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◆女性に捕食されるされるスレ◆ 二口目

520 :腐肉(P.N.):2010/03/06(土) 16:36:31 ID:16BpWf9v
それが彼女の“人間”としての誓いだった。ふと千絵は、自分の父親のトランクが部屋の片隅に置かれているのを見つけた。
何となく開けてみると、中になにやら黒い小石のようなものがある。千絵は手に取ってその正体が分かると、はっと息を呑んだ。
3ヶ月前、福沢刑事が彼女の体内で発砲した銃弾だった。恐らく佳奈が拾って取ってあったのだろう。
体育館の一件の後、慌てて荷造りしている最中に落としたようだ。
千絵は、今ではもうすっかり傷跡も消えてしまった脇腹の辺りを服の上から摩った。千絵は拉げた弾丸をぎゅっと握ると、それをポケットに入れた。
これは千絵が持っているべきだと思ったのだ。彼女と、親友の血を繋げた絆なのだ。千絵は無念そうに呟いた。
「ごめんね、佳奈。私には何もあげられるものが無いよ…。」
その時、階下から物音が聞こえた。千絵がびくっとして耳を澄ますと、誰かが階段を上ってくる足音が聞こえた。
「誰か居るのか?父さん?」
佳奈の兄の声がした。どうやら大学の休みで帰省していたようだ。千絵は慌てて窓を開けると、急いで飛び降りた。
その直後、小山内佳明が妹の部屋の戸をそっと開けた。
佳明は戸口に呆然と立ち尽くした。気のせいだろうか。ほんの一瞬、妹の友人の姿を見た気がしたのだ。
やがて窓が空いているのに気付き、徐に部屋に歩み入ると窓を閉める。
「何だこりゃ…。」
鍵が捻じ曲がっているのを見て呟くと、溜息を漏らし、クリスマス前に修理屋を呼ぶべく階下へと引き上げて行った。
本当は佳奈の墓参りでもしようかと思っていたのだが、もう十分だった。千絵は予定を切り上げて早めに高速バスの停留所へやって来た。
そこへ座って、山々の向こうに沈む夕日を眺めた。8月の朝、2人が大計画のために出発したバス停。
破滅へと足を踏み出した9月の夜、身を寄せ合って眠った場所だ。
千絵は1人でベンチに座り、空虚に寄り添うように身体をちょっと傾けた。もうじき雪が降るだろう。
全てを覆い隠してくれるわけではないが、季節がまた過ぎて行くのだと思うと、少し気が楽だ。
時間の流れは、積み重なる雪のようだ。決して消えはしない。
それが彼女の“怪物”としての呪いだった。
一時間ほど一台の真っ黒な護送車のような車が道路を遣って来て、停留所の前で停車した。千絵は立ち上がると、後部のドアを開けて乗り込んだ。
中は強化ガラスで仕切られており、向こうに村雨の部下の1人、岡崎が座っていた。
「もうちょっとましな車無かったの?」
車が発進すると、千絵が文句を言った。
「お前の体重は小さいゴリラ並みなんだ。筋密度が人間とは違うからな。乗用車じゃ潰れちまう。」
ガラスの向こうから岡崎が言った。千絵の力ならこんなガラスは片手で突き破る事が出来るので、実質意味は無いのだ。
それをこんなに近くで出迎えてくれるという事は、大分信用されたと言う事だろう。施設を出るまでに一月半掛かった割には大きな進歩だ。
「少しは、何か感じる事が出来たか?」
千絵は、ぶっきら棒だが人間の少女に接するように千絵に接する岡崎が嫌いではなかった。
千絵は後部ドアの上部にある小さな窓からもう一度故郷の街を振り返り言った。
「うん。」
今頃、学校は放課となり生徒たちが家路を急ぐ頃だろう。
千絵は、街から遠ざかる車の中で、楽しげに笑いながら畦道を歩く自分と佳奈の後姿を想像した。
それ以来、その街で千絵の姿を目にした者はなかった。


[続、エピローグへ]

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