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ビッチな娘が一途になったら

1 :名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 05:37:39 ID:QXUKzZxo
男を取っ替え引っ替えしてる女の子、モテまくりで男を下にみてる女の子
そんな娘が一人の男にマジ惚れしてしまう、そんな話はどうだろう?

自分の男性遍歴を知られて嫌われるのを心配したり。
奉仕させる側だったのに一生懸命奉仕したり。
「○○はモテるもんな」なんて意中の男に言われて
好きなのはあなただけよアピールしちゃったり。


2 :名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 06:18:22 ID:q9V/eGvo
>>1
削除依頼出しとけよ

3 :名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 08:03:35 ID:jkzZqDFm
さあ早くその妄想を作品にして投下するんだ

4 :名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 08:23:22 ID:PlKHE7G5
また糞スレか

5 :名無しさん@ピンキー:2008/07/04(金) 10:33:39 ID:XrKJQyNO
嫌いじゃないと言うかむしろ好きだ
>>1の頑張りに期待

6 :名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 01:41:45 ID:ILBNjSCz
男を堕とすために鍛えられた様々なテクニックを、ただ愛する人に尽くしたいがためにフル活用するんですね、わかります。

7 :名無しさん@ピンキー:2008/07/05(土) 21:42:00 ID:Hm5F/ssU
腹黒スレじゃダメ?

8 :名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 00:11:41 ID:RVHMnNSy
ビッチだからって腹黒とは限らないだろ
私ってモテモテと思いこんでる天然娘とか、
頼まれると嫌と言えないお人好しとかいろいろ考えられる

ホストにハマったキャバ嬢、とかもありかも試練


っていうかそろそろ>>1は作品を投下しろ

9 :名無しさん@ピンキー:2008/07/06(日) 16:51:08 ID:9LE48nqV
スイーツ(笑)を犯すSS
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1200136428/

10 :名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 12:42:33 ID:LH9X2mid
甘エロでいいの?

11 :名無しさん@ピンキー:2008/07/07(月) 18:24:45 ID:ug1nGCAy
oke

12 :名無しさん@ピンキー:2008/07/12(土) 09:58:45 ID:YCbu6GPq
保守

13 :名無しさん@ピンキー:2008/07/14(月) 06:33:58 ID:yupeUeeJ
こういうの大好き

14 :名無しさん@ピンキー:2008/07/15(火) 22:47:41 ID:BIAZ7O5v
想い人の前では可愛い少女を演じ切って本性を完全に隠しているつもりで、
だけど自分の中の本質的なビッチに気が付いていない乱れを希望

15 :名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 13:33:42 ID:XQSg7+hr
一途になるけど、相手は所詮ビッチって事で全く取り合ってくれず悩む
そういうのは萌える

16 :名無しさん@ピンキー:2008/07/19(土) 15:34:32 ID:m5w23VgX
誰か書いてくれm(__)m

17 :名無しさん@ピンキー:2008/07/23(水) 00:03:16 ID:BP2cLoXl


18 :名無しさん@ピンキー:2008/07/25(金) 00:26:24 ID:1mQdhyuT
ビッチの定義、ってどう考えてる?
俺は、たとえば背伸びでギャル系やっているのもビッチかなと思うのだけど。

19 :名無しさん@ピンキー:2008/07/28(月) 14:28:32 ID:b2cNRzkL
サセ子はビッチ

20 :名無しさん@ピンキー:2008/07/29(火) 10:13:41 ID:2otQM63o
なんだかんだで結局、股を開く

21 :名無しさん@ピンキー:2008/07/31(木) 23:30:50 ID:sTz9D9g+
無気力系ビッチが本気の愛に目覚めるとか萌えるんだけど

22 :名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 02:22:11 ID:kTwdjThM


23 :名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 09:06:16 ID:G+wZdR8p


24 :名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 12:40:35 ID:cWQ7jt/q


25 :名無しさん@ピンキー:2008/08/06(水) 22:37:06 ID:GzLejW+A


26 :名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 10:46:17 ID:xQ5InUmw
しゃ

27 :名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 11:43:28 ID:MWgIxDgJ


28 :名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 13:26:37 ID:q6sCYN7I


29 :名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 14:20:22 ID:k/12bJbf


30 :名無しさん@ピンキー:2008/08/09(土) 15:37:26 ID:c+5isuny
自演乙

31 :名無しさん@ピンキー:2008/08/11(月) 15:57:16 ID:z563Ouh0
支援上げ

32 :スイーツと香辛料1:2008/08/13(水) 00:56:05 ID:k+87tkBL
場違いな人を見た。

恵比寿のベトナム料理のレストランに同級生の男の子がひとりで食事をしていた。その人はとても地味で名前も思い出せないくらい。それなりに値段もはるこういう店にいることをわたしはうまく受け入れられなかった。

斉藤さんが黙々と料理を食べている中、わたしはどうも信じられない気持ちでその人を見つめていた。

「げっ」
小さく、でもはっきりとその人は私を見て言った。あからさまに嫌そうな顔。

ムカついた。

あんたこそ「げっ」だよ。「あんたみたい」のが、なんでこんな店にいるの?「あんたみたい」なさえないのが、来ていい店じゃないよ、私は心で毒づいてそしらぬ顔でフォーに手をつけた。



33 :スイーツと香辛料2:2008/08/13(水) 00:58:54 ID:k+87tkBL
「どうかした?」
斉藤さんが尋ねる
「なんでもないよ」
微笑んでおいた。斉藤さんのおかげで高校生ではとても行けない(といってもコース五千円くらいだけど)ところで食事ができるのだ。

少しはサービスしてやらなければならない。

友達が誘いで行った集まりで出会った斉藤さんは、毛並みがよさそうな感じがした。

お金もありそうだし、大学も名前があるし、ガツガツしてなさそう。

だから愛想よくしてまんまと二人で会おうと言わせた。最初のデートが恵比寿で映画をみてベトナム料理というのも、まあありだった。

料理もおいしい。辛いの好きだし。知る人ぞ知る、評判のお店らしい。わたしはけっこう感激していた。

友達からあの店に連れてってもらった、おごってもらったという話は聞いていたが、派手目な格好のわりにわたしはあまりそんな経験がなかった。

恥ずかしくて友達には適当に話を合わせていたが、実は少し奥手だったのだ。目論見通り大学生に誘われちょっといい店でおごってもらって、わたしは得意だった。









34 :スイーツと香辛料3:2008/08/13(水) 01:02:27 ID:k+87tkBL
「こんばんわ、高梨さん」
ビクッとした。不意をつかれてしまった。顔をあげると地味な同級生がいた。名前は…。

「松崎くん?こういう所くるんだ?」
思い出した。松崎啓だ。ケイ、似合わない名前。
「うん、ちょっと。じゃあ」
松崎くんは目を合わさずに言った。やっぱり「こういう人」は鼠色のジーンズにチェックのシャツなんだな。

「余計なことだけど、高梨さん、スプーンにのってるのはお好み辛さ調節するためのものだから、タレみたいにつけなくていいんだよ」
マツザキは、斉藤さんの前で、ソウイイヤガッタ。
斉藤さんが少し笑う。顔が赤くなるのがわかった。

「じゃあ。ついでだけどデザートはココナッツプリンがおすすめです」

そういって松崎啓は店を出ていった。ムカつく。オタクのくせに!なんなのあいつ!

わたしは嫌がったが、面白がった斉藤さんがデザートにココナッツプリンを頼んだ。

…すごく、すごく、美味しかった。

…なんかムカつく。


35 :スイーツと香辛料4:2008/08/13(水) 01:15:09 ID:k+87tkBL
「葉子、どうだった」「楽しかったよ。あ、でも…」

みさきに昨日のことを聞かれて、私は松崎啓のことを思い出してしまった。腹が立つ。

「みさき、聞いてよ。斉藤さんにベトナム料理連れてってもらったら松崎がいたの」
「松崎って誰?」
「うちのクラス」
「えー!?」
「しかも一人で」
みさきは爆笑した。スッとした。
「マジで?ネタでしょ?」
「ほんとほんと。私もびっくりしたよ。なんでっ!?って。しかもさあ」
と松崎のあの生意気な一言を話す。みさきは期待通り、はぁ馬鹿じゃない?と言ってくれた。
「だよねー、だいたい松崎があんないい店いくなんで十年早いっつーの!」
そうわたしが言って二人で笑う。ああ、スッとした。昨日傷つけられた高梨葉子のプライドが友達と陰口をいうことで回復してくる気がした。

36 :スイーツと香辛料5:2008/08/13(水) 01:42:07 ID:k+87tkBL
「あ、葉子」
みさきが指さした方をむくと、ちょうど向こうから松崎が来た。
「松崎くーん、昨日葉子と会ったんだって?」
意地悪な笑い方をしながらみさきが声をかけた。
やめてよ、と一瞬思ったが居心地の悪そうな松崎の顔を見てわたしも意地悪くいった。
「昨日はどうもー。松崎くんてお洒落な店行くんだね。一人で」
最後の一言を強調して言う。みさきバカウケ。
「ああ…、ごめんね声なんかかけちゃって」松崎はまた目を合わさず言った。う、少しかわいそうだったか?
「いいの、いいの、むしろ今度は葉子を誘って二人でいっちゃいなよ」
みさきが自分でいって自分でうけている。
松崎くんはいや…と口ごもっている。
「じゃあ」
すごすごと、という感じで松崎くんは行ってしまった。
「みさき変なこと言わないでよ」
「いいじゃん。あいつグルメなんじゃない?連れてってもらいなよ。ウケる」
みさきが笑う。わたしはため息をついた。


37 :スイーツと香辛料6:2008/08/13(水) 02:34:06 ID:k+87tkBL
高校時代一回くらいはこんな偶然があるのかもしれない。

本当に、松崎啓と二人で食事に行くことになった。

世界史でグループ発表をすることになり、みさきと2人でなんとなく組む相手が見つからず、余り物同士2人―2人でまとめられたらその中に松崎くんもいたのだ。

わたしもだったが、向こうも「マジかよ…」って顔をしている。

「テーマ何でやるー?」
村田くんが言った。やる気のない他の3人を仕切ってくれるようだ。
「ベトナムの食文化とかー?」
みさきが悪ノリしてる。
「はあ?何それ?」
村田、食いつくな。
「やめてよ、みさき」わたしが止めるのも空しく、みさきは昨日のことを村田くんに喋ってしまった。
「へえー、そういえばマツは食い物屋詳しいもんな」
村田くんが普通に言ったので、ああ友達には有名なんだ、と思った。


38 :スイーツと香辛料7:2008/08/13(水) 02:35:36 ID:k+87tkBL
「なんで松崎くん詳しいの?」
「いや…」
「お前辛いものとか好きなんだろー」
「まあ…」
「でも昨日のお店とか高くない?」
「バイトして…貯めて…」
「そこまでするの!?なんで!?」
やばい、ちょっと面白い。
「いや…なんとなく好きで…その内エスカレートしていったというか…」
「一人で行くの?」
「ほとんどは。たまに親とか」
「辛いもの中心なの?」
「最初はそうだったけど…最近はなんでも…」
「一人で?」
「まあ…」

「…すごいね」
ちょっと呆れ気味にみさきが言った。


39 :スイーツと香辛料:2008/08/13(水) 02:39:35 ID:k+87tkBL
授業が終わり皆動かした机を元に戻したりしてるとき、教室から出ていく松崎くんを追いかけて声をかけた。

「昨日言ってたココナッツプリン食べた。おいしかったよ」
「あ、ほんとに…?よかった…」
「近くとかで何かあったらまた教えてね」
一応、朝にからかったの悪かったかなと思ったので、フォローしておこう。まあたしかにココナッツプリンはおいしかったし。

すると松崎くんは難しい顔で何か考えて、こちらを見たりそらしたりを数回したあと、言った。
「芦沢ホテルのデザートビュッフェの入場券、ネットの懸賞で当たったんだけど…興味ある?」

あれ?

調子のられてる?わたしを(「あなたみたい」のが)お誘い?

「いや!なんでもない!」
松崎くんが顔を赤くして逃げようとする。やっぱり「そういう」自覚あるのかな。

わたしは、悪いけどこんなリスキーな話に乗ったりするほど怖いもの知らずじゃない。最初からからかうためならまだしも、デート(デート?まあデートだよね)するなら恥ずかしくない相手を選ぶ。

なのに「行く」と言ってしまった。

…ココナッツプリンがおいしすぎたせいか?血迷ったのは。



40 :名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 02:41:24 ID:k+87tkBL
ちょっと長めのプロローグを書いてみたけど、こんな感じのはお呼びでないかな?

このいやーなやつがメッロメロになっていくという…。

41 :名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 05:18:40 ID:j3qFqjd1
早く続きを書けや!

書いてください、お願いします。

42 :スイーツと香辛料9:2008/08/13(水) 09:48:55 ID:k+87tkBL
日曜日、わたしは芦沢ホテルに向かっていた。みさきには内緒にしておいた。ここなら多分知り合いにそうそう会ったりはしないと思う。

松崎くんは今日はクリーム色のジャケットに綿パンだった。彼のなかでは余所行きの格好なのだろう。時間に正確なのは、合格。

「ごめんね。待った?」
「いや、全然…。十分前だし」
わたしも時間は守るほうだ。
「松崎くん、今日はこんな服装で大丈夫かな?」
「ああ…ギャルって感じだね。大丈夫じゃない?」

かちーん。「ギャルって感じだね」?何その言い方。

「ギャルって…松崎くんはどの辺でギャルって思うの?」
こめかみをひくつかせながら、という感じであえて笑顔で聞いてみた。
「うーん、髪染めてる。なんか髪がグネグネしてる。化粧が濃い。財布とかバックが似た柄?あとは…」

こいつまともに答えやがった…。グネグネって…。最悪!自分はキモいグルメオタクのくせに!

腹がたって喋らないでいたら、松崎くんはあわてて言った。
「ごめん、別にギャルが悪いとか言ってるわけじゃなくて、ただ僕はよく知らないからそう見えただけで…」
「もういいよ。行こう」
さっさと目的だけすましてしまおう。


43 :スイーツと香辛料10:2008/08/13(水) 16:36:05 ID:k+87tkBL
芦沢ホテルはそれなりに有名なだけあって格がある感じでいい。
14階にデザートビュッフェがあるらしい。入るとかなりの広さに真っ白なリネンのかかったテーブルと、銀色のトレーにのったたくさんのケーキなんかがあった。わたし達ふくめ客は4〜50名だろうか。

「席は…ここだ」
松崎くんがわたしを案内してくれる。学校とはうって変わってこういう時は自信にあふれてる感じ。さすがグルメオタク。

わたしは色々珍しいものもそろっているお菓子に目移りしつつ、ケーキやマカロンをお皿にのせた。

「えっ」
松崎くんが声をあげた。
「パパナッシュだ」
ぱぱなっしゅ?
「何それ」
「ルーマニアのお菓子で…ドーナツに生クリームとストロベリーとかのソースがかかってる、みたいな」
「へえ」
松崎くんはパパナッシュに夢中なようで一心に取り分けている。
よく知ってるんだな、と少し感心した。

彼がとってくれたパパナッシュを食べてみた。けっこう強烈。
「酸味が意外と強いんだな」
と松崎くんがつぶやく。
「面白い味だね」
「そうだね。僕もはじめて食べたから。…ケーキとかはどう?」
「うん。ちゃんとしてるよ」
「そう。よかった」
松崎くんが穏やかな微笑みを浮かべた。本当に嬉しそうにしてるがわかる。ああ、いい人なんだな。
オタクだけど。


44 :スイーツと香辛料11:2008/08/13(水) 16:49:25 ID:k+87tkBL
それからわたしは時おり松崎くんとなんというか食事デートにいくようになった。
けっこう面白いものをいつも見つけてくるし、何よりおごってもらえるので、さえない男と遊びに出かけることについては目をつぶった。

松崎くんは相変わらず目を合わせずにこういう店を見つけたんだけど、興味ある?と聞く。
「うん、行きたい。連れてって」
笑顔でこたえる。それくらいはね。なんなら手をとって言ってもいいけど、勘違いさせすぎるからやめておこう。

彼は自分が本当に興味をもった所にしか行かないし誘わない。そういう所も好感をもった。ちょっと学校ではオドオドしてるけど媚びてない。そうでないとホルモン焼きに同級生の女の子は誘わないだろう。でもそこは肉の刺身が驚くほどおいしかった。
「今日もおいしかった。また誘ってね」
そんな言葉を私は本心からいうようになった。
「ああ…。また機会があったら」
目をちらっと合わせて松崎くんは答えた。


45 :名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 19:23:40 ID:FIrTN7Ry
やばい、なんか面白い。
松崎くんも高梨さんも魅力的で、読まされてしまった。駄スレだと思ったのにwww
続き楽しみにしてます。

46 :名無しさん@ピンキー:2008/08/13(水) 23:35:30 ID:45AvyiWq
スレは職人が来ることで命を宿すというが

まさにそうだな

47 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 00:48:18 ID:6Fa1lupQ
>>46
そうだね。

面白い。どんな風になっていくのか続きが気になる。

48 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 05:04:59 ID:WItfoN/q
反応があってありがたい!

なるべくダラダラやらず展開を早くしてデレ→エロスにもっていきたいんだが…エロなんか書いたことないなぁ。

49 :スイーツと香辛料12:2008/08/14(木) 05:40:43 ID:WItfoN/q
「葉子、最近斉藤さんと会ってる?」
みさきが机につっぷしながら聞く。
「全然会ってない。もうメールもしてないかも」
「そうなの?あんた、最近つきあい悪いから、斉藤さんかと思ったのに」
そういえば、みさきに誘われたコンパやらに最近行ってない。斉藤さんもなんとなくメールとか返さなかったりでつきあいが途切れてしまった。
「ごめん。今度どっかいこ?」
「土曜日は?」
「あ、その日はちょっと…」
その日は松崎くんと約束がある。北欧料理。トナカイ肉のステーキ、食べてみたいし。
「えー、やっぱ男?」みさきがジト目で言う。
「ちがうって」
「そういえば葉子、世界史発表終わったのに、まだ時々松崎くんと喋ってるよね」
「…」
みさきめ、勘がいい。「あら?あらあらあら」
楽しそうにおどけるみさき
「やめてよ」
そんなんじゃないんだから。

50 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 11:36:34 ID:FXrIgLPX
ベルギー! ベルギー!

51 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 11:41:49 ID:rcTEN+7m
ビッチ娘というとハーレム漫画とかでよくあるお色気ポジションを連想するなあ。
らぶひなでいうキツネだったり、ゼロの使い魔でいうキュルケとか。
こういうキャラはまず間違いなく主人公とはくっつかないから、そういう「もしも」な話として興味深い。


52 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 11:55:24 ID:AjM+lhkB
今の職人はキャラ使わないでやっているのがすごいな。普通に楽しみ。
エロは苦手だったらソフトでもいいから、書上げてくだしあ

53 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 13:59:47 ID:JWRijbf3
>>48
ビッチとオタク、エチーにもっていくのは難しそうだけどガンガレ

54 :32:2008/08/14(木) 14:06:19 ID:IUEnvNs6
>>50

>>52

↑これでつくのかな。ありがとうございます。書き上げはします。
2ちゃんにssあげること自体はじめてですが、このスレのテーマ好きなので、ないよりましということでお目汚し失礼しますm(_)M

エロも読者としては最初のよりも、慣れてきて当たり前になった日常の一コマ的エロが好きなので、なんとか一回はそういうシーンを書きたいと。


55 :32:2008/08/14(木) 14:14:30 ID:IUEnvNs6
>>53
ありがとうございます。そうビッチ(コギャル?)とオタクをどうくっつけるかを書きたくて。
なんとかあまりにご都合でない形でいければいいんですが。

ちょっと補足として、今までの各章タイトルつけます。以後は名前につけていきます。

1 出会い(32〜35) 2 からかい(35,36) 3 初デート(37〜39,42,43)
4 重ねるデート(44,49)

大幅にはしょるかもしれないが、今立ててるプロットからすれば全15章で、7でつきあい、10でエロ突入のはず。 

56 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 15:49:46 ID:gnD70qFV
ぜひ続きを

57 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 19:18:55 ID:wBGC8YNi
続き投下を待ってる奴はたくさんいる
作者さん頑張れ

58 :スイーツと香辛料 5章「告白?」1:2008/08/14(木) 20:44:36 ID:WItfoN/q
「お酒はだめだよ」
松崎くんは困ったように言った。
「大丈夫だよ。普通のカッコしてるんだから、わからないよ」
「そうかもしれないけど…」

少し浮かれていたのだろうか、普段松崎くんと食事するときにお酒は飲まないのだが、給仕の女性から珍しい果実酒をすすめられわたしはそれを飲みたくなったのだ。

結局しぶる松崎くんをいいくるめて、果実酒を頼んだ。甘い口当たりで、店の家庭的ながらムードのある内装もあいまって、早いペースで飲んでしまった。

わたしは、あまり普段しないしなをつくって甘えた声で、松崎くんを見つめた。
「もう一つ、頼んでいいかな?」
松崎くんはなにか言おうとしたが、えへへと言いそうな媚びのある笑顔で見つめるわたしを見て、ため息をついて頼んでくれた。


59 :スイーツと香辛料 5章「告白?」2:2008/08/14(木) 21:07:25 ID:WItfoN/q
「どうして松崎くんはこんな風に色んなお店に行ったりするようになったの?なにかきっかけとか?」
今日はすごく気分がよかったので、わたしはいつもより踏み込んだことを松崎くんに聞いてみた。

「うーん」
松崎くんはかなり考えたあとぽつぽつと言った。
「親が中学生の頃からけっこう連れてってくれて…その雰囲気とかが別の世界みたいで…」
「別の世界?」
「なんか外国の映画のパーティとか…そういう…うーん優雅なっていうかそんな感じが好きで色々雑誌とか見て、バイトするようになってから行ってみたりして…」
「へえ…でもホルモン焼きとかも行くよね?」
「うん。だんだんそれぞれの料理の国の文化とか…そういう違いも面白くなってきて…日本のおでん屋は他の国では何になるだろうとか…」
「すごいねー、そんなこと考えて」
「いや…全然後付けで…ただ食べるのが好きなだけかも」
「ふーん」
果実酒のせいだろうか、松崎くんのこういう話を聞いているのは、とても楽しかった。


僕なんかがレストランとか似合わないけどね、と松崎くんが苦笑した。


60 :スイーツと香辛料 5章「告白?」3:2008/08/14(木) 21:26:26 ID:WItfoN/q
「えー色々詳しいし、なんか松崎くん落ち着いてるから似合ってるじゃん。かっこよくない?」
「作る方とかなら格好いいかもしれないけど、ただお金払って食べるだけだから…なんかいいレストランとかは年齢もそうだけど、僕みたいのじゃなく、なんか成功してる人とかが行くべきなんだろうなぁ…とか」
「ああわたしたち若すぎとは思うね。…でも」
酔ってるせいか、わたしは考える前に言葉が出る感じになっていた。
「松崎くんがコックさんじゃなくてグルメくんだったから、わたしはいつもすごく楽しくておいしい思いをさせてもらえるてるよ?」松崎くんはちょっとびっくりした顔をして目をそらしながら言った。
「よ、よかった。喜んでもらえるのは、嬉しいから」
「いつも誘ってもらって、支払いしてもらっちゃって、ごめんね?」
「…好きでやってることだから」
目を伏せながらそう言う松崎くんを見て、わたしは、もっと踏み込んでみたくなった。
「ねえ、松崎くん」
「なに?」
「どうして、いつもわたしを誘ってくれるの?」

61 :32:2008/08/14(木) 21:30:09 ID:WItfoN/q
>>56

>>57

ありがとうございます。なんとか声におされて書きました。

だんだん苦しくなってきたけど、途中中断よりはましと自分に言いきかせて書こうと。

つぎ男の子に何て言わせよう…。

62 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 21:36:14 ID:o91EHEu0
GJ!
何となく読み始めたら引き込まれてしまった。
二人とも可愛いくていいな。

63 :32:2008/08/14(木) 21:58:03 ID:WItfoN/q
>>62

どもです!
可愛いですかー。よかったです。キモい男子&傲慢な女子に見えすぎてないか心配だったんで。

コギャルの生態に詳しくないせいか、なんか全然ビッチじゃない清い子達になっちゃってる気が…。現実はこんなもんじゃないですよね。高校のときコギャルは薬を使って彼氏とやってる話とかしてたからなぁ。

64 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 22:47:58 ID:FxXOrm4J
コギャルて

65 :32:2008/08/14(木) 22:59:17 ID:WItfoN/q
>>64

古いすかね^^;

66 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 23:02:40 ID:0YM7PK3B
1から読んでみたがいいな。作者頑張れ

67 :名無しさん@ピンキー:2008/08/14(木) 23:25:07 ID:1eqdbOAV
マイペースでね。あとメアド欄に半角でsageといれたほうがいいかも。
全員にレス返すのは大変だから、返さないでも良いと思うよ

68 :32:2008/08/14(木) 23:30:41 ID:WItfoN/q
>>66
よかったです。不定期ですが、全部は書きます。

>>67
教えてくれてありがとうございます!
たしかにマイペースでないとへばりそうです。時間あるときにちょこちょこうぷします。

これ以後はレスもそれなりにしときます〜。

69 :スイーツと香辛料 5章「告白?」4:2008/08/15(金) 00:06:38 ID:+TWYqaqa
松崎くんは固まった。
「いや…その…」
「うん?」
「あんまり、こういう趣味とかまわりには変に見えるみたいで…一緒に行くひともいなくて…」
「うん」
「それで…」
「うん」
それで、どうしてわたしなの?
「高梨さん興味ありそうで、おいしそうにしてるから結構自分で選んだ店が間違ってなかったって思えるっていうか…」
「ふーん」
松崎くんのしどろもどろな話をわたしはたぶんにやにやしながら聞いていた。

ちょっと調子にのってたのかもしれない。わたしは松崎くんを見ながら心でつぶやいた。

わたしが、好きなんでしょう、と。




70 :スイーツと香辛料 5章「告白?」5:2008/08/15(金) 00:28:33 ID:+TWYqaqa
店を出て二人で並んで歩いていると、少し足元がふらついた。
「大丈夫?高梨さん」
「うん、少し酔ったかも」
「お酒、強くないの?」
「あんまり。今日の度数強かったかも」

喋りながら、それが他人事みたいに遠くで聞こえる。ちょっと酔いすぎたかも。ふらふらしながら歩いていると何かにつまづいてバランスを崩した。

「大丈夫?」
松崎くんがわたしの体をささえている。
「ふふ」
わたしは松崎くんの腕を両手で抱えた。
あっ、と松崎くんは驚いたが、離さない。
「ふらふらするから、ささえてて」

「今日もありがとね」
「いや…」
「もうけっこう何回も行ってるね」
「そうだね。だいたい月2回くらいだから…高梨さんとはもう5、6回行ってる」
「楽しい?」
「えっ?えーと、うん喜んでもらえると、やっぱり、うん」
「わたしと一緒に行くと楽しいんだ?」
「…うん、まあ」
「ふーん」

二十秒くらい、黙って二人で歩いてから、わたしは口を開いた。
「もうつきあっちゃおうか?」

71 :名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 00:31:43 ID:v1NVz3ph
>>32
「書きながら投下」はやめよう。
理由は、住民がレスするタイミングが掴めない、他の職人が投下するタイミングを掴めないなど。
メモ帳などにまとめて書いて、ある程度溜まったところで投下していこう。
そして投下終了時に一言、「以上です」があればベネ。


ついでに紹介。下記のスレの>>2に、ためになることが書いてある。
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218717327/1-2

72 :スイーツと香辛料 5章「告白?」6:2008/08/15(金) 00:53:34 ID:+TWYqaqa
きっと松崎くんは驚いてあたふたするだろう。そう思っていた。でも松崎くんは前をむいたまま、ずっと黙って歩いていた。

どれくらい経ったかわからないくらい時間がすぎて、松崎くんはぽつんと言った。
「無理だよ」

「え」
そう答えたきり、わたしの思考は止まってしまった。無理って、無理ってこと?嘘。松崎くん、明らかにわたしのこと好きじゃない?
「なんで?」
わたしは予想外の答えにちょっとむきになっていた。ほんの思いつきでつきあっちゃうと言ってしまったのだけど、断れるとは思わなかったから。

「ねえ、なんでよ?」
松崎くんはしばらく考えてから、はっきりわたしの目を見つめて言った。
「僕と高梨さんじゃつりあわないし、僕なんかじゃ自分とはつりあわないと高梨さんも思ってる」
静かだけど、強くそう言い切った。

「そんなこと…」
言いかけてわたしは絶句してしまった。頭がぐちゃぐちゃでまとまらない。
「そんな…つりあうとか…関係ないし…わたし、そんなこと…思ってな…」
最後の語尾は言えなかった。松崎くんがわたしを見つめているのがわかる。わたしは強い視線がこわくて目をそらした。

そのまま長いあいだわたしと松崎くんは止まっていた。長い沈黙。先に動いたのは松崎くんだった。

「嘘だよ」
乾いた声で松崎くんはそう言って、ゆっくり私の腕を外した。
「じゃあ…」
松崎くんはわたしを見ずに早足で駅に歩いていく。

正直、しばらくボーッとしてなにがなんだかわからなかった。えーと…。

あれ?

これは、もしかして…わたし、ふ、ふられた?



5章終






73 :32:2008/08/15(金) 00:56:15 ID:+TWYqaqa
以上です。

ルール知らなくてすみませんm(__)mありがとうございます。

次からリンク先のやり方を見て、気をつけます!

74 :名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 01:31:23 ID:VdiWLIGW
段々気になってきた…。
続きを待っている。

75 :スイーツと香辛料 6章「落ち込み」1:2008/08/15(金) 02:14:50 ID:+TWYqaqa
次の日二日酔いで一日ねていた。日曜日でよかった。

だんだん回復していくうちに麻痺してた思考がまわりだしてくる。
「アーッッッ!」
思わず枕に顔をうずめて叫んでしまった。足をジタバタさせる。
なんてことだ。ひどい。恥ずかしい。…悔しい。

過去に二人の人とつきあった。一人は中学の時でバカなのですぐふった。
もう一人は高1の時別の高校の人と遊んだときに会った1コ上の人。この人とはそれなりの関係はもった。
遊びとかノリでとかで男の子とそういう関係になったことはない。

そのあまり多くはない経験からしても、男の子―特に高校生くらいのーはいつもガツガツしてて、隙をみせると手を出してくるし、ゆるすと癖になる。
珍しく紳士的にふるまってくる人は本気で好きになった人―これもつきあってしばらくすると、ね―だいたいこれらは間違いないはずだった。


76 :スイーツと香辛料 6章「落ち込み」2:2008/08/15(金) 02:23:29 ID:+TWYqaqa
いくら遊びとかに慣れてなさそうな人でも二人分一万円位になる食事に5回も6回も誘ってきてたんだよ?
それは、そういうことでしょう?

「無理だよ」
冷たい声。その後すごく強い目で見つめられた。あれじゃこわくてごまかせない。

「つりあわないと高梨さんも思ってる」
…あまりに図星だったから、何もいえなくなってしまった。でも。それならなんで何度も誘ったの?

涙が出てきた。嫌な想像ばかり出てくる。
もしかしたら、彼は下心なんてなかったのかもしれない。変わってるし。
本当にただ自分の選んだ店で喜ぶ人が見たいだけでたまたまわたしを誘っていたのかも。
だとしたら昨日のわたしは…バカ?勘違いさせないようとかいって自分が勘違いしてたということ?

母さんが心配になって見にきたくらいの声でまた二回叫んだ。

はあ、別にいいじゃないか。酔ってたし気まぐれで言っただけだし。…気まぐれのはずだし。


77 :32:2008/08/15(金) 02:26:23 ID:+TWYqaqa
以上です。寝ます。

だんだん登場人物の整合性をとるのが難しくなってきました。
アドバイス・苦言・要望等ありましたらぜひお願いします。プロットは大筋全部決めてはいますが、変わるかもしれません。


78 :名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 03:35:24 ID:3vvYksXl
>>32
ヒロインが『ビッチ』というほど嫌な女じゃないので、逆に可愛げがあっていいですね。
オタク(?)少年も気の弱そうな面と「無理だよ」と言える強さのギャップが堪らない。

今後の展開を楽しみにしています。

更新が早いのは嬉しいのですが、書いてから一晩おいて読み直してみてから投下、
というぐらいのペースでもいいかと思います…老婆心ながら。

79 :名無しさん@ピンキー:2008/08/15(金) 10:03:46 ID:TfyDciKZ
久し振りに作品を読んで「う〜ん面白い」と唸ってしまった……Gj!!
作品は職人さんの、タイピングの結晶です。好きに書いたら良いと思いますよ。

80 :名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 01:20:17 ID:TeQTD9x5
イイヨーイイヨー

81 :埋められない場所 1/10:2008/08/16(土) 01:43:12 ID:nK6h/LEg
触発されて書きました。このスレの話があまりに面白かったので。


 寝る前に携帯をチェックするのは日課だった。今日もメールの件数が二桁。そしてその半分以上が男。
 私には彼氏が常に数人いる。ただし、記憶に残る恋人というものはほとんどいない。
 記憶に残ってるのは二人だけ。付き合って一か月で死んじゃった初恋の男の子。そして、付き合った男の中では唯一年下の男の子。
 その子は別れ際、
「違うでしょう」
 と言った。
 違う・・?何が違うっていうの?
 その時の状況を私は何とか思い出そうとしたが、どうしてもぼんやりとしか思い出せない。
 その時の私の隣には誰かいたような気がした。そして私の正面には、その男の子が暗い顔で私を見ていた気がする。その口が、「違うでしょう」と言っている。その時の私の顔は・・・
「やめた。変なこと考えるの」 
 私は途中で考えるのをやめ、ベッドに入った。

82 :埋められない場所 2/10:2008/08/16(土) 01:46:16 ID:nK6h/LEg
 翌日、私は恋人とお洒落なカフェにいた。 
 彼はなかなかカッコいい顔で、社交家だった。お金はそれほどもっていなかったが、それに関しては「他の恋人」の担当なので気にしていなかった。
 学生時代、私は自分でも社交家だったと思う。友達も多かったし、彼氏もいた。出会いも別れもたくさんあった。社会人になった今でも、それは変わっていない。
 ただ、貰う物やお金の額、そして恋人の数は変わった。
 私は、恋人というものは、自分を満たしてゆえに存在するのだと思う。しかし、存分に満たすことを考えるのなら、一人では無理だし、そんなのは酷というものだろう。
 だから恋人が複数いるというのはむしろ自然なことだと思う。私を「ビッチ」なんて罵倒して去って行った男が何人かいたけど、よくよく不思議でならない。
女を・・・いや、人間を理解してないのではないのだろうか、と思う。私はその男達にそれほど過度な期待をしていたわけではない。
私が必要としている部分のひとつかふたつ程度を埋めてもらいたかっただけなのに、彼らは理不尽にも怒り、時には何かを投げつけて、去って行った。
 それ以来、私はできるだけそんな理不尽を起こさなさそうな男だけと付き合うことにしている。
 今、目の前にいる男もその条件にあてはまっていた。彼の役割は、ぺらぺらと面白い話をして、そこそこに楽しい空気を作り、そこそこの時間を私に与えることだけだ。それでいいのだ。
 ふと、視界の端に知っている顔が映った。
「あ・・」
 忘れもしない顔だった。昨日の夜、寝る前に思い出した男の子だったのだ。思わず目が釘付けになる。
「ん、どうしたの?」
 現在の恋人が不思議そうに聞き、私の視線の先をたどろうとする。
「あ、ごめん、ちょっと化粧室に・・」
 たどられる前に止めようと、私は席を立ち、トイレへと向かった。その途中で、例の男の子かどうかもう一度確認する。やはり、間違いなかった。彼だった。
 化粧室と書かれた標識の前で、私はメールを送った。「トイレの前に来て」と。
 もうアドレスが変わってしまっていたどうしようかと考えたが、幸いなことに彼はやってきた。・・不機嫌そうな顔で。

83 :埋められない場所 3/10:2008/08/16(土) 01:48:32 ID:nK6h/LEg
「ひ、久しぶり」
 最初の挨拶は私からだった。
「・・そうですね。大森さん」
 彼の声は暗い。
「げ、元気だった?」
 声が上ずる。私らしくもない。
「・・まあまあですよ。大森さんこそ、相変わらずみたいですね」
「相変わらず?う、うん。元気だよ」
「違います。相変わらずモテているってことです」
 どきりとした。
「え?なんで?」
「一緒に話してた人、恋人でしょう?」
 何ということだろう、彼もまた、私に気づいていたのだ。
「うん。えへへ、私モテルから。あはは」
「・・そうみたいですね。彼は何曜日の恋人ですか?」
 ぐさり、と何かが私に刺さった気がした。何故だろう。同僚の女の子に言われても、少し前に別れた恋人に言われても何も感じなかったのに。
「あはは、きついなぁ」
「・・否定はしないんですか?」
「・・・・・」
 軽い怒りの感情が沸いてきた。何だろう、こいつは。
「ねえ、もうどれだけ経ったと思ってるの?まだ根にもってるなんて、器の小さい男ね。そんなんじゃどうせ、彼女もいないんでしょ?あの時みたいに」
 彼は、当時恋人がいなかった。積極的なほうじゃなかったし、少し暗かったから。そんな彼とわざわざ私が付き合ったのは、神様のいたずらというか、気まぐれというか。
 まあそんな男だから、どうせ一人だろうと思って言ったのだ。
「いますよ」
 しかし彼の口からは驚きの答えが返ってきた。
「え?うそ。もー、また見得はって・・」
「大森さんとは違って、一人とだけ付き合ってますよ」
 私の声をかき消すように彼は言葉を続けた。信じられなかった。でも、その表情があまりに自然だったので、本当かもしれないと思えた。
「・・・ふうん。それは良かったね」

84 :埋められない場所 4/10:2008/08/16(土) 01:51:04 ID:nK6h/LEg
「ありがとう。大森さんも今の彼と幸せに。・・他の彼とも」
 また私の癪に障る言い方だった。
「ええ、そうね、ありがとう」
 私はそう言って彼との会話を切り上げ、その場から歩き出した。
「あ」
 しかし十メートル程度離れたところで、私は振り返った。思い出したことがあったのだ。
「ねえ、違うでしょうって、どういう意味?」
「え?」
「言ったじゃない、違うでしょうって。私が聞き返す間もなく、あなた帰っちゃったから聞けなかったけど。ねえ、どういう意味?」
 彼はしばらく沈黙した後、私に教えてくれた。
 しかしその時の私には、その答えは全くもって意味不明だった。

 月曜の夜。私の上に乗っている男の顔を見ながら、私は昔の事を思い出そうとしていた。
 一昨日はぼんやりとしか思い出せなかったが、昨日彼と会ったお陰で大分記憶が鮮明になってきていた。
 彼が「違うでしょう」と言ったその日。私は彼には内緒で、彼の知らない男を自分の家に上げて、キスをしていた。そこへ彼が訪ねてきて、彼は例の言葉を残して去って行ったのだ。
 彼の言葉は、もちろん単独で突然出てきたものではなく、私の言葉に対してのものだ。
「ごめん、怒らないで。私、寂しくて・・」
 私はそう言ったのだ。
 寂しくて、という言葉に対し、違うでしょう、と彼は言ったのだ。
 私の浮気現場を見て、怒ってそれっきり、という恋人は他にもいた。いい別れ時だ、なんて言って笑ってる男もいた。
 けれど大半は後で許してくれた。「寂しい思いさせた俺が悪い」なんて言って。
 でも「違うでしょう」なんて、そんな謎かけみたいな言葉を残して去って行ったのは彼だけだった。
 違うでしょう、か。何が違うっていうんだろう?寂しい、というのは私の本心だ。
 寂しいっていうのは、つまり女の求める「男」という欲求の部分において、埋められないパーツがあるゆえにおきる感情だ。
それを好色だの男好きだのヤリマンだのビッチだのと言うのは勝手だし、まあ仕方ないとは思うのだけど、とりあえず「寂しい」っていうのを否定されるのはおかしい、と、思う。
 考えても仕方ないことなのだろうか。別れ際に言う言葉に、大した意味なんてないのだろうか。
「ああー、いいよ、いいよ・・いきそう・・」
 私の上に乗っている男が、真剣な顔で気持ちよがっている。私の身体も別に不感症というわけではないのでそれなりに反応はしているのだが、どうも集中できない。

85 :埋められない場所 5/10:2008/08/16(土) 01:53:04 ID:nK6h/LEg
 昨日、彼は私に質問の答えを言った。
「寂しいからじゃない。いろんな人相手にニュートラルにしてないと不安なだけなんだと思うよ、大森さんは」
 ニュートラル・・。車で言えば、どこにもギアが入ってない状態のこと。動いてないってこと。
 私が、動いてないとでも言うのだろうか?いや、私は行動派なタイプだし、色んな経験もしてきた。少なくとも、インドア派な彼よりは色々なところに出かけたと思うし、色々な人とも会ってきた、と思う。
 ・・いや、もちろん彼もそういう意味で言ったんじゃないだろう。もしかして、私がどんな人相手に対しても、かたよりがない、と言いたかったのだろうか。
 偏りがない、そう、悪く言えば八方美人。八方美人にしていないと不安、だといいたいのだろうか?
 そりゃそうよ!と心の中で叫ぶ。
 私は自分の充足のために、色んな男に粉かけてるもの。それに世間、社会っていうのはそういうものでしょう。みんな多かれ少なかれ八方美人じゃない。人気が出るのはそういう人でしょう?
「ああ、いく、いくーっ!」
 目の前にいる男が叫び、私の腰を強く引き寄せた。
 八方美人か。脳裏に、昨日の彼の言葉に加え、声色まで鮮明によみがえり出す。
『いろんな人相手にニュートラルにしてないと不安なだけなんだと思うよ、大森さんは。でも本当は、そんなことしたくないんでしょう?』
 不意に、私は目を見開いた。心臓がどきん、と大きくはねあがり、そのまま鳴り止まない。
「あ。大森さんもいった?イった?」
 顔を上気させながら言う男を、私は無表情で押しのけた。
「う、うわ、なんだよ!」
「ごめん、明日朝一で必要な書類作るの忘れてた。悪いけど先帰るね」
 もちろんこれは嘘だ。
「お、おい、待てよ!」
 男の言葉に耳も貸さず、私はホテルの部屋をあとにした。そして家に帰ってシャワーを浴びた後、すぐに「違うでしょう」の彼に電話をした。

86 :埋められない場所 6/10:2008/08/16(土) 01:55:17 ID:nK6h/LEg
「大森さん、今何時だと・・」
「良いから。もともとあんたのせいなんだから」
「な、なにそれ・・・」
 二十四時間営業の喫茶店で今、私は彼と向かい合わせに座っていた。
「もうこっちはベッドに入ってたのに」
「あらそう。私はホテルのベッドから出て、シャワーを浴びたばかりよ」
 さすがに、この言葉の意味は分かるだろう。
「・・・・・どうしました?なんか今日は感じ違いますね」
「ややこしい前置きはなしにしたい気分なの、今日は。ねえ、言葉の意味、分かったわよ」
「え?」
「八方美人を嫌々やってるんでしょうってことかと最初は思ったけど、そうじゃないわね」
「ええ、違いますね」
「誰にでもいい顔をする、じゃなく、私が誰とも深いところまで踏み込んでないってことでしょ?身体じゃなく心が。私が相手にのめりこまないようにしてるって、言いたいんでしょう?」
「はい」
「やっぱり。でもそれっていけないこと?だって人間、一人によりかかっては危険じゃない。その人に裏切られたときどうするの?きっと酷い傷がつくわよね。そうじゃなくても、その男に冷めたときどうなるの?
それまでのめりこんでた自分が酷くみっともなくなるじゃない。それに・・それに・・」
「死んじゃったら、どうするのって?」
 私は耳を疑った。
「何で知ってるの?」
「風のうわさで」
「・・ふん。そうよ。死んじゃったらどうするの、いなくなったらどうするの?その時、他に私の心の支えになってくれる人がいなかったらどうするの?
あんた責任とってくれるの?私の『保険』、誰に否定できるっていうのよ!」
 最後の方は、もう叫び声になっていた。周りの客が何事かと私を見る。私はその視線に気づき、軽く頭を下げ、小さくなる。

87 :埋められない場所 7/10:2008/08/16(土) 01:56:42 ID:nK6h/LEg
「否定はしません」
「だったら!」
「でも、本当に今は幸せですか?今まで、楽しかったですか?」
「はん、決まってるじゃない。私はいつだって・・」
 幸せと言いかけて、言葉が詰まった。答えは決まっていたはずなのに。まるで何かに口をふさがれたように、私の言葉はとまってしまった。
「死んじゃった彼と付き合った日々は、無駄でしたか?」
「・・・・・」
「・・・・・」
 反則だ、と思った。死人を持ち出すなんて反則だ、と。
「・・・無駄なんかじゃ・・」
「え」
「無駄なんかじゃ、ないもんっ!!」
 ぶわっ、と涙が溢れ出した。ゆっくりとではない。まさに滝のように、設けられていたダムが決壊したように流れ落ちていった。
「わあっ!ご、ごめんなさい!言い過ぎました!」
 彼があわてて備え付けのティッシュペーパーを差し出してきた。私はそれをひったくるように受け取り、終いにはぶびびびび、と鼻をかんだ。とても、同僚達や男達には見せられない行為だった。

 しばらくして。
 涙がすっかり乾いた後、私は口を開いた。
「あんたね、年下なのに生意気なのよ。何よ、たった数か月付き合っただけのくせに。『私の本心を知ってます、隠れた気持ちを知ってます』面してるのよ。今まで誰にも言われたことないわよ、そんなこと」
「数か月も、ですよ。それだけ付き合えば分かります。気づかない奴らの方がどうかしてるってもんですよ。本当に好きなら。それに・・大森さんのことは前から知ってましたし」
「え、何それ。私は知らなかったわよ、あんたなんか」
「・・例の転校生が死んだって事件の頃。上級生の大森さんが、一人でクラスで泣いてたのを偶然見て。それで大森さんのことを知りました」
「・・・・・」
 なるほど。あの場面を見られてたのか。どうりで・・・。

88 :埋められない場所 8/10:2008/08/16(土) 01:58:32 ID:nK6h/LEg
「ねえ」
「はい?」
「・・あんた彼女と一緒に住んでるの?今」
「あ、いや・・」
「一人?」
「・・ごめんなさい。実は、今彼女いるってのは嘘なんです」
「え」
「実は別れたばかりで。俺も人のこと言えないんです本当は。大森さんのことまだ引きずってたから、それを見破った彼女にも愛想つかされて。
何回も大森さんのこと諦めようとしたんですけど。でも、だからこそ大森さんには本当にしたいことをしてほしかったというか・・いや、勝手な言い分なんですけど」
 最後まで聞かず、私は言った。
「なら・・あんたの家、行きたい」

「ね、ねえまずいですよ、やっぱりこんなこと」
「何今更言ってるのよ。本当に駄目だと思ってるのなら、家に入れないくせに」
 私は彼の一人暮らしの部屋に入るや否や、彼を押し倒し、その顔にキスの雨を降らしていた。
「や、やめ・・」
「ふんだ、本当はやめてほしくないくせに。ほら、こんなに固くなってる」
「あ、あうう」
 彼は魂が抜けるような声を出す。やれやれ、そんなに気持ち良いか。

89 :埋められない場所 9/10:2008/08/16(土) 02:02:03 ID:nK6h/LEg
「そういえば、あんたとはHまでいかないで別れたもんね。手でしてあげただけ。ふふ。でも、あんた手でされるの凄く気持ち良さそうにしてたよね。あんた童貞だったし」
 そう言いながら私は動く手を止める。意地悪のつもりで、だ。
「あ、あ、と、止めないで」
「ぷはっ、やっぱりHしたいんじゃない。ほらほら!」
「あ、ああっ!」
「・・・え?」
 右手に、パンツ越しに熱が伝わってきた。こ、これはもしや・・。
「あんたはやすぎ!」
「だ、だって・・」
 はずかしそうに顔を赤くする彼。とても先ほどまで私に冷静に諭していた男と同一人物とは思えない。しかしそのギャップがまた妙に愛しく思え、私は心の中でもだえた。
「あははは。まあまだまだ固いようだし、いけそうね。さ、脱がすわよーん」
「ちょ、じ、自分で脱げるって!」
「だめ。お姉さんに任せなさい。さっき偉ぶった罰よ」


90 :埋められない場所 10/10:2008/08/16(土) 02:03:06 ID:nK6h/LEg
 そう言って私はさっさと彼の下着を脱がし、モノを丸出しにさせた。
 そしてその上にまたがり、そのまま入れた。下着を脱ぐのも面倒だったので、ずらしただけの状態だった。
「ちょ、いきなり!しかも生で・・」
「だって。早くしたかったんだもん」
「そ、そんな・・」
 私は腰を一心不乱に振り、彼を味わった。予想通り、すさまじい快感と充足感が私の心を覆う。それは、技術とか相性とかの話ではない。浅い付き合いではどうしても埋められなかったその場所に、必要なものがようやく入ったという感覚だった。
「んっ!ふ・・っ!うっ」
「あ、あ、大森さん・・・!」
 溶け合う。下半身から上半身が。触れている場所すべてが快感で溶け合う。気持ちよさを、幸せな気持ちを、嬉しい気持ちを深く共有できたような感覚。
「やんっ!だめ、まだ膨らんじゃ、だめえっ!」
 永遠に続いてほしい感覚。なのに、突如膣内で「中断」の宣告があったため、私は彼に抗議した。
「そんなこと言ったって・・気持ち良過ぎて、あ、やばい、抜かなきゃ!」
 そう言って彼は私から離れようとするが、それはならなかった。私が彼に強くしがみつき、離れなかったから。
「お、大森さん、ちょっと。ふざけてる場合じゃ・・あああっ!」
 その瞬間、彼のは一気に膨張し、私の中に精を吐き出した。
「はあ・・はあ・・」
 彼は快感のせいでしばらく言葉も発せない様子だったが、落ち着くとすぐにこう言った。
「お、オオモリさん。まずいよ、中に出しちゃったら・・」
「大丈夫」
「え、な、何で?あ、そうか、ピルとか使ってるんですか?」
「ううん、気持ちよかったから大丈夫。さ、もう一回。まだ固さ保ってるし、いけるでしょ」
「・・・・・」
 彼は一瞬言葉を失ったようだったが、すぐにまた、「私」という快感の虜になった。・・お互い様だったけど。
 結局、あの後彼の精がほぼ尽きるまで私は彼を貪った。息も絶え絶え、腰も抜けきった様子の彼に、私は声をかける。
「あんたには責任とってもらわないと。私ですら忘れてたこと思い出させたんだから、ね。浮気したら許さないわよ」
「よ・・よく言うよ・・」
「何か言った?」
「ええ、言いましたよ。幸せにします、と」
「もう、ばかっ!」
 そう言って私は彼に枕を投げつける。胸の中に、満ち足りた暖かい感覚が広がっていく。大人ぶっていた私が、ようやく本当に大人になった瞬間だった。

91 :名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 02:06:07 ID:nK6h/LEg
おしまい。読んでくれてありがとうございました。


92 :名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 02:07:40 ID:l+3EjqcN
Gj。リアル投下で読めたし面白かったぜ。


93 :名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 02:09:02 ID:sb0WuVDV
GJ
イイヨイイヨー

94 :名無しさん@ピンキー:2008/08/16(土) 03:23:04 ID:CmHAYfy6
これは良スレの予感

95 :32:2008/08/16(土) 09:27:50 ID:cyrobnDz
GJ!

このスレのテーマに自分のよりぴったりで素晴らしい!

えろいのに積極的なキャラ造形もいいですね〜。

96 :90:2008/08/16(土) 11:28:54 ID:nK6h/LEg
感想ありがとうです。また何か思いついたらすぐ書きますね。
あと>>32さんの続き、すげー期待してますね。俺はそもそもスイーツと香辛料が無かったら書いてなかったと思うので。

97 :スイーツと香辛料 6章「落ち込み」1:2008/08/17(日) 00:47:40 ID:pLe/SbU2
「は、くだらない」
誰にきかせるともなく一人でつぶやいて、月曜日の憂鬱な教室にむかった。

教室に入り、中をみまわす。

いた。

こちらをふりむきそうになった瞬間おもいっきり無視してやるようにみさきの方へふりむいた。
ふん、て感じ。
は? そんな人いましたっけ?

結局、その日から二週間わたしはあまり見もしなかったし話もしなかった。

「葉子」
「…なに?」
「…こわい。にらまないで」
「え、にらんでた?」「うん。ブスだったよ」
「ブス…」
ため息をついてうでを枕に頭を机におしつけた。
「ブスだよねー、わたし」
「えー?葉子どうしたの?」
「んー…」
みさきはわたしをしばらく見ていった。
「葉子、最近変だよね?」
「んー」
「ちょっとイタイみたいな?」
「マジで?」
自分ではそれほどでもないつもりだったのだけど…。
「葉子、最近松崎くんと喋ってないよね?」「…わかった?」
「ていうかね、正直バレバレだった」
「あー」
「なんか無視してるけどすごい意識してるし」
「うー」
「ちょっと葉子、大丈夫?しっかりしなよ」みさきにうながされ、わたしはそのことを話した。


98 :32:2008/08/17(日) 00:54:55 ID:pLe/SbU2
今日は以上でm(__)m

他の書き手を触発できてとてもうれしいです!自分のはちょっと現実のグロさエグさを知る一歩手前のぴゅあ?気味な物語でまとめようと思うので(だから性的な部分はソフトで短くなりそうです。何章かなくなる感じで(*_*)、いろいろな切り口の話を見たいですよね。


99 :32:2008/08/17(日) 08:36:28 ID:pLe/SbU2
訂正です。

>>97タイトル「落ち込み」1じゃなくて3でした。

100 :名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 14:34:28 ID:DChrwF8U
続ききてた!早くみさきの反応がしりたい

101 :スイーツと香辛料 6章「落ち込み」4:2008/08/17(日) 16:13:37 ID:pLe/SbU2
「なるほど」
みさきはイスの背もたれにひじをかけて、わたしの話を一通り聞いたあと、そう言った。
「私誘ってくれないなんてひどいじゃん」
「ごめん」
たぶん、彼は月二回二人分が精一杯だったと思うから、三人でとかなかったと思うけど……。みさきと彼で二人? やだ。
「それで、葉子の結論は?」
「結論?」
「葉子は今こうなってて、これからどうしたいの?どうなりたいの?」
わたしはどうしたいのか……そうだ、それに直面しなきゃいけないんだ。

「それは…」
「うん、それは?」
「こんな風に自分がなっちゃってるってことは……」
「うんうん」
「やっぱり、そういうことだよねえ……?」
「そう思うけどね」
そうだよね、と答えてから、わたしは呆然としてつぶやいた。
「びっくりだよね」
「かなり。私からするとけっこう驚愕なんだけど」
「そうだよね……」
わたしは机につっぷした。
「どうしよう……」
みさきはわたしの頭をよしよしと撫でた。ありがたかったけど、わたしは顔を上げられなかった。顔が熱くなっているのがわかっていたから。
要するに、わたしは気づいてしまったわけだ。彼、松崎くんに対する、自分の気持ちの変化に。
「どうしよう……」
もう一度わたしはつっぷしたまま、つぶやいた。
「んー、ああいう人ってあんたみたいのが誘えばコロッといくんじゃないの」
「馬鹿」



6章終。7章「告白」へ。


102 :32:2008/08/17(日) 16:16:21 ID:pLe/SbU2
以上6章です。
次が話の曲がり角。全体も10章ちょいになりそうだし。
次は一章分全部書いてからアップしましょうか?携帯で打って携帯であげてるから、つい細切れになりがちで。

103 :名無しさん@ピンキー:2008/08/17(日) 16:37:01 ID:DChrwF8U
続きGJ。いい展開、面白いです。携帯ならそりゃ時間かかる・・こちらも気長に待ちます

104 :名無しさん@ピンキー:2008/08/18(月) 02:56:11 ID:Bymg2l3A
GJ!

続きが気になる〜

105 :名無しさん@ピンキー:2008/08/19(火) 22:38:36 ID:EPNv2w9l
ほしゅ

106 :変わる自分、本当の自分 前半 5/5:2008/08/19(火) 23:23:58 ID:ynVFSF+l
性懲りもなく、また書かせてもらいます。思ったより時間がかかってしまったので、前半部分だけですが。続きは推敲した後、明日にも全部あげる予定です。


「あれ、小木さん?」
 夜の静かな電車内。女友達と会話していた私に声をかけてきたのは、同い年ぐらいの高校生の男だった。
「え・・誰だっけ?」
 その人懐っこそうな顔に見覚えはあるのだが、名前が出てこない。ちらりと隣にいた友達の顔を見ても、首を横に振るだけだった。
「あ、覚えてない?ほら、小学校で一緒のクラスだったじゃん。あげぱん食いまくった・・」
「あーーーーー!思い出した!あげぱん食べ過ぎて保健室に運ばれた・・レンちゃん!」
「そうそう、そいつ俺。いやー懐かしいなあ」
「あはは」
「何々、昔の同級生?」
「そうそう、小学校の・・」 
 私は今の友達に笑顔で説明しながらも、背中に冷たい汗を感じていた。
(何で・・・・・分かったんだろう・・)
「いやー見違えたよ、小木さんきれいになっててマジびびった」
「えー、そ、そーかなー?」
 私はどう反応していいか分からず、ぎこちない笑顔で答える。それを見て、友達が吹き出す。
「何ネコ被ってんのあんた。もしかして昔好きだったとか?」


107 :変わる自分、本当の自分 前半 2/5 ↑上の数間違えた・・:2008/08/19(火) 23:25:30 ID:ynVFSF+l
「ば・・かなこと言わないでよ」
「え、マジで?いやー嬉しいなー」
「違うってばっ。もー」
 傍から見たら、どれだけ普通に見えるだろうかと心配しながら、私はなんとか会話を続ける。早く電車が目的地に着いてくれることを願いながら。
 妙にゆっくりと時間が流れた後(私にはそう感じた)、目的の駅に電車が止まった。やっとこの心臓に悪い会話から抜け出せる。
「あ、私ここだから。じゃあね二人とも」
「あい」
 と、答えたのは女友達。それに続いてレンちゃんも返事をする。・・とんでもない返事を。
「あ、俺もここで降りるよ」
「えっ!?」
 同じ小学校に通っていたということは、引越しや一人暮らしでもしない限りは基本的に住所は近いものだと、叫んでから気づいた。
(どうしよう・・)
 顔にこそ出てないだろうが、私の頭の中は緊張のあまり混沌としていた。

108 :変わる自分、本当の自分 前半 3/5:2008/08/19(火) 23:26:36 ID:ynVFSF+l
 小学生のころの私の容姿は、正直可愛くなかった。そしてぽっちゃりしていた。性格も暗めだった。
 男子によるからかいの的で、毎日憂鬱だった。私はコンプレックスのかたまりだった。
 綺麗になりたい、そう願って出した答えが整形だった。
 高校生になる少し前に私は顔をいじり、化粧を学び、そしてダイエットに励んだ。
 高校生になった時、私は明るく綺麗で、人気者になった。
「付き合ってほしい」と私に何人も言いよってきた。そして色んな男の子と付き合ってみた。しかし、すぐに物足りなくなった。
 その理由を自分なりに考えてみた結果、つまりもったないから、ということだった。せっかくきれいになったんだから、ずっと同じ男とだけ付き合うなんてもったいない、ということだった。
「ただいまー」
 レンちゃんに近くまで送ってもらった後、私は自宅の玄関の鍵を開け、中に入った。
 予想通り、ママは仕事でおらず、妹だけがいた。
「おかえりー」
 妹は相変わらずゲームをやっていた。
 ゲームといっても、敵をバシバシやっつけていったり車のレースをするようなジャンルのものではなく、意中の男を落としていくというややアレ系なゲームだ。
オタクを明るく公言している妹は、家では暇さえあればこういうのをやっているか、男と男が絡み合うような漫画を読んでいる。妹でなければ、正直近づかないタイプだった。
 そんな妹でも、学校では不思議と人気者だった。小、中、高とずっと学校が被り続けているが、妹のクラスをいつ覗いても妹はクラスの中心で、蔑まれたり嫌われたりしている風が無かった。
 明るさのせい、というのはあった。しかし何より、顔が美少女だったからだ、と思う。私が整形に踏み出すほどコンプレックスを抱いた理由のひとつは、妹の顔だった。一緒に並ぶといつも妹が可愛がられ、ほめられた。
「今日、レンちゃんに会ったよ」
 そう言うと、ようやく妹がテレビ画面から目を離し、私のほうに向き直った。
「え!レン君に!?どうだった、どうだった?」

109 :変わる自分、本当の自分 前半 4/5:2008/08/19(火) 23:27:56 ID:ynVFSF+l
 犬のように寄ってくる妹。
「うん、相変わらず良い奴だった」
「かっこよくなってた?」
「うん、まあね」
「やっぱり!お姉ちゃんが好きだった人だもんね」
 ずきんとした。
「うん・・」
「ねえ、メアドとか番号、交換したよね?今度こそ付き合ってって言ってみようよ!」
「・・・・・嫌よ、そんなの」
 電話番号は確かに教えてもらった。しかし、交換ではなかった。今は携帯の電池が切れてるからと嘘をついて私は自分のメアドや番号を教えるのを何とか拒もうとした。
昔の私を知る人とはあまり関わりたくなかったからだ。レンちゃんに教えれば、芋づる式に昔の同級生達にも私のことが知れ渡る可能性がある。
『あいつ整形したんだってよ』
 そう陰で言われそうで嫌だった。そう思っている相手と話をするのはいやだった。新しくなった私に、忌まわしい過去は必要なかった。
 でも、レンちゃんは私の意図を知ってか知らずか、
「じゃあ気が向いたら電話してよ」
 と自分の番号とメールアドレスを書いたメモを私に渡してきた。しかしかけられるわけが無い。
「ねえねえ、かけよーよ!私もレン君の声久々に聞きたいなあ」
 またずきんと胸に刺さるものがあった。嫌な思い出がよみがえる。
「ねーねー」
「うるさい!かけないって言ってんでしょ!」
 私はそう言うと、妹を突き飛ばして自分の部屋へ入り、横になった。
 携帯を開くと、タケシからの着信があった。なんてしつこい男だろう、と思いながら、私はそのまま眠ってしまった。


110 :変わる自分、本当の自分 前半 5/5:2008/08/19(火) 23:29:16 ID:ynVFSF+l
 翌日。
 廊下で数人のクラスメートと雑談をしていると、クラス一目立たないと言われている女、高橋が目の前を通り過ぎた。
 通った後、みんな好き勝手に喋る。
「あの子、地味だよねー。男っ毛全然なさそう」
「きっと処女だよね。キャハハ」
 そうだろうなあ、と思い、私も笑う。
 この中で、きっと一番暗い笑みをしているのは私だろう。
 高校生になってからの私には、優越感という強烈な快感が常に纏わりついている。
 コンプレックスの反動だと自分でも思う。しかしだから何だ、とも思う。
 この世の中で可愛いということはとても大きい。社会的強者ってやつだと思う。その快感に浸れる喜びは、なってみないと分からない。
過去の劣等感がそれを増幅させているというのなら、私はそこに感謝しなくてはいけない。
「おい、カオル」
 聞きなれた声に名前を呼ばれ、げんなりしながら振り返る。そこには残念なことに、やっぱり、タケシがいた。
「おい、なんで返事くれねーんだよ」
「何で私が返事すんの?あんたこそ、またかけてきたら着信拒否にするって言わなかったっけ」
「ばっか、おまえ、照れんなよ」
 きもい。
「きもい」
 現実の声と心の声が同時に出ていた。
 タケシは一日だけ付き合ってやったことのあるチャラ男だ。
 やたらしつこいので付き合ってやったが、あまりの台詞や性格のキモさに耐え切れず、速攻でふってやったが、依然としてまとわりついてくる。
「なー、今日遊びにいかねーか?良い店見つけたんだ」
「あのさ、いい加減・・」
 しつこすぎるタケシに私が本気できれかけた時、目の前に信じられない光景が広がった。
 先ほど私が嘲笑っていた地味な女、高橋が男と話していた。そしてその相手は・・レンちゃんだった。
「ん?どうした?カオル」
 タケシの声など耳に入っていない。
 私は目の前で起きている事態にただただ唖然としていた。

111 :変わる自分、本当の自分:2008/08/19(火) 23:31:26 ID:ynVFSF+l
今日は以上です。読んでくれてありがとうございました。

112 :名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 00:57:50 ID:uqkYeN74
おおGJ!
これは先が気になる!!
是非是非続きをお願いします

113 :名無しさん@ピンキー:2008/08/20(水) 02:44:14 ID:k/Y05Ff2
ああ、やっぱりGJだ。

114 :32:2008/08/20(水) 03:22:22 ID:Flj1gFz3
GJ!これはいいですねー!けっこう多い登場人物のそれぞれの対比・関係が立ってる感じがして、楽しみです!

115 :変わる自分、本当の自分 後半 1/15:2008/08/20(水) 22:55:51 ID:DZDVEV9N
感想ありがとうございます。それでは思った以上に長くなってしまった後半、どうぞ。


 夜。
 騒がしい店の中、私は壁によたれかかり、考えていた。
(あの女、高橋・・)
 後で他のクラスメイトに聞いたところ、高橋は最近他校の男と付き合いはじめたらしい。そしてその相手は・・・よりにもよっ

てあのレンちゃんだった。今日はたまたま近くに来たから寄って行っただけらしく、すぐに彼はいなくなった。
 彼の姿を見つけた後、私はすぐに隠れたため、彼が私に気づくことはなかった。
「ね、ねえ私、やっぱり場違いだよね・・」
 高橋はそう言って困ったような顔を見せる。私はそれに対し、得意の作り笑顔を見せる。
「大丈夫だよ。こういうところはただ楽しめば良いんだから。あ、ちょっと私トイレね」
 そう言って私は高橋からちょっと離れたところに行った後、タケシを呼ぶ。
「なあなあ、なんで高橋も呼んだんだ?別に仲良くなかったろ?」
 そう、仲は特に良くない。良くないどころか、私の中では最も嫌いなクラスメートに今日格下げしたところだ。
 しかしだからこそ私はこの店に誘ったのだ。
「ねえタケシ、あんた私のこと好き?」
「ええ?いきなり何言い出すんだよ。むしろ愛し合ってるだろ!」
 相変わらずのノリ。私は軽い吐き気を催しながら、言葉を続ける。
「何なら、本当に愛してあげても良いよ。ただ、その前にあの女犯して」

116 :変わる自分、本当の自分 後半 2/15:2008/08/20(水) 22:57:10 ID:DZDVEV9N
「お、おい、お前何いってんだよ」
「あの女と私が一緒に帰るとき、途中公園に寄るからさ、あんたはマスクでもして高橋に襲いかかって。私は上手く逃げることができた被害者ってことにするから」
 タケシが、普段見せないようなマジな驚き顔で私を見る。
「な、何いってんだよ、馬鹿じゃねーの」
「成功したらやらしてあげる。・・まあ犯すの無理そうなら、顔でも腹でも殴るってのでもいいよ」
「おい、お前どうかしたんじゃねーのか?」
「いいからやってよ」
 私はそういいながら、触りたくも無いタケシの一物を握ってやった。布ごしとはいえ、みるみる固くなっていくのが分かる。
「うおっ!やべえっ、やべえって!」
「この続きがしたいでしょ?」
「う・・ぐ・・わ、分かった」
 話は決まった。
(高橋、あんたぐらいの女がレンちゃんと付き合うとか、許されるわけ無いじゃん)
 私はまた最高の作り笑顔で高橋のところへと戻って行った。

117 :変わる自分、本当の自分 後半 3/15:2008/08/20(水) 22:58:12 ID:DZDVEV9N
「凄かったね。私ああいう場所はじめてだから凄く新鮮だった!」 
 帰り道。高橋は無邪気にはしゃぎながら、私に言う。
「そう、良かった」
 私は作り笑いで相槌をうつ。糞女が、と内心で思いながら。
「音楽とかあんまり聴かないから分からないけど、かっこ良かったね。私もレンちゃんの影響でちょっとギターとか初めてみたんだけど、全然うまくいかなくて・・」
「レンちゃん?」
 レンちゃんという呼び名に、思わず反応してしう。
「あ、うん。一応彼氏。実は幼馴染なんだ。高校では離れちゃったけど、この間私から告白して・・」
 恥ずかしがりながら話す高橋の顔に、私の憎悪はさらに燃え上がる。
(レンちゃんだあ?あんたごときがレンちゃんなんて呼んでいいと思ってるの?彼氏とか呼んでいいと思ってるの?)

(・・・ん?)
 
「ちょ、ちょっと待って、幼馴染って・・どういう・・」
「え?どういうって言われてもそのままの意味だけど・・。家が近くて小さいころから友達だったの」
 当たり前のことのように高橋は言う。事態が物凄い速さで、それもおかしな方向へと展開していくのを感じ、視界がゆがむ。
「高校では離れたって・・?」
「うん、レンちゃんとは小・中と一緒だったから。クラスも同じ時結構あったし」
 同じ時があった?それって、もしかして・・
 もしかして・・・?
 頭がまとまらないまま歩いているうちに、少し開けたところにいた。
「ここ・・?」
 私のあほっぽい呟きに高橋が答える。
「公園だね。行く時もここ通ったよね」

118 :変わる自分、本当の自分 後半 4/15:2008/08/20(水) 22:59:05 ID:DZDVEV9N
 高橋の言うとおり、そこは公園だった。さすがに夜なので誰もいない。
 ・・公園?あれ、何か公園という場所で何か約束があったような・・
「うおおおおおお!」
 茂みの方から突然の叫び声。そしてそれと同時に飛び出す大きな影。
「・・あ」
「きゃあああああ!」
 頭も身体も鈍っていた私は反応が出来ずにその場に立ち尽くしてしまったが、高橋の方は、そのぽーっとした見かけと違い、思

いのほかすばやい反応で駆け出していった。
「うおおおおい!」
 そう叫びながら出てきた影は、トランクスを被って覆面をしたタケシだった。下にはやる気満々のあれがあり、まさに性犯罪者

と言わざるをえない格好だった。
「馬鹿・・」


119 :変わる自分、本当の自分 後半 5/15:2008/08/20(水) 22:59:45 ID:DZDVEV9N
 あまりの馬鹿っぽい登場に私が呆れはてていると、タケシはおかしな行動を取った。なんと高橋を追わずに、私に襲いかかってきたのだ。
「きゃあっ!」
「うおおおお、カオルううううう!」  
「な、何すんの馬鹿!」
「だって俺、あんな女よりお前とやりてえんだよ!お前が握るからスイッチ入っちまったんだよ!」
 タケシは勝手なことをほざきながら、私の顔のいたるところに自分の唇を何度も何度もおしつけようとしてくる。そしてその左手は私の服やブラの下をはいずりまわり、反面右手は冷静に私の抵抗をおさえこんでいる。
「きゃああああ!小木さん!」
 高橋が、かなり遠くの方から悲鳴を上げている。
「・・やっぱりここじゃやりずらいな。そこのトイレに入ろうぜ」
「なっ!てめ、誰が・・っ!」
 タケシが強引に私を公衆トイレへと引きずり込もうとする。私は必死に抵抗するが、やはりずるずると引っ張られていき、トイレの中へと近づいていってしまう、
「やだ、やだーーーっ!あんたとだけは死んでもやだーーーっ!」
 私は全力で叫ぶが、タケシの力が一向に緩む気配はない。 
(どうしよう・・フェラしてあげるとか言って、隙を突いて金玉にぎりつぶして逃げだそうか・・)
 などと考えていると、暗闇の中から誰かが私の方にむかって走ってきた。
「う、うそ!」
 私は驚いた。今日は驚くことばかりだったが、その中でもさらに一際驚いた。
「レンちゃん!!」
 現れたのはレンちゃんだった。まるでドラマや物語みたいな絶好のタイミングに、思わず涙が出そうになる。
「やべっ、早く個室に入らないと!」
 タケシも頭が混乱しているようで、かなりおかしなことを言っている。
「ぎゃあっ!」
 しかしレンちゃんが持っていたバットで後ろからタケシを殴ったため、それは阻止された。

120 :変わる自分、本当の自分 後半 6/15:2008/08/20(水) 23:01:14 ID:DZDVEV9N
「ミーちゃんだったんだ。全然気づかなかった」
 私の部屋には今、私とレンちゃん、そしてミーちゃんこと高橋道子・・・さんがいた。
(ちなみにタケシはあの後やってきた警察の人に連れて行かれた。レンちゃんは近くでミーちゃんを待ちあわせしていたからすぐに来ることが出来たらしい)
「まあ無理ないけどね、もう何年も経ってるし、親離婚して苗字変わってるし」
 ミーちゃんはそう言って静かに微笑んだ。微笑みは変わっていないなあ、と感じる。
 ミーちゃんは、小学校のころ、レンチャンと、そして私とも同級生だった女の子だ。当時ミーちゃんは男勝りな性格で、レンちゃんとも私とも仲が良かった。
 私が男子にからかわれたりすると、さりげなく私をかばってくれたのがレンちゃん、そしてミーちゃんだった。
 二人は当時、私と友達として親しくしてくれていた。それがどれほど私の救いになったことだろう。
「全然気づかなかったよミーちゃん、前は男の子みたいだったのに・・今はずいぶん大人しい子になって・・」
「ふふっ、そうでしょ?ちょっと行き過ぎて、家族からも気味悪がられたし、化粧はまだ下手なまんまだけどね。おとこ女ってあだ名にはいい加減うんざりしてたから、カオルちゃんと同じく、私も自分を変えてみたってわけ」
「え?」
「カオルちゃんも、暗いって言われるのが嫌で明るくなったんでしょ?」
「・・うん」
 恥ずかしい気持ちがゆっくりとこみ上げてくる。やっぱり、昔の知り合いと話す時は平静でいられない。
「それと顔も変えた」 
 どっくんと心臓が跳ね上がる。ミーちゃんてばなんてストレートな子なんだろう。こういうところは全然変わってない。
「うん。・・・やっぱり、分かるよね」
「実は私、今年同じクラスになった時から気づいてたんだ。でもカオルちゃん気づいてくれなかったから、気づいてくれるまで黙ってようと思って。
でもいつまで経っても気づいてくれなくて・・だから今日誘われた時は、ついに気づいてくれたんだって思ったんだよ。勘違いだったけど」
「・・・う、うん・・」
 三年になってもう一ヵ月は経っている。相当鈍いと言われても仕方ない。

121 :変わる自分、本当の自分 後半 7/15:2008/08/20(水) 23:02:53 ID:DZDVEV9N
「でも、そんなにすぐ気づいたの?私凄く変わったし・・」
「変わったけど、面影はあるよやっぱり」
「うっそだあ」
「ほんと」
 冗談を言ってる風には見えない。そんな馬鹿な、と思った。
「うん、あるある、俺もすぐ気づいたもん」
 レンちゃんまで同調する。
「どこ?どこにあるっていうのよ!完璧に別人になったはずなのにっ!」
 私の変身が否定されたような気になり、ついむきになってしまう。
「どこって言われても・・うーん、なんていうか、こう、全体の雰囲気っていうか表情っていうか」
 期待していたのと違い、なんともはっきりしない答えが返ってきた。
「何よそれ!全然違う顔なのにどうして分かるのよ!目も鼻も口も違うのに!」
「そうなんだよね、そうなんだけど・・分かるというか・・」
「・・・・・」
 私は絶句してしまう。
 目の前の二人も私と同じくしばらく無言だったが、不意に思い切ったようにレンちゃんが言った。
「でも!そのおかげで会えたんだから良いじゃん!」
 そう言って私の手を握る。
「わっ!」
 その行動に思わず私は硬直し、赤くなる。色んな男と付き合ってきたはずなのに、レンちゃんの前では何故中学生の頃のような反応をしてしまうのだろうか。
 ミーちゃんもレンちゃんの意見に同調する。
「そうそう!そのとおり!またこうして話すことが出来て、私凄く嬉しいな!」
「・・・・・っ!」
 ミーちゃんは無邪気に私の手を握って笑顔を見せる。
 くっそう。悔しいけど、やっぱり嬉しい。
 賢い女になったつもりだった。強くてずるくてモテモテで・・誰にも馬鹿にされない、むしろ人を馬鹿にして陰で笑っているような、そんな女になったつもりだった。
 でも。この数年間で作り上げた心の城塞が、がらがらと音を立てて崩れていく。繕うことなど出来そうにもないほどの速さで崩壊していく。
「うわーん!許して、許してミーちゃんッ!」
 私は鼻水を垂らしながら泣いた。二人がきょとんとして私を見ているのを感じるが、私は顔を上げることが出来なかった。
いつまでも。いつまでも。

122 :変わる自分、本当の自分 後半 8/15:2008/08/20(水) 23:04:30 ID:DZDVEV9N
「お飲み物お持ちしましたーっ・・ってあれ、おねえちゃん泣いてるの?」
 長い沈黙の中、空気を読まずに妹が入ってきた。本当にこいつは・・。
「泣いてないわよ。あんたもノックぐらいしてよ」
「えー?せっかく持ってきてあげたのに。レン君にミーちゃん、お久しぶり」
「あら、ありがとうちーちゃん。大きくなったね」
「それは育ち盛りですから。ミーちゃんもずいぶん変わって。それにレン君も」
「あはは」
 ミーちゃんと話すのと違い、妹はレンちゃんと話す時は少しだけ緊張しているように見えた。私はその何ともいえない雰囲気から逃げるようにトイレに立った。
「・・くそ」
 トイレに座り、私は苦い顔になる。
 あの空気の中に入っていくのは、私にとって苦痛だった。それにはもちんろ訳がある。
 中学生になった時、妹が彼氏を一度だけ連れてきたことがあった。その相手は・・レンちゃんだった。
 妹も私の気持ちを知っていたのでこっそり会っていたようだったが、その日はたまたま私がずる休みをしていたため、はちあわせしてしまったというわけだ。
 妹は結局レンちゃんとは別れたようだったが、そこのところは詳しく聞いてないし、知りたくも無い。
(あの気まずい空気はもう味わいたくない。妹の反応はやっぱりぎこちないし・・・)

123 :変わる自分、本当の自分 後半 9/15:2008/08/20(水) 23:06:08 ID:DZDVEV9N
 とは思うのだが、いつまでも戻らないわけにはいかない。
 はあ、と一つため息をついた後、私は意を決してトイレを出た。
 するとそこには、帰り支度をしているミーちゃんと、それを見送る妹の姿があった。
「ちょ、ちょっと、もう帰るの?」
「うん、今日は楽しかったよカオルちゃん。また遊びに来させてね」
「う、うんそれはもう。いつでも遊びに来て。・・あれ?レンちゃんは?」
 そう言うとミーちゃんはいたずらっぽく笑った。
「カオルちゃんだからね。許してあげるのは。他の人にだったら絶対あげないもん」
「え?どういう意味?」
 不可解な事を言い残し、ミーちゃんは帰って行った。後に残された私は、視線を妹に移す。妹もすべてを知っているような顔でにやにやしている。
「お姉ちゃんは幸せ者だよ。ほら、部屋に戻って」
(何なんだろう。何がなんだか分からない)
 分からないまま私は自分の部屋のドアを開けた。そこには真剣な顔をしたレンちゃんが立っていた。
「あ、レンちゃん・・わあっ!」
 何も言わず、レンちゃんは私を抱きしめてきた。どういうことだろう、頭が回らない。

124 :変わる自分、本当の自分 後半 10/15:2008/08/20(水) 23:07:41 ID:DZDVEV9N
「ごめん、もう、我慢できそうに無い。好きだ!ずっと前から、小学校の頃から!」
「ええ?えええええ!?」
 全身、頭も顔も、一瞬で真っ赤になり、のぼせあがる。一体何を言ってるんだろうこの人は。そして私の身に一体何が起きているのだろう。
「ごめんな、今日の俺がどうかしてるってのはわかってるんだけど、どうしても止められそうにない。小木さんが襲われそうになったの見てから、おかしいんだ俺。誰にも小木さんを触らせたくないし、その反面俺が触りたい」
「・・・・・!?」
 展開がいきなりすぎて、上手く聞き取れない。言葉ひとつひとつはちゃんと耳から入ってくるんだけど、その言葉が脳を通らずそのまま反対側の耳から抜けていくような感じだ。
「嫌っていわないと、このまましちゃうからな」
「え・・う・・え・・・」
 頭の中ではそれこそホラー映画ばりに叫んでいた私だったが、現実の口では何も言えなかった。嫌だったらと言うが、今は嫌とかそんなんじゃなく、とりあえず脳に酸素が欲しい。まず脳にこの事態を充分理解させてから、発言したい。
「んっ!」
 唇が唇で塞がれる。息が出来ない。思考もますます出来ない。心臓だけがうるさい。
「ひっ!」
 思わずおかしな声が出る。それもそのはず。レンちゃんの両手が私の服を脱がしにかかっていて、その際に私の胸やへそに直接触れたのだ。
「だめ、だよお・・こんなの!」
「だめ?本当にだめ?すっごく嫌ならいますぐやめるけど」
「・・・・・」
 嫌だ、とは思わなかった。そして言えなかった。ずるい聞き方だと思う。
(でもミーちゃんとの事はいいのだろうか。妹とは・・)

125 :変わる自分、本当の自分 後半 11/15:2008/08/20(水) 23:09:13 ID:DZDVEV9N
 なんて思考が一瞬よぎるが、すぐに目の前の現実にかき消される。
(ああごめん、私やっぱり意志弱い)
 すでになされるがままの体勢を取った私に、レンちゃんは手際よく私を脱がしていく。
 あっという間に裸になってしまった私の身体を、レンちゃんが子供のように吸い付き、愛撫する。
「あんっ」
 自分でも聞いたことの無いような女っぽい嬌声。脳が、「私のイメージする最も可愛い女」を私にさせようとしている。
「だめ、だめだめえっ!」
 指がゆっくりと私の中を開いていく。恥ずかしいほどに準備を整えた私のそれは、貪欲な「女の顔」をしていた。
「やべ、すげーエロくて、鼻血でそう」
「ばかっ!」
 レンちゃんの本気顔に物凄い「オス」を感じ、私は身震いした。まるで初めてセックスをする時以上に、私の身体はこわばり、それと同時に興奮していた。
今の私の顔を写真で撮ったら、一体どんな顔をしているんだろう、とふと思った。きっと、とんでもなくエロい女の顔をしているに違いない、とも思った。
「あ、あ・・」
 彼のそれが私の一部分に触れ、そしてそのままあるべき場所に帰るようにゆっくりと私の中に収まっていく。
「はああああ・・・あ・・」
 熱にうなされ、声が漏れる。

126 :変わる自分、本当の自分 後半 12/15:2008/08/20(水) 23:14:35 ID:DZDVEV9N
 耳も視界もぼやける。くっついてから、動いていたのは私だったのだろうか彼だったのだろうか。
 恥ずかしさや倫理観などもはるか遠くの世界で、私と彼は快感を共に味わい、貪る。
 真っ白な世界の中、気持ち良い、という感情だけを時々知覚する。しかしそれ以外の瞬間は感覚とかではなく、ただただ一面の真っ白い海だった。
 それは息継ぎも何も必要無い海だ。まるで母親の羊水のような、ただただ安心して気持ちよさを味わえばいい場所。
「気持ち・・よすぎるよおおっ!」
 不意に意識がしっかりしたと思った瞬間、私は絶頂を迎えた。
 自分の叫び声で思考力が戻り、その思考力が快感を一気に受け止めてしまったがために、私はそのまま高いところへと上り詰めてしまったのだ。
 それと同時に、身体の中に何かが吐き出されるような感覚があった。
 それは気のせいだったのかもしれない、とも思った。イメージのせいかもしれない、生でしたのは初めてだったから、と冷静に考えた。でも、「やっぱり本当に感じた、熱かった」とも思えた。
 彼の熱情が私の奥の奥まで吐き出されたという事実。その事実を認知することで襲ってくる幸福感。
 息も絶え絶えなまま、私は彼のそれにしがみつき、くわえた。
 口の中に広がる苦い味が、私に事実を確認させる。
 彼のものが復活するのに時間はかからなかった。
 私はそれから時間を忘れ、何度も何度も彼と交わった。

127 :変わる自分、本当の自分 後半 13/15:2008/08/20(水) 23:16:10 ID:DZDVEV9N
「ねえ、本当に私を昔から好きだったの?」
 ベッドの中、手をつなぎながら私は聞いた。
「うん。ずっと言いたくて言えなかった。中学、高校では離れちゃったからずっと言いそびれてた。
・・でもミーちゃんは高校でカオルと一緒になったって言うからこっそり会いに行こうと思ってた。
それで最近はよく会うようになったんだけど・・付き合ってる、なんて噂されたってミーちゃんは言ってたな」
(そうか。それで・・)
 状況が把握できていく内に、私はさらに聞きたくなった。こういう勢いのときでしか聞けそうに無いことを。
「ねえ、妹とは何で別れたの?」
 レンちゃんの顔がひきつる。やはり答えにくい質問なのだろうか。 
「それはえーと・・言いたくない」
「言いたくない?・・まあどうしてもって言うなら良いけど。でも何かひっかかるなあー」
 相手の過去を気にする男も女も最低だと常々思っていた。でもいざ自分が本気でほれた相手を前にしたら、どうしても気になってしまう。

128 :変わる自分、本当の自分 後半 14/15:2008/08/20(水) 23:20:56 ID:DZDVEV9N
「・・・分かった。言うよ。俺はサイテーな男だってこと」
「え、どういうこと?」
「えとつまり、付き合ったのは小木さんの妹だからで・・ごめんなさい」
 しばらくの間意味が伝わらなかったが、そのうちに氷解した。
「え、ま、まさか!」
「ある時言われたよ。私はお姉ちゃんの代わりじゃないって」
「うわあ・・サイテー」
(でもだからこそ妹は、私にあんなにレンちゃんをすすめたのかな。さっさとくっついてくれ、と)
(それにミーちゃんのあの別れ際の台詞。あれはどう考えても・・)
「だから言いたくなかったんだって・・」
「さっさと私に直接こくれば良かったのに。そうしたらこんな面倒にならないで済んだのに」
「だって・・さ。思春期って難しい年頃だし・・ね。でもようやく今日、小木さんに好きだって言えて、長年のつかえが取れた気分だよ」
「ねえずっと気になってたんだけどさ、その小木さんって、そろそろやめない?恋人になったんだから」
「え、じゃあなんて・・」
「名前で呼んでよ」
「・・・カオル?うわっ、はずかしっ!」
「押し倒しといて今さら恥ずかしいも何もないでしょ」
「そうだな、うん、カオル・・カオル・・やっぱカオルちゃんで」
「ぷっ、あははは」

129 :変わる自分、本当の自分 後半 15/15:2008/08/20(水) 23:22:19 ID:DZDVEV9N
 部屋の外では、妹が紙コップをドアに押しつけ、盗み聞きしていた。
「・・告白するって言うから場を提供したのに・・。そのはるか先まで言っちゃうとは・・。
ママとパパが二人とも旅行だからいいようなものの・・ま、お幸せに、お二人さん」
 

 妹には悪いと思いながらも、私はその夜、数年ぶりに微笑みながら眠った。
 今の自分も、そして昔の自分もまるごと愛してくれる恋人や友達の存在をかみ締めながら。

130 :変わる自分、本当の自分:2008/08/20(水) 23:24:37 ID:DZDVEV9N
以上です。途中改行失敗すみませんでした。
ここまで読んでくれた人、本当にありかどうございました。

131 :32:2008/08/21(木) 00:58:03 ID:6zwUx/0g
GJ!
い、意外な展開だった…。

自分の方もようやく書けたので投下します〜。ちょっとタイミング早いかな?そうだったら申し訳ない…。

132 :スイーツと香辛料 7章「告白」1:2008/08/21(木) 01:00:09 ID:6zwUx/0g
「高梨さん」
顔をあげると松崎くんがいた。正直、心臓が飛び出すかと思った。

「少し話したいことがあるんだけど……」
ちょっと怯えも入っているけれど、強い意思が宿った目でまっすぐわたしを見つめて、彼はそう言った。
「え、あ、う、うん」
バカみたいな受け答えをしてわたしは松崎くんにうながされついていった。廊下を歩きながら、半月以上ぶりに松崎くんと口を聞いたことに気づいた。前を行く彼の背中を見ながら、ホッとしたり、嬉しい気持ちがこみあげてきたり、どんな話があるのか不安になったりした。

図書室に松崎くんは入った。昼休みで誰もまだいないようだ。隅の長イスにわたしと松崎くんは座った。

松崎くんは目をとじてゆっくり深呼吸みたいなことをしている。ひさしぶりに間近で見る松崎くんの髪、首筋、とじられた瞼を思わず見つめてしまった。時間がゆっくりと流れてると錯覚してしまうほど、わたしはふれて感触をたしかめるように彼を見つめていた。

「高梨さん、この間はごめん」
意を決したようにこちらをふりむいて松崎くんは言った。
「……わたしも酔ってたから」
違う。そんなことを言いたいのではないのに、体が思ったようには動いてくれず、わたしは目をそらしてしまった。
「勝手な思いこみでひがんだようなことを言っちゃって」
「……」
わたしは答えられなかった。
「ごめんなさい」
「そんな……。いいよ、全然」
頭をさげる松崎くんを直視できず、わたしはそれだけいうのが精一杯だった。
「ほんと……気にしないで……」


133 :スイーツと香辛料 7章「告白」2:2008/08/21(木) 01:02:44 ID:6zwUx/0g
松崎くんはしばらく黙っていた。彼の顔を見れないからどんな表情でいるかわからない。
「……高梨さんは、優しいね」
松崎くんはぽつりと言った。それを聞いて、わたしはもうたえきれなくなった。
「どうしたの!?」
松崎くんがあわててわたしの肩に手をおく。一度泣いてしまうと、止まらずにわたしは下をむいたままでいた。椅子の下の床に涙がぽたぽたと落ちる。
「松崎くん間違ってないよ」
「え……?」
「わたしは……」
その後は言葉にならずわたしは腕で涙をぬぐいながら喉をならして泣いた。
「あの時松崎くんの言ったこと、本当だよ」
そう言ってわたしは立って図書室から出ようとした。

「待って」
松崎くんがわたしの手をつかんだ。わたしは振り払おうとする。松崎くんは驚いて転びそうになりながら、でも手を離してくれなかった。わたしはあきらめて腕をつかまれたまま松崎くんを見た。松崎くんもわたしを見て言った。
「あの……、えっと、また、誘っていいかな? また面白い店見つけたんだけど」
「……ふぇ?」
意外すぎて変な声を出してしまった。
「高梨さんと一緒に店に食べにいくのが、……僕にはすごく楽しいことで……」
「……」
「その、前のことがあってから、もうそんな機会はないと思ってたんだけど……、もう一度誘ってから諦めてもいいかと……違う!そうじゃないや」
わたしがびっくりして顔を上げると、松崎くんは頭をふって自分の腿を殴った。
「その、今みたいな言い訳とかしてる自分があまり好きじゃなくて、前のこともそういう自分だったからああいうことを言ってしまったから、つまり」
言葉を切って松崎くんは言い切った。
「高梨さんと一緒にレストランとかをまわるのが、僕には今一番楽しい大事なことなので、よければまた行ってください!」

松崎くんは顔を赤くして肩で息をしている。長い時間がすぎて、ようやくわたしは口をひらいた。







134 :スイーツと香辛料 7章「告白」3:2008/08/21(木) 01:11:05 ID:6zwUx/0g
「わたしなんかじゃないほうがいいよ……」
とても不器用で格好悪いと言ってもいい、しかもよくありそうなテンパり方の松崎くんの誘いを、わたしはいつものわたしみたいに寒いとは思わなかった。
むしろ自分の価値観をしっかりもっていて落ち着いてるように見えた松崎くんにわたしに対してこんな生な反応をしてくれることに感動すらしていた。でも、だからこそ。
「さっきも言ったように、わたしは松崎くんが言うとおりのことを松崎くんに対して思ってたから」
また涙が出てくる。言わなくていいことをわたしは言ってる。スマートなやり方じゃない。馬鹿みたいだ。
「かまわない」
松崎くんは即座に言った。
「え」
「それはお互い様で、僕も高梨さんのことを色眼鏡で見てたから。だから心をほんとには許さないようにとか」
「……」
「でも実際に目の前で話している高梨さんは、ちゃんと話してくれたし、一緒に楽しんでくれたし、自分の先入観の方を実際に自分で見た高梨さんの方より信じるのはおかしいと思って」
「それは演技してただけかも?だまされてるだけかもよ?」
「それでもいい。僕は言いなりになってるわけじゃないし、自分が本当に好きなことしかしないから。
それを高梨さんが一緒してくれたら、それが演技だろうと嘘だろうと、自分にとっては、その、一番価値のあることだから。……何言ってんだろ僕、恥ずかしいね」
松崎くんが照れ笑いをした。わたしも笑ってしまう。
「恥ずかしいと思うんだ?」
「ちょっと自分らしくないことしたから。でも言わない方があれだから。自分の価値は自分で決める。さっき高梨さんと一緒においしいものを食べるのは、今僕にとって一番大切なことだから」
松崎くんは、迷いなくそう言い切った。
「……ありがとう。うれしい」
わりと素直に笑顔をそう言えた。
「松崎くんがそんなにクサいこと言うなんて思わなかった」
「そうだよね。凄い恥ずかしいけど……もし笑われてもいいと思って。それでも高梨さんと一緒に遊んだときの楽しさは変わらない、って言いきかせて」
「わたしがそういう嫌なことしても変わらないの?」
不可解だ。






135 :スイーツと香辛料 7章「告白」4:2008/08/21(木) 01:15:21 ID:6zwUx/0g
「この間からずっと考えてたんだけど……例え笑いものにあとでされても、やっぱり変わらず自分にとって大事なものだって結論になった。
……僕は馬鹿なのかも。高梨さんがよっぽど好きなのかな」
そう言って、松崎くんはあからさまにしまったという顔をした。つい口をついて出てしまった言葉なのだろう。
「いや、今のは……」
「松崎くん」
「え? はい」
「わたしも、好きです」
「えっ」
「嘘じゃなくて、今は本当にわたしは松崎くんのことが大好きです」
不思議と落ち着いて言えた。
「お願い。わたしとつきあってください。わたしにとっても松崎くんが一番大事です」
「……」
愕然とした顔で松崎くんはわたしを見てる。可愛い。わたしは離れていた腕を松崎くんにからませて彼に体を預けた。
「あっ」
驚く松崎くんの胸に顔をおしつけ、背中に手をまわした。
「返事をきいていい?」
混乱した松崎くんが落ち着きをとりもどして、ちゃんと返事をくれるまでにまた長い長い時間がたった。

こうしてわたしと松崎くんはつきあうことになった。なぜかもうまったく迷いはなかった。
それも当たり前かもしれない。
わたしをあんなに価値ある存在だといってくれた人はいないし、しかもわたしはあんな嫌なやつだったのに、それでも変わらないと彼はいったのだ。
好きになっていたことに気づいた人にそんな風にいってもらえるなんて、わたしほど幸せな人なんていないじゃない。
そのことの前では、もうさえないとかオタクとかはどうでもよかった。



7章終。 8章「のぼせる葉子」へ。







136 :32:2008/08/21(木) 01:17:08 ID:6zwUx/0g
以上です。疲れた^^;皆様のお気にめせばいいんですが……。

137 :名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 01:35:06 ID:OO6ks48F
ふぅ…

お二人共じっじぇー
最近スレが活性化しつつあって嬉しい限り

138 :名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 02:29:22 ID:iBVJ5EZF
一気に二つも話を読めるとは・・・お二人ともGJ!!


139 :名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 02:35:00 ID:WxGRVxFo
>>130 GJ!

タケシカワイソス(´ ・ω・` )

140 :名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 08:32:41 ID:wntJVO4s
>>130
ヒロインがちょっとアレだね


141 :130:2008/08/21(木) 18:51:54 ID:PZML7lm5
続ききてた!相変わらずさらに続きが見たくなる引きで、感心。


感想やレスをくれた人、本当にありがとうございます。参考になりますし何より嬉しいです。

スレ、活性化もしてきたようで何より。もっと書き手が増えても良いぐらい面白いジャンルだと思います、一途ビッチって。

142 :名無しさん@ピンキー:2008/08/21(木) 23:11:36 ID:2/aOFxXN
お二方ともGJ。
うまくやるとホントにいい話になるよねこのジャンル。


143 :名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 12:34:34 ID:94LuIKdi
ビッチな子が一途になるのはいいが
その要因がビッチな子が一途に思われるだと正直かなりご都合に感じる
ビッチな子が冷たくあしらわれて、振られてそれでも諦められなくなる
それぐらいじゃないとそこらの携帯小説と変わらないと思う

144 :名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 12:46:19 ID:gEYP5/V9
>>143
期待してる

145 :名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 17:18:31 ID:HMWkQXUQ
>>143
後者の小説を期待しています。

146 :名無しさん@ピンキー:2008/08/22(金) 18:03:38 ID:9DoWPBEf
>>143
なるほどなあ

147 :32:2008/08/22(金) 19:23:20 ID:yby/sDVp
>>132

鋭い意見ありがとうございます!

ご都合感ありますねー。一応この後の展開のためのギミックではあるんですが。

見下してた関係から対等になり、かつての自分の偏見などを恥じて悔いるところまでは書くつもりでその為の布石です。
(男の子が古いですがメッシーくんではなく、自分の本当に好きな趣味につきあってくれる存在である限りにおいての価値なのが一応ポイントで)。

その後立場の逆転とか依存、追いすがり的なものはこれでは書かなそうです。
それもリアルにある事というよりは別の形のご都合だし(悪い意味じゃなくてそういうご都合好きですが)、あまり片方が完全に相手の上に立って見透かしてたり、片方が完全に掌の上で踊らせられたりみたいなものが好みではないもので……。

でも自分のやつの漠然と感じてた弱点がわかった気がします。ありがとうございましたm(__)m


148 :32:2008/08/22(金) 19:24:39 ID:yby/sDVp
間違った(*_*)

>>132さんではなく>>143さんです。失礼しました!

149 :本当の初恋 前半 1/11:2008/08/22(金) 23:25:18 ID:9DoWPBEf
意見を踏まえてまた投稿します。またかききれなかったので前半部分を。


「何であんたの顔で付き合ってくれとか言えるの?ねえ、教えて」
 目の前の不細工は口をぱくぱくさせている。何こいつ。
「え・・え・・・」
「え・・じゃないってば。あんたの家に鏡はないの?」
 ますます口をパクパクさせる不細工。相当驚いているようだったが、私にはどうでもいい事だった。こいつが死のうが生きようがどうでもいい。
「ひ・・ひでえだろいくらなんでも・・普段の中林さんは・・」
 普段の私とは違いすぎる、とでも言いたいのだろうか。
 何でこいつはそんなに人を簡単に信じられるのか。十数年も生きてきて、社交辞令や建前なんかの存在を知らないのだろうか。
 私は美少女だ。稀に見る顔とスタイルの良さを誇る美少女だ。
 ほとんど化粧が必要ないほど可愛いが、化粧もオシャレも大好きだし、センスはいいほうだ、と思う。
明るくて人気者で、人間として最高に価値があるこの私が、何故こんな不細工(確かミナミとか言う名前だっただろうか。部活でよく来ていた他校の生徒だ)
と付き合わねばならぬのか。
 今までに、私に付き合ってくれと言ってきた男の数は数え切れない。
 真顔で言う男が6割、冗談ぽく言う臆病なイケメン(&イケメン気取り)が3割、後は金や背景、人数の勢いや空気などで私を落とそうとするくずが1割だ。
 正直、今まで私に見合う男はいなかったので、それら全てを断ってきた。
 私にふられた男の中には、私がレズだなんて噂をばらまくのまでいた。
 だからこそ最近は、それなりに交友関係の広そうな男相手には、「それなりの態度で」お断りするようになった。
影響力のなさそうな男には、相変わらず本心をぶちまけてすっきりしているが。今のように。
「うっさい、死ね。消えろ。バスケやってればもてるとでも勘違いしたのか不細工」
 ミナミという男はさらに早く口をぱくぱくさせた後、その場を全力で走って去っていった。
「あーあ、いい男いないかなー」
 かつて私が自分に見合うと感じた男は1人だけだ。しかしその相手はテレビの向こう側の相手で、しかも私と出会う前に病気で死んでしまった。


150 :本当の初恋 前半 2/11:2008/08/22(金) 23:27:52 ID:9DoWPBEf
「あ、今日私寄るところあるから。それじゃ」
 友達との帰り道。ある交差点まで来たとき、私はおもむろにそう言った。
「え、なに?あ、分かった、カレシ?」
「うん、まあそんなとこ」
 勝手に勘違いしてくれたことをありがたく思いながら、私は一人、ある場所へと向かった。
 そこは、人にはあまり言えない私の趣味の場所だ。
「はーい、おじーちゃん」
「こらこら、せめて制服だけは着替えてから来なさい」
「あ、ダイジョブダイジョブ。替えの服持ってるからトイレで着替えてくるね」
 いくら私でも、そこが制服のままではいられない場所だってことぐらい、知っていた。
「うーん、今日も良い音が聞こえる・・」
 トイレの中からも聞こえる、心地良いジャラジャラという音。
「あい、着替えてきたよ。どう、今日は?」
「ああ、今日は強い人がいるよ。まだ若いんだろうに」
「え、あー、あの人ね。本当に若そう」
 示された方を見ると、帽子を目深にかぶった男の人がいた。その格好のせいで顔はよく見えないが、ひげは見えないので若いことは確かだろう。
「どんな感じ?」
「うん、実際に見てみると良いよ。とにかく振り込まないんだ」
 おじいちゃんに促され、私は彼の後ろに立って様子を見ることにした。
 オーラスだったため、打ち筋をしっかり見極めることは出来なかったが、確かに強い、と感じた。危険牌を全て止めている。
 ・・・そう、ここは雀荘。そして先ほど話した老人は私の実のおじいちゃん。小さいころからよく顔を出していて、ルールややり方を教わった。
 すぐに夢中になった。そしてそれは今も続いていて、最近ではこの雀荘常連を相手にしてもトップのアベレージを残すまでになっていた。
 麻雀は楽しい、最高だ、と思う。まあ、友達にはあまりいえない趣味だったが。


151 :本当の初恋 前半 3/11:2008/08/22(金) 23:30:15 ID:9DoWPBEf
「お、ユウちゃん。来たんだ。ねえ、ちょうど俺抜けるところだから、俺の代わりにうってみてよ。仇とってくれ。あ、半荘清算だから」
 この店の常連のおじさんが私に席を差し出す。もう何度も打ち負かしている相手だがら、お互い顔をよく覚えていた。
「ふふーん、いいよ。やりましょう。あ、よろしくお願いしまーす」
「おねがいしまーす。か。ユウちゃんはやっぱり可愛いなあ」
 両隣の常連のメタボのおっさん二人がにやにやしてそう言う。ああなんて見た目が悪い人たちなんだろう。麻雀するより運動でもしなよ、と言ってやりたい。
 なんて感情はおくびにも出さず、私はにこにこしながら椅子に座る。
 と、そこで私はある事に気づいた。目の前の男、つまり強いと評判の、先ほど私が後ろから打ち筋を見ていた帽子の男の反応がなかったのだ。
 こういう無言の反応の場合、たいてい、というかほとんどの場合は照れ隠しか、単に「俺はがつがつ行かないぜ」アピールである。
 やれやれ、クール気取ってるつもり?と思いながら私は自分に配られた牌を見た。
 いきなりこれか、と思った。高得点が狙える、それでいてばれにくい迷彩を施す事ができやすそうな理想的手牌。
 事実、その局はメタボおじさんの振込みで一気に点棒を得ることができた。
 勝負あった!と思った。
 私はふり込まない、点数を守ることにかけては自信があるのだ。
 そしてその予想通り、局が進んで行っても私の点数が減ることは無かった。
 やがてラストの局が来た。私は勝ちを確信しつつ、順番を消化していく。そして残り数巡となったところで、例の帽子男がリーチをかけた。勝負に出たのだ。
 ラストでリーチということは、当然トップ狙いだろう。私は慎重に彼の手配を見て、予想をする。
 その結果、ある牌を捨てた。
 私は、先ほど後ろで観戦していた際、彼の癖を見つけたのだ。すなわち、欲しい牌をやたらと目で追ってしまう癖だ。
多分彼は、そのために深く帽子を被っているんだろうと思う。
 彼の捨て牌の傾向、そして目で追った牌の情報をもとに、私は最も安全そうな牌を捨てた。しかしその瞬間。肌がざわっ・・とした。
「ロン・・」
「え?」
 彼は手を倒していた。私の捨て牌に対して。つまり、私からあがった、ということであり、私の点を奪う、ということである。
「う、うそ」
 私に電流が走った。
信じられない思いだったが、彼の倒した手は確かに私の捨て牌であがっていて、それは逆転するに充分な形だった。
 そのどこかで聞いたような声の「ロン」を聞いた瞬間が、私の人生最大の転機だった。

152 :本当の初恋 前半 4/11:2008/08/22(金) 23:33:14 ID:9DoWPBEf
 それからも、彼は度々私のおじいちゃんの雀荘に来ていた。
 最初はたまたまだろう、と思っていた私だったが、何回やっても彼は強かった。
 もちろん私も勝つことはあった。しかし総合計から言えば遥かに負けていて、しかも勝った時はやたらと手が最初から良いという時だけだった。
 ある程度話もするようになった。
 無口で偏屈な男かと思ったが、話してみると意外にも感じの良い、素直な性格の男だった。・・やっぱり、やや暗かったが。
 話しの大半は、麻雀のことだった。私と彼が初めて会った時、何故私が負けてしまったのかと聞いたら、
『勝負が始まる前の局で、私がギャラリーとして後ろから彼の手を見ているとき、わざと癖があるように見せて引っ掛けた』とのこと。
「麻雀漫画の読みすぎ!」
 と彼にはつっこんでおいたが、実際に引っかかってしまった私が言ってもどうしようもないことかもしれない、とも思い、素直に参考にすることにした。

 そしてある日。
「ねえ、ちょっと」
 私は帰りがけの彼に声をかけた。相変わらず、深く帽子をかぶっていて、表情がいまいち読み取れない。
「ねえねえ、普段は何してる人?」
 私らしくも無い質問だった。気まぐれではあったが、しかしこの正体不明の謎の麻雀バカが普段何をして生計を立てているのかというのはちょっと気になるところだった。
「・・実は学生なんだ」
 と、彼は言いにくそうに言った。
 私は、何故彼が言いにくそうに言うのか分からなかった。この店には中年だけじゃなく大学生とかだってけっこうきてるのに。
「へー、大学生なんだ。もしかして学費これで稼いでるとか?あはは」
 あははと笑いながらも、「実際こいつ稼いでるなあ」と頭の中で呟いた。 
 と、その時ぐーっと私のおなかが鳴った。そういえば麻雀にしばらく没頭していて飲まず食わずだったことを思い出す。
「あはは、おなか減ったんだ?」
「え、うん・・・」
 彼は笑ったが、つい私は彼の顔をまじまじと見てしまった。彼の笑い顔は初めてみたからだ。
「どっかで食べて行こうかな」
 と何も考えずに呟くいた瞬間、彼と目があった。
 ・・もしかして。

153 :本当の初恋 前半 5/11 :2008/08/22(金) 23:36:27 ID:9DoWPBEf
「そっか。それじゃあね」
「え、ちょっ!」
 私は驚いてついつい突っ込みのような声を出してしまった。当然誘われるものと思っていたからだ。
今までの私の人生では、こういう風に私のおなかが鳴ろうものなら、その時近くに男達がいたならたいてい、「一緒に食べに行こうと」誘ってきたからだ。
 もちろん、誘ってこない男もいたにはいたが、そういうのは大抵私に「声をかけたいけど声をかけない」というオーラを放っていた。大小の差はあれど。
 それがまさかのガン無視。私はついつい一言言いたくなってしまった。
「ねえちょっと。こういう時って一緒に食べてく?とか言うもんでしょフツー」
「え・・。じゃあ、一緒に食べてく?」
 もちろん答えは決まっている。
「・・・・・嫌」
「な、なにそれ・・じゃあなんで・・」
「う、そ。たまには男と二人っきりで食べるのもいいかもね」
 普段は女友達と喋りながらだったり、友達の付き合いで渋々蝿のように寄ってくる男と大勢で食べたりしてるもんなあ、と心の中で続ける。

「ねえねえ、帽子取ってみてよ」
 ゴハンを一緒に食べた帰り道、私は彼にそう提案した。彼はいつも帽子を被っているため、どんな顔か、どんな髪型か、私は知らないのだ。
「ここなら、麻雀やってるわけでもなし、視線とか分かっても何の不都合もないでしょ」
「うん・・そうだね。でも俺が帽子取らないのは別に視線とか関係なくて・・」
「?」
 なんだろう。何故彼はそこまでして顔を見せたがらないのか。私の頭の中ではクイズ番組が始まった。
 @指名手配犯、A酷い傷や火傷がある、B物凄く不細工で人に見せられない、C実はのっぺらぼう・・私は可能性の低い@と面白回答のCを捨て、AかBにしぼった。
 多分Aだろう、いやBかな、などと考え込んだが、答えは出るはずもなく、結局私は彼に頼むしかなかった。
「ねえお願い、帽子とってみて。驚いたりとかしないから」
 AでもBでもカバーできる気遣いのおかげか、彼は帽子をとってくれた。
「わあああああ!」
 私は約束を破り、絶叫して驚いてしまった。
「驚かないって言ったじゃん・・」
「ご、ごめん」
 答えはAでもBでもなかった。
 彼が顔をかくしていた理由は全く別だったのだ。

154 :本当の初恋 前半 6/11 :2008/08/22(金) 23:39:21 ID:9DoWPBEf
 翌日。
 私にとって、教室は安息の場ではなくなった。
「どうしたのユウ?」
 女友達が聞いてくるが、私は適当に返事を返し、元気を装う。
 私はある同級生の男の子の背中をちらりと見た。振り返らないでよ、頼むから、などと念じながら。
 しかしその願いもむなしく、彼は振り返り、一瞬私と目が合った。しかし直後に何も無かったかのように前を向き直した。なんて心臓に悪い状況なんだろう・・。
 そう、例の帽子男は、私の同級生だったのだ。
 彼が帽子を被っていた理由は単に、高校生だとばれたらおじいちゃんの雀荘に入れてもらえなくなるからだった。
 私の前で中々顔を見せなかったのも、単に雀荘に出入りしていることを学校にばらされたくなかったから。
 ひどい!と私は心の中で叫んだ。すっかりだまされていた気分だった。
 彼とは昨日、雀荘に入り浸っていることをお互いに誰にも話さないよう約束した。彼の方はそれで良かっただろうけど、私の方の精神的ダメージは大きい。
同年代の男子なぞに負けていたことが分かり、悔しくて仕方がなかったのだ。

 とはいえ、それからも彼とは雀荘でよく会った。
 彼は相変わらず強く、手加減などしてくれなかったが(されたらされたで嫌なのだが)、以前より言葉の端々に優しさがこもるようになった。
 お互い顔を知っているせいか、以前よりずっと親近感が沸いたのだ。
 彼とはもちろん、学校では話はしない。
 しかし麻雀が終わった時は、度々彼と食事に行くようになった。まあ食事といっても安いファーストフードばかりであったが。
 そしてある夜、急に気づいてしまった。彼のことをずいぶんと信頼している自分に。
 そしてあのそれほどかっこよくも悪くもないような微妙な顔が、可愛く、あるいはかっこよく見えたりしていることを。
「ばっかじゃないの、あたし!」
 と、一人自分のベッドの上で叫んでみるが、もう気持ちは隠せなくなっていた。
 がつがつせず、かといって気後れしない彼みたいなタイプは、考えてみれば初めてだった。好きな事を一緒にして、わらったり怒ったりを共有するあの小さなスペース。いつしか私は彼を・・
「だからばっかじゃないのあたし!あんなレベルの男!」
 私は再び一人で叫んでいた。
 しかし叫べば叫ぶほど、自分の心臓が高鳴り、否定できない感情がとめどなく沸いてくるのを感じた。
「くっそう恋か。私としたことが・・・」
 口元の緩みを私ははっきりと自覚したまま、私はそのまま眠りについた。

155 :本当の初恋 前半 7/11 :2008/08/22(金) 23:42:21 ID:9DoWPBEf
「よ、ユウ!今日こそ俺と遊びに行こうぜ。いいとこ見つけたんだ」
 翌日の休憩時間。
 背後から聞きなれた声がしたが、私は振り向きたくなかった。例のしつこい男だと確信していたからだ。クラス内では八方美人を演じている私だが、こいつ相手には冷たくしてもマイナスイメージにはならない。
「なーなー、無視すんなよ。行ってみようぜ、楽しいんだから」
「うるさい」
 振り返らないでいると、そいつは私の前に移動して視界に入ってきた。なんてうざい男なんだろう。
「タケシ、先月あんたが嫌がる女の子に襲いかかって未遂で捕まったって話、有名なんだよ。あんたと話してると私までみんなから浮いちゃうでしょ。話しかけないで変態」
「いやあ、あの女はひでえビッチだったぜ。だまされたんだよ。よくいるだろ、誘っておいて急に気を変えて、無理矢理とか言う女。俺は被害者なんだよ」
「あっそう。でも仮にあんたが被害者だとしても話しかけられたくないの。あっち行って」
 私の拒絶発言に、一緒にいた友達も加勢してくれる。
「そうだよタケシ。あんたどっか行ってよ」
「そうよド変態。レイプ魔」
「おいおい、俺はユウの本心を見抜いて誘ってるんだよ。あれだよ、あれ。ツンデレってやつだ」
「うっざぁ・・・」
「きもい・・」
 白けたムードが漂う中、不意に別方向から私を呼ぶ声がした。
「中林さん」
 ふと見ると、すぐそばに例の雀鬼・・本名、北君が立っていた。
「え・・?」
「ちょっと、来てもらえるかな」
 意外な展開だった。私は驚きのあまり、ちょっとの間口をパクパクさせていた。
 どこかで見たリアクションだ、と思いながら。
 とりあえず、私は素直に彼の後についていこうと席を立った。
「おいユウは俺と・・」
 タケシの声には、誰も耳を貸さなかった。


156 :本当の初恋 前半 8/11 :2008/08/22(金) 23:43:46 ID:9DoWPBEf
「ね、ねえ何で学校で話かけてきたの?」
 屋上に着いた途端、私はそう聞いた。
「うん、ごめんね」
 彼はさらっと謝る。どうやら本当に話したいことがあるようだ。
 もしかして、と思った。
 ここは屋上、そして男の子と女の子が二人きり、となれば、あのイベントしかない。
そう、私はもう飽き飽きしているあのイベントだ。
「あ、あのさ、もしかして・・あれかな?」
「え?あれって?」
 私の問いに、彼はすっとぼける。分かってるくせに。
「もしアレなら・・私は、オーケーだよ。うん。実は私も・・」
 ごくりとひとつ唾を飲み込み、続ける。
「あなたが好きだったの」
「・・・・・!」
 彼はびっくりしたらしい。固まった表情のまま、唖然として私を見ている。
「えへへ、私人に好きって言ったの初めてなんだあ」
 浮かれる私を尻目に彼の顔はやがてどんどん暗くなっていった。
「え、あれ?どうしたの?そんな顔して」
 暗くなることなど何一つ無いはずなのに、と思っていると、彼は信じられない発言をした。
「・・・ごめん」

157 :本当の初恋 前半 9/11 :2008/08/22(金) 23:44:55 ID:9DoWPBEf
 空気が一気に冷えきった。ほんの少し前に彼の顔は固まったいたが、今は私の顔が固まっていた。
 今、今なんて言った?
「え、な、何て今?」
「ごめん、付き合えない」
 高ーい場所に上げてもらったあと、いきなり落とされたような感覚だった。
足から力が抜け、いつしか私はへたりこんでいた。
「中林さん!」
 あわてて駆け寄ってくる北君。
 信じられない、こんなの信じられない・・
「嘘、でしょ?」
「・・ごめん、本当なんだ。実は今日、話したかったのは・・」
「聞きたくない!」
 そう叫ぶや否や、私の拳は彼の顎を狙って放たれていた。しかし惜しくもあたらない。
「うわっ!ちょっと、頼むから聞いてよ、ミナミのことなんだ」
「・・・ミナミ?」
 空白状態になっていた頭にぽんと入り込んだミナミ、という言葉をあまり機能してない頭で分析する。
「ミナミ・・方角?それとも大阪の・・」
「違うよ、高校生のミナミだよ。君が先日振った」
「え・・?・・・あ・・・あっ!」
 私はようやく思い出した。自分に先日、告白してきた男の名前だ。
「ああ、いたいた!確かミナミとか言う他校のバスケ部員」
「そう、あいつ、俺の友達だったんだ」
「・・・・・」
 一瞬意味が分からず、私は沈黙してしまったが、やがて顔が青くなるのを感じた。

158 :本当の初恋 前半 10/11 :2008/08/22(金) 23:45:49 ID:9DoWPBEf
「あいつの振られ方、聞いたよ。正直、聞くに絶えなかった・・」
「ちょ、ちょっと待って、なんて言ってたの?」
「え、だから不細工とか、何であんたの顔で付き合ってくれとか言えるの?とか、死ね。消えろ、とか」
「・・・」
 一字一句間違っていなかった。
 しかし何とかイメージを挽回したい私は、必死に言いわけする。
「う、うそだよ、そこまで言ってないよ。もうちょっとソフトだったし・・」
「・・本当に?」
「うん」
「ふーん・・・」
 お?反応あり?もしやちょっと修復できた?と期待した途端、
「でも他の人からも聞いたんだ。君に振られた人から君の話を」
「・・・・・」
 また高いところから落とされた気分になった。
「本当に、やばいぐらい酷い罵倒だった」
「で、でもさ、それってふられたからつい悔しくて誇張しちゃってるだけだよ、みんな」
「・・・・・」

159 :本当の初恋 前半 11/11 :2008/08/22(金) 23:47:14 ID:9DoWPBEf
 彼の表情はちっとも変わらない。私はますます焦る。
「それに、ふる時ってあとでしつこくされて嫌だからはっきり言った方が良いと思って。だからかなりきつめに・・あ」
「やっぱり酷いこと言ったんだ・・」
「ち、違うのよ」
 暗に認めてしまった自分の迂闊さをのろいながら、私は必死に釈明する。しかし彼の心は変えられなかった。
「・・ごめん。俺はミナミと昔からの親友だから、それだけでも君と付き合うのはまずいし・・やっぱり、君の本性ってのがどうしても許容できない。
ごめん。俺頭がちょっと固いのかもしれないけど」
 そう言って彼は、一人私を残して教室に戻っていった。
「せっかく・・好きになったのに・・」
 私の目から大粒の涙があふれてきた。 
 演技ではなく、本当に泣いたのは久しぶりだった。

160 :本当の初恋:2008/08/22(金) 23:51:12 ID:9DoWPBEf
前半は以上です。後半は多分明日に。

あと、>>152
>と何も考えずに呟くいた瞬間、彼と目があった。

>と何も考えずに呟いた瞬間、彼と目があった。

でしたごめんなさい。正直、他にもミスというか変な文はあるのですが、それをいちいち訂正していくのも邪魔臭かろうということで、すみませんがご了承ください。
読んでくれた人、ありがとうございました。

161 :名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 00:24:40 ID:5O+qWhz8
gj
良スレ

162 :32:2008/08/23(土) 01:11:55 ID:+cxe2/JK
GJ!

なんてニヤリングな展開。麻雀という設定がすごく決まってますね。

163 :名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 09:07:33 ID:dr8Et5TS
ざわざわ

164 :名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 11:13:30 ID:tGA979Rb
最近私が覗いてるスレがやんちゃで困る


作者に惜しみないGJ!

165 :名無しさん@ピンキー:2008/08/23(土) 13:46:06 ID:60p+xKTP
住人の意見を聞きすぎる必要はないと思いますよ?

一応頭には入れておくけど、好きなように書くってぐらいで十分だと思います。

166 :本当の初恋 (中) 1/6:2008/08/24(日) 00:35:57 ID:NadPjgE/
続きです。後編を、と思っていましたが思いのほか長くなり、まだ書き終わりません。ごめんなさい。
ゆえに予定を変更して、後半ではなく中盤として投稿させてもらいます。


「ちょっとユウ、ユウってば!」
「え・・なに?」
「もう、またぼーっとして話聞いてない。最近おかしいよ」
「うん・・そうかな・・」
 彼にふられて以来、私は抜け殻だった。どんな話を聞いても、何をしても夢中になれず、毎日をただ消費していくだけの日々。
彼と顔を合わしにくいという理由から、雀荘にも行っていない。
 今日は友達の付き合いでバスケ部の練習試合を見に来ていたが、やはり試合内容も何も頭に入ってこない。
「ねえねえ、バスケ部の沢川君、かっこいいよね」
「え?・・ああ、そうだね」
「もー、どうでも良さそうに言わないでよ」
 だってどうでも良いもん、と頭の中で付け加える。
 しかしあまりに話につきあわないのもまずいと思い、私は少しだけ集中して試合を見る。
 と、その時一人の男の姿が目に入った。忘れもしない強烈な不細工顔。確かミナミとかいう男だ。
 交代でコートに出ると、その顔に似合わず華麗なテクニックを見せて、ゴールを量産していった。
「ありゃー、相手のチームが主力出してきちゃったね」
 友達の言葉に私は久々に耳を傾けた。そうか、主力だったのか。本当にバスケはうまいんだなあ。顔はあれなのに。
 やがて試合終了のブザーが鳴った。結果は私の高校の負けだったが、正直勝敗はどうでも良かった。試合が終わったということに意味があるのだ。私はすぐさま客席を離れ、下へと降りていく。
「ごめん、ちょっと私用事できた」
「え?ちょっと、まさかあんた沢川君に・・」
 酷く勘違いした友達の台詞を背中で聞き流しながら、私は目的の相手に近寄っていった。
「ねえ、ミナミ君だっけ」

167 :本当の初恋 (中) 2/6:2008/08/24(日) 00:37:41 ID:NadPjgE/
「え・・あ!な、何の用だよ!」
「ちょっと良い?話があるの」
「何だよ今更」
「お願い」
 最初不満げに答えた彼も、結局は私に従い、外へとついて来た。私は自分の「お願い」顔の強力さをよく知っている。
「で、今更なんの話?こんな不細工に用でもあるのかよ糞ビッチ」
 人気の無い校舎裏について、彼が放った第一声がこれだった。
 普段の私ならその十倍ぐらいの罵倒を返しているところだが、今回は見逃すことにした。
「ねえ、謝りたいの私。あの時はちょっとイライラすることがあっただけなの。本当にごめんなさい」
 私が頭を下げると、彼はいくらか驚いたようだったが。
「・・どういう風の吹き回しだよ。どんな裏があるんだ?」
「本心よ。謝りたかったの」
「うそつけ。あんたにふられた男の話、聞きまわったんだぞ。酷い女らしいじゃないか。
今更謝ったところで信用するとでも思ってんのかよ」
 なんて余計なことをするんだろう。北君が聞いた私の悪評というのも、情報元は全部こいつなんじゃないだろうか。
「本当なの。許して。お願い」
「へっ。じゃあ何でも言うこと聞くか?」
「え、そ・・れは・・・」
 普段の私ならきれている。ご機嫌な時でもやっぱりきれている。
「何でもってわけじゃないけど・・ある程度なら・・」
「じゃあまず、試しに3回まわってワンって言ってみろよ。話はそれからだ」
「・・・・・」
 私は呆れた。なんて古典的なことを言うんだろうこいつは。
「嫌なのかよ。なら何ならできるんだ?」
「えーと、一回食事に付き合うとか」
 破格のご褒美を与えたつもりだったが、彼は驚くべきことにそれを断った。
「今更あんたと飯なんか食いたくねーよ。じゃあそうだな、フェラでもしてもらおうかな」
「は?フェ・・ラ・・・?」

168 :本当の初恋 (中) 3/6:2008/08/24(日) 00:39:51 ID:NadPjgE/
 あまりの突飛な提案に、私はしかめっ面になる。
「フェラだよ。しゃぶるんだよ。さあ、やれよ。それともまさか知らないとか言うんじゃねーだろうな」
 やり方は知っているが、したことなど無かったし、したいとも思わなかった。しかもこんな醜男を相手に・・。
「ちっ、やっぱ無理かよ。なら許してやらねーよ」
 そう言って立ち去ろうとする彼に、私は何とか声を絞り出す。
「ま、待って」
「何だよ」
「あの、せめて手をつなぐぐらいに・・」
「なめてんのかよ」
 本当は手すらつなぎたくなかったが、それすら断られてしまった。
「ごめん。じゃあえーと・・手で、してあげるから。それでどう?」
 吐き気がする提案だったが、効果はあった。ミナミは少し考えた後、「それで良い」と言った。
 言われた方の私は、自分から提案したものの、全身がぞわっとするような寒さに襲われていた。
 手でするなんて言ったけど、あんなものには少しも触りたくない。
「ほら、早くしてくれよ」
「きゃあっ!」
 見ると、ミナミは既にあれを露出させていた。グロテスクで生々しく、感情と本能の塊みたいな醜い物体を。
「ほら!」
 ミナミは私にわざわざ近寄ってきて、それを私の前に出した。
「い・・いやあ・・・汚いし臭いし・・」 
「お前が手でするって言ったんだろ!」
「だって・・」
 だって触りたくないんだもん。と思いながらも、渋々、手を伸ばす。
 しかし、触れるほんの少し手前でとまってしまう。やっぱりこんなの嫌だ。

169 :本当の初恋 (中) 4/6:2008/08/24(日) 00:42:08 ID:NadPjgE/
「ね、ねえお願い。こんなことなくても許してくれて良いでしょう?」
「なんだよそれ。勝手なこと言うなよ。そうだな、じゃあとりあえず何で俺なんかに許しを請うのか、その理由から教えてくれよ。
そうすりゃ、もうちょっと軽くしてやってもいいぜ」
「・・・それは・・・」
 言えるわけが無い。わけはないのだが、私の口は意思に反して喋りだしていた。
「北君が、私を酷い女だって。私があなたにひどいこと言ったって・・」
「な、んだよ!それ!」
 予想しない答えだったのか、ミナミも驚いたようだ。
「もしかして北にふられたのかよ?おいおい、それで今更俺に謝りに?
言っとくけど、俺にちょっと謝ったところであんたの本性が変わるわけじゃないだろ。北だってそんなこと分かるだろうし」
 そう、そんなこと私だって分かっている。
「将を討つにはまず馬から射て、ってつもりなんだろうが、仮に俺が許したところであんたに足蹴にされた馬はたくさんいるんだ。諦めな」
 そう言って彼は立ち去ろうとした。手でしろ、なんて言いつつそこまでスケベじゃなかったのか、あっさりした引き際だった。

それともプライドの問題だろうか。
 しかし私はその時、自分でも思いがけない行動をとっていた。歩き始めた彼に追いつき、手でそれを掴んだのだ。
「おわっ!いてっ!ちょ、ちょっと待てよ!無駄だって言ってるだろ?俺が仮に許したとしても一時的なことで・・」
「うるさいっ!だまれっ!」
 そう言って私は彼のしまったモノを引きずり出し、ペースなどお構いなしに右手でこすりだした。
「ちょ、ちょっと待てよ、早けりゃいいってもんじゃ・・」
 彼の抗議にも耳を貸さず、私は一心不乱にそれをしごいていた。
「ちょ、ちょっと待って、出ちまう・・くっ!」
「っ!」
 顔に熱いものが飛び散る。どうやら射精したようだ。
 これで約束は果たしたといえるだろう。
 早ければ良いってもんじゃ、なんていっていた彼だったが、今回は早くしごくだけで良かったようだ。

170 :本当の初恋 (中) 5/6:2008/08/24(日) 00:44:33 ID:NadPjgE/
「さあ、約束は果たしたわよ。北君に、私が誠意をもって謝ったって伝えてね」
 そう言って立ち上がり、私は回れ右をして歩き出す。
「お、おい!聞いてるのかよ!あんたの評判、もう知れ渡ってるのに今更・・」
「評判あげてみせるわよ。悪評広めてた男達に謝って」
「ま、待て、待てよ!おい!そういう奴らに謝りに行って、許してくれるとはかぎらねーぞ!
俺みたいな無茶ふっかけてくる奴もいるかも」
「・・・そしたらまた、今みたいにするわ」
「・・・!」
 彼が息を呑むのが聞こえた。
 ホント、私は何を言ってるんだろう。先ほどからまるで、別の人間が私の身体に入り、私をコントロールしてるかのよう。
「おい、やめろよ!やめてくれよ!あんたそこまでする必要ない!俺が、俺が北に言うから!」
 身体がぴくりと反応する。
「言うって、どんな風に?」
「良いように伝えるさ、過去の評判をなんとか別解釈で覆すような言い方とかしてな。
正直、あんたが他の男のもの触ったりすると思うと、すげー嫌なんだ」
「え・・?」
「だって・・一回好きになった奴をそんな簡単に嫌いになれるかよ。
だからある意味、あんたの言ってた事は正しいんだ。よっぽどきつく言わない限り、なかなか諦めたりできないもんだぜ」
「・・・・・」
 私は黙って聞き入る。その気持ちが、今なら少しは分かるからだ。
「だから、無駄なことはやめてくれよ、頼むから」
「だって・・」
 また私は泣き出す。
「私だって、どうしていいのか分からないんだもん!他にやり方は思いつかないんだし、仕方ないでしょう!
どうすれば良いって言うのよ。どうすれば彼が振り返るって言うのよ!」

171 :本当の初恋 (中) 6/6:2008/08/24(日) 00:46:08 ID:NadPjgE/
 叫んでいる途中、視界がにじんだ。涙がでていたのだ。
「そんなに、惚れてるのかよ。でも、あんたはただ単に欲しがって駄々こねてるだけだろ。
自分のものにならないからパニック起こしてるだけだ。ガキの恋愛って奴だぜ。断られたら素直に引けよ。俺みたいにな」
「何よ、あんたは大人だって言いたいの!?行動が出来ないだけの臆病者でしょ?一回断られたぐらいで諦めるような・・」
 そこまで言ってハッとした。
 告白されて断って、それでもしつこくよってくるような男は私が最も嫌っていたタイプではなかっただろうか。
「・・・あんたなら、何回も同じ相手に言い寄られるのがどれだけ苦痛か分かるんだろう?」
 空気が止まったような気がした。ああ、そうだ、私は最低だ、しつこい女だ。
「でも・・諦められないのは・・どうすれば良いの?」
 涙を流し続けながら私は聞く。ミナミからは無慈悲な答えが返ってくる。
「・・俺こそ聞きたいね」
「・・・・・」
 長い沈黙があった。そのうちに、ぽつん、と何かが耳に触れた。
 それが雨だと認識した時には、酷い豪雨になっていた。
降り出してからまだ一分も経ってないのに、身体がずぶ濡れになっている。
「雨か。話は終わったろ、俺は戻らせてもらうぜ。風邪をひくわけにはいかないからな」

 ミナミが立ち去った後も、雨の中でひとり、私は立ち尽くしていた。

172 :本当の初恋 (中) :2008/08/24(日) 00:51:33 ID:NadPjgE/
以上です。後半は早ければ昼ぐらいまでに、遅くとも今日の夜にはあげる予定です。
今回も読んでくれた人、ありがとうございました。

そして感想くれた人、凄く感謝してます。
>>165
やさしい言葉、ありがとうございます。基本は自分が書いてて楽しいものを書いてますので大丈夫ですよ。

173 :名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 01:04:32 ID:oc7Hxnih
>>172
この話後編どうなるか予想できませんが、好きです。

174 :名無しさん@ピンキー:2008/08/24(日) 11:42:22 ID:k41un8/q
>>172
確かに想像出来ない展開だ
これからどうなるかをwktkして待っております
GJ

175 :本当の初恋 後編 1/18:2008/08/24(日) 19:26:11 ID:NadPjgE/
思った以上に長くなってしまいましたが、後編です。
視点の問題で、若干いつもより読む感覚が違うかもしれませんが、楽しんでいただけたら幸いです。

 その日も俺は、雀荘にいた。
 中林ユウと会ってしまう可能性は充分にあり、正直会ったら気まずいだろうな、と感じながらも、やはりやめられなかった。
「なあ兄ちゃんよ。最近ユウちゃん見ないんだけど、知らないかい?何か喧嘩でもしたとか」
 対局中、常連の一人がそう言った。
「いえ、知りませんよ」
 俺にはそう答えるしかなかった。
 あの一件以来、中林の顔が時々浮かんでくる。
 確かに美人だとは思う。スタイルも良い。
 しかしその裏の顔を聞かされた途端、酷いだまされ方をしたような気がした。
 もちろん、あれだけの女なら、そりゃあモテるだろうと思うし、振り方がきつくなるのも分からないでもない。
 建前やお世辞をある程度はみんな使うものだし、それを完全に真に受けて「だまされた」なんて言うのもちょっと間抜けで、筋違いなんじゃないかという気持ちもある。
 ただ、それでもミナミをあれだけ罵倒した女を許すわけにはいかなかった。
 ミナミとは小さいころからの長い付き合いで、奴には俺が一番苦しいときに助けてもらった恩がある。俺にとっては最も信用できる人間と言って良い。
 ゆえに、当然ミナミを裏切るようなことはできないのだ。
 しかし、それでも中林の事が気になってくるのは何故なんだろうか。
「お、それロン」
「えっ・・あ、しまった」
 向かいに座っている中年のおばさんの声で俺は現実に戻された。
「今日は珍しく不調だねえ。それとも、あたしがついてるのかな」
 おばさんがけらけらと笑う。
 結局、その後もいつもの調子を維持できず、俺は散々な結果で店を出た。

176 :本当の初恋 後編 2/18:2008/08/24(日) 19:27:42 ID:NadPjgE/
 外に出て、自分のチャリに近寄った時、俺はその異変に気づき、ため息をついた。
「またか」
 そう、また、だった。
 俺の周りで、最近妙なことが多い。
 届いた郵便が既に開けた跡があったり、インターホンの音に出てみても誰もいなかったり、 そして、サドルの上に変な液体がついていたり。
「勘弁してくれよ、もう。どんな嫌がらせだよ」
 最近では常時持ち歩いてるタオルでそれを拭く。
 拭きながら、一体誰がこんなことをしているのだろうと考える。
 こんなことをされる理由があるとすれば、きっと恨みだろうと思った。しかしそこまで恨まれるほどのことをした覚えがない。
 と、その時、別の考えが浮かんだ。ストーカー、という可能性だった。
 嫌がらせの始めにそれを考えなかったのには、ストーカーとはイケメンにつくものと考えていたから、というのがひとつ。
もうひとつは、つまり、現実感がなかったからだった。
 ストーカーの被害というのは全国ではたくさんあるらしいが、とりあえず自分の周りでは聞いたことがほとんど無かった。
それも男に対してとなると絶無であり、何度考えても、「ストーカー?そんな馬鹿な」という先入観が強く、考えすらしなかったのだ。
 しかしストーカーという仮定を信じ、改めて考えてみると、記憶の端々に思い当たるところがあった。時々俺を遠くから見ている視線があったように思えたのだ。
「うそだろ、ありえねーよ・・」
 自分を励まそうとして言ったつもりだったのに、言ってみるとますます暗い気持ちが俺の胸に押し寄せてきた。

177 :本当の初恋 後編 3/18:2008/08/24(日) 19:29:58 ID:NadPjgE/
 自分が一人で住んでいるアパートの前まで来ると、そこにはミナミが来ていた。
 もちろん勝手に来たわけではない。俺が家へと戻る途中に携帯で呼んだのだ。ミナミの家は近いので、俺より先に着いたらしい。
「お」
 俺の姿を認めると、ミナミが軽く手を上げた。
「俺のが早かったな。どうよ、今日も勝ったか」
「いや、負けた。調子の悪い時もたまにはある」
 俺はミナミを部屋に上げると、早速相談した。
「・・・ってことなんだが、どう思う?」
 一通り説明する