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◆女性に捕食されるされるスレ◆ 二口目

1 :名無しさん@ピンキー:2009/11/07(土) 21:29:33 ID:hpIh6unp
女性に捕食される・丸呑みされる・消化される内容のスレです。
食い千切りや丸呑み、同化など内容はそれぞれ。
食べる側も人間の女性、モンスターの女性、雌妖怪雌魔物さまざま。
仲良くやっていきましょう。

453 :名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 02:39:30 ID:xBrCNNtp
伊藤潤二の絵柄で美里の姿を再現して欲しい

454 :名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 03:13:25 ID:nl8AgIj2
なぜ伊藤潤二www

455 :名無しさん@ピンキー:2010/02/22(月) 09:26:40 ID:xBrCNNtp
「元人間」をこれでもかと言うくらいにグロテスクに破壊する描写が得意だからさ。
美里見て、富江の細胞移植されまくって改造された館の娘思い出した。

456 :腐肉(P.N.):2010/02/23(火) 00:55:12 ID:0XO4oX4m
渋谷駅前では、第二機動隊が村雨の指揮の下今まさに地下へ潜入しようとしているところであった。
鼻の良いマスコミはすでにこの異常事態を嗅ぎつけ、封鎖の外に野次馬と一緒に集まっている。村雨の知る限り彼の管轄で情報操作はなされていなかったが、
どこからともなく地下鉄サリン事件のような大規模なテロルが発生したという噂が流れ、今のところマスコミはそれを信じきっているようだ。
好きに報道するが良い。遠くで光るカメラのフラッシュや、次々に到着するテレビ局のバンを横目で睨みながら村雨は思った。
彼の邪魔さえしなければ、連中が何をしようと構わない。事実を隠すのは、後からだっていくらでも何とでも出来るのだ。
その時、バスステーションの端に建てられた臨時対策本部テントから岡崎が彼の方へ駆けてくるのが見えた。地下で何かあったのだろうか。
村雨は駆け寄る部下へ向き直る。岡崎は肩で息をしながら、それでいてはっきりとした口調で告げた。
「地下からの連絡が途絶えました。」
村雨は胃の中に冷たい氷水を注ぎ込まれたような感覚に襲われた。
「伊豆波班に連絡して…」
震える声でそう言いかけるのを、岡崎が遮る。
「連絡を絶ったのは地下の班、両方です。」
村雨は、いっその事感情を表に出してわめき散らせたらどんなに楽だろうと考えた。考えうる最悪の事態だ。
だが彼は表情を崩さず、尚対処法を見出すべく思考に努めた。
「時間は?」
「ほぼ同時です。“D”と“E”が二手に分かれている可能性があります。」
「あるいは“C”の出現か…。」
村雨が考え込むように呟いた。その時、テントから防弾服を着用した男が1人、2人の下へ駆け寄ってきた。
「越後班の発信機が反応しています。」
彼は岡崎と村雨の顔を交互に見ながら告げた。
「生存者か?」
岡崎が尋ねる。
「それが…物凄い速さでトンネル内を移動しています。」
「…喰われたか…。」
岡崎が舌を打つ。
「追いましょう。」
村雨が言った。
「しかし、危険です。」
岡崎は反論したが、すぐに村雨の目を見て何を言っても無駄だと言う事を悟った。彼の瞳には、怒りと決意が炎となって燃え上がっていた。
「機動隊第二班をここから地下へ。発信機の反応を地上から追えますか?」
「かろうじてです。目標が高速で移動しているため、急がないと圏外になる可能性があります。」
「では我々が。」
村雨が岡崎に向かって頷いた。岡崎はすぐに、車を用意するため走り去った。岡崎と入れ替わりに、スーツ姿の別の男が村雨に近づいた。
「市ヶ谷から連絡です。状況の報告を求めています。」
「…軍人の出る幕ではありません。放って置いて下さい。武力があっても、彼らには何も出来ない。」
村雨はそう言ってその場を離れた。
数分後、ソナーを積んだ機動隊のバンが、村雨以下数名の捜査官を乗せ渋谷駅を後にした。
時を同じくして、17名から成る機動隊第二班が地下鉄銀座線の駅から地下へ突入した。
深夜だったが、その模様はテレビで日本中に中継され、レポーターは「テロリストは構内に潜伏中と見られます」と告げた。
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457 :腐肉(P.N.):2010/02/23(火) 00:56:52 ID:0XO4oX4m
どこかの駅のホームに差し掛かった時、佳奈は足を止めた。
背中や、美和を抱いた胸の辺りに汗をかき、膝ががくがくと震える。もう走れない。だがここまでくれば、千絵が追いつくのに最低でも7,8分はかかる。
佳奈は少年を線路中央の排水溝の上にそっと下ろした。
美和は地面に足が付いても、佳奈の首に巻きつけた腕を離そうとせずぶら下がったままで、佳奈が腕を外すと地面に倒れ込んだ。
佳奈は辺りを見渡した。ホームは蛍光灯の無機質な明かりに照らされ、冷たく緑掛かって見える。
表示には「明治神宮前」とある。いつの間にか、線が変わっていたようだ。
佳奈は線路に倒れる美和を持ち上げホームに乗せると、自分もひょいと跳び上がった。タンと石床に足を付く音が、無人の駅に響き渡った。
佳奈は、足元に転がる少年をちらりと見下ろした。自分は身体を動かしたわけでも無いのに息を切らし、心底脅えきった目で彼女を見上げている。
佳奈は美和の腕を掴むと、ずるずるとホームの奥のベンチまで引き摺って行き、そこへ横たえた。それから徐に肩にかけたナップザックの紐を緩める。
胸の高鳴りを感じた。それは単純に、人を殺す喜びだった。
ましてや、彼のペニスを喰いちぎったあの時から、佳奈は目の前の少年を殺したくて仕方なかったのだ。
「ちぃちゃんの“アレ”はどうだった?きもち、よかった?」
佳奈は布の袋から、ナプキンに包まれミイラのようになった刃物をするりと引き出した。
「もう感じる場所が無くて残念だね。」
少年はそれを目にすると「ひっ」と短く悲鳴を上げる。佳奈の笑みが邪悪に歪む。
「優しく殺して貰えると思ったら大間違いだよ?」
「約束…したよっ?」
美和は瞳に涙を浮かべ懇願するように佳奈に言った。
「お姉ちゃんの所に案内する。う…嘘、吐いてない!ちゃんと案内するっ…!」
佳奈は少年の訴える声に心地良く身体を震わせ、無言でスライサーを包むナプキンを一枚一枚剥がし出した。
べっとりと付着した血が乾きかけていて、ナプキンはぺたぺたと貼り付いている。佳奈は儀式の場にふさわしい言葉を考えた。
少年が最期に聞く事になる言葉だから、それは重要なものでなければ。千絵ならば、何と言うだろう?
黒く汚れたナプキンの最後の一枚を剥がし終えたとき、佳奈は考えあぐねて一言だけ発した。
「にゃん。」
次の瞬間には佳奈は美和に切りつけていた。先ずは2本の刀で両の腕を同時に、切断しない程度に深く抉る。
「ぎぃああああああああ!!!!!!!」
美和は絶叫するとベンチから跳ね起き、よたよたと後ずさった。白い石の床に真っ赤な血が止め処なくぼたぼたと零れ落ちる。
佳奈は美和の鳩尾の辺りめがけて強烈な蹴りを見舞った。美和は仰向けに倒れ、ホームの床を滑って5,6メートルほど先の柱に激突した。
移動の後を、血の跡がなぞる。こうして血の臭いを撒き散らせば、“あいつ”がいち早く察知するだろうと考えたのだ。
佳奈は、痛み以外の感覚を無くした腕をだらりとぶら下げて柱に縋って立ち上がろうとする美和の足首の辺りをスパンと勢い良くスライサーで撫で付けた。
腱の切れる手ごたえが刃物から伝わる。少年はむき出しの脚から血を噴き出して再び床に倒れた。
美和の泣き叫ぶ声を無視して、佳奈は間髪入れずに少年の服を引き千切った。血で染まったパーカーがずたずたになって、少年の腹が露わになる。
美和は無意識のうちに、片手で尻の穴をまさぐっていた。だがあまりの苦痛に、性的快楽への逃避もままならない。彼を突き動かすのは単なる習慣だった。
もはや尻の裂ける痛み以外、背徳や興奮も何も感じない。だが地下に閉じ込められていた僅か24時間の間に身についた癖が、彼の指を肛門に這わせていた。
佳奈は、まだ毛も生えていない、うっすらと腹筋の浮き出たその白く柔らかな肌をぺろりと舐めると、ど真ん中に刃物を突き立てた。

458 :腐肉(P.N.):2010/02/23(火) 00:58:28 ID:0XO4oX4m
少年の悲鳴にごぼごぼと液体の噴き出す音が混じり汚く濁ったかと思うと、口から黒っぽい血が溢れ出した。
佳奈はナイフをすっと下に引き、少年の腹を掻っ捌いた。音も無く傷口が開き、次の瞬間少々粘り気のある血がじわりと湧き出した。
佳奈は少年の腹に出来た血の池に手を突っ込むと、中身をぐいと引っ張り出し、それをホームに投げ捨てた。
べちゃっと汚い音を立てて着地した内臓は衝撃で飛び散り、白い床をどろっとした血に塗れた肉片で覆った。
佳奈は更に少年の臓物を、おもちゃ箱の中身を散らかす子供のように次から次へとホームに撒き散らした。
美和の指が血と汚物の感触を捉えたかと思うと、肛門に繋がる部分が丸ごとぶちっと音を立てて千切られ、体外へ引きずり出されて打ち捨てられた。
やがて果てしない苦痛の末、周防美和の心臓は、佳奈の小さく凶暴な手でわしづかみにされ停止した。
佳奈は美和が死んだことを気にも留めず、小さな赤い塊を肉体から引き抜くと、ぽいと投げ捨てた。
その頃には、2人の周囲の床は一面真っ赤に染まり、天上にまで肉片の一部がこびり付きぽたぽたと血の雫を滴らせていた。
佳奈は手を止めると、息を荒げ天を仰いだ。調度真上から血が滴ってくる。
佳奈は口を開けて、冷たくなった血液が舌の上に落ち喉へと流れる感触を味わった。
その時初めて、佳奈は彼女の後ろに何かが居るのに気付いた。背筋に悪寒が走る。
佳奈は徐に舌を口の中に引っ込めた。行き場を無くした血の雫がぽたりと頬の上に落ちる。
彼女は恐る恐る顔を下ろし、人形の首を回すようにゆっくりと後ろを振り向いた。
ホームの終わり、線路の上に、巨人が立っていた。
構内はトンネルよりも天井が高かったが、それでも身を屈めている。身の丈10メートルは在ろうか。
極端に猫背になったその姿勢が、周防美里の“獣らしさ”をより強調していた。
巨人は血走った目をホームに横たわる空っぽの少年の残骸に、次に佳奈に向ける。
佳奈は笑みを浮かべた。
千絵が「どうして“あいつ”は地下から出てこないのだろう」と言っていたのを思い出した。これが、周防美里が地上に現れなかった理由だ。
こんな化物が、出て来られるはずが無い。更には、彼女に勝てるはずが無い。ましてや、“産卵させる”など。
佳奈は笑った。それは諦めの笑みだった。それから、一筋の涙がぽろりと目じりから毀れ頬を伝った。
それは愚かしい作戦を企てた自分を呪うものでも、自分の死に対する哀れみや後悔でも無かった。
もう、千絵に会えない。
佳奈が最後に考えたのは、ただ一つその事だけだった。
彼女の身体の倍はあろうかという巨人の手が、佳奈の上に振り下ろされた。
佳奈はホームに仰向けに横たわり、上から巨大な手で押さえつけられた。
背中に、ぐちゃぐちゃに潰れた周防美和の肉を感じた。
それがクッションになっているが、巨人に圧し掛かられて彼女の肋骨はめきめきと悲鳴を上げている。
片方の腕と脚の骨は既に折れているようだ。遂にはバキッと音を立て、肋骨が砕けた。
「ぐ…ふっっ…!」
巨人の手に胸を握り潰されそうになり佳奈は咳き込んだ。途端に視界が赤く染まる。
それが自分の吐いた血のせいだと気付くのにそう時間は掛からなかった。
だがその時にはすでに、包丁の刃ほどもある牙がずらりと並んだ巨人の口が、彼女の頭上に迫っていた。


[続]

459 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 06:37:40 ID:ZC+oT8sV
佳奈が小物っぽいなw

460 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 11:35:48 ID:6zeRLwhC
予想はしてたが… 佳奈タソ(´;д;´)
てかここにきて最近人減ってきてる気がするのは俺だけか?

461 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 14:13:40 ID:oznuhPq/
ひたすらROMってる人間だっていっぱいいるよー
オレも前スレからいるが初カキコだもん

462 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 16:33:26 ID:c2l0xDYh
もう少し佳奈が理性的に考えられたら・・・
惜しいキャラを失った

>>460
ずっと見てるが、明らかに増えてる
腐肉さんの投稿ペースが速いから反応遅いだけで最初と比べて何倍も居るっぽい

463 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 17:39:24 ID:68nbn6lv
自分も途中参加の人間。
正直エロパロ板にあり得ないような投稿ペースだから他の板に比べて少なく見えるんだろう

あと、ここ最近はクライマックスの緊迫感のせいで何となく書き込みにくかったり
息が詰まるような感覚というか
wktkしすぎというか

464 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 19:41:34 ID:KpemxuI2
いや、まだ佳奈は死亡していない!
まだ……

465 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 20:01:53 ID:IUZACzeA
単純に最近まで携帯規制に引っ掛かってたのでROMってた。いつも楽しみにしてます。

466 :名無しさん@ピンキー:2010/02/23(火) 21:54:03 ID:qDYLggSI
最近見つけてまだ過去ログ分読んでないんだが、そうか、もうクライマックスなのか……。

467 :名無しさん@ピンキー:2010/02/24(水) 01:56:49 ID:PTvQeGNF
佳奈たん…

468 :INHUMAN:2010/02/24(水) 15:21:03 ID:x8th8BjV
ちょっと、あんたたち!!
こんなスレッドを立てて非人間的だと思わないの!?
削除依頼を出して消してもらうかどうか、
分からないけど一応の覚悟はしてなさいよね!!

さあ、潰れるざます!
逝くでがんす!
フンガ〜!!
まともに潰れなさいよ〜!!


469 :腐肉(P.N.):2010/02/25(木) 00:36:49 ID:5/0Ph4cJ
佳奈の脳裏を過ぎるのは、千絵の事ばかりだった。佳奈がいなくなってしまったら、彼女はどうするだろう?
悲しんでくれるだろうか?悲しむことは、まだ出来るだろうか?
あの不器用な怪物は、一人で生きていくことなど出来るのだろうか…。
嫌だ。千絵を一人にしたくない。だが彼女の命はもう尽きる。千絵を守るどころか、また足手まといになってしまった。
佳奈は自分の死が、今後一生親友を苦しめることになるだろうと分かっていた。それでも千絵は怒ったり、腹を立てたりせず、きっと優しく微笑んで…。
巨人の牙が彼女の柔らかい肉に深々と突き刺さる瞬間、佳奈は呟こうとした。
「ごめんね、千絵…」
だがその声は音になる前に、込み上げてきた血反吐に呑まれ、トンネルの饐えた空気を震わせることなく、彼女の胸の中だけに閉じ込められた。永遠に。
涙の乾いた頬に鮮血が飛び散り、佳奈は死んだ。

----------------------------------------------------------------------------------

千絵は少し離れたところで、怪物の気配を感知した。佳奈の力が予想以上に発達しており、追い付けずに途方に暮れていた所だった。
正直、千絵は佳奈に自分を撒く事が可能であるなどと思っても見なかったのだ。と同時に、一抹の不安も感じていた。
佳奈がそれほどまでに急ぐ理由は何だろう?周防美和が逃げたか。いや、それならばこれほど掛からずに捕らえられるだろう。
別の追っ手だろうか。だがもはや例え銃を持っていようと、人間は佳奈の適にはならない。となると、考えられる可能性は一つ、“あいつ”と遭遇した事だった。
それまで千絵は佳奈の気配を辿っていたのだが、少し前に不意にその気配が薄らいだ。
替わって強烈に彼女の全感覚を刺激したのは、忘れもしない、あの6月の終わり、あの忌まわしいホテルで出遭った、あの少女の存在だった。
“あいつ”が近くに居る。そう思っただけで千絵は、佳奈の身に起こり得る最悪の可能性についての考えを閉ざしてしまった。
千絵はトンネル内を疾走した。自分の足音が反響するコォンという耳を劈くような音も、耳を掠める風の音も聞こえない。
その時の千絵には“あいつ”の肉に深々と爪を立て八つ裂きにするイメージしか沸かなかった。駆け抜ける彼女の姿は、もしそこに人が居たとしても
目にも留まらなかったであろうが、彼女が足を着いたレールは拉げ、コンクリートの基盤にはクレーターのような同心円状の皹が入った。
ふと前方に明かりが見えてきた。駅のホームらしい。千絵は減速した。ふわっと埃が舞い上がり、視界が霞む。
その時、心臓に小さな針でも刺されたかのような衝撃が彼女を襲った。そのまま心臓が止まってしまったのかと思うほど、胸が締め付けられるように苦しい。
目の前に、ホーム全体を覆い尽くす程の巨人が蹲っていた。
控えめ(と言っても、巨人サイズだが)な乳房と性器から少女である事が分かるが、“それ”は人間離れした獣のように4つ足で立ち、地面にある何かを貪り食っていた。
千絵はぽかんと口を開けて、その後姿を呆然と眺めていた。無論、ホームに散らばった血や肉片が目に入らなかった訳ではない。
だが彼女には思考することが出来なかった。“母”との対面はどんな気分がするのだろうと、この2ヶ月あれこれ考えてきたが、そんな事は全て記憶から吹き飛んだ。
ホームの一角の、ひび割れて瓦礫を敷き詰めたようになっている部分に、見覚えのある金属片を認めた時も、彼女は何一つ考えることが出来なかった。
それが、彼女の親友がいつも大切に持ち歩いていた愛用の凶器の断片である事は、見つけた時から分かっていた。
だがその折れたスライサーの意味するところの事実を、彼女は拒否しようとしていた。
巨人がぼうぼうに伸びた髪を振り乱して頭を上げた。何かを呑み込んだようで、喉がごくんと鳴る。
ふと周防美里は、トンネルの入り口から小さな人が自分を見つめているのに気付き振り向いた。
美里はあくびをする犬のように口を開くと、「げふっ」と小さくゲップをした。
口の周りが血で汚れている。千絵には、感じることが出来た。巨人の胃の奥から込上げてくる親友の香りを。
“あいつ”の口から漂う、彼女が愛した、あの血の臭いを。

470 :腐肉(P.N.):2010/02/25(木) 00:37:50 ID:5/0Ph4cJ
佳奈の脳裏を過ぎるのは、千絵の事ばかりだった。佳奈がいなくなってしまったら、彼女はどうするだろう?
悲しんでくれるだろうか?悲しむことは、まだ出来るだろうか?
あの不器用な怪物は、一人で生きていくことなど出来るのだろうか…。
嫌だ。千絵を一人にしたくない。だが彼女の命はもう尽きる。千絵を守るどころか、また足手まといになってしまった。
佳奈は自分の死が、今後一生親友を苦しめることになるだろうと分かっていた。それでも千絵は怒ったり、腹を立てたりせず、きっと優しく微笑んで…。
巨人の牙が彼女の柔らかい肉に深々と突き刺さる瞬間、佳奈は呟こうとした。
「ごめんね、千絵…」
だがその声は音になる前に、込み上げてきた血反吐に呑まれ、トンネルの饐えた空気を震わせることなく、彼女の胸の中だけに閉じ込められた。永遠に。
涙の乾いた頬に鮮血が飛び散り、佳奈は死んだ。

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千絵は少し離れたところで、怪物の気配を感知した。佳奈の力が予想以上に発達しており、追い付けずに途方に暮れていた所だった。
正直、千絵は佳奈に自分を撒く事が可能であるなどと思っても見なかったのだ。と同時に、一抹の不安も感じていた。
佳奈がそれほどまでに急ぐ理由は何だろう?周防美和が逃げたか。いや、それならばこれほど掛からずに捕らえられるだろう。
別の追っ手だろうか。だがもはや例え銃を持っていようと、人間は佳奈の適にはならない。となると、考えられる可能性は一つ、“あいつ”と遭遇した事だった。
それまで千絵は佳奈の気配を辿っていたのだが、少し前に不意にその気配が薄らいだ。
替わって強烈に彼女の全感覚を刺激したのは、忘れもしない、あの6月の終わり、あの忌まわしいホテルで出遭った、あの少女の存在だった。
“あいつ”が近くに居る。そう思っただけで千絵は、佳奈の身に起こり得る最悪の可能性についての考えを閉ざしてしまった。
千絵はトンネル内を疾走した。自分の足音が反響するコォンという耳を劈くような音も、耳を掠める風の音も聞こえない。
その時の千絵には“あいつ”の肉に深々と爪を立て八つ裂きにするイメージしか沸かなかった。駆け抜ける彼女の姿は、もしそこに人が居たとしても
目にも留まらなかったであろうが、彼女が足を着いたレールは拉げ、コンクリートの基盤にはクレーターのような同心円状の皹が入った。
ふと前方に明かりが見えてきた。駅のホームらしい。千絵は減速した。ふわっと埃が舞い上がり、視界が霞む。
その時、心臓に小さな針でも刺されたかのような衝撃が彼女を襲った。そのまま心臓が止まってしまったのかと思うほど、胸が締め付けられるように苦しい。
目の前に、ホーム全体を覆い尽くす程の巨人が蹲っていた。
控えめ(と言っても、巨人サイズだが)な乳房と性器から少女である事が分かるが、“それ”は人間離れした獣のように4つ足で立ち、地面にある何かを貪り食っていた。
千絵はぽかんと口を開けて、その後姿を呆然と眺めていた。無論、ホームに散らばった血や肉片が目に入らなかった訳ではない。
だが彼女には思考することが出来なかった。“母”との対面はどんな気分がするのだろうと、この2ヶ月あれこれ考えてきたが、そんな事は全て記憶から吹き飛んだ。
ホームの一角の、ひび割れて瓦礫を敷き詰めたようになっている部分に、見覚えのある金属片を認めた時も、彼女は何一つ考えることが出来なかった。
それが、彼女の親友がいつも大切に持ち歩いていた愛用の凶器の断片である事は、見つけた時から分かっていた。
だがその折れたスライサーの意味するところの事実を、彼女は拒否しようとしていた。
巨人がぼうぼうに伸びた髪を振り乱して頭を上げた。何かを呑み込んだようで、喉がごくんと鳴る。
ふと周防美里は、トンネルの入り口から小さな人が自分を見つめているのに気付き振り向いた。
美里はあくびをする犬のように口を開くと、「げふっ」と小さくゲップをした。
口の周りが血で汚れている。千絵には、感じることが出来た。巨人の胃の奥から込上げてくる親友の香りを。
“あいつ”の口から漂う、彼女が愛した、あの血の臭いを。

471 :腐肉(P.N.):2010/02/25(木) 00:41:06 ID:5/0Ph4cJ
すみません間違えて前編を2度投稿してしまいました。2つめは無視してください。
↓以下後編

472 :腐肉(P.N.):2010/02/25(木) 00:41:31 ID:5/0Ph4cJ
「うわぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
千絵は力の限り叫んだ。腹筋が悲鳴を上げ、喉が張り裂けそうになる。ホームの壁や天井にに反響した自分の声で鼓膜が破れそうになる。
だがそんなものはどうでも良い。彼女の怒りが、彼女が怪物になってからの歳月で感じた全ての悲しみを起爆剤として爆発した。
千絵は地面を蹴って跳び上がった。巨人の目が彼女を追い、巨大な手が持ち上がる。
だが千絵は美里の攻撃を避けようとせず、迫り来る巨大な手にしがみ付くと、力いっぱいその指を圧し折った。巨人が悲鳴を上げる。
すぐに千絵は巨人の手を蹴り上げる。その衝撃で、美里の手の甲が砕けた。千絵は彼女の顔面にしがみ付くと、第二の口を目一杯開け、巨大な唇に齧り付いた。
無理矢理に口を閉じさせられ、美里は唸り声を上げる。顔面に千絵を張り付けたままぶんぶんと首を振るが、千絵は離そうとしない。
そしてバツンと音を立て、千絵は巨人の顔の皮膚の一部を噛み千切った。
「あああああああああ!!!!!!!!」
美里は悲鳴を上げ、巨大な手で血の噴き出す顔面を押さえた。その間に千絵はホームの端に着地すると、戦利品をごくんと呑み込んだ。
ほんのりと、佳奈の血の味がした。
美里が手を離すと、唇から頬にかけての肉を失い、骸骨のように並んだ歯がむき出しになった顔が露わになる。
巨人は地響きを上げ後ずさった。脅えている。周防美里はこの小さな捕食者に、彼女が放つ禍々しい殺気を前に震え上がった。
彼女はそれが、彼女自身の産み落とした“娘”であると気付いていた。
今となっては身体が人間の数十倍の大きさだが実年齢は14歳なので、“母親”としての自覚などは無かったし、どうして彼女がここに居るのかも分からなかった。
だが一つだけ分かった事は、今彼女の目の前にいる小さな少女は、彼女よりもはるかに強いいきものだという事だ。
そしてその剥き出しの敵意はただ彼女だけに向けられている。
大きさでは解決できない力の差は歴然だった。戦意を喪失した美里は、逃げ道を求めて周りを見回した。トンネルは逃げ込む前にやられてしまう。
それに逃げ込むのに成功しても、移動するにも窮屈な彼女は、あの圧倒的なスピードに敵う筈が無い。
美里は意を決した。外に出るしかない。
巨人は狭い構内で勢い良く立ち上がると、背中を思い切り天井に打ち付けた。天上に皹が入り、コンクリートの破片や石綿が雨のようにホームに降り注いだ。
千絵が瓦礫の山を避けて跳び回っている間に、巨人は石の天井に再度激突した。がらがらと音を立てて屋根が崩れる。
千絵は瓦礫に押し潰されないよう一旦獲物から飛び退いた。
穴の空いた天井の向こうから、ホームよりも明るい改札階の照明が射し込む。ばたばたと人の足音と、何かを叫ぶ声が聞こえる。
夜勤の駅員が何人か残っていたのだろうか。
美里は天井の穴に手を掛けると、危なっかしくぶら下がった鉄骨とコンクリートを引き崩した。穴が自らの巨体が通れる幅まで広がると、素早く穴の中に姿を消した。
地震のような轟音と地響きに、慌てて宿直室から駆け出して来た駅員らは、信じられない光景を目の当たりにした。
改札の向こうの床がパンケーキのように膨らんだかと思うと、次の瞬間黄ばんだタイルが、まるで反発する磁石のように跳ね上がり、次の瞬間床が崩れ落ち、
地下から巨大な人間が姿を現したのだ。
駅員たちは彼らの仕事場を守るために命を掛けられるほど、彼らの仕事を愛しては居なかった。そこで彼らは悲鳴を上げると一目散に逃げ出した。
すぐに後から、身を屈めつつも低い天井に頭や背中を擦りつけながらタンクローリーほどもある巨大な少女が這い出てくる。悪夢のような光景だった。
3つある出口のうち、哀れにも3番出口を選択した1名は、地上へ続く階段を駆け上る途中、追いついてきた巨人の小型自動車ほどもある足に踏み潰されて即死した。
周防美里は、地下鉄の出口を覆う屋根を吹き飛ばすようにして地上に出た。2ヶ月ぶりの地上の空気はひんやりと冷たかった。
脱出の際、コンクリートの天井を突き破った背中はざっくりと何箇所も切れており、夜風が染みて刺す様に痛かった。
彼女は苦痛に悲鳴を上げた。端から見ると、それは雄叫びのようにしか聞こえなかった。


[続]

473 :名無しさん@ピンキー:2010/02/25(木) 00:57:06 ID:HKNqjdRC
佳奈ちゃん…(´;ω;`)

474 :名無しさん@ピンキー:2010/02/25(木) 18:34:02 ID:PThLC2+x
まあ因果応報なんだけどね

475 :腐肉(P.N.):2010/02/26(金) 00:35:29 ID:ElJ+3x95
最終電車が過ぎ去ってからも、JR原宿駅周辺やライブハウスの出入り口辺りに屯していた奇抜なファッションの若者たちは、突如現れた巨人を見て驚愕した。
殆どの人々の最初の反応は悲鳴だった。それから命の惜しい者から順に、できるだけ怪物から遠ざかるように逃げ出した。
携帯電話を取り出して写真を撮影しようとする者も中には居たが、巨人の咆哮を耳にするや結局は一目散に避難する人々の列に加わった。
途中、地下鉄の出口から逃げ出してきた生き残りの駅員たちも彼らに合流した。
神宮前交差点で、彼らは猛スピードで駆けてきた黒い警視庁のバンに危うく撥ねられそうになった。
死に物狂いの形相で掛けて行く人々に気を取られ、バンは交差点の真ん中で急停車した。
「何事です?」
後部座席から村雨が尋ねた。逃げ惑う人々はもはや理性を失った暴徒のようで、バンが目に入らないのか体当たりするようにもろにぶつかったり、
迂回すればよいものをわざわざ乗り越えて逃げてゆく者もあった。その時、原宿駅の方から獣の雄叫びのような音が聞こえ、地面が大きく揺れた。
「地震か!?」
捜査官の1人が叫ぶ。だが次の瞬間、紅葉した並木群の向こうに、表参道の木々ほどもある巨大な人影が現れた。
全裸で、見たところ若い女性のような身体つきだが、身体を労わる老人のように腰を曲げてズシンズシンと地鳴りを上げて歩いている。
「何なんだあれはっ!!!?」
ハンドルを握る岡崎がパニックに陥り叫んだ。
「“オブジェクトC”…周防美里です。」
村雨は考えうる唯一の可能性を解答として述べた。
「“地下鉄の怪物”…。」
捜査官の1人が恐怖に声を引きつらせて呟いた。
「あ、あれがここに居るという事は、蓮杖千絵と小山内佳奈は…!?」

------------------------------------------------------------------------------

巨人の脱出した後の地下鉄のホームには、引き千切られた電線から放電するバチバチという音と、それに順ずるように痙攣する蛍光灯のビーッという音だけが響いていた。
不幸にも逃げ遅れ、幸運にも巨人や崩落のの餌食にならなかった一人の駅員が、恐る恐る天井の穴からホームを覗き込んだ。
ひび割れた天井にしぶとく残っていた破片の一部がとうとう力尽きてホームに落下する。
もうあの化物のようなやつが居ないのが分かると、一先ず安心してほっと息を撫で下ろした。
その時、下から人の声が聞こえた気がした。幼い少女の、呻くような声。
「誰か…居るのか?」
駅員は恐る恐る声をかけた。すると、線路に落ちた瓦礫の山がむくりと動いた。
「ひっ…!」
駅員は短く悲鳴を上げ、ひび割れて凸凹した床に仰け反った。まだ別の巨人が出てくるのではないかと恐れた。
だがそれきり音は止んだので、もう一度穴からホームを覗いて見ると、先ほどの瓦礫の下から真っ白な小さな腕が見えた。
「大変だ…」
彼は呟くと、ホームへ続く階段へ向かって駆け出した。ホームは酷い有様だった。一面が暦や埃で覆われ、まるで紛争地帯だ。
駅員は瓦礫の山に駆け寄ると、小さな腕を引っ張った。瓦礫に埋もれているらしく、動かない。彼は我を忘れて瓦礫の一つに手を掛けると、力いっぱい動かそうとした。
ざらざらのコンクリートに曝され、手の平から流血する。その血が巨大な瓦礫を伝い、ぽたぽたと少女の腕に垂れた。
と次の瞬間、自動販売機ほどもある巨大なコンクリートの塊が下から押し上げられるようにして持ち上がった。

476 :腐肉(P.N.):2010/02/26(金) 00:37:49 ID:ElJ+3x95
駅員は驚いて瓦礫から手を離すと1,2歩後ずさった。瓦礫に躓いて転びそうになる。
そこへ、今まで彼が居たその場所に、数百キロはあろう巨大な石塊がズーンと音を立てて倒れた。
その下から現れたのは、全裸に近い格好の少女だった。黒っぽい血と土埃に塗れて汚れているが、かなりの美少女だ。
長く美しかったであろう髪はほつれ、所々に何かの破片が絡み付いている。
「き、君、怪我を…」
駅員はすぐに我に変えると、血塗れの少女に声をかけた。
少女はその時初めて彼に気付いたように、驚いて彼に視線を向けると、自分の身体を見下ろして言った。
「ああ…大丈夫、これ私の血じゃない。」
少女は瓦礫の山から降りようと一歩踏み出して顔をしかめた。
「…痛い。」
「当たり前じゃないか、こんな瓦礫の下に居たんだ。」
駅員は少女に駆け寄ると、露出した身体を抱いてよいものか一瞬躊躇い、中庸策として肩に手を掛けた。
少女は呆然とホームを見渡した。今や瓦礫に埋もれて、元の床も、その上に散らばった周防美和の残骸も、佳奈の名残も見る影も無い。
そこはかとない悲しみが込上げてきた。その感情は胸を裂くような痛みとなって彼女の全感覚を苛んだ。
「…痛いよ…。」
千絵は呟いた。泣きたかった。声を上げて、赤ん坊のように泣き叫びたかった。
今隣に居る優顔の男が誰なのかは知らないが、彼の肉を引き裂いて泣きたい気分だった。
だが涙は出ない。それは今の彼女にとって、最も残酷な事に思えた。
「ともかく、ここから出よう。またあの化物が現れでもしたら…」
“ばけもの”。
その言葉に千絵は反応した。思い出した。なぜこんな事になったのかを。“何が”彼女から佳奈を奪ったのかを。
思い出した。“あいつ”の中に、佳奈が居るんだ。
千絵は無意識のうちに第二の口を開いていた。驚愕と困惑、恐怖の表情が目の前にあった。
駅員は、彼の助けようとした少女が怪物に変貌するのを見て言葉を失った。
次の瞬間、千絵は彼の身体をばくんと呑み込み、跳び上がった。天井に開いた穴を跳び抜け改札階に出ると、口を閉じる。
まだ呑み込み切れて居なかった憐れな駅員の手足の一部が千切られてぼとぼとと床に落ちたが、今はそれを惜しむ間は無い。
千絵は駆け出した。ピコーンと間抜けな音を立てて切符を提示しない乗客を阻もうとする改札機を蹴り飛ばして破壊すると、
巨人の重みに耐えかね半壊して凸凹のスロープのようになった階段を地上へと駆け上がった。


村雨はバンを出ると、逃げる群集にもみくちゃにされながら巨人へ近づいた。
「村雨さん、危ないです!」
背後で岡崎が叫ぶ声が聞こえたが、村雨の視線は周防美里に釘付けだった。
長い間の地下での暮らしがたたり、どうやら夜のネオンの光でも彼女にとっては眩しいらしい。
巨人は目を瞬かせながら、途方に暮れたように辺りを見渡し地団駄踏んだ。
「代々木公園上空にヘリを飛ばしてください。民間機の飛行は一切禁じます。それから…」
村雨は襟元に仕込んだ無線機に向かって言った。
「…これは市ヶ谷の出番かも知れません。」
その時、破壊された地下鉄の出口から何かが飛び出してきた。人のようだが、あまりのスピードにその正体を目視できない。
その“何か”は叫び声を上げると、ふわりと宙に舞い上がった。その刹那、村雨には夜風に靡く黒く長い毛髪が見えた。
「あれは何です!?」
耳元のイヤーフォンから雑音交じりの岡崎の声が尋ねた。
「人間…ですか?」
「いいえ、恐らく…」
村雨は指で眼鏡を押し上げると、もう一度目を細めて見ようとした。
夜空に高く舞い上がった“それ”は、目にも留まらぬ速さで巨人に蹴りを食らわせ、大地を揺らして車道に倒れ込む巨人の上に着地した。
「…あれは“オブジェクトD”です。」
村雨は無線機に向かって呟いた。
「…自衛隊の出動要請はもうしばらく待ちましょう。」


[続]

477 :名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 01:38:31 ID:o0RfpeQS
>>476
>彼の肉を引き裂いて泣きたい気分だった。
が悲しいな
変質するってこういう事だよね

478 :名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 04:31:17 ID:9UEOiD88
相変わらずGJ
正直、変異してからの佳奈は調子こき過ぎてて見ていて良い気分はしてなかった

479 :名無しさん@ピンキー:2010/02/26(金) 12:17:21 ID:NKKCkjI+
女王蟻と兵隊蟻の対決か。

480 :腐肉(P.N.):2010/02/28(日) 01:16:44 ID:KWjx4aiy
「うぉおおおおおおおっりゃぁぁああああああ!!!!!!!」
千絵は腹の底で煮えたぎる怒りを全て叫びと力に換え、ありったけの力を込めて仰向けに倒れた巨人の腹を殴りつけた。
巨人は口から夥しい量の血反吐を吹き上げて身を捩った。弾みで千絵はその巨体から落ちそうになる。
その隙に息を吹き返した巨人は、腹の上のバランスを崩した小人を払い除けると起き上がり、木々の見える方へと駆け出した。
途中国鉄の線路の上に掛かった歩道橋を踏み崩し、腰の位置ほどを走るケーブルに引っかかったが、力ずくでそれを振り切り、代々木公園へと逃げ込んだ。
すかさず千絵は地面を蹴って空高く跳び上がると、一跳びで原宿駅を飛び越え森の中へ飛び込んだ。
傷ついた巨人は、腰を屈めて木々の間をよたよたと歩いた。歩くたびにズシンと地面が揺れ、身動きすればすぐに居場所がばれてしまう。
だが肩や背中の傷からは今もだらだらと血が流れていたし、千絵に殴られた腹は脈打つようにじんじんと痛んだ。彼女はぼろぼろだった。とても戦うことなど出来ない。
冗談じゃない、あんなパンチをもう一発食らえば、死んでしまう。美里は呻き声を上げて、一時的にでも身を隠せる場所を探して辺りを見回した。
その時、腰の辺りに激痛が走った。あの小さな怪物がとうとう追い付き、跳び蹴りを食らわせたのだ。美里は衝撃で身体を制御できずに、前につんのめった。
秋の訪れと共に茶色く変色し脆くなった葉を散らして、木々をなぎ倒しながら森の中に倒れ込んだ。ぎざぎざに裂けた木々の太い枝や幹の残骸が深々と肉に突き刺さる。
「ぎやあああああああ!!!!!!!」
美里は悲鳴を上げた。だが千絵は容赦無くその身体を蹴りつけ、その巨大な顔の前に立つとぐいと散り散りになった髪の毛を引っ掴み、力の限り投げ飛ばした。
タンクローリーほどの重量はあろうかという美里の身体はふわりと宙に浮いた。視界がぐるぐると回転したかと思うと、彼女の巨体は重力に負けて落下し始めた。
怪力に投げ飛ばされた巨人は森を飛び出し車道に着地した。いや、落ちた、と言った方が正確だろう。
身体のバランスを取れないまま勢いに負けてごろごろとアスファルトの上を転がると、フェンスを突き破り国立競技場の第一体育館の建物に激突して止まった。
金網の一部が千切れて背中の肉に食い込んでいた。駐車場を転がった際に押し潰したと思しき自動車のドアパーツが腿の辺りに深々と突き刺さっている。
もう嫌だ…。
美里の目に涙が浮かんだ。痛み。それは彼女が地上を捨てて以来、忘れていたものだった。
その時、ズンッと音を立てて、第一体育館の特徴的な変形屋根の上に千絵が降り立った。
千絵の足元でコンクリートの尖塔に皹が入り、巨人の上にぱらぱらと破片を降らせた。
血と泥に塗れた白い肌の下で身体中の筋肉が隆起し、髪を振り乱したその姿は鬼神のようだった。荒ぶる鬼は、巨人と同じく涙を流しているように見えた。
美里は、星一つ無い薄汚れた都会の夜空を背にしたその恐ろしくも美しい姿に一瞬見惚れた。だが千絵が屋根を蹴って再び美里の元へ跳びかかろうとした瞬間、
痛みと恐怖を思い出し、巨人は咄嗟に身を屈め、半円盤状に突き出た屋根の下、出入り口となるガラス戸を突き破ると館内に逃げ込んだ。
千絵は自分の身体を止められず、ほぼ垂直にアスファルトの上に落下した。彼女のかかとが地面を砕き、猛烈な土煙と破片を巻き上げて駐車場に巨大なクレーターを穿った。
その様子は公園の外からでも確認出来た。外から見た人には、爆発のように見えたかもしれない。
千絵の蹴りの衝撃で、地震のような振動が東京都心全域に伝わり、その余波で周辺に立つ老齢の並木の何本かがメキメキと音を立てて倒れ、体育館の屋根の一部が崩落した。
「く…っ…」
千絵は思わず声を漏らした。踵から腿の辺りまでしびれるような衝撃が走り、続いて激しい痛みが骨を駆けた。どうやら腓骨と脛骨が粉砕されたらしい。
肉離れも起こしているようだ。立ち上がろうとして、千絵はよろめいた。激痛が走る。その時、体育館の中から壁を突き破るような音が聞こえてきた。
千絵は全部で1千本近くある歯の全てを食い縛って直立した。
砕けた骨は使い物にならなかったが、残った筋肉の力だけで脚を動かし、巨人が入り口に空けた大穴に向かって前進した。
必ず“あいつ”を殺してやる。その想いだけで、千絵は駆け出した。

481 :腐肉(P.N.):2010/02/28(日) 01:19:28 ID:KWjx4aiy
巨大な鉄のテントのような形をした体育館の中は意外と狭く、巨人の通った形跡は至る所に残っていた。床に落ちた血痕、壁を擦った血の跡、所々欠けた天井。
体育館独特の冷たい臭気が、2人が故郷を発った日の、あの虐殺の体育館を思い出させた。あの時の気持ちが甦る。世界の全てを壊してしまいたくなる、凶悪な衝動。
千絵は煮えたぎる残虐な獣の心と全身の痛みに苛まれ、虚ろな目でひたひたと傷だらけの裸足の足でスタジアムへ続く階段を上がった。その先に“あいつ”の臭いがした。

-------------------------------------------------------------------------------------

周防美里はアリーナの真ん中に身体を横たえた。照明は落ちていて、スタジアムは真っ暗でひっそりと静まり返っている。
美里は背中に手を延ばし、深々と肉を抉っている金網の破片を引き抜いた。血がぼたぼたと垂れ、新たな傷口に冷たい外気が当たった。
美里はすすり泣いた。彼女には理解出来なかった。なぜ自分がこんな目に合わねばならないのだ。
彼女は、弟を殺したあの小さな少女を喰っただけだ。あの子は、あの化物にとってそれほど大切な存在だったのだろうか。
だが彼女は、自分と弟の絆ほど強い関係がこの世に存在するなど、想像も出来なかった。
一方で、彼女やあの小さな怪物のようなけだものにとって、“誰か、自分以外の者を愛する”、“大切にする”などという人間的な感情が許されるとも思って居なかった。
その矛盾が彼女を殺した。人間としても、怪物としても。もはや彼女には生きる目的も、気力も無い。
美里は一時的に苦痛から逃れるため、腿に刺さった金属片を抜き取ると、ぐったりと冷たい木の床に沈み込むように身体を広げた。
“あの子”が、とどめを刺しに来てくれるのを待って。
千絵が階段の先の扉を開けると、そこは観客席の真ん中だった。ずらりと並んだ暗い無表情な座席たちの向こう、開けたアリーナの中央に巨大なものが横たわっていた。
血を流し、荒く掠れるような息をして、彼女を見つめていた。千絵は傷んだ身体に鞭打って、一跳びに観客席を飛び越えるとアリーナに降り立った。
千絵は巨人に歩み寄った。巨人は、彼女を怪物へと変えたあの夜と何ら変わりのない、無邪気で罪の無い少女の顔をしていて、その頬を大粒の涙が伝っていた。
「ふざけんなよ…」
千絵は呟いた。
「何でお前が泣いてるんだ!!!!」
千絵の哀しげな叫び声が、テントの中のようなスタジアムに木霊した。この中に居ると、まるで中世のフリークショウの見世物になったような感じがする。
見世物になった怪物は一人ぼっちで、檻の中に立っている。今だけは、どこまでも自分勝手にわがままに振舞っても良い。そんな気がした。
千絵は気分が悪かった。彼女は、彼女の心から彩を奪って渦巻く靄の様な不快な感情を拳に込めて、力の限り巨人に向かって突き出した。
あまりに強く握っていたので、拳の先で肉が捩れる感触も、骨を砕く手応えも千絵は感じなかった。
だが、巨人の身体は大きく仰け反って車に轢かれた動物のようにぐしゃりと音を立てて動かなくなり、美里は無言で千絵の一撃の壮絶さを物語った。
巨人、周防美里は死んだ。仰向けに倒れた巨体は、ぐったりと首を横へ向け、口を開いている。
下顎が半分に割れ、牙のずらりと並んだ顎が蜘蛛の口のように縦に開き、だらりと空を掴んだまま硬直していた。
千絵は足を引き摺りながら美里の巨大な亡骸の上によじ登って、獣の死に顔を一瞥すると、丸座椅子ほどある巨大な乳房の間に立った。
それから屈み込むと、傷だらけの巨人の腹に深々と爪を突き立て、硬くなった肉を一瞬で切り裂いた。
綺麗な一直線の切り口から真っ黒な血があふれ出し、アリーナの清潔で無機質な木床に広がった。
千絵が切り口に手を掛けて押し広げると、くぷんと音を立てて大蛇のような腸がはみ出した。それを脇へ遣り、千絵は巨人の腹から巨大な胃袋を引きずり出そうとした。
それは大きな血に染まったゴミ袋のようで、千絵が持ち上げようとすると破れて内容物が土砂のように巨人の腹の上にぶちまけられた。


[続]

482 :名無しさん@ピンキー:2010/02/28(日) 01:24:04 ID:rJ2UAQfL
千絵が負けるところは想像つかなかったが、
まさか母親をも圧倒するぐらい強くなってたとは・・・

483 :腐肉(P.N.):2010/03/01(月) 01:36:40 ID:7c2Azwhm
恐らく機動隊の身に着けていた防弾チョッキの一部であろう黒っぽい硬い繊維がたくさん出てきた。
だがその他には、形の分かるものは僅かに残った溶けかけの骨しか無かった。
千絵はどろどろのペーストのようになった肉を掻き回した。佳奈の臭いがした。ふと、千絵は他のものより比較的小さな頭蓋骨の欠片を見つけた。
眼球や脳はとうの昔に溶け出しており、骨も顔面の半分が解けて穴の開いたのっぺらぼうのようにつるつるしていた。
だが千絵には、それが佳奈であるとすぐに分かった。千絵はその愛しい骨を胸に押し当てると、ぎゅっと抱きしめた。
佳奈の骨が未発達な薄い乳房に食い込み、痛い。
千絵は泣いた。涙を流して泣いた。佳奈のあの優しい顔を二度と見れないのが悲しくて泣いた。
あの柔らかく温かな肌に触れることがもう叶わないのが辛くて泣いた。
彼女のために、最も運命を狂わされた少女。ただ千絵と友達だったというだけで、人間としての人生を奪われ、自らの力に押し潰された哀れな少女。
例えどんなに愚かでも、千絵はその少女が大好きだった。
だが止め処無いと思われた涙はすぐに枯れ、千絵は咽び声を上げるしか出来なくなった。
そして猛烈な食欲が、彼女の肉体の大部分を占める広大な胃の奥から込上げてきた。
千絵は佳奈の頭蓋を口に含むと、一思いに噛み砕いた。骨は小さな欠片となって、喉の奥へと消えていった。次に彼女は巨人の胃の中から出てきた肉を呑み込んだ。
水を飲む動物のように腹這いになって、液化した肉を吸い込んだ。そう時間は掛からなかった。
その間に、佳奈と過ごした時間の記憶がぼんやりと脳裏に浮かんではすぐに消えた。
千絵は引きずり出した胃袋と腸も食べた。引き裂いて、喰い千切って、思い切り豪快に食べ散らかした。それでもまだ彼女の食欲は留まる処を知らない。
千絵は美里の亡骸に齧り付くと、その巨体から肉をむしり取って食べた。
人間とは違う味がした。今まで食べたどの生き物よりも濃厚で、一種の酩酊を引き起こした。
その甘い肉は彼女を酔わせた。千絵は恍惚の表情を浮かべ、無我夢中で巨人の肉を貪り食った。
あまりに勢い込んで呑み込んだので、しばしば吐き気が込上げてきた。胃袋が満腹を訴えてゲップを連発したが、それでも千絵は食べるのをやめなかった。
村雨たちが機動隊を引き連れ第一体育館に突入する頃には、千絵の腹ははち切れんばかりにぱんぱんに膨れ上がっており、その傍らに巨大な白骨が横たわっていた。
骨にはもう殆ど肉が残っておらず、頭皮と髪の毛の一部以外、顔面からは眼球や歯茎まで削げ取られていた。
機動隊は観客席をぐるりと巡ると、次々にアリーナの中央へ銃を向けた。村雨他黒服の男たちはアリーナの入り口で立ち尽くしその壮絶な光景に目を見張っていた。
千絵は口を隠そうともせず最後のゲップを盛大に放つと、ゆっくりと彼らを振り返った。
殆どの捜査官は彼女の目を見ただけで怖気づいて数歩後ずさったが、村雨だけは逆に一歩彼女へ歩み寄った。
その時、スタジアムの照明がパッと点灯し、アリーナは眩い光に包まれた。目を瞬かせる千絵に向かって、村雨が口を開いた。
「蓮杖千絵、君を拘束します。」
千絵はぼんやりとした目で村雨を見つめ、不意にふっと笑った。
「村雨さん…でしたっけ。まだ私を人間扱いするんですか。」
千絵はくっくと喉の奥で笑おうとしたが、吐き気が込上げてくるので止めて代わりに上を見上げた。無数の照明が彼女の頭上で輝いていた。
観客席からたくさんの防弾服にヘルメット姿の男たちが、彼女に向かって銃を向けていた。
「君にまだ理性が残っているなら、大人しく我々と一緒に来てください。」
村雨が無表情に言った。光を受けて眼鏡が不気味に光っている。千絵はその奥で彼女を見ているであろう瞳を真直ぐ見据えて尋ねた。
「私は、人間か?」

484 :腐肉(P.N.):2010/03/01(月) 01:43:06 ID:7c2Azwhm
村雨は眼鏡のブリッジを指で押し上げると、少し躊躇いながら言った。
「…いいえ、違います。」
「じゃあどうしてこんなに苦しいんだ!!!!」
千絵は叫んだ。機動隊の銃を持つ手に力が籠もり、スタジアムに緊張が走るのが分かった。千絵は泣き出しそうな声で呟いた。
「答えてよ… 捕まえるんでしょ?私の全てを解き明かして見せてよ…。」
だが涙はもう出なかった。彼女は今なら、周防美里が最後に見せた涙と、諦めたような穏やかな表情の意味が分かった。
もう、嫌だ…。
千絵にはもう、生きる気力も、目的も、何も無かった。これほど力が漲っているのに、身体は海の中を果てしない深淵へ沈んでいくようにだるい。
彼女の中の獣は今もはっきりと目を覚ましているのに、動物園の脅えた猿のようにひっそりと息を潜めている。生き地獄、と言ったところか。
彼女はその倦怠に身を委ね、ふらふらとよろめいたかと思うと、その場にがくりとくず折れた。遠くの方で叫び声が聞こえた。
「今だ、確保!急げ!」
ばたばたと駆け寄る足音がして、何かが彼女の手足をきつく押さえつけ、持ち上げた。巨大な拘束具のようなものを装着させられる。
痛みは無い。彼女の身体は、重く沈みこむようで、それで居てふわふわと浮遊しているようだ。彼女の身体は固定され、屋外へと運び出された。
空はまだ暗い。排気ガスや二酸化炭素で汚れて透明度を失った空気に、人工的に生み出された街の明かりが反射してぼんやりと発光して見える。
秋の夜は長く、まだ明けそうに無かった。それからややあって、耳元で誰かが囁いた。
「死なせはしない。」
彼女は意識を失った。

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その夜の内に関係各所に通達が回り事態の終息を伝えたが、騒動から一夜が明けてもまだ、代々木公園周辺は封鎖されたままだった。
マスコミには作られた物語が流され、世間には当初の報道通り地下鉄内で爆弾テロ未遂があったと発表された。
死傷者は、不幸にも崩落した地下鉄千代田線の明治神宮前駅で駅員を務めていた男性の1人のみとされ、
機動隊員や伊豆波を始めとする捜査官らの死は歴史の闇に葬られることとなった。
だが代々木体育館周辺で爆発があったとの目撃情報や、同時刻に東京全域を襲った局地的な地震との関連も囁かれた。
中には原宿の地下から“巨大な怪物”が出現するのを見たと証言する者もいたが、彼らの記憶は例の如く、三流記事の肥やしとなって終わった。
9月の丸の内線の事件と違い今回死傷者が1名だったためか、大々的な報道合戦は2,3日で下火となり、瞬く間に都市の住民からは忘れ去られた。
年が明ける頃には地下鉄利用者の人数も元通りに戻るだろう。だが一つだけ、“地下鉄の怪物”の噂だけは、都市伝説となって後世に残ることとなる。
東京で地下鉄に乗る際、好奇心旺盛で想像力豊かな人々は、自分なりに“怪物”の姿を想像し、ほんの一瞬だけ興奮と一抹の恐怖を胸に抱き、
そうした魑魅魍魎の類の居ない平和な世界に生を受けた事を感謝し、弱肉強食の掟とは縁のない幸福な日常生活へと再び埋没して行くのだった。
だが怪物は確かに実在する。それを知る極僅かな人々にとっては、これが真の始まりである。
その中心となる、悪夢の物語からただ1人生き残った少女は、事件の2日後、環境庁の施設の片隅で目を覚ました。


[続]
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遅くなりましたが>>459-468ありがとうございます。リアルタイムに感想などいただけるのがこの掲示板の良いところで一番嬉しいです。
これで周防美里編が終わります。後はエピローグ的なエピソードをいくつか考えているので、もうしばらくお付き合いいただければ幸いです。

485 :名無しさん@ピンキー:2010/03/01(月) 07:33:28 ID:Y9Bc3xri
ついにメインストーリー終了か・・・
今までお疲れ様でした、いつも楽しみに読ませてもらいました
エピローグも楽しみにしています

486 :名無しさん@ピンキー:2010/03/01(月) 07:36:14 ID:Xj3KQ/9F
腐肉さんGJ!!

一人になった千絵が不憫だ・・・

487 :ますたー:2010/03/02(火) 23:17:29 ID:FM0yfRAB
将来、同人誌描きたくてがんばっています。
友達の小説の絵描いたりしてるんですが・・・ 
すごく絵描きたいなw

488 :名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 00:38:50 ID:57qrWF35
GJでした
ついに半年に渡り連載されてきたこのSSもメインストーリーは一段落ですか
エピローグ次第ではまだ続く可能性も捨てきれない
楽しみです


>>487
自分もいつかはコミケデビューしたいです
良かったらロダにうpよろしくです

489 :名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 01:03:16 ID:PDu6Awd/
もはやSSのレベルをこえて一大叙事詩だな

490 :名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 16:07:21 ID:6uLmxCCI
こんなマイナーフェチの場にここまでクオリティの高いSSが投下された奇跡

491 :名無しさん@ピンキー:2010/03/03(水) 20:14:03 ID:6kP1L4WW
しかしこの性癖は絵師にもSS職人にも愛されてるな
昔からポツポツ見かけてはいたがこれ程までとは

492 :ますたー:2010/03/03(水) 21:56:38 ID:0X64VFK7
千絵ってどんな髪型でしたっけ?

493 :腐肉(P.N.):2010/03/04(木) 04:16:18 ID:NZ+mCnqM
「気分はどうですか?」
村雨はマイク越しに、厚さ100cmのアクリルガラスの向こうの蓮杖千絵に尋ねた。
千絵がいる部屋は鋼鉄と衝撃吸収剤でガードされ、水族館の水槽よりも更に分厚いガラスで仕切られている。
「君の友人の…小山内さんは残念でした。」
村雨の声はキーンという耳障りな音と伴に、スピーカーを通じて千絵の部屋へ届けられた。
千絵は耳を塞ぎ、スピーカーのボリュームを下げろとジェスチャーで伝えようと、ガラス越しに指でつまみを捻る手振りをした。
村雨は背後でオーディオを制御する技師に向かって支持すると、再びガラスに向かって言った。
「君の声もこちらへ届くようになっている。私は君と、話し合いに来たのだからね。」
千絵は村雨を睨み付けると、徐に口を開いた。村雨や数名の職員のいる部屋のスピーカーから、少女の声が聞こえた。
「…私は話すことなんて無い。どうせ殺すなら、今やったら?」
千絵は自棄っぱちに吐き捨てるように言った。村雨は意外そうな顔をする。
「言ったろう、死なせはしない、と。」
千絵は内心動揺した。気を失う直前に聞いたあの声は、この男だったのか。だが彼女には理解できない。
彼らはてっきり、怪物を殺すために活動しているものと思っていたからだ。
「自殺の可能性は?」
村雨はマイクを切って傍に居る白衣の男に尋ねた。
「無い、とは言い切れません。獣には自らの命を絶つという衝動はありませんが、彼女は“半分人間”、ですから。」
村雨は頷くと、再びマイクのスイッチを入れ千絵に言った。
「君にはこれからいくつかの、あー…検査を受けて貰いたい。」
「何が目的?」
千絵は訝しげに尋ねる。村雨は怪物に向かって不敵に微笑むと、彼女に背を向け、戸口へと歩みながら言った。
「検査が終わったら教えてあげよう。君がそう望むのなら、ですが。」
村雨はマイクを切ると、それを金属のテーブルに置いて部屋を出た。白衣の職員たちが彼に続く。
やがてガラスの向こうに誰も居なくなったかと思うと、千絵の居る部屋の天井がガコンと音を立てて、スライドしながら開いた。
「拘束具、用意。」
遥か上の方で、マシンガンのような銃で武装した男が号令を出す。白衣の男たちがぞろぞろとやって来るのが見えた。
その後ろから、肉屋が肉を吊るす台と外科手術の台が合体したような器具が現れる。あれに繋がれるなんて、千絵は御免だった。
「いいよ、自分で行くから。」
千絵は溜息を吐くと、床を蹴って跳び上がった。彼女の身体はふわりと浮き上がり、10メートル以上の高さにある天井の扉から外へ出て、上の階に着地した。
白衣の男たちが悲鳴を上げて拘束器具の後ろに後ずさり、武装したガードマンが震えながら彼女に銃を向けた。
「大丈夫、取って喰いやしないって…今更。」
千絵は両手を上げて投げやりに呟いた。
「検査、受けるんでしょ?どこへ行けば良い?自分で歩くから。」
白衣の1人が、恐る恐る廊下の奥を指差した。千絵は示された方に歩き出した。白衣の男たちは彼女に道を空けるため飛び退いた。
後ろから7,8メートル距離を置いて、ガードマンが銃を構えたまま、おずおずと着いて来た。千絵は何だかその様子が可笑しかった。
ラボのような部屋に通された千絵は、銃を向けられながら、身長・体重を始めあらゆる身体データを計測され、レントゲン、CTなど通常の医療検査から、
第二の口内部の構造調査まで身体の内外ありとあらゆる箇所を調べられた。初めて第二の口を開いた時には、白衣の研究員たちは仰天して床に尻餅をついた。

494 :腐肉(P.N.):2010/03/04(木) 04:22:35 ID:NZ+mCnqM
検査が終わると、千絵は元の地下室に戻された。
脚の骨折は2日間眠っている間にほぼ直っていたが、10メートルほどの高さを跳び下りるのは嫌だったので、帰りはエレベーターを使わせて貰った。
数時間後、ガラスの向こうに村雨が現れた。
「気分はどうですか?」
スピーカーから村雨の冷徹な声が尋ねた。
「…お腹空きました。」
千絵はぼそりと呟いた。
「それは失礼。では食べながらで良いです。」
村雨がそう言うと、天窓が開き、簡易エレベーターで食肉処理場から直接運ばれてきたような牛の姿をほぼ留めたままの骨のついた牛肉の塊が丸々1頭分降りてきた。
千絵は訝しげに村雨を睨んだ。
「…毒は入っていませんよ。」
村雨は肩を竦めて見せる。千絵は皮を剥がれた肉牛に歩み寄ると、それに触れるなり悲鳴を上げた。
「冷たっ!」
「解凍が間に合わなかったのでね、すみませんが。」
千絵は溜息を吐くと、凍った牛の後足の辺りをかりかりと齧り始めた。
村雨は満足げにその様子を見ると、背後に控えた白衣の研究者からファイルを受け取って話を始めた。
「話に寄ると君は彼らに非常に協力的だったようで…感謝します。」
村雨はファイルを開きぱらぱらと書類を捲り、ガラスに向き直った。
「結果は非常に興味深いですね。まず君の身体構造についてですが…興味深い。
肋骨が消滅し、代わりに筋肉の束、君が“触手”と呼ぶものが寄り集まって骨格のようなものを形成している。筋密度は人間の数十倍。
骨盤も退化し、支えるべき臓器が無くなっている代わりに、首から下の肉体ほぼ全てが消化器官を備えた巨大な胃袋だ。
消化構造についてはまだまだ分からない事が多いが、摂取した質量を一瞬で消化し殆ど全てをエネルギーに変える…」
「あの…その話長い?食事中に聞きたくないんだけど。」
千絵は肉牛の後足をばりばりと噛み砕きながら言った。
「自分の身体について知っておくのは重要だと思いますがね。」
「私が知りたいのはもっと全体的な事なんだけど。」
千絵は反論した。
「良いでしょう…。だがこれだけは尋ねたい。君は、生殖について考えたことがありますか?」
千絵は思わず、口に咥えた凍った肉の塊をぼとりと床に落とした。
「はい…?」
「君はこれまでの“オブジェクト”と違い、生殖機能までもが退化しています。」
「それ女子高生にする質問?」
千絵は村雨を睨んだ。さっきから睨んでばかりだ。千絵は未だにガラスの向こうのあの男が好きになれなかった。
「本来、生命体の生存目的は種の繁栄です。」
村雨は無視して続けた。
「“オブジェクト”も最初はそうでした。だが君たちは僅かな時間でこれほどの進化を遂げ、遂には生殖機能を失うに至った。
種が生殖を放棄するのはどういう場合か、分かりますか?」


[続]
-----------------------------------------------------------------------------
>>492 千絵は黒髪ロングです。前髪とか詳しくは決めてないです。
描いていただけるととても嬉しいですし、終了後も別の形で皆さんに楽しんでいただけたら幸いです。

495 :ますたー:2010/03/04(木) 07:42:09 ID:YJaSXtfh
千絵のイメージはでけたw
アナログ画ですが描いたらスキャンして張ってみます。 
気分屋だからいつになるかはわかりませんが^^,

496 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 08:17:35 ID:OongQM0L
千絵の反応が新鮮でタマラン!!

く・黒髪ロング・・・・だと・・・

これ以上戦闘能力が上がるというのか・・・

497 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 08:48:22 ID:P3uXWrNP
この千絵は変身する度に戦闘力が増す、
その変身をあと2回も残してる・・・その意味がわかるな?

498 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 13:21:00 ID:YiS5yBOH
いや黒髪ロングの記述は何度か出てきてたぞ?

つーか
>>495
何歳か知らないけど、質問に答えてもらったときはお礼を言うものなんだよ?

499 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 15:53:52 ID:yyyA+bZX
俺は自分で答えたわけでもない>>498がどうしてそこまで偉そうなのか判らん

500 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 18:17:24 ID:WxvC/MId
>>499
キミは495を擁護するのかい?

501 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 18:24:01 ID:yyyA+bZX
いや、どうしてそこで擁護って言葉が出てくるのかも理解できない
なんか害あるわけでもないし、好きにさせてたらいいじゃん
俺ら乞食より自己満足オナニーでもいいから創作してくれる人のが創作板としては相応しいと思うし
質問〜お礼のクダリに関しては言及する資格あんのは丁寧に応答した腐肉さんだけだと思うし

502 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 18:31:13 ID:oLU+kID0
そもそも>>498>>500の口調がキモい

503 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 18:36:30 ID:LR/K+aNV
キモいという話をしだしたらきりがないだろ

504 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 18:46:29 ID:cMe50Zqg
自分みたいな乞食がここに相応しくなくて
言及の資格があるのは腐肉さんだけだと思うなら
どうして>>501は黙ってないんだ?

505 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 18:48:50 ID:1rSzCBSm
まぁ、仲良くしようぜ

>>495の人、絵期待してるよ〜

506 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 22:13:11 ID:OaGAhVL8
何かすごい流れ速いと思ったらけんかかよ。がっかりだぜ…

507 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 22:23:58 ID:NnoRw1hd
良いんじゃね、喧嘩出来るほど人居るって事で
投稿作品に対する中傷じゃないし過疎よりはマシって事で一つ

508 :ますたー:2010/03/04(木) 23:19:21 ID:YJaSXtfh
腐肉さんありがとうございましたm(>_<)m
498〜ごめんなさいm(*_*)m
お礼を言うのは当たり前のことなのに忘れていた自分が悪かったです。
>>498の意見は正しいと思います。
>>505ありがとうございます!がんばってススメます^^
ただ、あまり期待し過ぎないでくださいort 

509 :名無しさん@ピンキー:2010/03/04(木) 23:31:53 ID:4lQqvRqj
人がいるっていいよな

510 :名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 00:23:15 ID:O+T3HFzP
だがリアルで千絵が現れたら一瞬でみんないなくなるなw

511 :腐肉(P.N.):2010/03/05(金) 01:04:07 ID:RJAipcuc
「まず、“オブジェクト”って何?それから、“これまでの”ってどういう意味?あと、進化って言うな。」
千絵は第二の口を開き、牛の上半身を全身でがりがりと齧った。冷たい。ふと、村雨がガラスに張り付くようにしてこちらを見ているのに気付いた。
千絵は急に恥ずかしくなった。ただでさえ知らない人間に食事を観察されるのは不快だが、よくよく考えたら千絵は今裸に近い格好をしているのだ。
入院患者の着る病衣のようなものを身に纏っては居たが、食事の時のいつもの癖で前を肌蹴ていた。
「…あんま見ないでくれる?」
千絵は顔を赤くして村雨に言い放った。
「これは失礼。」
村雨は表情を変えずに謝罪し、続きを述べ出した。
「まず“オブジェクト”とは、君のような存在に我々が付けた呼称です。
“これまでの”と言うのはお察しの通り、“オブジェクトC”、つまり周防美里以前にも、怪物が存在したという事です。」
千絵は村雨の話に興味が沸いて来て、食事の手を一旦止めた。
「発端は昨年の12月、紀伊半島で保護された女性でした。殺人容疑で拘留されたのを、我々が発見しました。彼女は完全に人間性を失っており、自分の恋人を殺して、あー…」
「喰った?」
千絵が助け舟を出した。
「そうです。」
村雨が顔をしかめた。
「当初我々は、原因不明の病原体の存在を疑いました。環境庁が本件に携わっているのはそのためです。
我々は彼女、通称“オブジェクトA”をある研究所で調査していました。そこは疫病研究所で、怪物を捕らえておく設備がありませんでした。
ある日“A”は脱走した。我々は彼女を捕らえ始末しましたが、既に被害は拡大していました。“オブジェクトB”なる存在が現れたのです。
奴らがどうやって“増える”か、君はご存知でしょう。」
千絵は頷いた。
「この時点で我々は“オブジェクト”を、人類を脅かす新たな種であると判断し、殲滅計画を始動し対策本部を設けました。
“B”を殺しましたが、数ヵ月後に別の“オブジェクト”が現れた痕跡を発見しました。君が生き残った例の事件です。」
「私が最後の一体では無い、って事ですか?」
千絵が尋ねた。
「恐らくは。そこで先ほどの話に戻ります。これほど短期間で増殖する能力を持っていた種が、ある時突然その進化を止めたのは何故だと思います?」
「進化って言うなぁ…微妙に傷つくんだから。」
千絵は呟いたが、村雨は無視して続けた。
「進化の最終形態に到達した時です。」
千絵はきょとんとして、村雨の眼鏡の奥の瞳を見つめた。彼が何を言いたいのか、今一つ理解できない。いや、察しは着いたのだが、あまりに突拍子無い話で納得できなかった。
「君ですよ。」
村雨がさらりと言ってのけた。
「“オブジェクト”が進化の末に到達した最終形態、それが君だと私は考えています。つまり、最強の生物です。」
この場合言うべき言葉は「ありがとうございます」なのだろうか?と千絵は考え、結局「はあ…」とだけ呟いた。
「実際に、狂犬病のようだった“オブジェクトA”に比べると、君は随分人間の理性の部分が残っている。人間としての記憶がある、という点も挙げられます。
これは“C”から現れた特徴で、我々が“C”の正体を断定できなかった理由の一つでもあります。
ただし、“C”は最終形態と呼ぶにはあまりにも生物として破綻していた。あのサイズはこの地球上で生存するには、仮に可能であったとしても最適とは言えない。」
「でも私の血を飲んで、佳奈が…」
千絵はそう言いかけて、一瞬言い淀んだ。“佳奈”。3日前の事なのに、長い間口にしていなかった名前のように感じた。
「…佳奈は、怪物に変わりました。」
千絵は自分を落ち着けるように冷静に言いのけた。
「…君にはあまり聞きたくない話かも知れませんが…地下鉄で採取した、小山内佳奈の血液を調べました。その結果、非常に興味深い事が分かりました。」
「…もったいぶるんだね。」
千絵は再び牛肉をむしゃりと裂き毟りながらもごもご言う。

512 :腐肉(P.N.):2010/03/05(金) 01:04:59 ID:RJAipcuc
「小山内佳奈のDNAは人間のものでした。」
千絵は口に含んだ肉塊を思わずぽろりと落としそうになった。慌ててそれをごくんと呑み込み言う。
「そんなはずないでしょ?だってあの子、ヒトを…」
「喰いましたか。でもDNAは変異していない。つまり君は“人間”の肉体だけを変成させる事が出来る。
したがって、君によって変成した“オブジェクト”は生殖機能も持たない。」
「…どういう事です?それじゃあ、種として先が無いでしょう?」
村雨は少女の混乱を想定内の事のように満足げに見て取った。
「それこそが、君を“最強の生物”と呼んだ根拠です。君は“ホスト”なのです。」
「ホスト?」
「宿主。媒介主。生殖行為で繁殖する種族が、ある種のウィルスのようなもので増殖する種へと変容した。
考えても見てください。菌を媒介にして、哺乳類とは比べ物にならない速さで成長する生命体、しかもそれが、他の生物よりも圧倒的な力を持っている。
強靭な肉体を持ち、弱点の無い絶対的な捕食者。まさに、最強の生命体です。それを生み出すのが、宿主である君なのです。
しかも君は“C”のように肥大したりせず、人間の特徴も兼ね備えている。2つの種の頂点に立つ、ハイブリッド、とでも言いましょうか。」
「何か嫌だなぁ…」
千絵は率直な感想を述べた。
「でも私が血をばら撒かない限り、もう怪物は増えない。だから私をここに閉じ込めて置くんですか?」
千絵が尋ねた。村雨は一瞬考えるように黙り込むと、眼鏡を指で押し上げて言った。
「それがそうは行かないのです。先ほど言ったように、君が最後の一体では無い。周防美里を“オブジェクト”へと変容させた者が居ます。
君たちの進化は予測不能だ。恐らくは、宿る人間が異なれば進化の形態も異なるのでしょう。
今回君のような存在が生まれ、しかもこれほどの経験値を積む事が出来たのは、単なる偶然に過ぎない。それには我々の不手際に起因する所もあるのですがね。
しかし進化を重ねれば遅かれ早かれ、いずれは君のような存在、もしかしたら君を超える存在が確実に誕生するでしょう。」
「じゃあ、どうするんですか?」
千絵は何気なく尋ねた。だが次の瞬間村雨が考えている事を理解し、彼女は呆然となった。
「…私?」
「ええ。」
村雨はにやりと不気味な笑みを浮かべた。
「これは取引です。君は我々、いや人類のために、“オブジェクト”を狩る者となる。代わりに我々は、この地球上に君の居場所を確保する。」
「…随分勝手な取引ですね。地球は人類だけのものでは無いし、人間社会に居場所が無くても私は生きていけます。怪物だから。」
「いいえ、間違っていますね。」
村雨は嘲笑うように言った。
「あの時私は、“君は人間ではない”と言いましたが、だからと言って“けだもの”でも無いのですよ。
君にはどこにも居場所など無いのです。動物園の一件を思い出してみなさい。どんなに馬鹿な犬でも君には寄り付きません。君は永遠に一人ぼっちだ。
君はそれに耐えられない。君は1人で生きるには“人間的”過ぎる。」
そう言われても、千絵は怒りも憎しみも感じなかった。ただ、空しさだけ。これが“人間的”という事なのだろうか。
「蓮杖さん、君はなぜ周防美里を追ったのです?わざわざこの街へ出向いたのは何故です?」
村雨が語気を和らげて尋ねた。彼なりに優しい口調にしたつもりなのだろう。
「周防美里を殺して喰いたいと思ったらからではないですか?」
千絵は答えなかった。村雨は尚も続ける。
「実際に“試食”してみてどうでしたか?」
千絵は、巨人の肉の味を思い出した。全身に甘く広がる濃厚な肉の味。それがもたらす幸福感と陶酔を。
「“オブジェクト”の僅か半年間の進化の歴史は、生命の進化史の縮図ですよ。
弱肉強食。強いものが、弱いものを淘汰する。君はそれに従った。同種の中でね。」
答えは出ている筈でしょう。もう一度、あの肉を味わう機会を得られるのですよ。」
千絵は顔を上げ、村雨の眼鏡の奥の瞳をじっと見据えた。村雨は勝ち誇ったように笑みを浮かべた。


[続]

513 :腐肉(P.N.):2010/03/05(金) 01:07:32 ID:RJAipcuc
長い間独占してしまっている私が言えた義理じゃ無いですが、仲良くやりたいです。
ますたーさん、楽しみにしていますね!

514 :名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 02:02:49 ID:Y746T1Ph
続きキター
この展開は予想外だった

515 :名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 07:52:11 ID:LDT3w2q7
ところで、序章のラブホテルの惨劇の後に車で周防美里を迎えに来たのは誰なの?

516 :名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 08:50:41 ID:sabVqjLu
ある程度予想出来てた展開だが、好きな話だ

517 :名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 19:08:02 ID:I/87ezsV
どうやったらこの世界に行けますか

518 :名無しさん@ピンキー:2010/03/05(金) 19:45:35 ID:dHHH6vzI
>>517
生物学を極めて生み出すんだ!

519 :腐肉(P.N.):2010/03/06(土) 16:35:20 ID:16BpWf9v
12月のある朝、千絵は故郷の街に戻って来た。ラボの外に出る事自体、一月半振りだったので、外の風をいつもより冷たく感じた。
去年の今頃は、将来への不安など何も知らずに、佳奈と一緒に部活に勤しんでいた。
冬になっても陸上部は、バスケ部と兼ね合いながら定期的に体育館の中で筋トレや練習に励んだ。
今頃、彼女と同じ学年の生徒たちは受験勉強に勤しんでいる事だろう。
あの頃は彼女も、自分もそうやって苦手な勉強に力を入れどこかの大学へ進学するのだろうと漠然と思っていた。
電車を降りてから、彼女はしばらく歩いた。やはり電車は嫌いだ。地下鉄には酔わなかったのに、どういう訳かここへ来る途中の新幹線でまた酔った。
新幹線の窓から見るスムーズ過ぎる位滑らかに流れていく景色は、彼女の獣としての感覚を狂わせ、地下鉄の暴力的な轟音と粗暴な振動が懐かしくなったのだろう。
千絵は葉の失せた森を抜け、寒々とした田畑の脇の小道を歩いた。佳奈と学校の帰りに歩いた道だ。学校へは立ち寄らなかった。
行ってもあまり良い気分はしないだろうし、平日の午前中なので生徒が居る。彼女を知る誰かに見られたら大変だ。
表向きには、千絵は死んだ事になっていた。佳奈の葬儀は、11月の頭に開かれたそうだ。
結局佳奈は、母親を殺害した容疑を背負ったまま事故死という事になった。
千絵は佳奈の家との分かれ道となる橋の袂でしばし立ち止まった。
この橋の下で佳奈と一緒に父親の遺骸を隠滅し、目撃者のホームレスを殺した7月のあの夜の事を思い出す。
あの一夜の冒険が、こんな結末を迎えるとは、あの時は思いもしなかった。
千絵は雲間から覗く太陽の光をきらきらと反射させる川の流れから顔を背けると、自分の家の方へ歩き出した。
家はしんと静まり返っており、警察が踏み入って捜索した痕跡がそのまま残っていた。千絵はしばらく玄関に立ち尽くし、目を瞑った。
家の中の様子がありありと目に浮かぶ。初めて佳奈が遊びに来た時、母親が倒れた時、母の葬儀で父の涙を初めて見た時。
何だか、今となっては悲しい思い出ばかりだな、と千絵は思った。千絵は家には上がらずに、そのまま立ち去った。
見慣れた街の景色。白っぽい空の下、どんよりとした家々。だがその全てが、愛おしい。千絵は手に「はぁ」と息を吹きかけた。
そんな事をしても彼女の手はもう温かくならないのだが、白くなる息を見たかったのだ。熱い吐息は蒸気となって目の前に広がり、ふわっと消えた。
無性に、誰かの手を握りたくなった。
千絵は橋を渡り、目的地を目指した。第二の我が家だ。いつも暖かく、優しくて、その全てを千絵が駄目にしてしまった、忌まわしい場所だ。
小山内家は蓮杖家以上に寂しげに佇んでいた。まだ警察の「立ち入り禁止」ロープの残骸が門の脇に残されており、それが一層もの悲しさを助長する。
千絵は辺りに誰も居ないのを確認すると、この身体になって初めて佳奈の家にやって来たときのように、屋根の上に跳び乗った。
以前は配管を伝って上ったのだが、今は軽々と跳び越える事も出来る。千絵は落ちないように腕を突っ張って、佳奈の部屋の窓をそっと揺すった。
案の定鍵が掛かっていたが、千絵はガラスを割らないように少しずつ力を込めてステンレスの窓ロックを拉げさせると、そっと呟いた。
「ごめんなさい。」
佳奈の部屋は、依然と何も変わらなかった。廊下の血の染みももう掃除されている。千絵はまた目を瞑り、深く息を吸い込んだ。ほんのりと、佳奈のにおいがした。
かつて、愛しかった人。今も、いつだって愛おしい。一度忘れかけた、彼女の愛した男性、末永雅人。彼女の愛した女性、小山内佳奈。一生忘れない。

520 :腐肉(P.N.):2010/03/06(土) 16:36:31 ID:16BpWf9v
それが彼女の“人間”としての誓いだった。ふと千絵は、自分の父親のトランクが部屋の片隅に置かれているのを見つけた。
何となく開けてみると、中になにやら黒い小石のようなものがある。千絵は手に取ってその正体が分かると、はっと息を呑んだ。
3ヶ月前、福沢刑事が彼女の体内で発砲した銃弾だった。恐らく佳奈が拾って取ってあったのだろう。
体育館の一件の後、慌てて荷造りしている最中に落としたようだ。
千絵は、今ではもうすっかり傷跡も消えてしまった脇腹の辺りを服の上から摩った。千絵は拉げた弾丸をぎゅっと握ると、それをポケットに入れた。
これは千絵が持っているべきだと思ったのだ。彼女と、親友の血を繋げた絆なのだ。千絵は無念そうに呟いた。
「ごめんね、佳奈。私には何もあげられるものが無いよ…。」
その時、階下から物音が聞こえた。千絵がびくっとして耳を澄ますと、誰かが階段を上ってくる足音が聞こえた。
「誰か居るのか?父さん?」
佳奈の兄の声がした。どうやら大学の休みで帰省していたようだ。千絵は慌てて窓を開けると、急いで飛び降りた。
その直後、小山内佳明が妹の部屋の戸をそっと開けた。
佳明は戸口に呆然と立ち尽くした。気のせいだろうか。ほんの一瞬、妹の友人の姿を見た気がしたのだ。
やがて窓が空いているのに気付き、徐に部屋に歩み入ると窓を閉める。
「何だこりゃ…。」
鍵が捻じ曲がっているのを見て呟くと、溜息を漏らし、クリスマス前に修理屋を呼ぶべく階下へと引き上げて行った。
本当は佳奈の墓参りでもしようかと思っていたのだが、もう十分だった。千絵は予定を切り上げて早めに高速バスの停留所へやって来た。
そこへ座って、山々の向こうに沈む夕日を眺めた。8月の朝、2人が大計画のために出発したバス停。
破滅へと足を踏み出した9月の夜、身を寄せ合って眠った場所だ。
千絵は1人でベンチに座り、空虚に寄り添うように身体をちょっと傾けた。もうじき雪が降るだろう。
全てを覆い隠してくれるわけではないが、季節がまた過ぎて行くのだと思うと、少し気が楽だ。
時間の流れは、積み重なる雪のようだ。決して消えはしない。
それが彼女の“怪物”としての呪いだった。
一時間ほど一台の真っ黒な護送車のような車が道路を遣って来て、停留所の前で停車した。千絵は立ち上がると、後部のドアを開けて乗り込んだ。
中は強化ガラスで仕切られており、向こうに村雨の部下の1人、岡崎が座っていた。
「もうちょっとましな車無かったの?」
車が発進すると、千絵が文句を言った。
「お前の体重は小さいゴリラ並みなんだ。筋密度が人間とは違うからな。乗用車じゃ潰れちまう。」
ガラスの向こうから岡崎が言った。千絵の力ならこんなガラスは片手で突き破る事が出来るので、実質意味は無いのだ。
それをこんなに近くで出迎えてくれるという事は、大分信用されたと言う事だろう。施設を出るまでに一月半掛かった割には大きな進歩だ。
「少しは、何か感じる事が出来たか?」
千絵は、ぶっきら棒だが人間の少女に接するように千絵に接する岡崎が嫌いではなかった。
千絵は後部ドアの上部にある小さな窓からもう一度故郷の街を振り返り言った。
「うん。」
今頃、学校は放課となり生徒たちが家路を急ぐ頃だろう。
千絵は、街から遠ざかる車の中で、楽しげに笑いながら畦道を歩く自分と佳奈の後姿を想像した。
それ以来、その街で千絵の姿を目にした者はなかった。


[続、エピローグへ]

521 :名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 23:13:44 ID:jqFDjumd
おかしい…俺はノーマルなはずなのに気づいたら千絵ちゃんに惚れていたんだ


ttp://girlfriend.is-a-chef.org/up/No_0015.jpg

522 :名無しさん@ピンキー:2010/03/06(土) 23:27:16 ID:xZxdy4+N
何これエロ可愛い
ノーマルの人すら惚れさせる千絵はマジ魔性の女

口チラがエロく感じる俺はかなり重度の変態な気がしてきた

523 :名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 00:26:08 ID:WXfwI+/3
>>520
ナケル…(´:ω:`)

>>521
GJ!

524 :名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 02:03:38 ID:oN/73S/4
ttp://girlfriend.is-a-chef.org/up/No_0016.jpg

エロくもなく捕食でもなくです、描きたくて描いた絵
この2人は仲がよくて壊れてて本当に素敵





525 :名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 02:52:00 ID:AY597F+Q
腐肉さんはラブホ襲撃後は未定だったのに、三日足らずで構想を練り
そしてほぼ半年の間超ハイペースで投稿を続けたのか・・・
本当に貴方は何者なんだw

>>524
GJ!!

バイヨネット吹いた

526 :名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 04:30:10 ID:TdNDIcaV
怒涛に人を食らう千絵の如く書き連ねてたからな。
腐肉さんエネルギーぱねぇ。
あなたがオリジナルのオブジェクトか。

527 :腐肉(P.N.):2010/03/07(日) 18:56:15 ID:WXfwI+/3
[エピローグ]

 あれから5年の歳月が流れた。蓮杖千絵は多くの経験を経て、肉体的にも精神的にもより強くなった。
だがそれを成長と呼べるかは微妙だ。外見的成長はあれ以来止まってしまったようで、彼女はまだ18歳の肉体のままだ。
人間としての成長を捨てた、という事だろう。そうして彼女は、青春最後の数年間を過酷な任務に費やした。
彼女の任務は、彼女と同じ“種族”を狩ること。
彼女自身の目的は、忘れられない怪物のあの味をもう一度味わうためであるが、彼女は今や日本政府と、FSB(ロシア連邦保安庁)に雇われている身だ。
 千絵は今、ロシア連邦ウラル山脈の西端、かつて軍需産業で栄えたペルミという街の古いアパートに1人で暮らしている。
無論監視の目はあるが、言葉も少しは覚えたし、ささやかながら仕事もして、彼女なりに“人間らしく”振舞えるよう努力している。
この地では18歳と言えど、日本人の顔つきでは幼く見られる事もしばしばで、彼女の周りの人間は皆彼女に対して親切だ。
 セックスも覚えた。無論、監視者には内緒だ。
食欲以外を人間のように感じることは無かったが、彼女なりに有り余った体力と食欲・性欲を満たす方法を見つけたのだ。
ペニスを自分の中に受け入れると、ちょっとした丸呑み感覚を味わうことが出来る。自慰のようなものかも知れない。
今は特定の恋人は居ないし、当然彼女に生殖機能は無かったが、見様見真似でぎこちなくしていた頃に比べれば上手くなったと自負している。
その際最も気を付けねばならない事は、相手の身体に自分の“血”を混じらせないようにする事だった。コンドームの着用は必須である。

------------------------------------------------------------------------------------------

2009年12月24日、午後5時。

 千絵はもこもこの毛皮の着いたコートを着込み、アパートを出た。
外はまだ雪が降り続いていて、既に膝下まで積もっていた。千絵は雪を踏みしめ、ぎしぎしと音を立てながら歩いた。
辺りはもう薄暗い。ロシアでは、24日の日没から翌25日の日没までがクリスマスであり、つまりもうクリスマスは始まっている。
この時間には大通りは賑やかで、クリスマスソングの流れる明々とした店の光や幸せそうな笑顔を浮かべ手をつないで道行く人々を見ていると、
千絵も何だか嬉しくなった。
美味しそうだとも思ったが。
千絵は大通りから少し離れたレストランバーへやって来た。質素な店で、ガラス戸の中に見えるこんがりと焼けたケバブ用の肉が一際目立っている。
ここが千絵の職場だった。千絵が店に入ると、既に開店しており数組の客がグラスを酌み交わし、肉汁の滴るケバブサンドに食いついていた。
「遅れてごめん!」
千絵はカウンターの向こうに居る太った男に言った。
「良いんだ。今日はクリスマスだから、気まぐれでちょっと早く開けたんだ。」
太った男が笑った。ワレリー・イシュタールはこの店の店主で、同じ外国人の血の流れるよしみで千絵を雇い入れてくれた男だ。
「奥で着替えてきな。こんな店でも、今夜は忙しくなるかも知れないからな。」
ワレリーが言った。千絵は店の奥のワレリーの居住スペースで黒い腰エプロンを身につけると、彼と共にカウンターに立った。
店はお金の無い若いカップルや、1人暮らしの老人、仲間と飲みに立ち寄った初老の男たちなどが入れ替わり立ち代り訪れては、楽しげにグラスを傾けた。
千絵はアルコールが飲めないが、付き合ってチェリージュースで乾杯した。

528 :腐肉(P.N.):2010/03/07(日) 18:59:36 ID:WXfwI+/3
 客足が途絶えた10時過ぎ頃、千絵が炙った肉の塊をスライサーで削ぎ落としていると、入り口の扉の上に付けたベルがチリンチリンと鳴った。
「ドーブルイヴィエーチェル。」
千絵が覚えたてのロシア語で挨拶しながら顔を上げると、厚手のトレンチに身を包んだ神経質そうな眼鏡の男が、カウンター席に座るところだった。
「こんばんは。」
男は日本語で言った。
「…お久しぶりです、村雨さん。」
千絵はスライサーを持ったまま言った。彼に会うのは、あの日の研究所以来、5年振りだ。
「クリスマスのこんな時間まで仕事とは大変ですね。」
「そっちこそ、クリスマスのこんな時間にわざわざ部下の怪物を訪ねて来るなんて大変ですね。」
千絵が言い返した。店の奥に引っ込んでいたワレリーが顔を覗かせる。
「お客か?」
彼は村雨を見るなり、驚いたような顔をして千絵に尋ねる。
「日本人か?」
「うん。故郷の話で、盛り上がっちゃって。」
千絵は愛想良く笑ってみせる。ワレリーは安心したように頷いて言った。
「じゃあ、しばらく任せても良いか?」
「了解だぜっ。」
千絵が敬礼して見せた。ワレリーは笑いながら再び店の奥に姿を消した。
「上手くやっているようですね。」
村雨が言った。
「何それ。お父さんの台詞みたい。場末の酒場ってよりは、ちっとは洒落てて良いけど。何飲みますか?」
千絵はスライサーを置いて酒瓶の並んだ棚の方へ歩きながら言う。
「仕事中は飲みません。」
「じゃあチェリージュースね。」
そう言って千絵は勝手にグラスに紫色のどろっとした液体を注いだ。
「本当の父親だったら、今頃胃の中だね。」
千絵は冗談のつもりで言ったが、村雨はくすりとも笑わず黙ってどろっとした紫の液体を一口啜った。元々期待はしていない。
「“人間ごっこ”は上出来のようですが、任務の方は思わしくないですね。」
村雨は目の前のグラスを覗き込んで顔を顰めながら苛立たしげに言った。
「せっかちは老化の始まりですよ、村雨さん。」
千絵はけろっとして言った。
「憎まれ口を叩けるのも今の内だ。」
村雨が語気を強める。
「10月頃から失踪者が増えているそうですね。マフィア関係との噂もありますが…」
その時、ドアのベルがチリンチリンと鳴り、冷たい雪混じりの外気が店内に吹き込んだ。
見ると、スタニスラフ・エーゴロフ青年がコートの雪を払いながら入ってくるところだった。地元のホッケーチームに所属している青年。
千絵に気があるようで、最近練習の後はいつもこの店に、千絵に会いに来る。
「うぅ、寒っ。」
スタンは震えながら呟くと、店の奥のソファにどさりと腰を下ろした。
「プリヴィエート、チエ。」
スタンは村雨がただの客だと思って朗らかに千絵の名を呼んだ。千絵は彼に向かってちょっと笑顔を向けると、村雨に向き直った。
「今すぐ帰った方が良い。」
村雨は一瞬驚いたようだが、すぐに千絵を睨み付けた。
「それは脅しですか?」
「チエ、その人、知り合い?」
後ろからスタンの戸惑う声が尋ねる。2人の言葉は分からないが口調からただならぬ空気を感じ取ったようだ。
「いいですか、蓮杖千絵。私は君をこの街に、“奴ら”を探し出すために送り込んだ。だが止まらぬ失踪事件にFSBも業を煮やしている。
君がこの町に来てからの3ヶ月でマフィアとは無関係の女子供まで消えているのは、どういう事です。」
「その犯人を始末するのが任務、でしょ?」
千絵が言った。
「確かにそれが君の仕事だが、君の本性は違うだろう。」
村雨が語気を強めた。


[続]

529 :腐肉(P.N.):2010/03/07(日) 19:00:39 ID:WXfwI+/3
>>521>>524おお、かわいいですね、ありがとうございます!

530 :名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 20:39:00 ID:chMgImaR
おお?ちょっと不穏な雰囲気??

531 :名無しさん@ピンキー:2010/03/07(日) 23:31:06 ID:FuGYOsTZ
続きが凄く気になる

532 :521.524:2010/03/08(月) 18:01:40 ID:ILI48T4s
レス下さった方どうもありがとうございます!
腐肉さん応援してるんでがんばってください
また機会があれば投下したいなと思っております
ではROMに戻ります



533 :腐肉(P.N.):2010/03/09(火) 16:37:30 ID:LgpaFX10
「何の話だ!?」
村雨の背後でスタンがうろたえて言う。
「あんた何なんだよ、おっさん。」
スタンがソファから立ち上がり、村雨の肩を掴んだ。村雨が振り払おうとしたその時、スタニスラフ・エーゴロフが口を大きく開けて村雨に襲い掛かった。
いつもは優しく微笑んでいる青年の下顎がぱっくりと割れ、蜘蛛の口のように縦に開くと鋭い牙をむき出しにして村雨に迫った。
「こいつ…っ!」
村雨が細い目を見開いた。だが時既に遅く、青年の牙が深々と彼の肩に突き立てられた。
「ぐっ…蓮杖さん、早くっ…」
村雨がそう叫ぶが早いか否か、だぶついたジーンズに包まれた千絵の脚がカウンターを跳び越え、村雨ごと変貌したスタンを蹴り飛ばした。
村雨は怪物と一緒に店の壁に叩きつけられ呻いた。先ほどまで村雨の座っていた椅子の上に千絵がひょいと着地すると、怪物の重みで丸椅子が軋みを上げた。
「だから帰れって言ったのに…。」
千絵は呟きながら腰からケバブ肉の汁で汚れたエプロンをするりと外した。
「蓮杖っ…何を…」
村雨が掠れるような声で言った。噛まれた肩から夥しい量の血を流し、蹴り飛ばされた衝撃で骨が何本か折れているらしい。
その時彼の下敷きになっていたスタンが叫び声を上げ、次の瞬間村雨の腹部から、血と臓物を飛び散らせ怪物に変容したスタンの力強い腕が飛び出してきた。
「うぐふっ…!!」
千絵は村雨を無視して赤いフード付きのセーターの前ファスナーを開けた。
真っ白な腹が露わになったかと思うと、綺麗に割れた腹筋の間に縦に亀裂が入り“第二の口”が姿を現した。
「私まで殺す気か…!」
「勘違いしないでよね?」
千絵は両腕を延ばして頭の上で絡ませると、第二の口を開いて触手を解放した。触手は村雨ごとスタンの身体に巻き付き、締め上げる。
「私の任務は“お食事”であって、あなたを守る事じゃない。」
千絵はくすりと笑う。怪物との戦いに疲れた男の顔に滲んだ恐怖が、千絵の快楽を誘った。
「名誉の戦死だよ、村雨さん。」
そう言って千絵は2人の身体をばくんと呑み込んだ。スタンが奇声を上げて千絵の口の前で手足をばたつかせてもがいたが、第二の口を勢い良く閉じると、
ホッケーで鍛えた腕と脚はあっけなく折れ、血しぶきを上げながら胃袋の中へ姿を消した。今となっては慣れ親しんだ極上の肉の旨みが全身を駆け巡る。
怪物の濃厚な味に村雨の貧弱な肉の味はすっかり掻き消されてしまい、
代わりに村雨の胃の中から染み出たチェリージュースの味がほんのりと千絵の中に広がった。
千絵は口の中をもごもごさせて、ぺっと何かを吐き出した。べとべとの唾液に塗れたそれは、フレームが歪んでレンズに皹の入った村雨の眼鏡だった。
その時、店の奥からドタバタと音を立ててショットガンを手にしたワレリーが現れた。ワレリーは、腹を膨らませた千絵に銃口を真直ぐ向けると叫んだ。
「この化物め!!」

534 :腐肉(P.N.):2010/03/09(火) 16:42:31 ID:LgpaFX10
その声を合図にしたかのように、店の奥から更に5人の柄の悪そうな男たちが、ショットガンやサブマシンガンを構えてどかどかと押し寄せてきた。
「面倒見てやったのに、スタンを喰いやがった!!」
ワレリーが喚いた。いつもの陽気な笑みが信じられないほど険しく歪んでいる。彼らはマフィアだ。
そしてスタンのホッケーチームはこの二月の間に全員怪物へと変貌しており、マフィアと結びついて街の人々を襲っては喰っていた。
「一つ教えて。スタンを“あれ”に変えたのは誰?ホッケーチームの誰か?それとも、別の“何か”?」
千絵はワレリーを見据えて尋ねた。
「さあね、知るかよ。奴ら、突然現れたんだ。俺たちは商売をしてるだけだ。その役に立つ事以外、化物なんかは御免だね。」
ワレリーは凄んで見せた。だが肉厚の額に浮き出た脂汗は隠しきれて居ない。
「よく言うよ、自分たちも同じくせに。」
千絵は溜息を吐いて、カウンターの向こうのこんがりと焼けたケバブ肉に目を遣った。
「“おこぼれ”をああして売ってたくせに。」
「いつから気付いてた?」
ワレリーは驚きを隠せずに尋ねた。
「最初に店の前を通った時。人肉は見ればすぐ分かる。」
千絵はにやりと笑った。大方あの肉は、ファミリー同士の抗争で殺されて死体の処分に困った結果“切り売り”された幹部だろう。
ワレリーは千絵を睨んだまま戸口へ歩み寄ると、ドアに掛かった「開店」の看板を裏返し「閉店」に変えた。
「なぁ、スタンの事は水に流そう。だから俺たちの仲間にならないか?」
ワレリーが不気味な笑みを浮かべた。
その邪悪な笑みは、どことなくつい先ほど“殉職”した村雨に通じるものがあり、千絵の背筋に悪寒が走る。
「お前なら俺たちと一緒にこの街に、いやこの国に、君臨する事が出来る。お前も、居場所が欲しい。そうだろう?」
「違うよ。私は腹が減っているだけ。ここんとこ凍った牛ばっかりで、うんざりしてたんだ。」
千絵はくっくと喉の奥で笑った。
「今の私は、“底なし”だよ?」
ワレリーの表情が恐怖と嫌悪に歪む。隠れ蓑として、爺様の代から受け継いだ店だったが、仕方あるまい。
太った店主は醜悪な形相で叫び声を上げた。
「殺せええええええ!!!!!!」


[続]

535 :名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 18:36:44 ID:yrUt4FGo
やべぇ千絵かっけぇ

536 :名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 22:51:22 ID:JV+sZZ+p
村雨まで喰っちまうとは・・・

537 :名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 23:26:35 ID:FV45Ukqm
何かもう、続編のノリですね

538 :名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 23:33:55 ID:ZuHK+2as
この盛り上がりでエピローグ・・・だと・・・

539 :名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 23:49:01 ID:8HIZioT1
いやこれ新章スタートしてんだろ

540 :名無しさん@ピンキー:2010/03/09(火) 23:54:39 ID:iemjt/wU
いや、エピローグだからこの後ちょっと潰したら終わりじゃね

541 :ますたー:2010/03/10(水) 12:56:51 ID:LahF3Aah
>>521
あぁ・・・
先に上手い人に絵あげられちゃったみたいだなぁ(;_;)
くそっ!誰かおれのやる気スイッチを探してくれort
この作品がまだまだ続くといいなw


542 :名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 14:21:08 ID:bHbIUNb8
>誰かおれのやる気スイッチを探してくれ
丁重にお断りします。

543 :ますたー:2010/03/10(水) 16:51:05 ID:LahF3Aah
多分やる気スイッチはないのだろう・・・
腐肉さんはすごいなあ。
おれも、がんばって絵を描こう!

544 :名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 18:56:44 ID:tPVAGcHg
乞食より性質が悪い…

545 :名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 19:05:00 ID:oS7R6gN/
もうおまえ帰っていいよ
絵も特に期待してない

546 :名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 19:16:49 ID:AHpFLzEW
気になってたんだ、何のますたーなの?
べーしょん?

547 :名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 20:30:19 ID:VfcZO1YJ
ただSS読んでGJ言うだけの人形が、微力とはいえ何かやろうとする奴に口出しするなよ。
文句言うだけなら誰だって出来る、気に入らなきゃお前らも何かやれ。出来なきゃ黙ってろ。

548 :名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 20:39:58 ID:qmfLpyBF
>>547
すんごい上から目線ですけど何様ですの?上級乞食かナニかですの?

549 :名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 22:10:35 ID:Lwinm/RH
五月蝿いな
喰われるのに集中できないじゃないか

550 :名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 23:08:29 ID:RuwPtsYq
残念だよ、半年間共に腐肉さんの愛読者だった連中がこんなくだらない奴らで

551 :名無しさん@ピンキー:2010/03/10(水) 23:43:43 ID:ohiZsGkY
>>550
お前が一番くだらない奴だから安心しろ

552 :腐肉(P.N.):2010/03/11(木) 00:04:50 ID:jyOBpZa2
無数の銃弾が、一秒間に十数発のペースで発射された。
店内は工事用の重機のような耳を劈く発砲音と、フラッシュのような閃光に包まれ、グラスや酒瓶が、次に椅子やテーブルが破片となって宙を舞う。
一頻り辺りの物が砕け散ると、ワレリーは発砲を止めさせた。
だがガラスの無くなった窓から吹き込む風に、埃や薬莢の煙が薄らぐと、彼はぎょっとして我が目を疑った。
あの怪物がまだ目の前に立っているではないか。
その身体を包んでいた洋服は銃弾を受けて殆ど吹き飛んでいたが、真っ白な引き締まった肉体には、傷ついた形跡が無い。
ワレリーは、部下達の動揺を感じ取った。しかし実際のところ、誰よりも動揺しているのは彼自身だった。
千絵は顔を上げ、歯に挟まったものを舌で取り除こうとしているかのように、もごもごと口の中を探ったかと思うと、次の瞬間
彼女の口から何かが物凄いスピードで飛び出し、ワレリーの片脚に命中した。
「ぎあああああああああああああ!!!!!!!!!」
ワレリーは太った身体を捩じらせて悲鳴を上げる。
見ると、ズボンに穴が開き、脚の肉に何かが食い込んでいる。それは彼が怪物に向けて発射した、百発の銃弾の内の一つであった。
千絵はべーっと舌を出し、残りの無数のひしゃげた銃弾をじゃらじゃらと吐き出した。
ぺっと吐き出された最後の一個が、彼女の足元に出来た弾丸の山の上に落ち、チャリンと音を立てた。
ワレリーは倒れたまま額に脂汗を浮かべ、唖然として怪物を見上げた。自分が史上最強の生き物を相手にしているのだという自覚が、彼には足りなかった。
「種も仕掛けもございません…。」
千絵が呟く。
「アブダカダブラ。」
魔法の呪文を合図に、再び彼女の身体から触手がするすると這い出した。
大きく裂けた秘所から延びた細かい襞の付いた無数の触手は背中に回り、肉で出来た天使の翼さながら空間いっぱいに腕を広げ、
巨大な影をマフィアたちの上に落とした。
「あああああああああああ!!!!!!!!!」
哀れなごろつきどもは逃げ惑う隙も無く、あっという間に触手に捕らわれた。
一本絡みつくと、すぐにたくさんの触手が身体全体に巻き付き、巨大な肉の繭となって全身を包み込んだ。
男たちはスタン同様、その怪物の本性を明らかにして抵抗を試みた。だが千絵の前にはもう、屋台に並ぶ魚も同然だった。待ち受ける運命は餌になるのみ。
彼らは繭の中でゆっくりと消化され、彼らの血肉から溶け出した怪物の旨みはチューブのように変形した触手を伝って千絵の中へと取り込まれた。
千絵は、倒れながらも震える手で握り締めたマシンガンの銃口を彼女へ向けようとしている愚かな一人の男にゆっくりと歩み寄り、その腕を無慈悲に踏み抜いた。
骨が砕ける音と共に腕が千切れ、銃が床に落ちて暴発した。
流れ弾が、片脚で何とか起き上がって逃げようとしていたワレリーのもう片方の脚に当たり、太った男は甲高い悲鳴を上げて再び無様に汚い床の上に倒れた。
触手が、腕をもがれた男の脚と胴体を捕らえた。彼は残された腕で必死に何かにしがみ付こうとしたが、そのまま床をずるずると引き摺られた。
彼は千絵のまだ知らないロシア語で必死に命乞いの言葉を叫んだ。
だが千絵の足元まで来ると、どんな抵抗もどんな命乞いの言葉も空しく、ごきゅんと下品な音を上げてその底なしの胃袋に吸い込まれて行った。
千絵が肉の繭を解体し触手を体内に引き戻すと、白骨だけの哀れな姿となった男達ががらがらと音を立てて床の上に散らばった。
その骨も、半分消化されて河原の石のように凹凸の少ないカルシウムの塊と化していた。
5人のマフィアを喰い尽すと、店には千絵とワレリーだけになった。
ワレリーは銃弾がめり込んで出血した脚を引き摺りながら、腕だけで床を這って店の奥に逃げ込もうとしている。
千絵は、太ったなめくじのような憐れな男にゆっくりと歩み寄ると、肉が裂けて弾丸の埋まった脚をぐりぐりと踏み躙った。

553 :腐肉(P.N.):2010/03/11(木) 00:06:30 ID:hoAzKcgD
ワレリーは悲鳴を上げ、身体を仰向けにして目の前の猛獣に向き直った。
千絵は徐に身をかがめ、肥満体を包むシャツの襟首を掴んで自分の口元に手繰り寄せると、彼の目の前で、悲鳴をも掻き消す様な凄まじいゲップを吐きかけた。
そのけだものの咆哮のようなおぞましい音と、地獄の底から込み上げるような、熱くむせ返る様な死の臭いに、ワレリーはすっかり縮み上がった。
「や、やめてくれ…俺はあいつらとは違う、人間なんだぁぁ…」
ぶよぶよと肉の乗った顔面で涙と鼻水が混ざり合って汚らしく垂れた。股間をじわじわと、5つの時以来初めて漏らした小便が濡らして行った。
千絵は身を屈め、太った男の股間に手を宛がうと、ほかほかする臭い小便塗れのペニスをきゅっと握った。ワレリーは小便しながら勃起した。
千絵の口からぺろりと蛇のような長く太い舌が顔を出し、ワレリーの汚い顔や、服の下のぶよぶよと醜く肥えた腹を舐め回した。
「知ってる。あんたは人間。だから…」
千絵は恍惚の表情を浮かべ、小便塗れの手をぺろりと舐め、その手を自分の腹に這わせて言う。
「思う存分、嬲ってあげる。この中で。」
「や、やめっ…」
ワレリーは情けない声で訴えかけたが、寄り添う千絵の肉体の躍動に絶頂に達しようとしていた。だがどの道、命乞いは彼女の耳には届かない。
千絵は舌を仕舞うと徐に口を開いた。蜘蛛のように開く下顎から、秘所まで裂けた、胃袋への入り口を。
エクスタシーと苦痛、人のありとあらゆる感覚が一体となる地獄のような桃源郷への入り口を。
だがその淵にずらりと並んだ無数の鋭い牙を見るや、ワレリーは悲鳴を上げた。
その一本一本が彼の肉を貫き骨を噛み砕く様を想像しただけで彼は、射精する代わりにもう一度失禁した。
千絵の目がにゅぅっと細くなり、その畏怖と恐怖に歪んだ顔を満足げに見下ろして呟いた。
「いただきまぁす。」
ばぐんと音を立てて、千絵の口が閉じた。ワレリー・イシュタールを巨大な胃袋に閉じ込めて。
合わさった鋭い歯と歯の間から、彼が呑まれる瞬間に射精した、どろっとした精液がこぼれ、千絵の秘所からぽたぽたと数滴床に落ちた。
千絵は目を瞑り、体内で溶け行く肉から染み出る血の味を堪能した。
それから腹を擦ると、彼女の胃袋に収まる全ての生き物がこの世に最後に残す残滓を、千絵は満足げに吐き出した。
「げぇええっぷ… ふぅ。」
その咆哮は降りしきる雪の中に吸い込まれ、家族と幸福なクリスマスを祝う近所の人々の耳には随分と遠くの音に聞こえた。
どこかで、獣が鳴いている。
夜の時間は獣の時間。人間が立ち入ることの許されぬ、魍魎たちの時間。人々は窓辺に寄ると、カーテンを閉めた。
ガラスに張られたその布が、夜は全ての生き物の上にやって来るという事を、覆い隠してくれるかのように。
その夜、雪は街中に降り積もった。全ての生き物たちの上に。全ての幸福と、全ての不幸の上に。

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 骨に僅かのゼリー状の筋肉しか残っていないような状態でも尚、痙攣するように動いていた腹の中のワレリーが、ようやく静かになった。
千絵は、誰も居なくなった荒れ果てた店で1人、チェリージュースで聖夜を祝った。彼女は脚を組むと、足首に巻いた鎖のアンクレットから血を拭き取った。
そこに付いている、みすぼらしい拉げた金属のチャームが何なのか知る者は、もうこの世に彼女しか居ない。だがそれはもう、枷ではなかった。
「メリークリスマス。」
千絵は呟いた。その空気の微かな震えが、どこかの誰かへ届く事を願って。そうして、クリスマスの夜は更けた。






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