

「よし、明日から4日間頑張ってよ。」
「ああ…」
「何?咲元が疲れちゃった!?中学生時代毎回1位を取り続けてたあの咲元が?」
「もう俺の頭じゃ追い付かなくなってきたんだよ……」
かなりこの時は眠くなっていた。

「じゃあさ!!テスト明けにどこか遊びに行こう!」
「…ああ…ああいいぜ………」
「///よし、それじゃあ今日は早く寝て明日に備えてね。」

そんなやり取りをしてしまった俺。寺島との約束もあるというのに……俺の馬鹿!

疲れた俺は早く寝てしまった。そしてテスト初日の朝がやってきた。

テストのためか、楓は朝食は俺の家でしっかり一緒に摂ったが、楓なりに気を使ってくれたのか、早く学校に行けと催促し、今日から俺はまた一人登校した。

学校に早く着き、最後の復習。そしてテストが始まった。







テスト以外これといったことがなかったので、今日は寺島が『俺の勉強時間を減らすわけにはいかない』とな訳で久しぶりに早く家に下校。

テスト勉強をしていると夕飯ぐらいに来客が来た。
楓だった。

今日も楓にテストのコツなどを教えてもらった。




518 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 01:01:53 ID:TaGpb9rl
昨日も一昨日と同じで今日も多分そうだろう。
テストの日はいつもよりかなり早く帰れるため帰ったら勉強と勉強尽くしの俺になりつつあった。

しかし以前と違って疲労感が大分表に出てきてしまっている。
その点のことを考えると以前の方が良かったかもしれないな。

先ほどまで楓が座っていた場所を何気なく見る。

…あいつ先生になればいいのに。

楓が眼鏡をかけ、椅子に座り、足を交差させ太ももをちらかせる姿が頭に浮かんだ。

………………って!?何妄想してんだ俺は!?

疲れてんだな、よし寝るか。


その時、今日楓が帰る際何か行ってたのを思い出した。

「………だから………に行く……ね。」

駄目だ。断片的にしか思い出せない。

まあ、多分覚えていないということは大したことじゃないはずだ。

俺は眠りについた。



519 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 01:02:40 ID:TaGpb9rl







やっと…やっと終わった。
今日が初めてかもしれない。テストでこんなに疲れたのは。

みんなテストが終わりどこか清々しさが感じる。多分今の俺も周りから見るとそんな感じなのだろう。

最近話すようになった窓際の赤谷(あかや)君とテストの答え合わせをしていると、教室に寺島が入って来た。

「あ!松下君。」

寺島が俺の所に来ると赤谷が生暖かい目で俺を見ながら、違うグループの所に行ってしまった。

「今日でテストが終わりテスト明けだね。」
「よし、じゃあ今日は初デートといきますか?」
「///」

可愛いなちくしょー。
だが、こんなトークしてると皆さんが生暖かい視線で………恥ずかしい///

「席に着けー。ホームルームやるぞー。」

担任が来たので真っ赤な顔の寺島帰還。

ホームルームが終わり、寺島と合流。
4日ぶりの寺島との下校。さらに初デート。俺のテンションも高まってきた。

しかし校門前に見覚えある顔があった。楓だ。

そして俺はようやく昨日の楓の台詞を思い出した。




520 :変わった日・七夕:2010/07/09(金) 01:03:50 ID:TaGpb9rl

『明日でテスト明けるんだから、その帰りに遊びに行くんだかね。』

くそ!何がどうでもいいことだっ。重要過ぎるだろう!!

そして校門を出ると楓が俺達の前にまで来た。

「あなた誰ですか?」
「あんたが咲元の彼女?」



最悪の展開しかみえない。






521 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 01:08:00 ID:TaGpb9rl
投下終了


すみません前半後半とか言っときながら、終わりませんでした。

さらに今回はヤンデレじゃなくてすみません。

次回の前置きと考えて下さい。次回こそ病みが出ます!

522 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 01:11:02 ID:RFeYyX5M
>>521
GJ
なに、病み分が無くとも私は楽しませてもらっているよ。
次回の病みに期待する。頑張ってくださいな。

523 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 03:06:56 ID:YeMSnP7Y
>>502
死ね

524 : ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/09(金) 03:23:32 ID:03GoZoab
夜分恐れ入ります。
第10話を投下します。

525 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/09(金) 03:24:46 ID:03GoZoab
玄関からホールに入ると、すでにかなりの人が集まって談笑していた。
門のところで見たように、大人から僕の高校の生徒までいる。
今まで気が付かなかったけど、僕の高校の生徒は女子ばかりだった。
――ここでしばらく待つのかな?
そう思ったけれど、エメリアさんとソフィさんはホールでは止まらなかった。
どんどん屋敷の奥に入っていき、ついに地下への階段を降り始める。
このお屋敷には何度かお邪魔しているけど、地下に行ったことはなかった。
――どこに行くんだろう?
なぜだか、少々不安を感じた、聞いてみようと口を開きかける。
「あの……」
しかしエメリアさんに、「シッ!」と制されてしまう。
僕は黙ったまま、ついていくしかなかった。
地下は何階かまであるようだったけど、僕達は地下2階のフロアに足を踏み入れた。
照明は点いているが、気持ち薄暗い。人気のない病院みたいな印象だった。
しばらく廊下を進むと、不意に後ろの方で、『ガチャン』という音がする。
「!?」
何だろうと思って振り向くと、いかにも頑丈そうな壁が、今来た廊下を塞いでいた。
「な、何……?」
驚いていると、ソフィさんが事もなげに答える。
「ご心配なく。あれはただの電波遮断用の壁ですよ」
「電波遮断用……?」
「盗聴や盗撮を防ぐためです。そういうのって、何かと多いんですよ」
「そ、そうですか……」
今も誰かが、盗撮や盗聴をしようとしているのだろうか。少し怖くなった。
やがて、あるドアの前で僕達は止まる。
正確に言うと、エメリアさんとソフィさんが止まったから、連行されている僕はそれ以上動けなかった。
「お嬢様。詩宝様をお連れしました」
そう言ってエメリアさんがドアをノックすると、中から返事がした。
「入っていただいて」
先輩の声だ。
エメリアさんとソフィさんは、僕の腕を解放した。足の裏に、体重の感覚が戻る。
ドアを開いたエメリアさんが、中に入るよう仕草で促した。
僕は意を決して、ドアの内側に足を踏み入れる。
「失礼しま……がっ!」
挨拶しようとした瞬間、誰かにタックルされた。
「詩宝さんっ!!」
いや違う。先輩が抱き付いてきたのだ。物凄い勢いで。
押し倒されそうになったが、秘書の2人に背中を支えてもらったので、どうにか立っていられた。
「詩宝さん、詩宝さん……」
先輩は僕を抱き締めたまま、強い力で部屋の中へと引っ張り込んでいく。
体力的に抵抗できない僕は、されるままだった。
後ろの方で、『バタン』と、ドアを閉める音がする。


526 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/09(金) 03:26:49 ID:03GoZoab
「ごめんなさい。つい取り乱してしまいました……」
部屋の中央で、ようやく先輩は僕を解放した。
薄暗い、殺風景な廊下とは対照的に、豪華な内装の明るい部屋だ。
「い、いえ。わざわざ済みません。僕のためにこんな……」
先輩の方を見ないようにしながら、僕は言った。
なぜ先輩を見ないようにしたかと言うと、格好が普通ではなかったから。
紫色の、肩紐のないドレスなのだが、胸元がぱっくり開き、大き過ぎる乳房が大部分露出している。
布地の角が辛うじて引っかかっており、先端が見えるのだけはどうにか防いでいた。今にも出てきそうだが。
裾はとんでもなく短く、股下何センチもなさそうだった。ちょっと動いただけで、簡単に下着が見えてしまうだろう。
目のやり場に困るどころではなかった。
「……どうかしましたか?」
明後日の方向を向いている僕を不審に思ったのか、先輩が腰をかがめ、上目遣いで僕の目を覗き込んできた。
物凄く顔が近い上に、胸の谷間がストレートに見えてしまう。
「うわっ!?」
思わず跳び退くと、先輩は素晴らしい追い足で詰めてきた。
「詩宝さん……少し変です」
いや、先輩こそいつもと違いすぎますよ。
そう言おうとしたが、緊張で言葉にならない。
「とりあえず、座りましょう」
先輩が僕の手を取り、ソファーの方に引いて行く。
引かれるままに歩いて行きながら、僕は気持ちを落ち付けようとした。
「…………」
考えてみれば、紅麗亜が僕の家に来て以来、尋常でないことがずいぶん起きている。
先輩の様子が多少変わるぐらいのことは、仕方ないのかも知れない。
「どうぞ」
「はい。失礼します」
勧められてソファーに座ると、先輩は僕のすぐ右に腰を下ろした。
しかも、僕の腕を抱えて体をぴったりと密着させてくる。バストの感触がもろに伝わってきた。
「…………」
思わず下を向いてしまう。やっぱり、今日の先輩は少しおかしいのかも知れない。
――いや。
僕は顔を上げた。もし先輩がおかしくなっているとしたら、それは僕のせいだ。
先輩と紅麗亜の間を、僕が取り持たなかったのがいけないのだ。
話すべきことをきちんと話し、2人のわだかまりをなくさないといけない。
「あの……」
「もう、会えないかと思っていました……来てくれて本当に嬉しいです」
言いかけた僕の腕を、強く抱き締める先輩。
確かに、このタイミングで、先輩が偽の婚約パーティーを開いてくれなかったら、2度と会う機会はなかったかも知れない。
おそらく紅麗亜の屋敷に連れ去られ、娑婆に戻れなくなっただろう。
だからこそ、今このチャンスをものにしないといけない。
何度も言うようだが、紅麗亜が僕の家で働くのを先輩に認めてもらい、紅麗亜の態度を軟化させるのだ。
僕はもう一度、口を開いた。
「あの、中一条先輩」
「お茶でも飲みませんか?」


527 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/09(金) 03:29:40 ID:03GoZoab
またしても、出鼻を挫かれてしまった。
しかしここは、ありがたくいただいておくべきだろう。
「あ、はい。もらいます」
ソファーの前の木のテーブルに、高そうな磁器のピッチャーとグラスが置いてあった。
先輩がピッチャーから、褐色の液体をグラスに注いでくれる。
「どうぞ。まだ冷たいですよ」
「ありがとうございます」
僕はグラスを取り、冷たいお茶を口に含んだ。
何と言うか、知らない味だ。しかし、とてもおいしい。
喉が渇いていたので、一気に飲んでしまった。
「もう一杯、どうぞ」
先輩がまた、お茶を注いでくれた。それもありがたく飲み干す。
「まだありますよ」
「いえ。もう……」
大きいグラスで2杯飲んで、お腹がゴボゴボ言い出したので、3杯目は辞退した。
「そうですか」
ピッチャーをテーブルに置く先輩。「2杯ね……」と小さくつぶやいている。何のことだろう。
「ごちそうさまでした。ええと、早速ですけど、聞いてください。実は……」
僕は、先輩に紅麗亜のことを話し始めた。初めて会ったとき、飢え死にする寸前だったこと。そして、働くところがなくて困っていること。カードや館のことは伏せた。
ところが、先輩はあまり僕の話を聞いていないようだった。
僕の方を見ないで、なぜか、ずっと置時計を眺めている。
「……そろそろね」
「え? 何がですか?」
怪訝に思って質問したとき、急に頭がぼうっとした。
「何……?」
熱っぽい感じもする。
――僕は……病気になったのか?
また異変が起きた。
股間が激しく隆起し、痛いほどになった。
「うあっ!?」
部屋に入って先輩を見たときから、多少そんな傾向はあったのだが、これは常軌を逸している。
「詩宝さん、どうしたんですか!?」
先輩の問いかけにも、答える余裕がない。
急激に欲望が高まってくる。
今にも、隣にいる先輩に襲いかかってしまいそうだ。
もちろん先輩のことだから、襲ったところで僕なんか簡単に撃退してしまうだろう。
しかし、強姦未遂でも立派な犯罪だ。
捕まるか捕まらないかは別にしても、先輩を傷付けることになる。
――どうする……?
僕は視線を泳がせ、ナイフかそれに似たものを探した。
腕にでも突き刺して強烈な痛みを感じれば、多少マシになるかも知れない。
だが、それらしいものはなかった。
――駄目だ。仕方がない。
僕は先輩の腕を振り解き、立ち上がった。
「くお!」
「詩宝さん!」
ドアに駆け寄って、外に出ようとする。外に出て誰かに助けを求めるつもりだった。
ところが、何としたことかドアが開かない。外から鍵をかけられているかのようだ。
「があああっ!」
こうなったら、気絶して事を収めるしかない。
僕は、思い切りドアに頭をぶつけた。


528 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/09(金) 03:30:46 ID:03GoZoab
ゴーンという音が響く。
僕の額は割れ、ドアに血が付いた。
だが、まだ気を失うには至らない。
――もう1回!
頭をぶつけようとしたとき、先輩が後ろからしがみ付いてきた。
「詩宝さん! やめてください!」
物凄い力で後ろに引きずられ、ドアから遠ざけられる。
そのとき、先輩がバランスを崩して倒れた。
「あんっ!」
「うわっ!」
もつれ合って、僕も一緒に床に倒れ込む。
僕の方が上になっていた。
床に手を突いて立とうとしたとき、先輩の胸がはだけ、桃色の先端が露出しているのが見えた。
茫然とした先輩と、目が合う。
記憶が飛んだ。
――…………
どれくらい時間が過ぎたか。意識が戻った
「ん……?」
寝覚めのときのように、頭がはっきりしない。
まだ、先輩の上に覆いかぶさっているのに気付いた。
――??
あのまま、跳ね除けられなかったのだろうか。
先輩のドレスはビリビリに破れていて、胸は剥き出しのままだった。
――何……?
そして、下腹部に感じる強烈な快感。暖かくて、柔らかくて、ぬめっている。
「あ……!」
自分が先輩を犯していることが、ようやく理解できた。
先輩は涙を流しながら、声を漏らしている。
「ああ……いい、いいわ、詩宝さん。ああん……気持ちいい……」
どうやら、レイプされて錯乱しているようだった。表情も崩れて、緩んでいる。
――早く止めないと。
体力を消耗しているのか、体に力感はあまりなかったが、最後の力を振り絞って先輩から離れようとした。
ところが、動けない。
先輩の長い両足が、僕の腰を挟み込み、ガッチリと捕えていた。
「何で……」
そうなっているのか分からなかったが、これでは動けないはずだ。
「せ、先輩、足を……」
僕は慌てて先輩の肩を叩いたが、足の締めは緩むどころか、ますますきつくなった。
折悪しく、射精感が高まってくる。
「ひいっ……」
焦った僕は、手で先輩の足を外そうとしたが、びくともしない。
挙句の果てに、先輩に両手を捕まえられた。
「ああっ、詩宝さん……」
「あの、ですから……」
何もできないまま、タイムリミットが訪れた。
先輩の中に注いでしまった僕は、先輩の上で動けなくなる。
凄まじい疲労感だった。
「あ……あ……」
「ああん……」
僕は、何ということをしてしまったのだろうか。
自己嫌悪と後悔で、胸が潰れそうになる。
欲望に負け、これ以上ないほど残酷に、先輩を傷付けてしまった。
「何ということをしてくれたのですか、詩宝様」
「全くです。ボスに何て真似を」
そのときになってドアが開き、エメリアさんとソフィさんが部屋に入ってきた。
なぜか2人とも下着姿で、しかも肝心なところが隠れていないデザインのものだった。


529 : ◆0jC/tVr8LQ :2010/07/09(金) 03:32:23 ID:03GoZoab
以上です。失礼しました。
すでに登場したキャラを含め、ヤンデレヒロインは10人登場予定です。

530 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 03:43:05 ID:7PTplH5h
GJ!
遅くまでご苦労さん
またも起きてて良かったぜ

531 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 04:47:04 ID:2CCaLtGL
登場人物が多過ぎてキャラが立ってないな。

532 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 05:17:28 ID:/M3PztG2
いまでてるキャラは充分たってるだろうが
これからどうなるかわからんけど
あんた傍観者家族ディスってんのか

533 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 07:20:40 ID:r/DVOfC3
>>529
面白いよー
ここまで先輩のペースだけど、そろそろメイドの反撃が始まりそうな予感
続きにも期待

534 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 13:11:28 ID:2CCaLtGL
>>532
いやヤンデレ家族は見事に面白い。

535 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 15:02:23 ID:oExHScMF
>>529
GJ
メイド達とお嬢様達を合わして6人だから後4人 登場か?

536 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 16:41:49 ID:PootHvh6
>>529
GJ!

>>535
お前はだれか一人を忘れているようだな

537 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 17:22:02 ID:EV8d1+gL
堂上 晃か!どんな病み方してくんだろ?

538 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 18:52:05 ID:5WmHvAnA
10:1か……身が持たないってレベルじゃねーぞ

539 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 19:23:26 ID:fNIK6wd0
最近女知り合いがかなりヤンデレ化してきちゃってる・・・・・
もう笑いながら殺人予告ってもう末期?
しかしそんな状況でも駄目作を完結させるまでは死ぬわけにはいかん
ということで投下します

540 :非日常の日常:2010/07/09(金) 19:24:16 ID:fNIK6wd0
雄介はまだ冴えない頭で聖城の顔を見ていた
「しかし本当に整ってるな・・・・・」
加絵の場合は可愛いというほうで聖城の場合は綺麗とか・・・・大人の美しさというものだろうか?
ということを考えながら見ていると聖城が起きた
「んー・・・・・・おはよう雄介」
「あぁおはよう」
聖城は目を擦って雄介の顔を見ると・・・・・・一瞬で吹きだした
「ぷっ・・・・あははははは!」
「なっ何だよ!」
それはもう大笑いで雄介はすこし苛立った
「いきなり俺の顔を見て笑うなんてひどいだろ!」
それでも笑いやまない聖城に雄介は何かを言うことが面倒になりそのまま黙りこんだ
そのまま聖城はひとしきり笑い、涙をぬぐいながらふと言った
「でもまさか修羅がそんなことするなんて・・・・・・・まだ子供ね」
「それはいいから早く鏡とタオル貸せ」
と言いながら手を差し出した
「はいはい・・・・・ぷっ」
まだどこかおかしいところがあるのか?と思いながらも手を差し出し続ける
そして聖城は鏡だけを渡して少し離れた
雄介はタオルを渡さないことに軽くイラつきながらも自分の顔を鏡で見た
「なっ・・・・・なんじゃこりゃあああああああ」


541 :非日常の日常:2010/07/09(金) 19:24:50 ID:fNIK6wd0
「なっ・・・・・なんじゃこりゃあああああああ」
研究室で情報を集めていた修羅の耳にも雄介の叫びが聞こえた
ということは現場にいたら相当な音量だろう
後でそれを理由に殴ってやろうと思ったが
「・・・・・・・やらかしてしまったかも」
もしこれで聖城が怒っていたら何があるかわからない
よりによって聖城が好きな相手に・・・・・許したくはないが大事な人を汚したのだ
下手したら殺されてしまうかも・・・・・・
そう思っているとまたあの男の叫び声が聞こえた
「油性じゃねぇかあああああああああ」
「・・・・・・・・どうしよう」

何が書いてあったかは・・・・・・主に下ネタばっかであるので想像に任せよう
それを濡れたタオルで一生懸命消しても中々消えないために擦りすぎて赤くなってしまった
そして愚痴をこぼしていたら聖城が近づいてきた
何か様子がおかしく・・・・・・変な威圧感があった
「ねぇ・・・・・聞いてもいいかしら」
「あ?」
「ここから・・・・・・帰りたい?」
「・・・・・へ?」
聖城の言葉が理解できず固まっていると
「帰って・・・・・あの女のところに戻りたい?」
その言葉でようやく意味がわかった雄介は考えることに決めた
帰れるなら帰りたい気持ちはあったがあの夢があってからはそこまで感じなくなってきていた
何よりもここの居心地がいい・・・・・そんな気持ちもあった
「俺は・・・・・」
「どうなの?」
そう言って目の前に立ちそのまま見ていた
まさに蛇に睨まれた蛙というものを思い出すだろう
しかし雄介自体はそこまで恐怖を抱かなかった
だがどちらにせよ答えを出さねばめんどくさくなるだろう
「少し・・・・・・時間くれるか?」
まずは時間の交渉を始めるところから入ることにしてみた
「どれくらい?」
「そうだなぁ・・・・・・うーん」
とは言っても具体的な日にちまでは思いつかず唸っていると聖城が指定してきた
「じゃあ明日までに決めて」
「明日だと?もうすこし時間をくれ」
「これ以上は待ちたくないの」
そしていきなり腕を掴むと手錠を・・・・・・はずした
「部屋の中を動き回っても良いから考えておいて」
「え・・・・・・ちょっとま」
ってと言う前にそのまま消えてしまった
「なんで・・・・・・・わけがわからん」
そう言いながら久しぶりに手首が開放され擦りながらゆっくりと床に下りた
「おっ・・・・と」
少し力が抜けながらも久しぶりに自分の足で立つという実感がわくと急にうれしくなってきた
まるでおもちゃをもらった子供のように
「俺・・・・・・自分で立ってる」
いつも当たり前に歩いていたのがここ最近ずっと寝っぱなしだったためその感覚まで麻痺していた
そして少しずつ歩いて普通に歩けるようになるまでしばらくかかった
その間はずっと歩くことに集中しており質問の答えなどすっかり忘れてしまっていた
「うーん・・・・・・・歩けることっていいなぁ」
ごく当たり前なことを雄介はとてもありがたく感じていた
そんなこんなをしていたらすごく眠くなってきてそのまま眠気に身を任せることにした
「明日はいい天気かなぁ・・・・・・」
などと呑気なことを考えながら

542 :非日常の日常:2010/07/09(金) 19:25:22 ID:fNIK6wd0
「あー怒られるぅ・・・・・」
修羅は未だに聖城の怒りを恐れて頭を抱えていた
そんな修羅の後ろに
「何頭抱えてるのよ」
「!!」
いきなり声をかけられ修羅は思わず思いっきり立ち上がり、膝にぶつけた上にそのまま後ろに倒れてしまった
聖城は呆れ顔をしながら腰に手を当てて言った
「よくわからない芸はいいけども・・・・・・あのゴミの情報はどうなの?」
それで今は怒られるわけではないことを知った修羅は安堵したがすぐに気持ちを切り替え、情報を聖城に教えた
「はい、今手元にある情報によりますと浄財加絵は1987年の6月8日生まれで、かなりの成績を小中学校に残し、高校ではそのまま国内でも有数の学力を誇る○○高校に入学し・・・・・」
そのまま資料を読んでいると聖城がそれを手で制した
「そんな情報はいいの、それよりも何か強力な後ろ盾とかものすごい家系だとか戦闘技術とかそういうものを知りたいの」
「あっ・・・・すみません!」
そして見事に90度で謝った
「謝るのはいいから・・・・・早く教えて」
「わっ・・・わかりました」
おどおどしながら資料をスラスラと目で読み、家系や交流関係、そしてどういう武道を習っていたかを話した
すべて聞き終わった聖城はどこか浮かない顔をしながら悩んでいた
「別にすごい力があるわけでもなく後ろ盾や味方がいるわけではない・・・・・・けど何か引っかかるわ」
そのまま悩んだがまったくわからずに一旦考えるのをやめた
修羅はなぜ悩んでいるかを当てて見せたかったがまったくもって疑問が浮かばなかった
そのまま二人は話し合い、武器の調達や作戦を立て、引き続き情報を集めることにした
「まぁおそらくただの生身の虫だろうけど一応装備は整えておいて」
「はぁ・・・・・・」
修羅は単身でも勝てる気がしたが聖城がそこまで警戒するには何か理由があると思い、そのまま装備の調達に動いた
聖城はまだ引っかかるものがあったが寝れば何かわかるだろうと思い、そのまま寝室に向かい寝てしまった


ある暗い部屋でいろいろと作業をしている女がそこにいた
その女の顔からは生気が感じられずに、ただ作業しているように見えた
だがよく見ると口が動いており何を言ってるかと言うと
「ゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけ
ゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけゆうすけ・・・・」
ずっと同じ男の名前を呼び続けていた
暗闇でも妖しく輝く刀を磨きながら・・・・・・・
「なぜだ・・・・・なぜ裏切った・・・・・」
そう言いながら目に涙を浮かべ加絵は静かに泣きながら研ぎ続けた
「ふっ・・ふふふ・・・・・・・・そういうことか」
そのまま刀を研ぐのをやめ真っ赤な鞘に収めて言った
「あの豚が消えればおそらく洗脳が解けるはずだ・・・・・・だから待っててくれ雄介」

い  ま  す  ぐ  豚  を  コ  ロ  ス  か  ら


543 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 19:26:51 ID:fNIK6wd0
この中に一部だけその知り合いから言われた言葉があります
暇だったら探してみてください
では今日も戦闘してきます

544 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 20:01:08 ID:YeMSnP7Y
もう夏休みか
早かったな

545 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 20:06:09 ID:r/DVOfC3
もう夏休みか。最近、一年が早いわ
歳かもしれんね

546 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 22:19:16 ID:MmsnvOKd
>非日常の日常
以前にこのカス誘い受け自虐野郎擁護してた奴出てこいよ
マジでキチガイじみてきたじゃねーか

547 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 22:22:05 ID:MmsnvOKd
239 :名無しさん@ピンキー:2010/07/04(日) 09:26:25 ID:h/jLyTUi
更新されないからまさかと思えば最新50押すべきだったのね・・・・・
と初心者丸出しの俺

335 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 16:41:15 ID:3Lu0weJZ
なんというか・・・・・こうまでもいい小説を見た後は投下しにくい;;
だが俺はくじけない!
ということで投下します

339 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 16:46:11 ID:3Lu0weJZ
厨二病全開な作品になってきてる・・・・
いつも投下した後に後悔するんだよなぁ・・

348 :名無しさん@ピンキー:2010/07/05(月) 19:09:36 ID:3Lu0weJZ
賛否両論・・・・・・・・なのか?
とりあえず自信を持ってやるべきということはわかりました
自虐はもう癖みたいになってたから直すつもりではいたがこの際に改善することにします

411 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 18:36:26 ID:Yuyxd1kI
この流れに乗って投下してやろう・・・・・と思ったドアホですよ
5話が先ほどできたので投下します
確認作業はしましたが誤字・脱字がありましたらお知らせください

416 :名無しさん@ピンキー:2010/07/06(火) 18:41:28 ID:Yuyxd1kI
修羅のキャラが少しずつ崩壊してるような・・・・・というか初期よりも思いっきり変わってるw
まぁとりあえずこの後の展開をだらだらと考えて見ますかな

539 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 19:23:26 ID:fNIK6wd0
最近女知り合いがかなりヤンデレ化してきちゃってる・・・・・
もう笑いながら殺人予告ってもう末期?
しかしそんな状況でも駄目作を完結させるまでは死ぬわけにはいかん
ということで投下します

543 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 19:26:51 ID:fNIK6wd0
この中に一部だけその知り合いから言われた言葉があります
暇だったら探してみてください
では今日も戦闘してきます

548 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 22:28:55 ID:r/DVOfC3
俺、自虐すんなって注意したら偉そうなチンパンジーとか言われた奴だけど
どうすんのこれ
つーか結局、擁護してた奴らですらこのSSシカトしてんじゃん
俺が叩いた時だけ出てくるのかよw
ほんとに面白いと思ってないなら無理してまで擁護すんなや

549 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 22:43:28 ID:ERVkTPjl
うるせえな〜この夏の虫野郎!!面白くなけりゃシカトしとけ、この荒らしが、お前みたいな阿呆がいるから虫が湧くんだよ。
それともテメェ工作員か!?荒らしたいなら巣に帰れ!!!死ねカス

550 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 22:52:34 ID:JbKl79rg
彼女「ちょっと害虫が増えてきたから駆除しに行ってくるね〜」
俺「いってら〜」
どうしよう

551 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 22:58:33 ID:MmsnvOKd
>>549
荒らし自演☆乙

552 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 23:19:55 ID:qcf9SyAk
>>548
チンパンジー、元気だなw
興奮するのは分かるけど少し落ち着けよ。

気に触るのも分かるけど、無視しとけ。
やんや、やんや暑苦しいのが集まってくるから。

553 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 23:28:34 ID:r/DVOfC3
ほーい

554 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 23:29:41 ID:RMEQ5VVP
この作者からはメンヘラ臭がする・・・
こいつ擁護した手前、今更掌返せず擁護した奴に残されたのは馬鹿みたいなレッテル貼り

あ、>>552みたいなヤツのことなw

555 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 23:38:45 ID:oTQX7Wau
毎回毎回、ここ雑談スレじゃないんだぞ

556 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 23:48:05 ID:qcf9SyAk
>>554
なにが、あ、だよ気持ち悪い。
俺にまで絡んでくるなよ暑苦しいな。

557 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 23:50:08 ID:JbKl79rg
一家に一人ヤンデレ・・・みたいな時代に
なってほしい

558 :名無しさん@ピンキー:2010/07/09(金) 23:52:39 ID:hD84lhLJ
「絡んでくるなよ暑苦しいな」って甘えんぼのヤンデレっ娘に言ったらやっぱ泣く…よね

559 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:12:55 ID:hUKrr8YJ
きっと泣きますね…いや刺されるか?

こんばんわ。休日一番乗りで投稿します。今回は12話です。
前回コメントくださった方ありがとうございました!

560 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:14:24 ID:hUKrr8YJ

午後11時15分。海上娯楽施設『アクアマリン』内、アクアポート前。

…何かがおかしかった。
元々アクアマリンにはモノレールでしか来られないため、この時間になると人はほとんどいない。
モノレールが動かない夜中は、本島に帰れないからだ。
おそらくライムもそこを考えてアクアポート屋上を指定したのだろうが…。
「…!またか…」
全く人が、それこそ警備員までいないのはおかしい。
アクアポート前の警備室にも人影すらなく、ここへ来るまでに通った全ての警備室がもぬけの殻だった。
「まあ入りやすかったけどさ」
ここまでは問題無く来れた。後は屋上を目指すだけ。青白くライトアップされたアクアポートに向かう。
「……一人、か」
里奈や桃花、神谷には黙ってここへ来た。
今このアクアマリンにいるのは、俺とライムの二人だけかもしれない。
「…神谷には教えておいても良かったかな」
思えば神谷にはこの事件に随分付き合わせてしまった。
本来なら神谷にも知る権利はあるのだろうが…。
「今回ばかりは付き合わせるわけには、いかないからな」
「巻き込みたくないからですか?」
「ああ…………はぁ!?」
「先輩!静かにしてください!ばれたら不法侵入ですよ!」
「悪かっ…いや、違うだろ!何でお前がここにいるんだよ!?」
俺の横にはいつの間にか神谷がいた。何で毎回気が付かないのだろう。
「嫌な予感がしたので屋敷に張り込んで、先輩をつけさせてもらいました」
「どこのスパイだよ…」
「それより先輩。わたしに言わなきゃいけないこと、あるんじゃないですか?」
神谷は微笑んでいたが明らかに怒っていた。そりゃあそうだろう。
俺だって逆の立場だったら多分怒っている。
「…勝手に行動してゴメン。神谷には…言うべきだったよ」
「……はぁ」
神谷は大きくため息をついた。
「…許してあげます。その代わり、もう二度としないでくださいね」
「…分かった」

561 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:16:16 ID:hUKrr8YJ

アクアポートには建設中ということもあって、すんなり入れた。
この建物は15階+テラスがある屋上となっており、エレベーターが動かないため階段で行くしかない。
「ありがとうございました。返します」
隣で神谷にライムから来たメールを見せていた。
ここは4階。時刻は11時29分。
ここの特殊な構造上、いちいちフロアと通らないと上へ行けないのが、タイムロスに繋がっていた。
「あと30分か…」
「まあ間に合うでしょうが…意外とワンフロアが広いですね」
「ああ…。ここは…宴会場か?」
広いフロアにはまだ建設中なのか鉄骨やセメントの類が転がっており、
右隅のバーカウンターのような物がかろうじて出来ているだけだった。
「窓もガラスがない部分がありますし…。先輩、気をつけてくださいね」
「ああ……?」
前を見ると人影があった。警備員か!?と一瞬焦るが
「やはり来ましたか」
氷のように冷たい声には聞き覚えがあった。右腕が疼く。
「………桃花」
月明かりがフロアに射し、俺達を照らした。
前には月明かりを浴びて輝く銀髪をもつ、桃花が立っていた。
「…後ろの小娘は大学で里奈様に盾突いた方ですね」
桃花はゆっくりと近付いて来る。
「…桃花。一つ聞きたいことがある」
「何故私がここにいるのか、ということですか?」
「いや、違う。…お前か?」
「…質問の意味が分かりかねますが」
言いたくは…ない。でも逃げるわけにはいかない。俺はライムを守るって決めたのだから。
「……ライムの事務所の社長達を殺したのは…お前か?」
桃花の動きが止まった。少し驚いたのか表情が強張っていた。
「………」
「この前、里奈が刺されたあの日。桃花は俺にこう言ったよな?"貴方はどちらの味方なのですか?里奈様ですか。…それとも血だらけだった鮎樫らいむですか"って」
「…それが何か?」
「…何で知ってたんだ?ライムが血だらけだったこと。そもそも桃花はいつ見た?血だらけのライムを」
「………それは」
「神谷に調べてもらったがそれらしいニュースはローカルでもやってなかった」
「………」
「そしてもう一つおかしなことがある。俺は実は桃花に右腕を折られた前日にも屋敷を抜け出してたんだ」
「………貴方という人は」
「でもその日は見つからなかった。明らかに屋敷の正面の方が見つかりやすいのにな」
桃花は俺を睨みつけていた。右腕が痛むが今は気にしている場合じゃない。

562 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:18:30 ID:hUKrr8YJ
「その時思ったんだ。最初に抜け出した日、桃花は屋敷にいなかったんじゃないかって」
「………」
「だからわざわざ俺に脅しをかけてきたんだろ?抜け出すんじゃないぞってさ。…結局俺は抜け出したわけだけど」
「……本当に愚かな人」
神谷が俺の袖を握る。大丈夫だ。まだ桃花が攻めて来る気配はない。
「ここからは完全に俺の推測だが、あの日桃花は事務所に行った。そして桃花が事務所に着いた時、ライムが事務所から出て来たんだ。…真っ赤に染まってな」
「………」
「それを見た桃花はライムが"血だらけ"だって勘違いしたんだ」
「勘違い…?」
「ああ。本当はあれはただの赤いペンキだったんだけどな」
「ペンキ…。ありえない…」
「…まるで真っ赤なライムを実際見たような反応だな?」
桃花に初めて動揺の色が見えた。たたみ掛けるなら今しかないか。
「つまりライムは俺を探して彷徨っている途中に誤って赤いペンキに突っ込んだ。事務所に行ったが俺が何処にいるか聞き出せず、出てくるところを桃花が目撃した」
「…お待ちください。私が事務所に行く理由などございませんが」
流石に黙ったまま聞いちゃくれないか。
「桃花は俺の居場所をライムが突き止める手掛かりを無くすため、前日に誘拐に協力した事務所関係者を殺そうと火を放ったが失敗した。だから次の日、直接手を下すため事務所を訪れたんだ」
「…まるで知っているかのようですね」
この推測、どうやら通ったみたいだな。なら…
「桃花が事務所の様子を見に行くと真っ赤な跡はあったが誰も死んでいなかった。それを桃花は利用しようと考えたんだ。もし真っ赤な跡がライムの血なら彼女に疑いが及ぶ」
「利用…ですか」
「ああ。だから犯人はあえて痕跡を残したんだ。ライムが犯人ならそんな痕跡を残すわけがないからな」
「……………」
反撃は…ない。ならばこれで解決だ。
「そうやってライムに罪を着せることで俺の気持ちを里奈に移そうとした。それが里奈の幸せを心から願う、桃花の最大の忠義だったんだ」
「…ありえません」
俺の推測を聞いて、桃花は明らかに動揺しているようだった。
「…先輩」
小声で神谷が話し掛けてくる。
「…どうした?」
「…よく言えますね、そんなデタラメ。らいむさんが真っ赤だったのが赤いペンキのせい…そんな証拠ないって何度も言いましたよ、わたし」
…そうなんだ。結局は今言ったこと全てが推測、いや妄想に過ぎない。
桃花が事務所に行った理由も分からなければ、ライムが真っ赤だった原因もペンキかどうかは分からない。
所詮は俺の希望的観測なんだ。でも…
「証拠なんて必要ない。俺が信じられれば十分さ」
逆に言えばこれは"真実"ではない、という確かな証拠もない。
現段階では様々な可能性が残っていて、俺はその中で一番俺自身が望む結論を選んだだけなんだ。
これが俺がライムを守るために選んだ結論。ライムが犯人ではない信じる、俺の真実だ。
「…シュレーディンガーの猫、ですか」
「ん?なんだそれ?」
「…いえ、なんでもありません。…多分屁理屈ですよ、今の推測」
「俺にとっては"真実"なの」
「…はぁ」
神谷が呆れる気持ちも分からなくはない。こんな理屈でここまで来ている。
ある意味異常かもしれない。でも構わない。ライムを守れるなら、それでいい。

563 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:20:06 ID:hUKrr8YJ
「……所詮、遠野様の行き過ぎた妄想。違いますか?」
気が付けばいつの間にか桃花が立ち直っていた。
「ああ、そうかもな」
「…くだらないです。私が素直に認めるとでも思いましたか?サスペンスの見すぎもいいところです」
「随分今日は喋るな。もしかして…図星だったりするのか?」
桃花の表情が歪んだ。本能で察する。来る。
「他に無いのでしたら……排除します」
「来たか!」
「先輩っ!」
一気に間合いを詰める桃花に対して、神谷は予備動作なしの蹴りでそれを止めた。
「神谷!?」
「お喋りはそこまでですよ先輩!早く行ってください!時間がありません!」
「………」
何となく分かってしまう。大学で二人の戦いを一瞬見ても…多分神谷は桃花には勝てない。
「いてもお荷物なんですよ先輩は!すぐ追いつきますから!さあ早く!」
「…分かった!先行くぞ!」
それでも立ち塞がる、神谷の覚悟を無駄には出来ない。俺は階段へ向かって駆け出す。
「私がそれを黙って見ているとでも…っ!?」
桃花が俺を阻もうとするが
「そこ、まだ射程内ですよ」
神谷の蹴りによってバーカウンターの方へ吹っ飛ばされていた。
「…美香!」
「っ!」
俺の声に神谷は思わず振り返る。
「必ず追いかけて来い!」
「…はい!」
俺は階段を駆け上がって屋上を目指した。



階段を見つめる。先輩はもういないようだった。
「…不意打ちは、卑怯ですよ先輩」
兄さん以外には呼んでほしくなかった自分の名前。今では先輩に呼んでほしいと思っている。わたしも十分異常かもしれない。
「邪魔をする理由が、貴女にありますか?」
桃花とかいうメイドがこちらに近付いて来た。
「…あれを喰らって平気なんだ」
「何か、なさいましたか?」
「…言うね」
冷や汗が出る。強がりではなくこのメイドには本当に全く効いてないから。
「貴女がいなければ全て上手くいったのです」
「わたしが…?」
「貴女さえいなければ…遠野様はあんな陳腐な結論にはたどり着かなかったでしょう」
「…それ、褒めてる?」
メイドは銀髪を揺らしながらゆっくりと近付いて来る。
「やはり大学で会った時に排除するべきでした。誰かが遠野様に入れ知恵しているのは、薄々分かっていたのですが」
「………」
わたしの射程外ギリギリまで詰める。…一発で見抜かれたか。
「仕方ありません。貴女を排除して、仕上げをしましょう。里奈様のためにも必ず」
「…来いっ!」
でも先輩のために、負けるわけにはいかない。

564 :きみとわたる ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:22:24 ID:hUKrr8YJ

「はぁはぁ…!」
時刻は11時45分。桃花に随分時間を割かれたが、ようやく10階段まで来た。
「後少し…」
そういえば最近、頻繁に走っている気がする。逃げ出したり追いかけられたり…よく考えると何か情けないな、俺。
「…自分に出来ることをしよう」
神谷のことが気になるが戻ったところでどうしようもない。今はライムに会うことだけを考えよう。
「今行くからな…」
俺は屋上を目指して走り出した。



「ぐっ…!?」
弾き飛ばされる。自ら引いて衝撃を和らげてもこの威力。防いだ両腕が痛む。
「まだ終わっていませんよ?」
「…っ!!」
拳の一撃から高速の蹴りの連撃。
耐えられず神谷の華奢な身体は吹っ飛ばされ、受け身も取れず壁に激突した。
「…この程度ですか。笑わせますね」
「………うっ…!」
桃花と対峙してからまだほんの10分程度。
それでも神谷は圧倒的な実力差の前に為す術もなかった。
「時間の無駄です。お付き合いいただき、ありがとうございました」
「…間合いに……入れれば…」
壁を使って何とか立ち上がる。もう限界が近付いていた。
「間合い入れたところで貴女の攻撃が私に届きますか?」
「……ちっ」
「…それでは、ゆっくりお休みください」
桃花が驚異的な脚力で一気に近付いてくる。神谷は桃花を見つめる。…チャンスは一度。
もし桃花が蹴りを繰り出したら…諦めるしかない。
「……まだっ!」
「なっ!?」
桃花が神谷の頭部に向かって打ち出した渾身の右ストレートを、神谷は自らの両腕を犠牲にして食い止める。
同時に桃花の脚力を利用して予備動作なしの蹴りを、彼女の懐に突き刺していた。
「眠くねぇんだよ!!」
「っ!?」
自分のスピードをもろに腹部に受け、宙に浮く桃花の頭部に
「弾けろっ!!!」
神谷の後ろ回し蹴りが炸裂し、桃花は横に吹っ飛んだ。
「はぁはぁ…あ…」
今の一撃で限界を超えてしまったらしい。
両腕は桃花の右ストレートで骨折していた。痛みを感じない。そして感覚もない。
さらに足は立つことすら出来ず、その場にペタンと膝をついたまま動けなくなった。
「………あ、れ…?」
血を流し過ぎたのか、頭が回らず考えられない。
とりあえず今の一撃で桃花が倒れなければ…勝機はない。
「…流石に効きました。窮鼠猫を噛む、ですか」
桃花がゆっくりとこちらに近付いて来る。
口から血が垂れており、多少のダメージは与えたようだった。
「……そっ…か…」
しかしその程度。致命傷には至らず逆に神谷は虫の息だった。
「しかしそこまでですね。小娘の貴女が藤川家のメイド長の私に、抗うこと自体が愚かな行為…」
「……はは…」
わたし…死ぬのか…。結局…先輩の…役…に……たてな…かっ……た。
「貴女の髪の色そっくりに、貴女を染めて差し上げます」
…先輩……わた…し…先輩…のこ…と……。
「さようなら」
神谷はそっと目を閉じた。

565 : ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:28:11 ID:hUKrr8YJ
今回はここまでです。ヤンデレ要素皆無で申し訳ありません。
そして今日は休日なので「きみとわたる」11〜12話、そして13話に
繋がるサブエピソードを藤川英視点でお送りします。興味のない方は
飛ばしてください。case1は保管庫にあります。

566 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:29:42 ID:hUKrr8YJ

こんにちは。僕の名前は藤川英(フジカワハナ)といいます。
とある高校の二年をやっています。
今回は少し特殊なケースをご紹介します。
決して交わるはずのない二つの物語が交わった極めて特殊な事件です。



Case2『鮎樫らいむ関係者殺害事件』



僕、藤川英が通っている県立東桜(トウオウ)高校は県内でトップの公立高校で大学への進学率も高い。
そんな俗にいう「頭の良い高校」の2年4組に僕は所属している。


「明日からテストだ!部活は休みで学校も午前中で終わりだ。だからといって気を抜くなよ?もしテストで赤点でも取ってみろ…」
教壇では理系主任にしてウチの担任である黒川先生が熱弁をしている。
黒川先生は25歳と新任教師にも関わらず、その鬼教師っぷりで僅か一年で理系主任にまで上り詰めた人だ。
そのドSぶりと美貌のおかげでファンの生徒も多いとか。
「…起きろこの馬鹿者がっ!」
「いっでぇ!?」
そしてそんな鬼教師の目の前。
最前列で愚かにも眠りこけて、たった今黒川先生の制裁を受けたのが…
「白川ぁ!お前は痛い目をみないと学習しないらしいなぁ!?」
「し、しまったっ!?」
クラスメイトで親友の白川要(シラカワカナメ)だ。
黒髪に中性的な整った容姿だが、授業中寝る確率95%は伊達じゃない。
なにしろHR(ホームルーム)で寝るくらいなのだから。
「仕方ない。特別に白川には『地軸の傾きが23.4度の理由を太古の生態系を踏まえて考察』というテーマでレポートを与えよう。期限は明後日、文字数は5000字以上だ。分かったな?」
「なっ!?そんなのありえ…っ!」
思い切り首を掴まれる要。
少しでも口答えしたら首がありえない方向に曲がる気がした。
「…分かったな?」
「り、了解であります!」
周りからは「また要の奴…羨まし過ぎるだろ!」とか「無茶しやがって…」とか様々な声が囁かれていた。

567 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:30:41 ID:hUKrr8YJ

「お疲れ様、要。今日も黒川先生に絞られたね」
「おお、英か。相変わらず容赦ない野郎だぜ…。首がもげるかと思ったわ」
HR後、もうお決まりになった挨拶を要とする。
要とは高校からわすが一年ちょっとの付き合いだが、お互い相性が良いようで「親友」と呼べるまでになった。
「要も相変わらずだよね。黒川先生の目の前で寝るなんて…僕には出来ないな」
「全くもって英の言うとおりだ!ったく、いくらなんでも紳士すぎだろ要っち!」
「いでっ!?」
「亮介、お疲れ様」
「おっす!」
勢い良く要の背中を叩いたのは同じくクラスメイトにして親友の如月亮介(キサラギリョウスケ)だ。
赤茶の短髪に長身で引き締まった身体。典型的なスポーツマンといった風貌だ。
「亮介ぇ…お前は力強すぎだって、いつも言ってんだろうが!」
「この程度で痛がるとかお前はあれか、都会のもやしっ子か?あ、それからこの前借りてたコレありがとな。返すわ」
「ああ、サンキュ…ってどさくさに紛れて教室でこんなもの渡すんじゃねぇぇえ!!」
「ぐはぁ!?」
要渾身の右アッパーで宙に浮く亮介。二人は同じテニス部でずっとペアを組んでいる。
僕はバスケ部なので部活をしている時の彼等がどんな様子か知らないが、今のように賑やかに違いない。
「はぁはぁ…このボケが!」
「ナイス…アッパー…!」
GJと親指を立てて敬意を表する亮介。
ちなみにさっき要に渡したのは18禁ソフト。平たくいえばエロゲーというやつだ。
僕にはさっぱり理解出来ないが要の趣味の一つである。
昨日もスカイプで『CGコンプするまで寝ないから!』とか言っていたし。
「要、ナイスアッパーだと思うけどそれ、隠さなくて良いの?もうそろそろ…」
HR終了後5分経過。
ちょうど要の"趣味"の天敵である彼の妹とその仲間が姿を現す時間だった。
「もうそんな時間…っ!」
天敵が迫っているのに焦った要は急いで"趣味"を隠そうとするが、焦ったせいでそれを落としてしまう。
「わっ!?」
「なん…だと…」
要を嘲笑うかのように"趣味"はクラスメイトの足に当たり教室の扉の前に滑ってゆく。
そして無情にも
「兄さんお待たせ!」
「迎えに来た」
天敵達が扉を開くと目の前にそれがあるようにセットされていた。
「あらら」
「やっべぇ…」
僕と亮介は無意識の内に後ずさる。
当の要はというと固まっていた。まるで蛇に睨まれた蛙状態である。
「………13回や」
「……はい?」
明るい茶髪をゆったりとウェーブさせている普段ならば可愛らしいはずの要の妹、白川潤(シラカワジュン)の意味不明な発言に思わず要が聞き返す。
「…兄さんがこのどうしようもなく下品な妄想の塊を学校に持って来て」
潤が一歩近づいてくるごとに"ズンッ!"という重低音が響いてきた。
「それが私に見つかった回数が」
「ま、待て!話せば分かる!話せば…」
「13回目だって言ってんのよぉぉお!!」
「犬養毅っ!」
潤お得意の高速回し蹴りを鳩尾にもろに受け、要は地に墜ちた。
「「か、要ぇぇぇえ!!」」
僕達は…君のこと、忘れないからね…。
「……はぁ」
入口でその一部始終を見ていた白髪ロングの女の子、春日井遥(カスガイハルカ)はため息をついた。
これもいつもの光景である。

568 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:31:39 ID:hUKrr8YJ

「いってぇ…。マジお前はもう少し兄を大事にするべきだな」
「全部兄さんが悪いんでしょ!あんなもの学校に持って来て…」
「違いないな」
「亮介ぇ…!てめぇ誰のせいだと…」
「ほらほら、着いたよ生徒会室」
「優も待ってる。早く入ろ?」
要達が騒ぐのを僕と遥で宥めながら生徒会室に到着する。
礼儀として遥がノックをする。会長はこういう所には厳しいんだよね。
「…はい?」
「わたし」
「遥か。皆も一緒だな?入っていいぞ」
扉を開けると生徒会室のソファーに燃えるような明るい紅い髪に碧眼というコントラスト。
そして綺麗な顔立ちがそれを強調している我が高校の生徒会長、美空優(ミソラユウ)が座っていた。
「待っていたぞ皆。まあまずは座れ。新しい紅茶が入ったんだ」
相変わらず会長は一挙一動が美しい。
まるで女王様だな、なんて僕は思った。
「優の紅茶、好き」
そんな会長に遠慮することなく遥は空いているソファーに腰掛ける。
「私も好きだな。特にアールグレイは格別だよ!」
「ふふっ、褒めても何も出ないぞ?」
僕達男三人も座る。
そう、これが僕が所属する"何でも屋"…通称"要組(カナメグミ)"と呼ばれる集まりであったりする。



"要組"。
この東桜高校では知らない人がいないほどの集団だ。
基本的にどんな些細な依頼でも受ける何でも屋だが、そのメンバーがまた凄まじい。
まず生徒会長の美空優。
そして一年でトップクラスの美少女、白川潤と春日井遥。
三人ともファンクラブが出来るほど有名である。そして何故かそこに僕達男子三人がいる。
始めは気にもされなかったが校内や地域の事件を解決し、一気に有名になった。
何故美空会長や潤、遥を差し置いて"要組"と呼ぶのか。
生徒の間では白川要がリーダーの理由が分からない、明らかに美空会長の方が適任だろ、という意見が専らである。
「じゃあ今回調査してもらったことを皆に報告してもらおう」
現に今仕切っているのは美空会長だ。
でも…それでもリーダーは要しかいない。
話すと長くなるので理由は語らないが、僕達は"要組"でしかありえないのだ。
「じゃあまずは…潤から頼む」
「はい!私が調査した、鮎樫らいむの事務所での…」
僕達が今調査しているのは最近良くニュースでやっている『鮎樫らいむ関係者殺害事件』だ。
これは依頼された訳ではなく、珍しく要がやろうと言い出した。
たかが高校生の捜査だと思って舐めない方が良い。
まず美空開発といえば航空や電子機器などで日本一のシェアを誇る。
あの日本有数の大企業、藤川コーポレーションともコネクションがある程だ。
そして亮介の父親は国会議員の如月龍一郎(キサラギリュウイチロウ)で亮介自身も政界のパーティーなどを通じて様々なコネクションを持っている。
ようするに未来の日本を代表するような人達がこの要組にはいる。
勿論様々な分野でコネクションを持っている訳で。
「遥は…大丈夫か?また県警のデータベースをハックしたらしいが…」
「痕跡は残してない。わたしのハック、ステルスだから」
そして一見大人しい遥はネットのアングラで囁かれているステルスハッカー"ハク"だっていうから驚きだ。
毎回一番危険なポジションを担当するため、皆冷や冷やしてるが当の本人は知らん顔でハッキングしている。
「心配すんなよ会長。遥のステルスは完璧だ」
「そう、完璧」
…しかし何より恐ろしいのはこれらの面子を白川要が僅か一ヶ月で集めた、という事実だ。
正確には集めたというより自然と集まったのか。
とにかくバックグラウンドには何もないが、彼には人を集める一種のカリスマ的な何かがあるのかもしれない。

569 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:32:36 ID:hUKrr8YJ

「よし。皆が集めてくれた情報でかなり分かった。まとめると…」
皆が一通り報告をした後、美空会長がホワイトボードに情報をまとめる。
「まず手がかりとして現場付近には赤いペンキの痕跡が残されていた」
「噂話だけどね…」
「警察内部の情報とも一致するから大丈夫」
潤が自信なさげに答えるのを遥がフォローする。
「そして殺害された被害者達だが…いずれもナイフで一撃だ。犯人は相当な使い手だろう。つまり…」
「…もし犯人を捕まえるなら覚悟した方が良いな」
要の一言に全員に緊張が走る。
そう、この事件の犯人は相当の実力者。下手したら殺しのプロかもしれない。
「要の言う通りだ。恐らく次に狙われるアイドル、鮎樫らいむだが防犯カメラに彼女の姿が映っていた」
「場所は?」
「…海上娯楽施設『アクアマリン』だ」
その建物は藤川コーポレーション…つまりは僕のお父様の会社の所有物だった。
「確か…明日は人が来る分、閉園後の警備は一切しないって聞いたよ」
元々『アクアマリン』は孤島の海上娯楽施設。
モノレールでしか行けないため、終電後は警備の必要があまりない。
「…もし鮎樫らいむがそれを知っているなら、彼女は明日の閉園後ここに現れるはずだ」
「おいおい、何で鮎樫らいむがわざわざそんなところに行く必要があるんだよ?」
亮介の質問は最もだが…
「何か弱みを握られているのかもしれない。あるいは…」
「…彼女が犯人で誰かを呼び出した、か」
要が美空会長の言葉を引き継ぐ。
「いずれにせよ、鮎樫らいむがわざわざ『アクアマリン』に来たのには意味があるはずだ」
「まあ運よく明日は午前中で学校は終わりだ。皆で遊びに行ったついでに捜査で良いんじゃないか?」
「要…」
要の軽口を美空会長が嗜めようとするが
「やったー!じゃあ明日は兄さんと皆でお出かけだね!お弁当作んなきゃ!」
「潤、わたしは卵焼きが好き」
「おお!何か青春してる感じがするぜ!良く言った、要っち!」
「いってぇ!だから亮介!てめぇはいちいち力が強すぎんだよ!」
またいつもの風景に戻ってしまう。
「…はぁ。全く…」
「大丈夫ですよ、会長」
憂鬱な表情を見せる会長に僕は声をかける。
「僕達なら、何とかなりますよ」
「…そうだな」
「それよりよく防犯カメラの中から鮎樫らいむを見つけましたね」
ああ、と会長は苦笑しながら答える。
「ここ一週間の市内の防犯カメラを、入手出来るだけ入手して全てチェックしたからな」
「……え?」
思わず凍り付く。
「一人でやるのは大変だったな。おかげで二日間は寝ていないが…まあ何とかなるものだな」
「会長…何でそこまで?」
「皆も頑張っているし、要のためにも手は抜けないだろう?」
嬉しそうに微笑む会長に僕は思わず頷くしかなかった。
…要、君は朴念仁だから気がついてないだろうけど…とりあえず会長に謝ろうね。

570 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:33:21 ID:hUKrr8YJ

「じゃあ明日の12時に駅前の喫茶店『向日葵』に集合な!忘れんなよ!」
仲間と別れて家路に着く。部屋の途中で執事である遠野亙さんに会った。
「あ、遠野さん」
「お帰りなさいませ、英様」
「あ、そういえば…」
「亙〜!ちょっと来て〜!」
遠くから姉さんの声がする。遠野さんは姉さん専属の執事なので邪魔は出来ない。
「…大したことじゃないからまたで良いや。姉さんのこと、よろしくね」
「はい、それでは失礼します」
また明日にでも言えばいいか。
そんなことを考えながらも僕は何かにずっと引っ掛かっていた。
「遠野…亙…」
ただの執事のはずなのに…。
結局分からず仕舞いで僕は運命の日を迎える。



次の日、午後11時40分。
僕は一人で海上娯楽施設『アクアマリン』で建設中のアクアポートに来ていた。
今朝少し調子の悪かった僕は昼からの誘いには行かず、夕方調子が戻って来たので途中からメンバーに合流した。
やはりと言ったところか、日中は鮎樫らいむは姿を見せず僕達は閉園まで潜めた。
そして閉園後各自散って探索をすることになり、僕はアクアポートを探索するのだが…。
「何か…当たりっぽいんだよね」
根拠は全くないが何となくここに誰かいる気配を感じる。
「一応皆に連絡…!」
一階のエントランスに入ってすぐ、何かが壊れるような大きな音がした。
…完全に貧乏くじだね。先頭は要や会長、亮介の得意分野なのになぁ。
「…連絡しますか」
僕は皆に連絡を入れた後、駆け足で上の階へ向かった。

571 : ◆Uw02HM2doE :2010/07/10(土) 00:37:30 ID:hUKrr8YJ
以上で投下終了します。連投してしまって申し訳ありませんでした。
「きみとわたる」で補完できなかった部分が補えれば良いんですが。
次はどんな展開なのか、考えてくださると本望です。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

572 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 00:38:56 ID:emEIOhvY
いやホント桃花には是非死んでほしい

お疲れさまです
期待して待ってますお!

573 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 00:45:47 ID:Sc3MH4w/
きみとわたるGJ!サブエピソードもGJ!

574 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 00:49:02 ID:08AX9wmX
gj!自分的にはかなりの良作だわ。しかし桃花が犯人とは…

575 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 00:51:44 ID:YKy3aaKi
リアルタイム投下GJ!何かサブの方もキャラ立ってて面白いな。そっちももっと読みたい!

576 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 01:24:26 ID:9+aJTot8
とても面白かったです

個人的にPCに保存したいので
         _,. ----、 _,_
      ,r''"          ヽ
     /    r' `゛  ― ミ.ミミ
.     l   彡    :.     i
     .!  r' r'"     、    l
     l.r-、"      ,;;;::::::;;:,;,, ,,_i_
     l  ヽ      ,r'i_lヽ "!irt、!
     .! 、      - 、    iT
      ヽ          r 、 l,!
    ,. r       ;ミヽ;:: -、,,,ノ
   / ヾ、    ,.r'" r ,: ':  ヾ
  '´    ヽ、. ;' ;r' ;'" r''";"'  ,;!
          ヾ; ; ,; ; '"   ミ
           ヾ;i:'        ミ
            ヾ、, ;r;,  ,ミヽ
                "''"  ヽ

    ゼッヒ・ジップデークレ[Sech Zipdeclair]

577 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 01:31:37 ID:AkiXxS3v


578 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 01:45:08 ID:hxjFaB1g
皆さんもちつけ
まだ最終結論は出ていないぞ

何はともあれGJです

579 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 01:48:49 ID:NChEpM4G
非日常、きみわた面白いです!GJです!

なんか訳のわからん事を書いてる方が居ますが気にせずに!


580 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:13:40 ID:u0kbEjgz
>>579
そういうこと書くなボケ
余計な一言があるから荒れるんだよ、分かる?

581 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 02:38:04 ID:ro+rf+zj
>>580
釣りなのかもしれんが、余計な一言っていうのはまさに君のボケって言葉だな

自覚できるなら自重してくれ

582 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 03:09:05 ID:K98G3Cdv
R-18のはずなんだけどなこの板
最近のクソガキは日本語も読めないのか

583 :名無しさん@ピンキー:2010/07/10(土) 03:38:49 ID:v5TSdQn/
>>582
突っかかるお前もたいがいだよ。

584 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 04:00:27 ID:4vAowXgX
荒らす阿呆に乗る阿呆

585 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 04:33:25 ID:JcckDJ4l
このスレは昔からスルー出来ない短気な奴が多いな…w作品批判や煽りはそれだけでも荒らしなのに…
だから…夏場に成ると虫の溜まり場に成るのか…

586 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 04:45:54 ID:DCajGjIg
》580
自称・管理者乙wwwww

587 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 05:46:15 ID:X9tTbgrg
>>586
自治厨って言いたいのか?自称管理者ってw

588 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 06:21:20 ID:sFG5WyU0
とりあえずみんなsageような
話はそれからだ

589 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 06:24:34 ID:u0kbEjgz
>>586
自称・管理者www


590 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 06:28:42 ID:2xMckSUc
分かる?(キリッ

wwwwwwwwwww

591 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 07:32:11 ID:5Lidwqag
夏だね

592 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 08:34:08 ID:DCajGjIg
触雷!更新来ないかなー晃の病みがすげぇみたい

593 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 09:03:46 ID:pLZnZd3B
>>586
アンカーくらい普通に打てよ恥ずかしい香具師だな

594 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 11:49:44 ID:H7tvlDws
夏だなぁ

595 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 12:00:00 ID:PZqYlkx4
お前ら自身がヤンでどうすんだよ

596 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 12:10:45 ID:0jbmxz9o
デレ成分が不足している!

597 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 12:50:32 ID:cwq/f/pU
この憎しみはこのスレを滅ぼすまで収まらぬ!

598 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 13:13:57 ID:JJ2eyv0Y
>>597
世紀末へ往ねい!

599 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 15:21:22 ID:SDV+A6Gj
何もう埋め?
無駄なこと書くなよ

600 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 15:22:01 ID:wAFgvVFv
精神年齢が低い人がよく集まるなぁまったくここは幼児があつまる場所じゃないんだぞ

601 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 15:34:27 ID:u0kbEjgz
どこの作品だっけなー
ボクっ娘のヤンデレに拘束されてオナホとバイブで強制射精、ケツに突っ込まれたバイブ舐められて
「○○くんのチョコレートおいしいー!」
とか言われて、授業中もアナルをローターで徹底的に弄ばれて射精させられる主人公の話
探してるけど見つからん、情報プリーズ
ここか嫉妬三角のまとめにあったと思うんだが

602 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 15:48:53 ID:VeLJlgfN
嫉妬三角のやや地獄な彼女かな

603 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 15:57:06 ID:u0kbEjgz
おほっ、これだこれ
さんくす

604 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 16:36:34 ID:4W98VWvx
いいよね攻めヤンデレ

605 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 17:53:02 ID:Quc4CfIF
髪の話の続き投下します

606 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 17:54:09 ID:Quc4CfIF
昨日とは逆に、彼女が普段使っているバス停に二人で降り、木村邸へと招き入れられることになった。
誘われるままについてきてしまったのは、勿論特に予定がなかったからではあるが、きちんと目的もある。木村千華に、とても聞きたかったことがあることを思い出したからだ。

どうやら他に人はいないらしく、スリッパを薦められた後、静まり返ったリビングへと通される。
「座ってて。着替えてくるから」
そう言い残し、彼女は颯爽と二階への階段を上っていく。それを呆然と見送ってから、家全体を見渡してしまった。
リビングは吹き抜けになっていて、天井にシャンデリアのようなファンが存在している。大きな革のソファが二つ、それに挟まれたガラスのテーブルが一つ。
ソファに座ってみれば、巨大なプラズマテレビが壁に掛けられているし、絵画やら壷やら、もう至るところにそれらしいオブジェクトが見受けられる。普通の住宅街にある普通の一軒家と見せかけて、中身は完全に金持ちの家であった。
こういう家には犬か猫がいると思ったが、ペットがいる気配はなかった。綺麗な木目の床には傷がないし、思えば彼女の長かった髪は、動物にじゃれつかれると大変なことになる気がする。
なんにしても、待つだけで若干の緊張が生まれるリビングに違いなかった。

607 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 17:55:15 ID:Quc4CfIF
着替えて戻ってきた木村千華は、そのままキッチンへと向かい、料理を始めた。
予想通りというか、黒系のフリルの付いたドレスのような服が、彼女の私服のようだ。それが趣味とは言え、手作業するために少し動きやすいデザインのものを選んでいるのかな、とは思った。
その上から白いエプロンと、それらとは別の黒い布で髪をまとめていた。つい先日まで、それであの長い髪を料理の作業からブロックしていたのだろう。
彼女のお礼は、手料理を振舞うことだというのは、バスの中で先に聞かされていた。料理には自信があるんだとか。

「おお、美味い」
そんな直球の感想をこぼすと、彼女はテーブルの向かい側で満足そうな笑みを浮かべた。
巨大なテレビを見ながら待つこと小一時間、ダイニングテーブルに並べられた彼女の手料理は、ごく一般的なものだった。ご飯に味噌汁、鳥の唐揚げにサラダ。シンプルだからか、美味そうに見えたし、実際に美味かった。
「普段から料理するのか?」
「うん。毎日、自分で作ってる」
そう言いながら、彼女もまた、食事に手をつけていく。
「ひょっとして、子供の頃から自分で料理してるのか」
「そうだよ。十歳からだから、もう五年以上」
道理で料理が上手いはずだ。料理の細かい味付けから何から、熟練のそれであり、自信があるのも頷ける。同い年でこんな料理らしい料理を出す人間は初めてだった。
料理ができるというか、こういうのは食事を用意できるとでも言えばいいのか。カレーを作るのが精一杯な、どこぞの友人とは格が違う。
そして、彼女には料理を作ってくれる家族はいないのだということも、推測できた。

608 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 17:56:30 ID:Quc4CfIF
「大須賀君」
ごちそうさま、と心を込めて言うのも新鮮だ、などと思っていると、皿を片付けて、再び向かいに戻ってきた木村千華に名前を呼ばれた。
「昨日は、本当にありがとう。私、改めてお礼が言いたかった」
正面から目を合わせ、そう言う彼女に、いや、と口ごもってしまう。照れくさくて何と返答していいのかもわからずにいると、彼女が続けて口を開く。
「私ね、自分の髪が好きだった。でも昨日、いろいろ、あって。自分の髪を好きなことが、気持ち悪いことだって、思ったの」
それから自分を見るように、彼女は少しだけ目を伏せる。
「だからきっと、あの時嫌いになったのは、髪じゃなくて、自分自身」
彼女の告白は、あの時の心情のこと。
「大須賀君が髪を切ってくれてる間に、凄く落ち着いて、考えられたの」
少しでも落ち着くことが出来れば、安らぐ時間になれば、そんな狙いが、しっかり成功していたことは良かったんじゃないかと思った。
「今までの私は嫌いになったけど、だったらこれからどうしようかなって、思えた。あの時、鏡に映った自分が、別人みたいで、私はこれから、変わればいいんだと思った」
「それは」
あの時に考えていたこと、そのままなんじゃないだろうか。
好きだったものが嫌いになっても、嫌いになったものがまた好きなったりする。嫌いだったものが変わるのか、嫌いだと思う自分が変わるのか、その違いはあるかもしれないが。
思い入れが強かったなら、尚更だ。未練を断ち切るなんていうのは、そんなに簡単にできることじゃない。ずっと引きずって、余計に嫌いになっていってしまうこともある。だけど、変わることだって、ある。
「俺はさ、木村に自分の髪を嫌いになってほしくなかったんだよ。嫌いになっても、また好きになれたらいいって思うから。あんな伸ばして手入れして、拘ってた髪なんだから、嫌いになって終わりじゃあ、駄目だろ」
口に出してしまってから、再び彼女に見つめられていることに気付く。というか、彼女はやたらと正面から目を合わせてくるので、とてつもなく照れくさい。そして照れくさくなるような台詞を言った後だから、なおさら恥ずかしい。
赤面してしまっていることを自覚したところで、話を区切ることにする。
「だからさ、必要なのはきっと、ゆっくり落ち着いて考えて、自分を見つめ直すことじゃねえかなって、思う」
「……うん」
そして彼女はまた、笑うのだった。

609 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 17:58:36 ID:Quc4CfIF
最後にもう一度、ありがとうとお礼を言われて、木村千華の家から帰宅することにした。徒歩で自宅へ向かう道中、考えることは当然彼女についてだった。
彼女は思ってたよりずっと口数が多いらしい。無口で無愛想なんて印象は、彼女の側面的な顔であり、実際はよく笑い、よく喋る普通の子に思える。
暗い子ではなく、物静かな子なのかな、といった認識に改めると、彼女が髪を切ったという事実がより際立ってくることになる。素直で誠実でおとなしい少女が、激情に任せて自分の髪をその手で切り落とすなんてことがあるだろうか。
彼女の言う、いろいろあったというのは、一体どういうことなのか。
自分の髪が好きだった自分が気持ち悪くなったと言っていた。だったら、気持ち悪く感じた原因があるはずだ。劇的に感情を揺さぶられるような、大きな原因が。
でも、彼女はそれを語らなかった。言いたくなかったからだろう。知りたいな、とは思ったが、聞くわけにもいかない。
そうして自宅まで帰ってきて、彼女に聞こうと思っていた大事な用件をすっかり忘れてしまっていたことを思い出した。こう、このタイミングを外すとどうにも聞きづらくなってしまいそうだが、もう手遅れだ。
まあまたその内、機会があったときに聞こうと思った。今度は忘れないように。

店の裏側、外灯の点いていない暗い家の玄関の前に、携帯電話を見つめる松本尋が立っていた。

610 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 17:59:46 ID:Quc4CfIF
投下終わります
続きはまた今度

611 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 18:18:33 ID:PhIhb4bC
おつん1

612 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 18:26:46 ID:emEIOhvY
おつん2

613 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 18:58:31 ID:u0kbEjgz
>>610
待ってたぜー
続きも全裸待機させてもらうよ

614 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 21:03:52 ID:D8gtYDcz
>>610
投下乙!
待ってたぜ!!続きも楽しみにしてる

615 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 21:45:18 ID:u0kbEjgz
まとめを読むと、髪の話は二ヶ月ぶりの更新?
よく戻ってきてくれたと言いたい
これからの展開におおいに期待できそうだから本当に嬉しいな

616 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 08:39:27 ID:Pj0bfRtn
今週もヤンデレ家族の投下あるかな?楽しみにしてるよ(^ー^)

617 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 11:37:50 ID:GHueLzyb
あんまり催促してると叩かれるぞ

618 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/11(日) 12:13:19 ID:Rvq4YAnq
こんにちは。
本編では34回目になります。
今回は往生編です。

619 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/11(日) 12:14:54 ID:Rvq4YAnq
*****

 今日、あえて休日の時間を潰してまで友人に付き合おうと思ったのは、興味が湧いたからだ。
 家族愛に似た感情である、兄妹愛について。 
 僕には兄妹愛という感情が無い。
 家族愛というものが、家族を思いやるもの、ということは漠然と理解できている。
 しかし、兄妹愛、または姉弟愛というものとなるとさっぱりだ。
 その言葉を聞いても、何の感想も意見もない。
 理解不能なものを知るために、妹の入学祝いを買いたいから手伝ってくれ、という友人の頼みを引き受けた。

 僕が知る限り、僕の周囲で兄妹愛に一番目覚めている人間は、彼だ。
 本来なら彼の家族構成上、弟妹愛とでもいうのがベストだが、言いにくいので兄妹愛に統一する。
 友人の名は――仮にロマンス君としよう。
 彼のあだ名というわけではないけど、彼の性格・特徴に対して本名が大人しすぎるので、便宜的にロマンス君とする。
 ロマンス君が、どれほど彼の弟と妹を愛しているのか。
 例えば、彼に今日の調子について尋ねてみると、その一端が見られる。
 驚くべきことに、自分のことではなくて弟妹の最近の動向について教えてくれるのだ。
 実例を挙げると、以下のようなやりとり。

「おはようさん高橋。今日も変わらないな」
「おはよう。君こそ右腕以外調子が良さそうだな。最近はどうだ?」
「ん、右腕以外か? この間久しぶりに妹と長々会話したぐらいだな」
「そうか、それは良かった」
「まさか弟じゃなくて俺と会話するなんてな。珍しいこともあるもんだ」
「いいことじゃないか。弟妹と仲が良いなんて」
「ま、悪いよりはいいさ」

 僕はロマンス君の体調について聞いたのだ。彼の弟妹について知りたかったのではない。
 妹と屋外のバス停で会話したとか、弟よりも先に妹を見つけて会話したんだとか、そんな詳細なことまで要求していない。
 彼には、自己の意識が薄いのだろうか。それとも、自己の意識が無いのか。
 尋ねた前日にたまたま仲の悪い妹と会話できたから、ロマンス君がそう答えてくれた、と考えることもできる。
 しかし、体調について尋ねる度に、的外れの回答を寄こしてくれるのだから、僕にはこう意識せざるを得ない。

 ロマンス君はブラコンだ。さらにシスコンでもある。
 比率としては、ブラコン三割にシスコン七割。もしくは四と六。
 根拠を裏付けるのは、今もまだ彼の右腕を包むギプス。
 彼の右腕がギプスに包まれたのは、事件に巻き込まれ、解放された翌日から。
 先月の事件では彼自身が監禁された。その後、彼は解放されている。
 解放されたのに、翌日には腕が折れていた。
 事件に巻き込まれたというのであれば、監禁された時点で腕を折られることは納得できる。
 犯人が、逃げられないように彼の腕を折ったのだ、と。
 しかし実際のところ、監禁から解放された後で腕が折れたというのだ。

 これはあくまで推測だが、可能性は十分にある。彼ならやりかねない。
 事件の渦中にある弟もしくは妹をかばったことで、ロマンス君は右腕を折られてしまった。
 彼の言うような、運悪く家具が倒れてきてこうなったという説明など、信憑性に欠ける理由だ。
 家具が倒れてきて右腕が折れる。可能性はゼロではない。
 だが、憂慮する必要もないほど低い可能性だ。
 よって、彼の右腕が折れた原因は弟妹をかばったためなのだと、僕は推測する。
 その推測をしてしまうと、自動的に彼は重度のブラコンでシスコンだということになってしまうのだ。


620 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/11(日) 12:15:54 ID:Rvq4YAnq

 ブラコンでシスコンなロマンス君はというと、今日は妹を連れて待ち合わせ場所のデパートへやってきている。
 待ち合わせの時刻は午後二時。お互い昼食をとった後に落ち合おうと僕から提案した。

 僕がデパートにやって来たのは、昼食をとる人間が混み合う正午の三十分前。
 デパート内の手作りパン屋にて三品ほど買い、備え付けのテーブルで食事をとり、文庫本を読みながら時間を潰すつもりだった。
 メロンパンを食べ終え、二品目のピザパンにかぶりつこうとしたところで、僕は見た。
 ロマンス君と彼の妹の二人が、購入したパンをトレーに乗せて、テーブル席へ歩いてくるのを。
 どうせ昼食をとるなら待ち合わせ場所で、という思考に彼ら兄妹も至ったのだろう。
 そこで僕に挨拶してくれれば、一緒に食べるのも吝かではなかった。
 しかし、ロマンス君は僕に気付くことなく、僕の席から三つ向こうにあるテーブル席に腰掛けた。
 ロマンス君が僕に背中を向けて座った。彼の妹は彼の向かい側、僕の食事風景が見える席に着いた。
 このような位置関係では、ロマンス君が僕に気付くはずがない。
 彼の妹は僕を知らない。僕は自分の方から知人に声をかけて近寄っていくことはしない。
 そのため、お互いに一切声をかけることなく、それぞれの昼食は始まった。

 実を言うと、僕自身は昼食の時間にここまで楽しい気分になったことは久しぶりだった。
 学校が次年度への移行期間、春休みに突入してから、知人を目の前にして昼食をとることがなかった。
 誘えば付き合ってくれる人間もいるだろうが、僕はそうしない。
 わざわざ誘ってまでして、誰かと食事をとりたい欲求がない。
 僕は一人で食事することに慣れている。一人暮らしを始めて長いからだろう。
 今日は偶然にも、知人と同じ空間で昼食を一緒にとった。
 それを楽しいと感じられたのは、心中で一人飯を寂しく感じていたのだと自覚したから、ではない。
 たとえ見知らぬ赤の他人であったとしても、あの昼食時間は賑やかに感じただろう。

「お兄さん、そのパン美味しそうね。ちょっと頂戴」
「どうやってカレーパンを上手くちぎれってんだ――って、おい!」
「あ、美味しい。お家で作るのよりずっと美味しいわね。なんでかしら」
「……そりゃ、単にパン屋の人の腕がお前や母より上だってことだろ。
 あのな、カレーパンが欲しいなら追加で買って来い。俺のを食べるな。
 せめてだな、あー、えっとな、あれだ。ちぎってから食ってくれ」
「いいじゃない、お兄さんのケチ。それに一杯食べたら太っちゃうじゃない。
 目の前にお兄さんのがあるんだから、分けてもらうのが一番よ」
「……で、お前がかぶりついたこれを、俺にどうしろと?」
「どうしろ、って。食べればいいんじゃないの」
 
 このやりとりは、ロマンス兄妹の会話のごく一部だ。
 偶然にも、店内の客が僕とロマンス兄妹だけだったから、彼らの会話に不快な反応をする人間は居なかった。
 店先のレジを担当している女性は笑いを堪えるのに必死になっていた。
 焼きたてのパンを出しに来た男性は、優しく微笑みながら、ロマンス兄妹をたまに横目で見ていた。
 僕は能面を作ることについて、友人から定評がある。そのため表情に出すことはなかった。
 もっとも面白かったシーンは、ロマンス君が妹に仕返しをしようとしたところだろうか。
 二人ともパンを食べ終え、彼が、妹にさっきのお返しとして紅茶を要求した。
 そこで彼はグラスの中の紅茶を飲み干した。ストローを使わず、口を付けて飲み干した。
 ロマンス妹は、彼のアイスコーヒーを奪い取った。彼女もまた、彼と全く同じやり方で飲んだ。
 それを見たロマンス君の意味を成さない言葉と、戸惑う横顔が実に笑えた。
 彼にばれないよう、印象の薄いエキストラを演じていた僕にとっては、役を崩壊させるピンチだった。

 ともあれ、愉快な昼食の時間は終わり、僕とロマンス兄妹は待ち合わせの時刻まで別行動をとることになった。
 僕は篤子先生と向かい合っている気分で、テーブル席に着いたまま文庫本を読み続けた。
 午後二時五分前になったところでロマンス君に連絡をとり、僕は彼ら兄妹の待つ本屋へと赴いた。


621 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/11(日) 12:16:47 ID:Rvq4YAnq
*****

「どうも始めまして。高橋です」
「いつも兄がお世話になってます。今日はヘタレな兄のお願いを聞き入れていただき、ありがとうございます」
 高橋と妹がお互いに頭を下げる。
 二人は今日が初対面。ならばこういった挨拶はあって然るべき。
 だが、どうして妹が挨拶の中に、わざとらしく俺への貶しを含んでいるのかがわからない。
 かしこまった場ではわざわざ身内を立てない、っていうのは理解できる。
 しかし必要以上に悪く言う必要もないんじゃないかね、妹。
「妹さんはお兄さん達と同じ学校に入学するんですって?」
「高橋さん、私に敬語なんか使わなくてもいいですよ。来月からは高橋さんも先輩なんですから」
「ああ。それもそうだね。じゃあ、いつも通りにするとしようか。
 そうか、二つ年下の後輩か。ということは僕もとうとう高校三年生になったわけか。
 早いものだね。ついこの間まで僕も君みたいな立場だったというのに」
「それは、もう高校に通ってるからそう思えるだけですよ。
 私なんか、ちゃんと勉強について行けるか、学校で上手くやっていけるか毎日不安です」
「安心したまえ。身銭を切ってまで妹に入学祝いを買ってあげるぐらいいいお兄さんだ。
 きっと君が助けを求めたら、文字通り飛んで駆けつけてくれる」
「それもそうですね」
 あははは、ははは、ははははは。二人につられて俺も笑う。

 高橋の野郎、まるで先日のことを見ていたみたいに言いやがる。
 たしかに妹が、「おにいさん助けて」なんてメールを送ってきた時は駆けつけたさ。
 身体の方が飛んだりしなかったが、意識は飛びそうなぐらいにはなった。
 妹が同じ高校に通うようになったら、果たして、俺に助けを求める機会も増えるのだろうか。
 授業で分からないところを聞いてくる、ってことは……無いはず。
 これまで、妹は勉強については自己解決する手段をとってきた。
 俺は教えていないし、弟は他人に勉強を教えられるほど成績優秀じゃない。
 教えを請われたら、教授してやってもいい。
 今までも弟の相手をしてきたんだ。一年生の学習内容を復習する意味でも、引き受けて損はない。

 妹がうちの高校で上手くやっていけるか。これについても、まあ、大丈夫だろう。
 俺や弟抜きで、中学校で問題無く過ごしてきたなら、同じクラスの友達がちゃんとできる。
 変な風に歪んだ奴がいないからな。進学校ではない、部活動に強い高校でもない。
 校内にあからさまな不良がいない。……あ、花火がいるか。金髪のロングヘアーの女。
 でもあいつの素行は最近大人しいそうだから、除外する。
 そういえば、同じ学年に美人なら誰でも声をかける女たらしがいたっけ。
 あのたらしは、もはや名前も浮かばないぐらい存在感が無くなってしまった。
 花火に手を出したのがあいつの運の尽きだったのか。無茶しやがって。


622 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/11(日) 12:18:06 ID:Rvq4YAnq

 今日、妹の入学祝いを買うために高橋を呼んだのは、アドバイスを貰うためだ。
 何を送ればいいのか決められなかったから、高橋に助けを求めたわけじゃない。
 妹への贈り物を何にするかは決まっている。
 ただ、その贈り物のカテゴリーについて、俺の知識がほぼ皆無だったため、知識を有する高橋に相談したのだ。

「ところで、妹君はさっきお兄さんのことをヘタレと呼んでいたが?」
「ヘタレですよ。だって、入学祝い一つ選べないで、高橋さんに助けを求めるんですよ。
 ヘタレじゃなきゃボンクラです。ボンクラじゃなきゃカカシです」
「それは違うな。君のお兄さんはカカシじゃない。
 ただトラブルが襲いかかってきてもじっと見たまま、回避行動を一切とらないだけだ」
 衝動を堪え難い。ツッコミを入れたい。
 それをカカシというんだよ、ってツッコミたい。
「カカシじゃない? だったら、高橋さんは兄を何だと思ってるんです?」
 お前の兄だろうが。寝込みを襲うぞ毒舌女。舌を抜いてやろうか。
「鈍感とか向こう見ずとか、彼に相応しい言葉は色々あるが……どれか一つを選ぶなら、僕は友人にするね。
 君のお兄さんにどうこう言えるのも、休日に一緒にいるのも、僕と彼が友人だからだ」
「高橋さん、いい人ですね」
「いやいや、君のお兄さんには敵わないよ。僕程度では、とてもね」
 高橋は俺を見ると、唇だけで笑みを作った。
 高橋の台詞は皮肉ともとれる。だが、こいつがそう思っているのは真実だろう。
 俺が日頃どんな行動をとっているか、一部だけではあるが高橋は知っている。
 それと、弟や妹に対する接し方、他人に対する態度などを考慮した上で、皮肉っている。
 普段から高橋には、表情を変化させないことで、他人と半透明な壁を通して接している雰囲気がある。
 だが、半透明な壁の裏で、実は他人を観察し、考察している。
 年上好きで奇妙な話し方をする、ただの能面男じゃない。
 一言で言うと、馬鹿じゃないのだ。だからこそ、俺も高橋との会話に付き合っていられる。

「まあ、あまり彼のことを悪く言うものじゃないよ。
 僕の前で本音を出せないで、彼の悪口をつい言ってしまうのも、心情として理解できるけどね」
「それ……どういう意味ですか」
「失敬。口にすべきではなかった。ごめん、悪かった。
 だが、そこに居る君のお兄さんを見ていると可哀想になってね。
 ほどほどにしてやってくれ、と僕は言いたいのさ。彼に誤解させないためにも。
 兄妹の仲に口を出すべきじゃないと理解しているよ、もちろん。その上で言っている」
「わかりました。一応、聞いておきます」
「そうか。それは何より。
 では早速行こうか。妹君の入学祝いを買いに」
 そう言うと、高橋は歩き出した。行き先は、贈る予定の物を取り扱っている店舗。
 高橋には、入学祝いに何を贈るか、前もって告げてある。

 妹と並び、高橋の後ろをついていく。
 ふと、九時の方向から、妹に視線を向けられていることに気がついた。
 妹が何か言いたそうにしている。だが俺はあえて放置することにした。
 放置してから十歩ほど歩いた頃、脇腹に妹の貫手が刺さった。
「何無視してるのよ。……何か言うこと、無いの」
「行こうか? お前の入学祝いを買いに?」
「高橋さんと同じ台詞でも、その疑問系はむかつくわ。もういい。ほら、さっさと行くわよ、お兄さん」
 気がついたら高橋との距離は三メートルほど開いていた。
 その距離を、妹に手を引かれて早歩きで詰める。
 なんなんだ、この妹のおかしな行動は。俺に何を望んでいた?
 こうやって手を繋いで、デパートの中を歩きたかったとか? 
 まっさか。そんなこと、思春期に突入している兄妹がするもんじゃないよ。
 恋人とやるもんだろ、そういうのは。


623 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/07/11(日) 12:23:32 ID:Rvq4YAnq
あと6レスほど続きますので、全て投下すると容量を超えます。
埋めネタの分容量が必要だと思うし、区切りが良いので、ここで切ることにします。
続きは次スレで。

午後一時まで待って次スレが立たなければ、私の方でスレッドを作成します。

624 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 12:25:38 ID:N8G/pHOC
ヤンデレの小説を書こう!Part33
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1278818703/

625 :自宅警備員の姉:2010/07/11(日) 15:14:41 ID:49xj/ojQ
昼休み、涼子に呼び出されて足を運んだのは、体育館の奥にある体育用具倉庫だった。
だれもいない体育館。
古びた金属の扉を開けると、涼子はすでに倉庫の中で俺を待ち構えていた。
身長190センチを誇る筋肉女は、跳び箱に腰掛けて悠然と微笑んでいる。
「やあ、遅かったね。待ちくたびれたよ」
「わ、悪い」
「レディを待たせるなんて礼儀知らずもいいところだ。これは、お仕置きが必要かな?」
唇を舐めながら、その瞳にサディスティックな本性を滲ませる、涼子。
俺は、まさに蛇に睨まれたカエルのごとく動けなくなり、しかも小さな悲鳴さえ上げてしまった。
そんな俺のぶざまな様子がおかしかったのか、涼子は声を上げて笑う。
「冗談だよ、誠司。安心しな。ボクは我慢強いし慎み深い性格だからね、多少のことは許すさ。それに、待ち人が愛しいきみなら、待つ時間さえ楽しいのさ」
そう、驚くべきことに、この美しい筋肉女は、俺のことを愛しているらしい。
俺から見ればまったく歪んだおぞましい愛情だが、それは確かだ。
「でもね、誠司」
跳び箱から腰を上げて、涼子がこちらに歩いてくる。黒髪のポニーテールを揺らしながら。
「そんなボクにも我慢できないことがあるんだ」
俺の身長はせいぜい170センチ。
だから涼子が間近に迫ってくると、どうしても首が痛くなるほど上を見上げる必要がある。
涼子は笑みを浮かべていたが、その眼は笑っていなかった。
「三原さんとのデート、中止してよかったね。・・・ボクを裏切ったりしたらどうなるか、きみはよく知っているはずだろう?」
背中を冷や汗が濡らす。
呼吸が辛くなる。
涙が零れそうだ。
「ボクはね、きみとお姉さんとの仲を引き裂こうだなんて思ってないよ。麗しい姉弟の絆、けっこうなことじゃないか。家の中で存分に愛し合うがいいさ。・・・でもね」
涼子の腕が伸びる。
反射的に身を竦める、情けない俺の頭上を通過した涼子の太い腕は、開けっ放しとなっていた重い扉を簡単に閉じてしまった。
さらに鍵をかけられて、もはや俺はこの場から逃げ出すことも、誰かが助けてくれるのを期待することすらできなくなった。
「家の外にいるきみは、ボクのものだ。ボクの親友、ボクの恋人、ボクの奴隷、ボクの玩具。わかるよね?」
涼子は制服のポケットから携帯電話を取り出した。
俺は、自分の身体から血の気が引くのを感じる。


626 :自宅警備員の姉:2010/07/11(日) 15:16:26 ID:49xj/ojQ
涼子はニヤニヤと笑っている。
「山ほど集まった、きみとボクの愛のメモリー。ボクの友達に一斉配信してもいいのかな?」
「やめてくれえええっ!」
泣き叫んで腕を伸ばし、涼子の携帯を奪おうとするが、無駄だった。
俺が手を伸ばせば伸ばすほど、涼子はさらに高く携帯電話を持ち上げてしまう。それでもピョンピョンと跳びはねる俺は、たとえようもないほど滑稽だったことだろう。
だけど、あの携帯には俺のありとあらゆる恥ずかしい姿が記録されているのだ。
涼子に殴られて気を失い、失禁しながら白目を剥いている俺。
反抗しようとしたが、返り討ちにあい、ボコボコにされて男のプライドをへし折られ、全裸で土下座しながら許しをこう俺。
夜中の公園で全裸自慰を強要されたときの射精シーン。
そして、馬乗りになって腰を振る涼子の膣にペニスを犯され、堪えきれずに射精したときの情けないアヘ顔。
俺の人間としての尊厳をグチャグチャに踏み潰し、社会人としての未来を台なしにする写真と動画が、あの携帯には記録されているのだ。
だから俺はあの携帯を奪い取りたいし、涼子には逆らえない・・・。
「しつこいよ」
いつまでもピョンピョンと跳びはねていた俺を涼子が軽く小突いた。
たったそれだけで、俺は大きく後ろに飛ばされて、扉に背を打ち付けてしまう。
男と女の本来あるべき体力の差を完璧に覆す、涼子のパワー。
「いつものように脱ぎなよ、誠司。昼休みは短いんだからさ、有効に使おうよ」
逆らえない。
涙を堪えながら、服を脱ぐ。
俺が全裸になったときにはすでに、涼子もまたすべての衣服を脱ぎ捨てていた。「ほら、おねだりはどうしたんだい?」
期待をこめた瞳で俺を見つめる、涼子。
今日もまた、唇を震わせながら屈辱の台詞を口にする。
「俺は涼子のための愛玩奴隷、桐沢誠司です。今日も愛する涼子に抱かれて犯しぬいてほしくてたまらず、朝からチンポを勃起させていました。どうか、この情けないマゾチンポを、涼子のまんこで擦りむけるほどしつけてやってください」
よどみなく言えるのは、ほぼ毎日、同じような台詞を言わせ続けられてきたからだ。
こんな情けなさすぎる台詞を暗記してしまった自分を呪いたくなる。
涼子は満足がいったようで、心から嬉しそうに笑った。
「いい子だね、誠司。では、望み通り、嫌というほどレイプしてあげるよ」
涼子のたくましい腕で抱きしめられたかと思うと、次の瞬間には足が床から浮くほど持ち上げられ、唇を奪われていた。
甘くとろけるような、情熱的なディープキス。
嫌になる。
なにが嫌になるかって、そんなのは決まってる。
俺のペニスはすでに痛いほど勃起していて、いまこうして涼子の太ももに押し付けているだけで先端から先走りの汚い汁を垂れ流し、精液を漏らしそうになっている。
涼子にレイプしてもらえることを期待していたのだ。朝、教室で微笑まれた瞬間から。
あのときからずっと俺のペニスはガチガチに充血していた。盛りのついた犬のように。
俺はもうどうしようもないほど涼子に調教されていて、逃れる方法など存在しない・・・。

627 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 15:17:59 ID:49xj/ojQ
梅ネタ
筋肉女を書くの楽しい

628 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 17:11:00 ID:Po8EU4h4
マッスルウーマンGJ…今回は全部ネタで埋めて欲しい所だ…

629 :梅ネタ 恐怖、会計は見た!:2010/07/11(日) 23:02:22 ID:oAUJ7DsY
「あー、愛妻弁当が食べたい…ちくしょー」

俺がこんな変な事をぼやくのは、目の前で繰り広げられるラブい空間が原因だ…


「ユウイチ…あーん…」

「奈美枝…おいしいよ…」

二人は俺の幼なじみ、ユウイチローの方は平凡な青年。
奈美枝の方は絶世の美女というべきか。
二人は幼い頃から一緒だったが、いかんせんユウイチローは天然で無自覚の浮気癖がある
しょっちゅう違う女の子を連れて歩くので、そのたびに濁った目でなにかを呟く奈美枝を必死に宥める俺は大変な役職なのだ…
だが、それも限界だったのか、中学生の時に、奈美枝が昼休みに唐突にユウイチローをひっぱると、そのまま早退してしまった。
あとから聞いたのだが、ユウイチローはいき遅れていた三十路の女教師に迫られていたのだとか。そのことでプッツンときたのだろうか

家に遊びに入っても、いない知らないとの家族のお達しをうけた。
それから一週間二人は休みひょっこりと戻ってきた
二人は恋人になっていた俺は嬉しかった。
まぁそれから暫くの間ユウイチローの目がハイライトを無くしていた、正直怖かったのだが。
あのことを聞くと、今でもユウイチローは目のハイライトが消え失せ、ナニモナカッタ…アイッテコワイ…とつぶやくだけだった。
あ、あと最近になってユウイチローが奈美枝の前でもだえている姿が目撃されている
俺も一度はみたことあるが、ユウイチローの顔は真っ赤で息も上がっていた、更に痙攣していた。なにしてたんだかなぁ。

まぁそんなことはどうでもよいのだ。
今の問題はどうしたら愛妻弁当が食べられるかだ
奈美枝は‥無理だ、頼めば作ってくれるだろうがそこには親愛しかない。というかユウイチローに怒られる。

彼女は?という意見だが、いたら愛妻弁当で悩まない。
自慢ではないが、俺はイケメンだ、しかも生徒会書記。
この学校の生徒会の書記というのは会社でいう幹部みたいなものだ。それくらいこの高校はマンモス高校で、生徒会の権限が強いのだ。

別に生徒会には恋愛はしてはいけないという規則はない。なので俺は告白バッチ恋なのだが…なぜか一度も来ない…女子の友達も生徒会メンバー以外いない…泣いていいだろうか…

いや、生徒会に入るまでは友達はいた…しかし入ってからはなぜか敬遠されているのだ…

パサパサのコッペパンを食べ終えて、俺は席をたった。目指すは生徒会室。
幼なじみ二人はキスをしていた。…泣きそうになった。

630 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 23:05:10 ID:oAUJ7DsY
「二年書記。ユキムラです。」
ああ、ちなみに俺の名前は佐薙幸村だ。

あだ名はカブトムシ、某ゲームの戦国武将のヤリと、名字の佐薙を掛け合わせてカブトムシみたいだからだそうだ。ふざけんな。


「ああ、入りたまえ。」
生徒会長の許可を得た俺は生徒会室へと入ることにした。中には三人の女性がいた。
まず生徒会長…藤村リン、ナイスバデーで黒髪な美女だ。
そして副会長、至宝リツカ、金髪で元不良のお姉さんだ。
そして最後、会計の田中カナタ、ロリロリしたぺたんこお胸の真っ白な女の子。
他にもまだいるのだが、また次のお話にでも紹介しよう…

「よくきたな、仕事熱心は好きだぞ」

とリンさん

「まっ、ユッキーがやるようなことはねーな」
とリツカさん

「会長が全部終わらせますから…」
とカナタちゃん

「いやぁ…別に仕事というより…みんなに会いに来た?みたいな…あははは」
言ってみて、そんな気持ち悪いセリフを吐いたことを後悔した。
だって、みんなが一斉に顔を背けたからだ。顔が赤いので、それほど気持ち悪かったのだろう…
こんなんだから彼女が出来ないんだな…と一人落ち込んだ。




「はぁ…ねぇ…カナタちゃん?」

書記の指定席の向こう側、会計の席の少女、つまりカナタちゃんに話しかける。

「はい…何でしょうか?」
俺は先ほどの出来事を含めてざっくばらんに疑問をぶつけた
「愛ってさぁ…なんだろうね…」

「愛、ですか?」
空気が少しだけ、なぜか重くなる。
「…俺さぁ…彼女ほしいわぁ…」

「か…彼…女…?」

「そう…彼女…いちゃいちゃしてーよ…ラブラブしてーよ…」
気がつくと、リンさんやリツカさんもこちらを見ていた。

「こう…さぁ…毎日登校してさ…おててをつないで…髪を撫でたりして…で、愛妻弁当を食べる…最高じゃないか…」

631 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 23:05:54 ID:oAUJ7DsY
「そ…そうなのですか…ち…ちなみに…ですよ…ユキムラさんは…色白でぺたんこな女の子は大丈夫ですか…?」
なぜか顔を真っ赤に上目遣いでこちらを見てくるカナタちゃん、ポイント高いなぁ…「(二次元なら)大好物だぞ」

「ほ…本当ですか!」
するとなぜかリツカさんが慌て始めた
「ま…待てや!ユッキー!年上で実はウブな先輩はいいよな!」

「え?あ、は、はい」
どんどん暴かれていく俺の性癖…

「ふむふむ…じゃあ、好きな髪型は、黒髪でロング…だな?」

「いえ、ポニテです。」
それは譲れない。くふふ…すまない。私は用事が出来た、今日はこれでしまいだ。」

「あっ、俺もやらねーといけねーことがあるんだったわ、わりぃなユッキー」

「…僕も…やることがある」
なぜかみんな決心した顔をしていらっしゃる…

そのまま部屋を追い出された俺は仕方なく保健室に行くことにした。

しかし、俺はこのあと保健室で凄まじい出会いがあり、それによってその夜に血なまぐさいストリートファイトに発展して一度に色んな貞操を失うことになるなんて、僕は知らなかったのである

632 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 23:06:51 ID:oAUJ7DsY
というわけで終わり、次スレもないすヤンデレを期待してるぜ…

633 :名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 01:37:30 ID:UEKwoo4G
マックスにしても誰もデブにならん
つーかもっとふとましくなるようにしてほしい
腹筋とかボコボコに割れるとかさ

634 :名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 06:54:54 ID:UEKwoo4G
ごばーく

635 :名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 11:06:48 ID:a0frsXPe
うめーる

636 :名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 12:26:28 ID:zL0CWK2H
>>632
続きはまだですか?

637 :名無しさん@ピンキー:2010/07/12(月) 20:59:51 ID:Nh8OiOHd
>>632
面白いから続きがほしい

638 :埋めネタ ◆KaE2HRhLms :2010/07/12(月) 23:24:50 ID:iepbCRCl
ナポリタン問題っぽい埋めネタです。
*****

 私は彼女と踊っていた。
 もう長いこと私は彼女と踊り続けている。

 ようやく順番が回ってきた。次の番だ。
 新しい女性が彼女の代わりとして、ホールに現れた。

「さあ、一緒に踊りましょう」
 彼女は言った。

 私は断った。
 もう何時間も踊っていて疲れていた。早く休んで目を休めたかった。

「あなたはまた同じ事を言うのね」
 彼女はその手に隠し持っていたナイフを手離す。

 聞き慣れた音が耳に響く。ナイフが床へと落ちる。

 ナイフが私の足下へやってきた。
 刃に照明が反射して、私の瞳を眩ませる。

 女性が私の前から居なくなった。

 そうすると、ホールには私と、一人の女性が残っているだけになる。
「さあ、一緒に踊りましょう」
 彼女の声をきっかけに、新しい音がホールに響いていく。

 流されるままに、私の身体が動く。
 ステップ、ステップ、ターン。ステップ、ステップ、ターン。
 入れ代わり、立ち代わり。

 ひたすら同じ動きの繰り返しだった。これまで何度繰り返してきたことか。

「お上手ね」
 彼女が私を見上げながら言った。
「このまま、ずっと一緒に踊ってもらえるかしら?」

 この舞踏から解放されることはない。
 諦めた私は、何も言わず、彼女と踊り始めた。


 私は、何人の女性と一緒に踊ってきたのだろうか?

639 :名無しさん@ピンキー:2010/07/13(火) 12:43:34 ID:4Hrxph7M
まだ埋まってないみたいだから埋めるぜ。

640 :名無しさん@ピンキー:2010/07/13(火) 13:04:19 ID:G+eC7iQg
ヤンデレがとりついてるせいで落ちないんですね
わかります

641 :名無しさん@ピンキー:2010/07/13(火) 14:40:31 ID:LwghJiUU
ヤンデレにキンタマと尻の穴をペロペロと舐められたい

642 :埋め☆ネタ 固定化:2010/07/13(火) 17:09:11 ID:oAd3xcH3

いつからだろうか。"こうなったら良いな"と思ったことが現実になり始めたのは。
ここまで聞けば世界中が羨む能力だが、実際はそんなものじゃない。
僕、朱神功(アカガミコウ)は確かに思ったことを現実に出来る。でもそれはいつなるか分からないのだ。
例えば校長先生の話が長い時に"早く終わらないかな"と思うと急に話が終わるくせに、"あの娘と付き合いたい"と思っても全く付き合えなかったりする。
つまり何が叶うかは完全ランダムなのだ。ずっと思っていることは叶わないのにふと思ったことが叶ったりする。
だから不用意に"この人死なないかな"と思ってしまったら…。何となく感覚で分かる。
この現象は自分の能力で起きた、と。だから決して幸福ではないこの能力を、僕は抱えている。
そんな、高二の夏。



「おはよ、功!」
「おはよう、怜」
声をかけてきたのは幼なじみでクラスまで一緒の闇寺怜(ヤミデラレイ)。
茶色のウェーブしているロングヘアーに端正な顔立ちをしている。噂では学年トップの可愛さだとか。
「もうすぐ夏休みだよね。今年も遊びに行こうよ!」
「良いね。怜は何処に行きたい?」
そんな美少女と登校出来る喜びを噛み締めながらも、同時に憂鬱にもなる。なぜなら…。
「とりあえず海かな?どうせ功は今年も独りぼっちだもんね」
「ははは…」
そう。高校に入学してすぐに親が交通事故で死んだ。
…それからだ。
誰も僕に寄り付かなくなった。近付こうともしない。何故か?答えは分かってる。
僕の能力のせいだ。でも僕は"独りぼっちになりたい"なんて願っていないし、いくらなんでも一年以上なんて効力が続きすぎている。そして
「でも私が側にいてあげるから!だから平気でしょ?」
「…そうだね」
怜は僕から離れない。能力に例外はないはず。じゃあこの一年以上続く現象は一体なんなのだろう。
「ほら、そんなにしょぼくれないの!今日は映画を見に行くんだからね」
「…また映画か」
僕は苦笑する。皮肉にも今僕と会話をしてくれるのは幼なじみの怜だけなのだ。
彼女だけが、僕が生きていると自覚させてくれる。
「映画は良いよ〜。見るだけで幸せになれるし!」
「分かった分かった。じゃあ放課後、正門前で」
「やったぁ!じゃあ何見るか決めよう!」
もう一年以上続く怜との人生を僕は受け入れつつあった。

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