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【もて王】大亜門総合エロパロ第三章【スピンetc】

1 :名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 22:06:49 ID:AKKZT4Ya
二度立つスレは三度立つ!仏のスレも三度まで!?「縁起でもないセリフ出たーっ!」

花も圧縮も乗り越えて、今、大亜門先生総合スレとして、間口も広くリニューアル!
いえ、リ乳アルしましたーっ!「言い換える意味あんのそれ!?」

様々な萌え女子が集う大亜門作品で、キミも新しい世界の扉を開いてみないか?

*推奨:sage進行・作品投下の際カップリング・傾向等の明記。

(実質) 前スレ 太臓もて王サーガでエロパロ 第二章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161440735/

初代スレ 【あいす】太臓もて王サーガでエロパロ【矢射子】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133354876/

太臓もて王サーガエロパロ保管庫
http://moteking2h.web.fc2.com/index.html

保管庫内絵板
http://netgame.mine.nu:10017/lpbbs/f1152403224/


なお、私明石サマンサのエロは、年中無休で募集しております!
「職権濫用ーーっ!!」



2 :名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 22:52:01 ID:bd8+4OMc
乙!

3 :名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 22:53:31 ID:TDbZUNwR
>>1もて乙サーガ

4 :名無しさん@ピンキー:2007/12/06(木) 23:10:51 ID:d1lIXfmP
震えるぞ乙!
燃え尽きるほど乙!
刻むぞ!血液の乙!

5 :名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 03:12:28 ID:vlnBTjDc
一万と二千年前から>>1乙してるーーっ!!!!


6 :名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 08:03:24 ID:6Wrass68
最初に言っておく。
>>1にかーなーり!乙!!!!

そして…ミツケタゾッ!!!

初代スレのミラー
http://mimizun.com/log/2ch/eroparo/sakura03.bbspink.com/eroparo/kako/1133/11333/1133354876.dat

第二章のミラー
http://mimizun.com/log/2ch/eroparo/sakura03.bbspink.com/eroparo/kako/1161/11614/1161440735.dat

7 :6:2007/12/07(金) 08:36:43 ID:6Wrass68
スンマセン、↑のじゃダメっした

第二章しか見付からんかったけど、こっちなら大丈夫(念の為hは外しますっス)

ttp://mirror.s151.xrea.com/imona.php?url=http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161440735/

8 :前スレ671:2007/12/07(金) 10:53:47 ID:zYfWiRxW
おおお!>>1乙!
という訳で、前スレで投下し損ねたイヌイチのえっち編、前半パート投下します。
作品:太臓もて王サーガ・カップリング・乾×一口、続き物のネタが絡んでますので、
苦手な方は「イヌイチ」でNG登録お願いします。

9 :イヌイチおまけ・課外授業1:2007/12/07(金) 10:55:18 ID:zYfWiRxW
******
 すぐ近くに、熱い吐息。背中には、制服越しに触れる掌。
 ――好きだ。
 泣きそうな声で言わないでよ。すごく卑怯じゃない。

「…あたしも、好き」
 頭の中に正解のランプが灯る。――ああもう、ダメだ。
 カラダにも、心にも逆らえない。

 背中の掌が、ゆっくり腰へと降りていく。
 あたしは目を閉じて、すでに熱く潤んでしまっている場所へと辿り着こうとしている指を待った。

 ほんの少しのうしろめたさと、胸いっぱいの期待を抱えたまま。


10 :イヌイチおまけ・課外授業2:2007/12/07(金) 10:56:14 ID:zYfWiRxW
*
 期末テストも終わり、あとは(受験生にはほぼ無縁の)冬休みやらクリスマスやら正月やらを待つのみとなった頃、乾一のスポーツ推
薦合格の知らせ――というか、乾自身も周りの女子から聞かされて慌てて確認したらしい。ひどい話だ――が届いた。
 ここで普通の高校三年生ならば、あとは気楽な学生生活が待っているはずだった。
 けれど今、(わざわざ週番から鍵を借りてまでして)放課後の教室に居座り、あたしの目の前で古文の副読本とプリントを交互に見て
は、頭を抱えるクラスメイトには、そんな言葉は、夢のまた夢というものだった。

「…は『茜さす』だから3番だろ…で…えーと『袖』は…『からころも』か?」
「選択肢の中に『唐衣』は無いから、この場合は『しろたへの』で5番だよ。波や雲とかの他にも、白っぽいものに付く枕詞だって覚え
たらいいんじゃないの?」

 こつん。ペン先で解答を示すと、乾は渋面を作り、むう、と唸った。
 多分、今までで一番頭使ってんじゃないかな。
 ――そりゃ確かに、自分の卒業がかかってると言われたなら、頭のひとつふたつは使おうってものだけど。

 大方の予想を裏切ることなく、乾の期末テストの成績は、ぶっちぎりの学年最下位だった。
 結果、ほとんどの教科の先生から、冬休みの補習と分厚いプリントの束という一足早いクリスマスプレゼントを貰ってしまった乾は今、
少しでも消化させようと頭を悩ませている次第で。
 そしてあたし、一口夕利はというと、乾本人に半ば泣き付かれるように、課外授業につき合わされてしまっている訳で。
(BGM:北の国から)

「――ふはっ、もうダメだ。休憩、きゅーけー」
 頭から煙でも昇りそうなほど考え込んだ乾は、大きく息を吐くと机にペンを放り投げた。からん、という音が、人気の無い教室に響く。
「トイレでも行ってくれば?あたしもう少しこのプリント見てるから」
「…一口よくそんなモンまじまじ見てられるなあ」
「結構勉強になるよ?受験勉強の応用にも使えるし」
 ――…そう、乾と違って、あたしにはまだ、大学受験が控えていた。
 乾ほどでは無いにしたって、あたしの成績も、あまり良い方ではない。
 本来なら他のクラスメイト同様、早く帰宅して勉強しなければならないのだけど。

 かたん。

 椅子が音を立て、乾が席を立つ。
 ――来る、かな?あたしの胸が、期待に小さく弾む。
「本当、悪いな。余計なモン付き合わせてさ」
 乾の影で、西日が遮られる。けれどあたしの頬は、冬の日差しより温かい乾の手が、包み込んでいた。

 ――いいよ。
 あたしは、心の中で答えた。唇はとっくに、乾の唇に塞がれていたから。


11 :イヌイチおまけ・課外授業3:2007/12/07(金) 10:57:27 ID:zYfWiRxW
*
 初冬の遊園地での一件以来、あたしと乾の間柄は少しだけ変わった。
 ううん、変わったというよりは、項目が追加されたような感じだった。

 今まで通り、悪態を吐いたり、ふざけあったり、鉄拳制裁をしたりするあたしたちと。
 今みたいに、こっそりキスしたり、手を繋いだりするあたしたち。

 いかにも子どもらしい、青臭い付き合いだけど、あたしはそれでもいいかなって思っていた。

「――ん、んむっ?」

 つい、さっきまでは。

「ぷぁっ、い、乾?」
 口を離し、たしなめようとする言葉が、再び封じられる。…ちょ、口…の中。
 ぬるっ。
 うああっ…舌、だよねコレ。

 あったかくてぬるぬるしてて、別の生き物みたいな乾の舌が、あたしの口の中で暴れだすのを、あたしは震えながら受け入れる事しか
できなかった。

「ん…っ。んふっ…」
 舌同士がぶつかり、絡み合う。――えっちなキスだ。
「…嫌?」
 口を離し、乾が耳元で囁く。熱い吐息が、耳にかかってぞくぞくする。
「――…っ」
 いや、じゃないけど、でも。

 こりっ。「っ!!」
 答えようとしたら耳を軽く噛まれた。やだ、ちょっと、待。
「結構、オレ我慢したんだけど。一口スゲー無防備だし」
 む、無防備って何よ!?
「――っ、じゃ、ないじゃない」
 そうじゃないじゃない。あたしは受験生で、アンタは留年スレスレで。ここは学校で。
 えっちなことしてる場合じゃなくて。
 ――だから、言いたいのに。

 くちゅん。「ひゃ…あっ!?」
 耳?い今、あたしの耳なめてるの!?
「だめっ…待って、よ!」
 どんっ。力一杯乾の胸を押すと、あっさり乾の体はあたしから離れた。
 隣の机にもたれかかった乾は、逆光でちょっとだけわかりにくかったけど、困ったような顔で、あたしを見ていた。


12 :イヌイチおまけ・課外授業4:2007/12/07(金) 10:58:25 ID:zYfWiRxW
*
 ばくん。ばくん。ばくん。――うわあっ、心臓、バクハツしそう。
 マトモに顔も見られないよ。
「い、乾どうしたのよ急に…ヘンだよ、こんなの」
 うつむいて、乾のクツの先だけを見つめながら問いかける言葉に、乾は低い声で、急じゃねーよ、と答えた。
 いつかの電話みたいに、無理に感情を押し殺したような声。
あの時もこんな顔してたんだろうか。
「ずっと前から、一口とやらしいことしたいって思ってた。…卒業したらこうしていつも傍に居られないって、改めて気付いたら余計に」

 ――でも、それって変なのかな。

 最後の言葉が、胸に刺さる。返す言葉も見つからず、あたしはただ黙った。
 あたしだって、漠然と思ってはいた。

 卒業して、違う道に進む二人は、いつも一緒には居られない。
 お互いに進む学校の名前すら聞こうとしなかったのも、ひょっとしたら――いつか来る時を、予感しての事だったのかもしれない。
 一番、想像したくない事の。

「…」
 考えたら、涙が出そうになった。多分、今のあたしの顔、ものすごく不細工だ。
 泣きたくないのに、みぞおちの辺りが痛くて痛くて、呼吸すらままならない。
 唇を噛んで、痛いのを我慢しようとしても、堪え切れそうにもなかった。
「…悪い。オレ、今酷い事言ったよな。一口の気持ちとか考えなくて…けどさ、オレもどうしていいか良くわかんねーんだ」
 椅子に座ったままのあたしの前に、中腰になって、乾が向かい合う。
 ちょっとだけ固い乾の指が、あたしの頬をなぞっている。
「頼むから、泣くなよ。お前の泣き顔見てると、こっちまで涙出ちまうんだよ」
「…泣…て、ない、よ」

 泣かないって、決めてたもん。
 だってあたし、乾と違う道行くんだもん。いつまでも一緒にいられないもん。

 一人に、ならないといけないんだもん。

「――オレが」
 がたん、という音と共に耳元に響いた声に、あたしは目を開ける。乾の首筋と、一つ括りにした後ろ髪があたしの目の前にあった。
「…しようとしてる事、スゲー酷い事なのかもしれない。お前を今以上に傷付けて、泣かせて、取り返しのつかない目に遭わせるかもし
れない。けど、オレ…一口が、好きだ」

 どうしようもねー位、お前が好きだ。

 ぎゅうっ、と、背中に回っていた腕の力が増し、吐息が耳にかかる。
 制服越しに、はちきれそうな程の鼓動が伝わってくる。
 あたしは、いつの間にか乾に抱きしめられたまま席を立っていて、足元が変な爪先立ちみたいになっていたのだけど、そんな事、全然
気にならなくて。
「――…あたしも、すき」
 学ランを皺が出来るほど握り締め、囁き返すのが精一杯だった。

 どうしようもない位、好きだよ。


13 :イヌイチおまけ・課外授業5:2007/12/07(金) 11:00:20 ID:zYfWiRxW
*
 ――つめたっ。

 袖口の、金属製のボタンがお尻に当たり、その意外なほどの冷たさに、あたしは身を固くした。
 きっと、ボタンが冷たいんじゃなくて、あたしのカラダが熱いんだよね。
そう思うと何も言えない。恥ずかしくて言葉なんて紡げない。

 乾は、腕の中の存在が、いきなりびくんっ、と震えたのに驚いたのか、痛かったか?などと見当違いの言葉を掛けてきた。
「ううん。…まだ、大丈夫」
 ちょっとゴツゴツしている乾の手は、あたしの背中から腰に降り、スカートを潜って――今は、ショーツの中で、直接あたしのお尻を
触っている。

 触り心地…は、あんまり良くないんだろなあ。
 前に思いっきり『未成熟』とか言われちゃったしね。ええ、覚えてますとも。一生、忘れるもんか。
 でも、乾が気持ちよくなれるなら、もっと大きな方が良かったかな。
 お尻とか胸とか胸とか胸とか。――今日は胸に触れられなくて、ちょっとだけホッとしてるんだけどね。

 …あたしだって、いろいろある。目の前の鈍感男には、気付かれたくないこととか。

 ――もぞっ。「あっ」
 指が脚の付け根――あたしの一番大事なトコをかすめ、衝撃で思考が途切れる。
 まるで、余計な事考えるなってたしなめられてるみたいに。
「一口、もうちょっと…脚、開いて」
 言われるまま、固く閉じたままだった脚を、肩幅くらいに開く。
「ふあっ!?」
 小さな――多分、小さな水音を立てながら乾の指が隙間をなぞり上げた瞬間、おへその辺りがビリビリって痺れた。

 何これ。こんなの、自分でするのの比じゃない。

 ちゅっ。ちゅぷっ。くちゅっ。
「あっ…や、くっ、ん、んっ」
「すげ、とろとろ。一口って結構、やらしいよな」
「っ…!!どういっ…はんっ、意味よ」
 囁きつつも、指の動きを止めない乾に、あたしは吐息混じりの不服の声を上げた。
 少なくとも今の状態だったら、圧倒的にコイツのほうがやらしいくせに。
 ていうか、ドMのクセになんでこんなに責めてくんのよ。こんなの、ずるい。

 目にすることが出来ない分までカタチを確かめようとするかの如く、執拗に指であたしをなぞる動きが、気持ちよくて、もどかしくて、
恥ずかしい。
 お腹の奥がじんじんして、下着汚れちゃうかもなんて心配しながらも、溢れ出すものが抑えられないなんて。

14 :イヌイチおまけ・課外授業6:2007/12/07(金) 11:01:38 ID:zYfWiRxW

「言葉どおりだよ。子どもっぽい顔して、小っさいカラダしてんのに…今スゲーやらしい表情して誘って、オレの手ぬるぬるにさせて…
我慢できなくなるっつーの」
「!!」
 や…やらしい、表情?誘ってる!?途端に、背中まで汗をかいた。
「バ、バカッ!そんなの見ないでよ!!」
 あたしは、乾の視線から逃れようと、胸元に顔をうずめた。
 シャツからは洗剤と、お日さまと、ちょっとだけ汗が混じった匂いがする。
 汗臭いのは嫌だけど、今の乾の匂いは不思議と嫌にならない。体中がじんじんして、それどころじゃないのかもしれない。
「隠れんなって」
 胸元から顔を離され、再びえっちなキスを交わす。唇を舐め、舌を舐める乾の舌の動きは、まるでミルクを味わう仔犬のようだ。
 これだけでも気持ちいいのに、指が、あたしが一番触れられたかった敏感な突起を責めだしたりなんかして。
「んっ!――…んむっ、んふーっ…っぷぁ…やあっ、そこ…んうっ…」

 どうしよう。ダメだってわかってんのに、しちゃいけないって思ってんのに。
 ――あたし、今、物凄く欲しがってる。
 あたしの中のあたしが、目の前の男と、繋がりたいって叫んでる。
 …すごい、えっちだ。
 乾の言うとおり、あたし、凄くえっちな子だったんだ。
「いぬいぃ…」
「…何?」
 わかってるクセに、あえて尋ねるかなソコで?――非難の意味も込めて学ランの背中を握り締めると、あたしは口の中をとろとろにし
ていた二人分の唾液を飲み込み、乾の目を見て、欲しい、と呟いた。

 ああ、もう駄目だ。もう帰れない――そう思ったあたしの高ぶりは、乾の、ごめん、という声に中断される事になるのだけど。


15 :イヌイチおまけ・課外授業7:2007/12/07(金) 11:02:23 ID:zYfWiRxW
*
「…え?」
 瞬間、頭が真っ白になった。勿論、性的じゃない意味で。
「あーちくしょー…オレだって今気付いたんだよ。…その、アレ、持ってくんの…忘れた」
 アレ…って、アレだろうか。いわゆる、避妊具とかいう。ていうか、乾普段からそんなモノ持ち歩いてんの?
 …なんか…予想外というか…ゲンメツというか…。
「……」
「そんな目で見んなよっ!…オレだってお前と…今、したかった…けどさ。さすがに無いのはマズいんじゃねーのか?」
「そうじゃなくて、乾、ひょっとして…」

 他の女の子にも使ったんじゃ、というあたしの疑念は、オマエ以外に使おうと思ったことはねーよ!という声によって一蹴された。

「オレそこまでバカじゃねーぞ…って、気にすんのそっちかよ」
 苦々しい、と表現するのだろうか。微妙な表情で乾は言うと、大きく息を吐き、もう一度ごめん、と呟いてあたしを抱きしめた。
 ころころと表情が変わるなあ。
「…いい、よ。…アンタなりに、考えてくれたんでしょ」
 ここでどこかの少女漫画や映画の真似事をしてしまえるほど、あたしも乾も愚かではない。
 残念に思うのは事実だけど、カラダのうずうずはまだ治まってないけど、乾があたしの体を大事に思ってくれてるのが伝わっただけで
も、十分だ。

 …学校でする気満々だったのか、というツッコミに気付いたのはそれから数時間後、眠る直前になってからの事だったけど。

「だから」
 乾の片手がまた、スカートの中に潜り込む。――今日は、指で勘弁な、なんて言葉と同時に。

 え?ゆび?…ああ、指か――…え?
「ちょっ、待っ――」

 くぷんっ。
「…っ!!」
 ちょっとだけ、入口に痛みが走ったあと、あたしの奥に乾の指が入ってきたのがわかった。
「っ、あ…っはあっ…」
 お腹の中、すごい、ヘンな感じ。自分でも触れた事の無い場所を、あたしの指より長い乾の指が、ぐちゅぐちゅってかき回してる。
「結構、ザラザラしてんだ。でも、ぬるぬるして、柔らか…」
「やあっ、何、言ってんの、っつ、んんっ…!」
 こんな時に解説なんて、どうかしてる。でも、耳元に乾の吐息混じりな声が響くたび、えっちになってしまったあたしのカラダは反応
して、お腹の奥がきゅううっ、って引きつってしまう。
「指一本でも、キツいぞお前ん中…これ、入んねーかも」
 これ…って、アレの事かな。服越しに、あたしのおへそ辺りに押し付けられてる…アレ。


16 :イヌイチおまけ・課外授業8:2007/12/07(金) 11:03:06 ID:zYfWiRxW
*

「い…ぬい、辛い?」
 服の上から分かる位、張り詰めてて、きゅうくつそうにしている。あたしは背中に回していた右手を下ろし、そっと制服のズボンの上
から撫でながら尋ねた。

 びくんっ。「あっ!…し、正直言うと、かなり」
 撫でた瞬間、乾の背中が跳ねた。――服の上からなのに…凄く我慢してんじゃないのかな。
「じゃ…あたしも、触るね」
 返事を待たず、ジッパーを下ろし、手探りで、下着の前開き部分(っていうのかな?)から熱い塊を掴む。
「うあっ…!?」
 あたしを責める指が止まり、耳の奥まで熱い吐息が流れ込む。
「人のコト言えないじゃない。…おちんちん、ぬるぬるが溢れてるよ」
「バっ…おまえ、また――…っ」
 先端を包むあたしの掌が、にちゃにちゃと音を立てるのを耳にしたか、乾が恥ずかしそうに目を閉じた。

 ――ぞくり。
 …これは、反撃のチャンス?あたしの中に、イタズラ心が芽生えた。
 前に、乾のカラダで色々試したのは、妄想の果ての暴走だけじゃないんだから。
 心の中で呟き、あたしは塊を握る手に、少し力を込めた。
 ――…でも、やっぱり、大きい…よねコレ。あたしの片手だけじゃ、きちんと握れないよ。
 コレ、あたしの中に入れようとしたの?
 木の幹みたいにゴツゴツしたところを擦ってみたり、先端のぬるぬるを吐き出してるトコを人差し指で弄ってみたり、根元の筋張った
ところを親指の腹でぐりぐりしたりする度、乾の膝ががくがく震え、耳に幾度も切ない声がこぼれ落ちて来た。

 キモチイイのかな。

 乾も、あたしみたいにお腹のうずうずが、胸にまで伝わって、呼吸がままならなかったりするのかな。
「…気持ち、いい?」
 直球で尋ねると、答えはまともな言葉にならなかったのか、何度も首を上下する動きに化けた。

 キモチイイんだ。

 伝わると、嬉しくなってしまう。もっと、もっと、気持ちよくなって欲しいって心の底から思ってしまい、更に擦る手の動きを早める。
「あっ…!!」
 手の中が、びくん、びくんって脈打ってる。――いいよ。
「もっと、気持ちよくなってもいいよ」
 あんたが、あたしにしてくれた位、ううん、叶うなら、それ以上。
 あたしの言葉に、乾は小さく息をのんだ――気がする沈黙を、一瞬だけ落とし、止まっていた指を再び動かし始めた。
 さっきよりも、激しく、乱暴に。
「くうっ、うん、ひゃあうっ――ん、んむっ」
 お腹の一番奥の、切なさのもとをぐりぐりと押さえる指に、ついこぼれる声を、唇が塞ぐ。
 上から下から、もう気持ちよすぎて馬鹿になっちゃいそうだよ。

 元がライバル同士だったからだろうか。それとも、場所が場所だからだろうか。
 西日が赤く染まりだした教室で、あたしたちは、声を殺し、手だけでお互いを追い詰めるように、高みに上らせるように、求め合った。


17 :イヌイチおまけ・課外授業ラスト:2007/12/07(金) 11:05:10 ID:zYfWiRxW
******
 窓を開けた瞬間、カーテンが冬の風によって大きくはためく。――と同時に乾の机の上のプリントが数枚、ばささっと床に散らばった。

「おわっとっとっと。…何だ、急に風吹いてきたな。寒っ」
「まだ閉めちゃダメだよー?ニオイ、こもってるから」
 窓際に立ち、開けた窓を閉めようとした乾に向け、あたしはティッシュで床に滴ったものの後始末をしつつ、言葉を投げた。

 …ううっ、ショーツん中、ぐちゃぐちゃで変な感じ。
 一応、さっきトイレで拭ってはきたけれど、ショーツを淫らに濡らした分までは、どうにもならなかったのだ。

「…結局プリント、そんなに出来なかったね。乾、ちゃんと家でやんなよ?」
「さっきの今でそういう事言うかねー?…なんつうかオマエ、変なトコで現実的だよな」
 はあ、と大きく溜息を吐き、プリントを拾いながら乾が呟き返す。
 自分の行動が非現実的だと気付いてないのだろうか。
「言っとくけど、もう、教室でなんか…ヤだからね。見つかんなかったから良かったけど…その…」

 こんな事ばかりしてたら、受験も卒業もままならない。
 あたしたちはどんなにえっちでも、学生で、今は高校三年の冬なんだから。

 ――そういう意味で言ったのに、目の前のバカ犬は散らばったプリントを胸に抱え、バカみたいな満面の笑みで、
「良かった?」
 なんて聞いてくるもんだから。

 あたしは、教室の片隅で、思いっきり乾の頬を引っぱたいた。

「も…うっ!!バカっ!ばかばかバカ犬っ!!!!」
 どこまで危機感のない男なのコイツは!
「あんまバカバカ言うなよ。自分に跳ね返ってくるぜ、そーゆーの」
「赤くなった頬押さえて嬉しそうにしてる辺りがバカだって言ってんの!!ドM!」
「それは否定しないけどな。…じゃあさ」

 乾は、小さく笑うとあたしの耳元に唇を寄せ、今度オレん家で『勉強』しようか、なんて囁いてきた。
「…!!」

 え?そっ、それって――…どっち、の?

 聞くに聞けない質問を胸に抱え、あたしは酸欠の金魚みたく口をパクパクさせることしか出来なくて。
「それまでオレも『自習』してるから。よろしくお願いします、一口センセイ」
 だから、それっ、どっちのよーーーーっ!!!?

 寒風にカーテンがはためく教室の中で、あたしは顔中を熱くさせながら、そう遠くない内に確実に訪れる日に様々な不安と期待を抱く
羽目になってしまったのだった。

 <つづく!>

18 :イヌイチの人:2007/12/07(金) 11:12:50 ID:zYfWiRxW
…以上です。(「イヌイチ」に関しては>>7さんのミラーを参照になさって下されば幸いです)
相変わらずこの二人は寸止めばかりでスミマセン。
次(只今打ち込み中)は本懐遂げますので、宜しければお付き合い下さいませ。
では、失礼します。

19 :名無しさん@ピンキー:2007/12/08(土) 00:25:08 ID:CGrE1yME
いつも作品投下ありがとう!
そして、是非本懐を遂げさせてください!
GJ!!

20 :イヌイチの人:2007/12/10(月) 11:40:21 ID:CjDltfVx
続きできましたので投下いたします。
作品:太臓もて王サーガ・カップリング・乾×一口、序盤に少々乱暴な表現&終盤に捏造状況あり。
続き物のネタが絡んでますので、苦手な方は「イヌイチ」でNG登録お願いします。


21 :イヌイチおまけ・家庭教師1:2007/12/10(月) 11:41:28 ID:CjDltfVx
******
 こんな時、あなたならきっと、女の子を泣かすんじゃないわよって、厳しくオレを叱り付けるでしょうね。
 凛とした表情で、木刀で、背中に喝を入れながら。
 ええ、オレもそう思います。
 女の子のカラダは男より柔らかで、でも心はもっと柔らかで、傷付きやすくて。
 気付けなかったオレは、きっと今一番馬鹿なんでしょう。

 先輩。

 オレは今から、一番好きな子を抱きます。
 馬鹿でいくじなしで情けないオレを、好きだといってくれた子を、抱きます。
 傷付けてしまった心ごと、全部受け止めて。

 先輩。矢射子先輩。

 オレは、あなたが、好きでした。


22 :イヌイチおまけ・家庭教師2:2007/12/10(月) 11:42:43 ID:CjDltfVx
*
 玄関の扉の前に立つ少女は、寒風に鼻を赤くさせながら、おはよう、とオレに声を掛けた。

「…おす。迷わず来れたか?」
「途中でわかんなくなって、コンビニで聞いちゃったよ。同じ町に住んでんのに、迷う事ってあるんだねー」
 そう言って、一口は苦笑交じりにコンビニのビニール袋を持ち上げてみせた。中に入っているジュースのペットボトルが揺れ、がさり
と音を立てる。――ジュースくらい、ウチにもあるんだけどなあ。
「何だよ、ケータイで呼び出せば、迎えに行ったのに」
「後で気がついたの。…それより乾、上がっていい?」

 頬を膨らませ、むくれる一口の言葉にオレはハッとなり、慌てて、12月の来訪者を我が家に招いた。
 目の前をすり抜けた瞬間漂った、一口の甘い匂いに、オレは胸が高鳴っていくのを、自覚していた。

「乾ん家って、共働きだっけ。…土曜日もなの?」
「ああ。昔っからだし、慣れてるけどな。あ、そこ、テキトーに座っていいぞ」
 一口の返事を背で受け、オレは学習机の上に置いてたプリントをまとめる。…あーもう、がっつくなオレの手!今から震えてどうする!!
「…オレの部屋、なんか変か?」
 きょろきょろと見回す一口に尋ねると、ううん、と首を振りながら返す。気のせいか、少しぎこちない。
 いや、気のせいじゃないのかもしれないけど。
「男子の一人部屋って、初めて入るから、どんなのかなーって。…ふふっ、本棚、漫画ばっか」
「何だよ、お前小説読むのか?」
「読むよー?今野○雪とか」
「……」

 …それは、何とかが見てるとかいうタイトルの作者じゃねーか。聞くんじゃなかった。

 部屋の真ん中に出したテーブルの上に、ばさり、とプリントの束を置く。
「一応、自分で出来るだけの事はした…つもり…だけど、やっぱわかんねートコ多くてさ」
「空白多っ!」
 ぐさり。的確さが痛いツッコミにめげそうになりつつも、オレは改めて、頭を下げた。
「いやホント頼むって一口、いや一口センセイ。提出期限、英語なんか終業式の日だしさ」
「わ、わかったって。でもさ…あたしもそんな英語得意じゃないよ?そりゃあ、分かる範囲なら教えられるけど。…あと『センセイ』は
やめてよね」
 なんかヘンな感じだから。と、一言付け足し、一口は着ていたクリーム色のダッフルコートを脱いだ。

 ニットのセーターにシャツ。…下はデニムのタイトスカートと、黒タイツ…かな?

「どうしたの乾。まずは英語から始めるんでしょ?」
「へあっ!?あ…あ、うん」
 きょとんとした表情と声に、オレは我に返った。――おいおい、何やってんだ。
 服装をざっと眺めただけで、『その服をどう脱がすか』なんて不埒な考えを抱きはじめる自分の頭を大きく振り、オレは辞書と筆記用
具を、テーブルの上に出した。


23 :イヌイチおまけ・家庭教師3:2007/12/10(月) 11:43:33 ID:CjDltfVx
*
 難問だ。目の前のプリントがどうとか言う話じゃなくて。いやプリントも難問だけど、それは置いといて。
 正直、高を括っていたのだ。(ゴタゴタの末とは言え)裸で抱き合ったり、(半ば強引に)教室でコトに及ぼうとしたりはしたのだか
ら、何とかなると思っていた。
 だが、頭で何度も行われていた予行演習が全て無駄になりそうな位、目の前の少女はスキが無い。

「――…だから、その派生語の“surprising”は『人を・驚かすような』とか『事柄が・驚くべき』って意味で使うのね」
 バインダー用のルーズリーフにかりかりとペンを走らせ、一口が問題の解説をしている。
 あまり自分では気がついてないみたいだが、コイツは意外と人に教えるのが上手い。
 オレが『センセイ』と呼ぶのも、あながちでたらめではないのだ。

 …その割に成績があまり良くないらしいが、多分それは、クラスに一人は居る『ノートを取るのは上手いが憶えがあまりよろしくない』
タイプに分類されるからではなかろうか、とオレは踏んでいるのだがどうだろうか。

「…でもこの場合は、訳が『驚いたようだった』だから使うのは『何々させられている・何々している』の“ed”で、“suprised”にな
るって訳か。て事は正解は4番だな。なるほど」
 番号をプリントに書き込むと、一口はにっこりと笑い、そうそう、乾飲み込み早いねえ、と嬉しそうに声を上げた。
「普段から真面目にやってたら、もっといい点取れるんじゃないの?」
「マジメにやっててコレで悪かったな。今回は特に居眠りのツケもあったけど、元々オレはこんななの」
 ふてくされるオレに、一口は眉をハの字にし、もったいなーいと呟いた。
「狙おうと思えば、普通に大学行けるよ絶対…って、推薦決まったからいいんだけどね。うん」

 ――何が『うん』なんだろう。胸の中がもやもやする。

 近頃、一口は歯切れの悪い言葉をよく残すようになった。
 聞きたい事があるなら聞けばいいのに、無理に踏み込もうとせず、壁をわざと作るような感じで、オレとの間にぎくしゃくした空気を
漂わせる。
 オレは、そんな空気は欲しくないのに。

「…あのさ一口、お前どこの大――「ほら乾、ここも答え書いてないよ」
 あと5枚もプリント残ってるし、なんて、困った顔で笑いながら、話題を切り替えたりなんかして。
 何だよ。
 オレはもやもやを吐き出す代わりに、席を立った。
「ちょっと、トイレ行ってくる。また頭いっぱいいっぱいになってきたし」
「はいはい」
 部屋の扉を閉め、溜息を吐く。しんとした廊下に吐息は逃げるが、胸の中は相変わらずもやもやでいっぱいだ。

「…んと、何だよ一口」

 ああ、難問にも程がある。英語の語句整序なんて目じゃない。
 目の前の、好きな子の事なのに、オレは何一つ分かっていない。

 進路なんて、以前ならもっと気楽に話せたはずだった。
 以前――ただのライバルで、仲間だった頃なら。
 オレはその立ち位置の心地良さに、ずっと臆病になっていた。
 雨宿りの二人でいたいと願い、無理に自分の気持ちを押し込めていた。
 それがダメだと教えたのは誰でもない一口で、だからこそオレもまた、一歩踏み出すことができたのだ。
 なのに、どうして。

 胸の中のもやもやが、どす黒い色に染まっていく。少しも吐き出せないまま、体の一番奥に、タチの悪い毒みたいに溜まっていく。
 なあ、一口。
 お前、嫌な事考えてないよな?


 部屋に戻ってからの記憶は――なぜか少し曖昧になっている。

 ただ、長いトイレだったじゃないという茶化した言葉と、散らばるプリントの乾いた音と。
 コンビニの袋ごと床に転がった、未開封のジュースのペットボトルの鈍い音だけが、頭の中にいつまでも残っていた。


24 :イヌイチおまけ・家庭教師4:2007/12/10(月) 11:44:41 ID:CjDltfVx
*
 食い尽くしてやろう。本気で思った。

 フローリングの床に押し倒し、両手をしっかり押さえつけて、オレは夢中で一口の口腔を犯した。
 柔らかい唇も、キレイに並んだ歯も、小動物のそれに似た舌も、全部オレのものにしたくて、ただ、乱暴に貪った。
 やろうと思えば、唇や舌を噛んででも止めるくせに、一向に抵抗しない一口の姿が、オレを更に野蛮にさせるという悪循環。

 放課後の教室の時より、凶暴で残酷な感情が、キモチ良くて、キモチ悪くて、反吐が出る。

「んぐっ――ん、むっ…ふっ、あ…いぬい…?」
 なに今更『何でそういうコトするの?』って目で見るんだよ。
 オマエだって分かってただろうが。
「あっ…ちょっ、やっ!!」
「何がヤだよ。…んむっ…前言ったよな。オマエ無防備すぎって。オレが――随分我慢してるって」
 小さな体にのしかかり、首筋に吸い付きつつ、耳元に囁く。
「だっ、ダメ!吸っちゃやあっ!!見られちゃ…」
「見えるなら見せとけよ。それとも一口、オレと付き合ってるって誰かに知られると困る訳?」

 卑怯だ。なんて自分勝手なセリフだろう。なのに、今のオレは。
「…反論しないってのは、図星かよ。ごめんな一口?でももうダメだ」
 じりじりと腹を灼く痛みにまかせるまま、欲望を吐くことしか出来なくて。

 改めて気付いてぞっとしたが――…一口の両手は、オレの片手でも押さえつけられるほど、非力だった。
 オレは空いた片手で一口のニットセーターを捲り上げると、シャツのボタンに手を掛けた。
 胸元のボタンだけ外し、隙間から手を差し込むと、半ばあきらめの表情だった一口の目が変わった。
「やだっ!!お願…いっ、乾やめてってば!!」
 体の下でじたばたと小さな体が動く。けど、今のオレにはそんな言葉全然通じない。

 男と女って、別の生き物だよな。――涙を浮かべる一口の目を見つめ、遠い所で冷静な自分がぼんやり呟く言葉が、妙に心に響いた。

「おとなしくしろよ。…っはあっ、どうせロクな抵抗なんて、出来っこねーんだから」
 息を荒げ、最低な言葉を投げつけると、手首を押さえる片手に目をやる。
少し腰を浮かせた姿勢を取りつつ、もう片方の手はシャツの隙間に潜り込んだ。
 もう少しで、ブラジャー越しの柔らかな感触が掌に伝わりそうだったその時――。

「いっ…いいかげんにしろーーーっ!!!!!!」
「ぐぉっ!!!?」

 みぢっ。
 オレにしか聞こえない破滅の音と同時に、一口渾身の膝蹴りが見事に、それはもう見事に命中した。
 既に興奮状態だったのだから、その衝撃たるや、説明するだけで股間を押さえたくなるシロモノだった。
「〜〜〜〜っ!!!!」

 脳天まで突き抜ける激痛に、意識が途切れるのを感じつつ、オレは心の片隅で、少しだけ安心したのだった。


25 :イヌイチおまけ・家庭教師5:2007/12/10(月) 11:45:36 ID:CjDltfVx
*
 男と女って、本当、別の生き物だ。

 だからこそ、オレは一口の拒む理由が分からないし、一口にはきっと、今のオレの痛みがわからない。
 …本当、痛え。急所蹴りなんて喰らったの、何年ぶりだろう。
 あーでも、今はそれよりも、もっと深いトコが、泣くほど痛い。

 最低だな。
 こんな見苦しい自分の姿、出来るなら一生見たくなかったよ。

「……」
 一口、きっと帰っちまっただろうな。当然だ。あんな危険な目に遭って、逃げ出さない方がどうかしてる。
 いくら謝っても、いくら許しを請うても、もう、アイツは。
 ――ことん。…きぃっ。
 ?…何の…音、だ?物凄く聞き慣れた音のような気がするけれど。
「乾…まだ寝てる?」
「!!」

 ――…一口!?
 少しぼやけた視界の中、学習机の前に座った一口がこちらを向いているのが見えた。
「なんっ!?…お前、帰っ…痛でででででっ!!?」
 ベッドを軋ませ起き上がった瞬間、股間に痛みが走った。――て事は、夢じゃない。
「帰ったほうが良かった?」
「い、いやっ!!全然っ!!」
 首をぶんぶん振り、オレは慌ててうかつな発言を取り消した。
「…けど、正直…逃げると思ってた、から」
「うん、正直、帰っちゃおうって思ったけど」

 きいっ。

 椅子を鳴らし、一口はちらりとプリントの束を見た。
「こんな…コトで、あんたが勉強のやる気なくしたりなんかしたら…それこそ目覚め悪いし、イライラしてたのも、何となく、わかるし
――ごめんね、乾」
「や…一口が謝る事じゃねーだろ…」
 どう見たって、悪いのはオレだ。お前が謝る理由なんてない――言おうとしたセリフは、一口のそうじゃなくて!、という大声によっ
て遮られた。
 一瞬、部屋がしんと静まり返る。一口は、首筋を押さえて、続く言葉を放った。
「そうじゃなくて――さっき、乾言ってたよね。オレと付き合ってるって誰かに知られると困るのか、って…あれ、ちょっとだけ正解。
あたしね」

 お姉さまに、知られるのが、怖いの。


26 :イヌイチおまけ・家庭教師6:2007/12/10(月) 11:46:23 ID:CjDltfVx
 椅子の上の一口は、いつもより小さく感じた。
 実際は縮こまってるからなのだろうが、それでも、膝の上に置いた手を握り締め目を伏せる一口は、とても辛そうで。
 見ていて、胸が痛くなった。
「…酷いよね。あたし、ずっと振り切れてるって思ってたのに、乾の傍に居ると、一緒にお姉さまのこと思い出しちゃう時、あるんだ。
乾のこと、考えたいって…思ってん、のに、乾の中に、あたしが追い、かけ続けてた、お姉さまの面影見出したりっ、し…」

 ぽたっ。手の甲に、雫がしたたる。
 一口は、泣いていた。

「でもっ、あたし乾に、そういうの思われるのっ、嫌で…む、ね、触られるのも、どこかで比べられてたらっ…っく、わがままなのは、
分かってるけど、思ったら、怖くて」
「もう言うな、一口」
「あたし、お姉さまみたいに、おっきくないしっ…いっく、子どもみたいだし」
「言うなって!!」
 悲鳴染みたオレの声に、一口はびくんっと身をこわばらせると、何度もごめん、と呟いた。

 ――オレは、目の前の少女の何を、知りたがろうとしていたのだろうか。
 気をあせらせるばかりで、小さな体に抱えた悩みなど、欠片もわかってやれてなかった。
 一番好きな人だった人に対して、相反する感情を抱かざるを得なくなった一口の痛みなど、これっぽっちもわかってやれなかった。

 ちくしょう。本当にオレは馬鹿だ。
 
「ごめん…ごめんね、乾…お姉さまも…二人にすごい、酷いコト…考えて、ごめんなさ…」
「いいから、あんまり自分を責めるな」
 オレはベッドから降りると、泣きじゃくる一口の前に立ち、そっと抱きしめた。
 背中を軽くたたき、落ち着かせるように促すと、耳元に唇を寄せ、言葉を紡ぐ。

 自分にも、言い聞かせるように、一言一言、力強く。

「…オレは、確かに矢射子先輩が好きだったよ。多分、あの人が与えてくれたものは、ずっとオレの中に残ると思う。少しずつ、姿を変
えながら。――無理に消し去ろうとか、するもんじゃなくて、肌になじんだシャツみたいに、自然な形で溶け込むようにな。…一口もさ、
無理に振り切ろうとかすんなよ。オレは、オレだから先輩の代わりにはなんねーけどさ」
「…」
「オレの中に、先輩の面影があるってのは…正直、ちょっと嬉しかったよ。オレも先輩みたいになれたらって思ってたから――あ、でも、
これだけは忘れんなよ?」
「なっ、何?」

 いきなり身を離され、一口が目を丸くする。
 あー…やばい。すごく、この表情、イイ。

「オレは、誰でもない、一口夕利が好きだってこと」


27 :イヌイチおまけ・家庭教師7:2007/12/10(月) 11:47:37 ID:CjDltfVx
*
 カーテンを閉め切った部屋は暗いが、昼間ということもあり、何も見えないというほどではない。
 そんな中、オレと一口はお互い下着姿のまま、パイプベッドの上に向かい合って座っていた。
 白地に桃色の飾りのついた、上下お揃いの一口の下着はとても愛らしかったが、それよりもその中が気になってしょうがない。
 …って、いかんいかん。また暴走する気かオレ。
「え…と、その…優しくしてね」
 月並みな一口のセリフも、今のオレを見透かされてるみたいだったので、オレは馬鹿みたいに何度も首を上下し応えた。

 近付いて、そっと首筋に触れる。さっき自分が吸い付いた場所は、鬱血し、白い肌に紅い花を咲かせていた。
「痛い?」
 指で痕をなぞると、一口はくすぐったそうに目を閉じ、ううん、と答えた。
「いまの乾の指、気持ちいい…」
 ぽすん、とオレの胸に寄りかかり、言葉をこぼす一口が可愛くて。
 もっと気持ちよくさせたくて、オレは柔らかい頬に、小さい貝殻みたいな耳に、クセのない髪に、キスの雨を降らせた。

「――…ん…」

 そして、さっき力任せに貪った唇を、今度は優しく重ね合わせる。
 さっきはただ、なすがままにされていた一口の舌は、オレの口の中にもこっそり入り込み、薄暗い部屋に、吐息の音と水音が響いた。
「んむぅ…ふ、んん、く」

 …ああ、やっぱり、やらしいな。   
 一心に舌に絡み付こうとする一口の表情はとろとろに蕩けきっていて、さっき蹴られた場所に血が集まっていくのが、イヤでもわかる。

 そっと背中に手を回し、ブラジャーのホックに触れると、一口の肩がぴくんっ、と動いた。――まだ、怖いかな。
「…嫌?」
 尋ねると、胸元に直接、ううん、と返ってきた。

 壊さないように注意しながらホックを外し、肩紐をずらすと――ささやかながら丸みのある一口の胸が、オレの視界に飛び込んだ。

 掌にすっぽり収まる乳房は、確かに小さいけれど、ふわふわしていて、男のや、子どものとは明らかに別物だ。
「んあ…っ、あんまり、強く揉んじゃやあっ…痛っ…」
 ――痛いのか。オレは慌てて手を離し、ゆっくりと、狭いベッドに一口を横たえさせた。

 そのまま、身体に覆いかぶさるような形で上に乗り、乳房にもキスをする。
 出来るなら、足先から髪の先まで、余すとこなく唇を這わせて、味わいつくしたかったけれど。
 さすがにそれは嫌がられそうだったので、自重した。


28 :イヌイチおまけ・家庭教師8:2007/12/10(月) 11:48:48 ID:CjDltfVx
*
 ――全く、ロリコン趣味じゃないとか、未成熟とか言ってたのは、どこのどいつだよ。
 もし今、あの頃のオレが目の前に居たら、有無を言わさずぶん殴るだろう。
 いや、ロリコン趣味じゃないのは変わってないけどな。
 けれど――今、目の前に居る女の子のカラダは、明らかに子どもとは違う。

「あ…はぁっ、それっ、ぞくぞくするのぉっ…!」
 脇腹を、触れるか触れないかのギリギリのラインで弄びながら、へそを舌で責めるたび、頭上に降ってくる声は、甘さと、ほんの少し
重めの艶っぽさがある。
 こんな声、子どもになんか出せやしない。
 かと言って、他の女子に出されても困る。

 コイツじゃないと、駄目なんだ。

 くちゅん。
「―――っ!!!」
 ショーツの上からちょっと触ってみただけだったのに、一口の一番熱い所はびっくりする位潤んでいて、桃色の飾りのついたショーツ
のクロッチ部分だけが、水に濡れたみたいにぐしょぐしょだった。
「すげー…びっしょり…」
「っ…!!やあっ、見ちゃだめっ!」
 見られまいと閉じようとした一口の脚の間に、オレは膝を割り入れる。

 どくん。どくん。

 オレ…で、こんなになってくれたんだよな。…やばい、泣きそう。
「脱がすぞ」
「う、うん」
 返事と同時に腰が浮く。ショーツは一筋、透明の糸を引きながら、一口の体から離れていった。

 どくん。どくん。

 スリットが透けて見えるくらい、淡い陰り――その下に、熱い蜜を湛えた小さな花が咲いていた。

 以前見た時とは、状況が違うからだろうか。何か、別物のようにも思えた。
「い、乾…?」
 おそるおそる声を掛ける一口に、オレは軽く飛ばしていた意識を取り戻した。
「ん、どうした?」
「…あたしの…その、ソレ…ヘンかな?」
「い、いや…って、わかんねーよ。オレ、女の…ココ見るの、初めてだし…」
 厳密に言えば、一口以外のを見た事ないし。

29 :イヌイチおまけ・家庭教師9:2007/12/10(月) 11:49:34 ID:CjDltfVx

 時折ひくひくと蠢いては蜜を吐き出す、小さくも淫らな花の仕草があまりにもやらしくて、切なくて。
 オレは誘われるように、唇を近付けた。

「ひゃあっ!?乾それダメっ、汚いっ…!!」
 頭を挟み込む両脚が、びくんっと跳ねるのが分かった。

 ちゅぷっ。くちゅん。ちゅるっ。

 口の中がぬるつく。ほんの少しの塩気と、酸味と、あとむせ返るほどの女の匂いに、頭の中がぐらぐらと煮え返りそうだ。
「お願い…だからっ、やめてよぉ…っ」
 一口の手がオレの頭を離そうともがくが、オレは離れたくなかった。
 もっと触りたい。もっと味わいたい。ずっと、ずっと思ってたのだから。
「ふっ…んっ、くっ、んんんっ」
 唇より柔らかくて、ぷるぷるした花弁にキスをし、赤く熟れた小さな実を唇でついばみ、とめどなく蜜をこぼし続ける芯に舌をねじ込
む度に、一口の体はびくびくと跳ね、くぐもった鳴き声が頭のてっぺんに降ってきた。

 あ…やべえ…オレ、これだけでもイきそう。
 蹴られた痛みも吹っ飛びそうな快楽に、下着の中がぐちゃぐちゃになってるのが分かった。
 でも、出来るならこの中でイきたい。
 誰でもない、一口の中で。

「――…ぷあっ。一口」
 無我夢中で、舌がふやけそうになる位堪能したオレは顔を上げ、一口の名を呼んだ。
 真っ赤な顔の一口は、目の端に涙をたたえつつ、声が漏れないように、片手で自分の口を押さえていた。

 ぎくり。

 ひょっとして――いや、ひょっとしなくても今オレがやったことって、一口には物凄く恥ずかしい事だったんじゃないか?
 思い至り、オレは青ざめた。
「あっ!わ、悪い…オレ、やりすぎた…よな?」
 謝ると睨まれた。――今更、童貞の好奇心でした、じゃ済まないよな。
「…ばか。ヘンなとこで醒めないでよ」
 ぽかり。頭を叩かれる。…えーと?

「…続けていいってこと?」
「聞かないの」


30 :イヌイチおまけ・家庭教師10:2007/12/10(月) 11:50:25 ID:CjDltfVx
*
「そーっと、だからね。そーっと」
「お、おう」
 枕の下に隠していた(一口には呆れられた)ゴムを装着し、オレはガチガチに固くなってしまったモノを握ると、熱くぬかるんでいた
一口の入口に、先端を擦りつけた。

 くにゅり。

 ゆっくりと円を描き、拡げるようにしながら、先端を少しだけ潜り込ませる――んっ。
「…うおっ」「つっ!!」
 思わず声が漏れた。先しか入ってないのに、イきそうになってしまうのを、腹に力を入れ、崖っぷちギリギリで耐える。
 ぬるぬるで、きゅうきゅうで、キモチイイ。
 入口だけでこんなんだったら…奥はどうなっちまうんだよ。

 どくん。どくん。どくん。

 知りたい。感じたい。――もっと、もっと。
 一口の中に入りたい。
 ごくり、と喉を鳴らして生唾と、ともすれば飛び出しそうに感じる心臓をムリヤリ押し込むと、オレはゆっくり腰を進めた。
 少しずつ、必要以上に傷つけないように。

 ずっ。
「あっ」
 ずぬっ。
「あうっ」
 …ぐっ。

 ――微かに感じる抵抗。これを越えたら、もう。
「…いいか?」
 荒ぶる息を抑え、オレは体の下の一口に尋ねる。
 一口は、泣き出しそうな目でオレの顔を見ると、小さくうなずいた。
「いいよ、乾――来て」

 あたしの奥まで、乾でいっぱいにして。

 最後のセリフは声になっていなくて、ひょっとしたら、オレの幻想の中の言葉だったのかもしれない。
 だけど、確かに聞こえたのだ。
 少女だった一口の、最後の言葉が。


31 :イヌイチおまけ・家庭教師11:2007/12/10(月) 11:51:09 ID:CjDltfVx

「――っ!!!!」
 ぎしいっ、と大きくベッドが軋んだ。
 一口の目はきつく閉じられ、初めて受ける衝撃を必死で耐えているのが、痛いくらい伝わってくる。
「あっ…くうっ、うあはぁっ!!!!」
「はっ…あっ」
 一口の中は、熱くて、柔らかくて、そのまま溶けてしまいそうな程、気持ちよかった。
 けれど、脂汗を浮かべ青ざめた痛々しい表情を見ていると、自分だけ気持ちいいままでいいのかという罪悪感が沸き起こってくるのも、
また事実だった。
 痛いか?とか大丈夫か?なんて答えがわかりきっている言葉なんか掛けたくなかったし、かと言って、このまま腰を突き上げるなんて
出来ない。

 ――結果、一口の呼吸が落ち着くまで、オレは指一本動かせないままだったのだけど。

「…っ、はあっ…ね、え…まだ…入ってる?」
 まだ少し、息を途切れさせつつも尋ねる一口に、ああ、と答える。
 ゆっくり肘を曲げ、一口の体の上にぴったりと被さると、オレのものじゃない鼓動と、下半身にくにっとした衝撃が伝わった。
「…一口の、奥まで入ってる」
「んんっ」
「我慢すんなよ。…しばらく、こうしてるから。こうしてるだけでも、オマエん中、スゲー気持ちいいから」

 幸か不幸か、さっき受けた一撃は未だ尾を引いていて、こちらもあまり激しい動きは出来そうもなかった。
 痛みと快楽がごちゃ混ぜなのは、オレもまた同じなのだ。

 …と、正直に口にする程、オレも恥知らずではない。代わりに涙に濡れた一口のまぶたに何度もキスを落とし、少しでも破瓜の痛みを
やわらげようと試みる。
「きゃっ…やんっ、ちょっと、くすぐったいよ」
 くすくす笑いながら、一口は首を振るが、オレはなおもキスを続ける。
 お腹の動きがダイレクトに下にも伝わり、きゅんっと締まる中が、少し痛くて、かなりイイ。


 ――ありがとう。オレは声にせず、心の中で一口に礼を言った。
 オレの傍に居てくれて。
 オレを好きになってくれて。
 オレと一つになってくれて。
 本当に、本当にありがとう。


32 :イヌイチおまけ・家庭教師12:2007/12/10(月) 11:52:01 ID:CjDltfVx
*
「…ね、動いてもいいよ」
「ん?無理しなくてもいいっての」
 こちらにしてみれば、労わるつもりで言ったセリフだったのだが、一口には不満だったらしく、また頭をぽかりと叩かれた。
 いてーな。
「アンタって、本当…我慢強いよね、マゾだから?…でもさ、少しくらいは、無理、させてよ」
 つうっ、と背中に回されていた一口の手が、オレの背筋をなぞる。
 頬を赤く染めた一口は、ちょっと口ごもったあと、オレの耳に唇を寄せた。
「あたしだって…はじめ、のが、欲しいって思ってんだから」

 ――ん?

「今、何て言った?」
 この声では耳慣れない単語に、聞き返すと、一口は顔を真っ赤にさせ、何度も言わせないでよ!、と三度オレの頭を叩いた。
「もうっ、一のバカっ!」
「……」

 どうしよう。
 恥ずかしがりつつも、オレの名前を呼ぶ娘が、可愛すぎて、愛しすぎて――めちゃくちゃにしたくなる。
「…夕利」
 かすれ声で名を呼ぶと、相手も一瞬驚いた表情を見せ、それからふわりと微笑んで、どうしたの一、と返す。
「夕利、夕利、ゆ…り」

 呼ぶたびに、切なさが胸から溢れ出していくのがはっきりわかる。
 オレは、目の端に浮かんだ涙を見せまいと、小さな体を抱きしめると、ゆっくり腰を動かし始めた。

 ベッドが軋む音と、荒い呼吸の音と、体と体がぶつかる音と、粘ついた水音が、部屋の中でやらしいセッションを奏でる。
 オレはただ夢中になって、愛しいカラダを全身で感じていた。
 最初はゆっくりだった腰の動きも、徐々に激しさを増す。理性のブレーキはとっくに壊れ、脳内麻薬が痛みを消していた。
 引き抜こうとすれば絡み付き、喰らいつかんばかりに離そうとしない淫らな花は、挿しこむ時には、柔らかく受け止めてくれる。

 こんな感覚、知ってしまってはもう戻れない。戻る気も起こらない。

「あっ…あっ、一っ、激しっ…」
「夕利、夕利っ、好きだ」
「――…っ」

 背中に回していた腕に、力が入る。オレは繋がったまま夕利を抱えて起き上がると、座った状態で再び腰を突き上げた。
「はあっ…!はじめっ、一っ、好きっ、大好きっ!」
 がくがくと夕利の体が震え、中できゅうううんっ、と締め付けられる。
「くあっ…夕利っ、出るっ!」
「来てっ!はじめ…んああっ、ああああっ!!」
「うくっ…ううっ!」

 どくんっ!どくんっ!!どくんっ!!

 体の芯が爆発するんじゃないかって思ってしまう程の、激しい衝動がオレの中を駆け巡り――そのまま、オレは、誰よりも愛しい娘の
中で絶頂に達した。
「ああ…っ、好き、はじめ…好き、すき、だよ」
 オレの衝動を、しっかり受け止めている間、夕利は何度も『好き』と繰り返し、囁いていた。

 唇から紡がれる声は、甘くて、切なくて、少しだけ苦しそうで、でもかなり誇らしげな、『女』になりたての、夕利の声だった。


33 :イヌイチおまけ・家庭教師13:2007/12/10(月) 11:52:53 ID:CjDltfVx
******
 えーと…確かこの引き出しだったと思うんだけどな。
 がさごそと、机の引き出しの中を漁るオレの背に、ドアの開く音と何やってんの、という声が投げられたのは、事を終え、昼も大きく
過ぎた頃だった。
「夕利。――血、止まったのか?」
 振り返り声の主を見ると、シャツとタイトスカート姿の夕利は、かあっと頬を赤らめた後渋面を作り、オカゲサマデ、と感情のこもら
ない返事をした。

 …やっぱり、まだ怒ってんだろなあ。

 未経験の女の子を抱いた場合…その、痛みと同時に血が出るって事くらいは、オレも知識として知っている。
 痛みの有無や、血の量に個人差があることも。
 そして、夕利の場合は。
「…アレの時以外に着けるなんて思わなかったわよ、ホント」
 と何度も愚痴るほど血が止まらず、二人揃って慌てふためき――今に至る訳で。
「はあ…」
 いや、その生理用品、家にあったやつなんですけど。オレは変な所で生々しいモン知っちまった訳ですけど。
「まだ一のが入ってるみたいで、歩きにくいし。優しくしてって言ったのに」
 ハイ。その通りです。返す言葉もございません。
 帰りは自転車で送りますので、どうぞご容赦くださいませ。

「…言っとくけど、他の女のコ、こんな風に泣かせたら、承知しないからね」

 …がしゃん。「ぎゃんっ!!」
 加減が効かず、思い切り開けた引き出しが抜け、足の甲に落下し、オレは情けない悲鳴を上げた。
「いってえーー…夕利!何急にバカな事言い出すんだよ!」
「バカじゃないよ!…こんな痛くて痛くて、涙も出なくなるくらい痛い目に遭わせるのは、あたしだけにしなさいって言ってんの!!」
「…え?」
 スミマセン意味がわかりません。
 まぬけ顔のオレに、夕利は長い溜息を吐くと、もういいよ、と諦めたような呟きを漏らした。

 意味がわかったのは日も暮れた頃、ベッドに横になっていた時で、その何とも彼女らしいヤキモチの言葉と、ベッドに漂った残り香に、
オレは一人、悶える事になるのだが、それはまた別の話だ。


34 :イヌイチおまけ・家庭教師14:2007/12/10(月) 11:53:44 ID:CjDltfVx
「それよりさ、何やってんの?」
「ん?…あ、あったあった。――はい、これ」
 散乱した引き出しの中身から、見覚えのある封筒を拾い上げると、オレはそのまま夕利に手渡した。
「何?」
「オレが行く、大学のパンフレット」
 言葉に夕利の表情がわずかに固くなる。
「――って言っても、オレもまだあまり読んでないんだけどな。…ざっと見た限りじゃそんな遠くないトコだし…その」
 こういう時、上手く言えなくなるのは何故だろう。
 耳まで熱くなるのを感じつつ、オレはとにかく読め、と夕利に薦めた。

 ぎしっ。
 ベッドに腰掛け、夕利が封筒を開ける。何とも言えない、気恥ずかしさを感じたオレは背を向け、机上のプリントと、ちまちまとした
文字の書かれたルーズリーフに目を落とした。
 英文の解説が書かれたルーズリーフは、オレが寝てるうちに書いたものか。
 ――本当、変なトコで現実的なヤツ。
 丁寧に、色分けまでされた解説文に、オレは目を細めた。
「…な、夕利。オレ、大学行ってからも、お前とこうしてたいって思ってんだ。会う機会は減るかもしんねーけど。…それでも、お互い
辛い時や嬉しい時に、傍に居られたらって」

 そして――もしも叶うなら…なんて考えるのは、やっぱり妄想のしすぎだろうか。

「…夕利?」
「――で、一は『ギャクウシロコテシバリ』なんかされながら、『キュウビムチ』でしばかれて、『ローションリョウアシバサミ』で、
責められたりしたいの?」
「へ?」
 な、ナ、何言ってんのかな?嫌な予感に、オレはもう一度足元に散らかったプリントやらCDケースやらの跡に目を遣る。
 ――げ。
「い、いいやっ!!夕利、そっちじゃなくてこの封筒だ!!それ違う!!」
 そうだ。それは――封筒は似ているが、オレが長年お世話になった夜の友(入手手段については極秘とさせてもらう)で。
 下手に隠し場所に凝ろうとしたのが、逆に首を絞めるハメになるとは。
「『魂の暗部を狙撃する雑誌ス○イパー』ねえ…。一、やっぱりこういうの読んでたんだ」
「そ…それは…えーと」

 うわあ。一口サン顔、物凄く怒ってません?怒ってますよね。
 あ、総ページ数400の雑誌が一瞬で真っ二つに。さらば夜の友。

「言い訳するなぁーーーーーっ!!!!バカ犬っ!!」
「ああはぁああ〜〜〜〜んっ!!!!」

 曇天の土曜日、昼下がりの住宅街に、ド派手なビンタ音と嬌声が響き渡る。
 ――そして、それから数十分後の、大学パンフレットを見た夕利による、素っ頓狂な大声も。

 冷え込んだ12月の空は、この冬最初の雪を街に降らせ、本格的な冬の到来と、その先にある、春をも予感させた。


35 :イヌイチおまけのおまけ:2007/12/10(月) 11:54:58 ID:CjDltfVx
******
 4月。
 ――季節は巡り、風に舞う白い欠片は、薄紅の桜の花びらへと姿を変えた。
 オレは、慣れぬスーツと、長い入学の式典ですっかりこわばってしまった体で伸びをし、大きく息を吐いた。
「…はあっ。随分長い入学式だったなあ…大学の式ってのはこんなに長いもんかね」
 まあ、式で一番長かったのは、学校創立の発案者兼初代総代の、大木玲夜の私情交じりの挨拶だったのだが。
 本当、生徒会選挙の時の公約が果たされるなんて思わなかったぞ。

 私立ドキドキ学園大学。
 日本有数の大企業、大木グループが、学業支援――という名の息子のワガママによって創設した、出来立てホヤホヤの学校である。
 ワガママで創設されたとは言え、その教育及び研究内容はかなり充実されており、学部・学科も政経や教育、商業といった、基本を
押さえたものは勿論、芸術やスポーツ科学など、多岐に渡っている。(後半はパンフレットの受け売りだ)
 近隣大学との交流も進められているが、おそらくそれは大木個人の私情が入ってるからだろう。

 それはさて置き、オレはその中でも、スポーツ科学部に籍を置く事になった。
 詳しい事はよく分からない(長々と小難しい言葉での説明は受けたが、半分以上忘れた)が、運動能力や体質などのデータを取るのに
オレの体は丁度いいらしい。
 ――それは、学生、というより試験体と呼ぶ扱いなんじゃなかろうか、という疑問も浮かんだが、他の同じ学科の生徒が受けたらしい、
難しい筆記試験などがほぼ免除されていた(後で聞いたが、特例らしい)ので、結果オーライである。

 …と、この間夕利に言ったら、アンタはもう少し考えて行動しなさい、と叱られた。
『太臓に指南を請けようとしたり、サイボーグになろうとしたり…そういうの常識で考えたら、おかしいって事気付かなきゃ』

 けどその後、オレが返した言葉には、真っ赤になってうなずいたのだが。

 その様子を思い出し、つい顔がにやついてしまう。――ああチクショウ、可愛すぎるだろ全く。
 後の乱れっぷりも…っと、ダメだ、これ以上思い出してたらさすがにヤバイ。
 大学構内という、衆人環視の中であることを思い出したオレは頭を振ると、待ち合わせに指定していた場所へと足を向けた。

 散り際の桜の花びらが、ふわりふわりと風を纏わせる中、オレは足のペースを、早足から小走りに変える。
 もうすぐ、会える。そう思ったら、ゆっくりなんてしていられない。
 同じような格好の、新入生の人波を抜け、目指す所には見覚えのある人影があった。


36 :イヌイチおまけのおまけ(ラスト):2007/12/10(月) 11:56:14 ID:CjDltfVx

「む。噂をすれば――『スポーツ学科のモルモット』が来たようだぞ」
 最初に気付いたのは、喪服のような黒いスーツに身を包んだ、安骸寺だった。
 何の噂をしていたんだか。

「まあ、一箇所でも特化した能力があるなら特に文句は無いけれど、問題はアンタ達ね。この学校、倍率そんなに低かったのかしら」
 言葉を受け、辛辣な言葉で嘆くのは、高校時代は好成績を修めていた佐渡だ。
 そういや、家庭の事情で家から近い大学を選んだって噂は聞いてたな。

「アンタ達って…まさかオレまで勘定に入れてねえだろうな?冗談じゃねえぞ」
 佐渡の言葉に不快気な表情を見せるのは、阿久津。
「少なくとも、コイツらと一緒にされちゃ迷惑だ」
 足元を見、苦々しげに言葉を吐く。そこには季節にそぐわない氷の塊が二つ、転がっていた。
 なんか人が凍ってるみたいにでかい氷だけど――あまり考えるのはやめとこう。

 そんな阿久津をまあまあ、となだめるのは、隣に立つ矢射子先輩。
 同学年になっても先輩、と呼ぶのも何だか妙だが、オレにはこの呼び名が一番しっくりくるのだ。
「入学早々、あまり苛立たないほうがいいわよ。それに、宏海がちゃんと勉強してたのは、わかってるから」
「意味深だな」
「白昼堂々ね。ごちそうさま」
 茶化す言葉に、揃って顔を赤らめる二人は、付き合って一年近く経とうとしているが、相変わらずどこか初々しい。
 ――オレは、そんな二人を見ても、以前ほど胸を痛ませる事はなかった。

 そして。

「遅かったじゃない。結構キャンパス内広かったから、迷ったの?」
 と、オレに向け言葉を掛けるのは、特徴的だった前髪のワンポイントを外した、夕利。
「スポーツ学科の建物は、随分離れてるみたいだしな。残念だったな」
 安骸寺のからかいに頬を染めつつも、矢射子先輩の影からぴょこんっと現れたスーツ姿の夕利は、まだ子どもっぽさが抜けてないが、
それでも、どことなく成長したようで。
 微かに感じる――オレだけが感じていると思っていればいいと、こっそり願っているのだが――色気に、胸が高鳴った。

 先のことなんて、まだよくわからない。何も変わってないようで変わり続けるのが、日常だというのなら尚更に。
 だけど、この新しい生活の中でも、変わらないオレたちで居られたら。
 もっと先も。変わり続ける周りの中で、変わらない二人で居られたら。

 オレは、心の中で願い、甘酸っぱい香りが漂う4月の風を吸い込むと、待っていてくれた面々に向け、声を掛けた。

37 :イヌイチの人:2007/12/10(月) 12:06:26 ID:CjDltfVx
以上です。大学云々の設定は実在のスポーツ学部とは一切関係ない、フィクションです(強調)。
前スレでドキ大の名前が出たので調子乗りました。すみません。

長文にお付き合いいただき本当にありがとうございました。ひとまずROMに戻ります。
機会があれば、(今度は短めの話で)こちらに来たいと思います。
では。

38 :名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 01:48:12 ID:WHGNtbs6


39 :名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 23:05:49 ID:BSMyrbXj
>>21-
GJ!としか言えない俺の貧困な語彙が憎いぜだがGJ!!

40 :名無しさん@ピンキー:2007/12/13(木) 15:44:09 ID:sRF3t0Dx
うおおおおおおおいつの間にか新スレ立ってるしイヌイチ新作来てるし
もうなんと言ったらいいのか…GJ!

41 :名無しさん@ピンキー:2007/12/16(日) 02:24:08 ID:TrBM+9Iq
保守

42 :名無しさん@ピンキー:2007/12/18(火) 19:15:52 ID:rNTx9364
あげ

43 :名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 10:40:26 ID:/YgRC8b6
時期ネタ投下いたします。
作品:太臓もて王サーガ、カップリング:宏海×矢射子、例によって微妙にネタが絡んでますが
単品で読める…と思います。
糖分高めなので、苦手な方は「モモクリ」でNGワード指定お願いします。
では。


44 :モモクリ・1:2007/12/21(金) 10:41:06 ID:/YgRC8b6
******
 時は12月24日、クリスマス・イブ。月の昇る前の夜の道を歩く一人の女。
 …って自分で言うのもどうかと思うわ。あたし、百手矢射子は住宅街の中を、ぼやきつつ歩いていた。
 向かう先は一風変わったアパートの一室。ケンカ後特有のちょっとだけ後ろめたい思いと、期待なんて持ちながら。

 最初は何て言おう。やっぱり、ごめん、かな。
 せっかく誘ってくれたのに、怒ってごめんなさい。伊舞ちゃんの誕生日なのに、祝ってあげなくてごめんなさい。
 そして、チャンスをどこか(この曖昧さが行き当たりばったり感アリアリだけど)で作ったら――こっそり二人で抜け出そう。
 イルミネーション輝く街を、二人で歩いたりなんかして。

 そしたら、そしたら。

『――やっと、二人きりになれたな。ずっと、矢射子の事、待ってたんだぜ』
『あたしも、ずっと、宏海と二人きりになりたかった…くしゅんっ』
 寒波の影響で、冷え込む街並みも、恋人同士――あたしと宏海には、何の障害にもならない。
 きっと、温かな掌は、あたしの手をやんわりと包み込んでくれるだろう。
 更に言えば、他のところも。

『…もっと温かくしてやろうか?』


「やーん宏海ったら街中でダ・イ・タ・ン!」
 チリリン。「お姉さま!どうしたんですかこんな所で!?」
「ひゃうっ!?」
 止まる事を知らないあたしの甘い妄想は、自転車のベルの音と、耳慣れた声によって幕を下ろすこととなった。

振り返った先には、自転車に乗ったままの高校時代の後輩、一口がいた。
「いっ、一口?どうしたの」
「いえ…お姉さまこそ、クリスマスパーティー来てなかったですし」
 一口の言葉に、あたしは口をつぐんだ。脳裏についこの間の事が浮かぶ。


45 :モモクリ・2:2007/12/21(金) 10:41:44 ID:/YgRC8b6

 ――悪い、やっぱり伊舞の誕生日は祝ってやんねえと、アイツには借りもあるし。

 数日前、両手を合わせながら恋人、阿久津宏海はそう言ってクリスマスの予定を尋ねるあたしに謝った。
『太臓ん家で今年もパーティーやるって言ってたし…あ、何なら矢射子も一緒に行くか?』
 宏海に、何の他意もないのはわかっていたけれど、あたしはその誘いを速攻で断った。
『なんでクリスマスまであんな変態の所なんて行かなきゃなんないのよ!…あたしは』
 宏海と一緒にいたいのに。
 宏海と、二人っきりでイブを過ごしたいのに。
『もういい。あたし受験勉強してるから、宏海はどうぞご自由に家族サービスでも男同士王様ゲームでもしてなさいよ!』
 胸の内を吐き出す代わりに啖呵を切り、振り返ることなく宏海の元を去った。

 ええ、ええ、我ながら酷いセリフだと思うわよ。
 でも、二人が付き合って初めて迎えるクリスマスが、宏海にとってはその程度の価値なのかと思ったら悔しくて、悲しくて。
 あたしは帰って早々、部屋に閉じこもって大泣きに泣いた。

 この冬初めて降りだした雪も、ロマンティックどころか悲しみを生み出す元にしかならなかった。


「…あ、でも来てなくて正解だったかもしれませんね。もう散々で」
「散々?」
 オウム返しに尋ねる。暗がりで分かり難かったが、一口の後ろには、首から上を真っ赤にした乾がぐにゃり、と今にも落ちそうな格好
で、荷台に腰を掛けていた。
「バカな事に、どこかの成年高校生がお酒なんて持ってきちゃってて。佐渡さんが気付いて女子は難を逃れたんですけど、何人か男子は
飲んじゃったんですよ」
「ええっ!お酒?」
「太臓は変なコスプレしだすわ、このバカは泣き出すわ、阿久津くんも…」
 ――宏海も?詳細を聞こうとしたあたしの言葉は、乾のバカって言うヤツがバカなんらぞおっ!という涙声にかき消された。
「夕利らって人のこと言えねえらろうが。あん時オレがどれらけ酷い目にあっぶべっ!?」
「うるさい三倍バカ!あとその呼び名は…ちょっと?どこ触ってんの!?」
 えーと、セクハラはいいから。宏海がどうなっちゃたのかだけ聞きたいんだけど。
「あっ…とにかく、迎えに行ったほうがいいですよ?あたしたちは勝手に抜け出したけど、まだ猫耳アパートにいるはずですから…って
もう!いい加減にしないとまた蹴りとばすよっ!?」

 そう言う一口の表情は、あまり怒ってないように見えたけど――…まあ、いいか。
「わかった。今から行ってくるわ。一口、ありがとね」
「はい。お姉さまっ、良いお年を!」
 言葉を交わし、二人と別れる。背後で乾がぐにゃぐにゃと何か言っていたような気がするが、聞こえなかったので、あたしはそのまま
パーティー会場である猫耳アパートに向け、走る事にした。
 …あの二人、いっそ付き合ったほうがいいんじゃないかしら。
 そんな事を考えながら。


46 :モモクリ・3:2007/12/21(金) 10:42:46 ID:/YgRC8b6
*
 で。
「うー…気持ち悪ぃ」
 と呟きながら差し出された水を飲む宏海は、今、あたしの家のリビングにいる訳で。
 いや、この展開はしょり過ぎじゃない?

 実際には、アパートの入口でぐてんぐでんになってた宏海をあたしに押し付けた伊舞ちゃんの、イタズラっ子のような笑みとか、肩を
かして歩く間聞こえた宏海の、悪いな、というお酒の匂いのする呟きとか、猫耳アパートのベランダで、氷のオブジェと化した馬鹿二人
とか、間に色々あったはずなんだけど。
 ドキドキしっぱなしで、明確に憶えている事柄がロクにないのだ。
「そんなに飲んじゃったの?」
「ん?あー…真白木のヤツがやたら女子に薦めやがるから、逆に怪しんだあいすが、男子が代わりに飲みなさいって言ってな。そしたら
このザマだよ。未成年のクリスマスって言ったらシャン○リーじゃねえのかよ…」

 ――元不良とも思えない発言だわ。いやそれは偏見なのかもしれないけど。

 乾ほどではなさそうだけど、宏海もそんなお酒強くないのかしら。ちょっと意外。
 呟くと、半目の宏海にオマエは酒、結構強そうだな、と返された。まあ、伏見の出ですから。否定はしないわよ。
「まあいいか。…それよりさ、今日矢射子一人だけだったのか?家」

 どきん。

 周りを見回す宏海の質問に、あたしの胸が音を立てた。
「…そうよ。両親はその…デートに、行っちゃってて、明日の朝まで帰らないから」
「随分気が若い親御さんだな」
 確かに、昼過ぎに家を出た二人は、やけにウキウキしていて、年甲斐もない、と玄関先で見送りつつ思ったのだけれど、そそのかした
手前、黙っていた。
「…まあ、羨ましいよ」
 ――そういえば、宏海のところは…。自分の鈍感さに気付き、あたしはとっさにゴメン、と謝った。
「ん?いや気にする事じゃねえよ。まあ、子離れしない親には参るがな。…って、オレも人の事言えねえか」

「矢射子の気持ちよりも、妹優先させちまったんだもんな。…ごめん」

「ちょっ!…ちょっと、宏海が謝ることじゃないわよ!…あたしの方こそ我侭言って、伊舞ちゃんの誕生日素直に祝ってあげられなくて、
本当にごめんなさい」
 二人揃って、頭を下げる。…クリスマスイブに、何やってんだろあたしたち。
 伊舞ちゃんの名前に、宏海が反応する。
「…それは…まあ、いいんだよ。オレもちょっと矢射子の前だと言い辛い事、あったし…っつーか、その…」
耳が赤く染まっているような気がするのは、はたしてお酒のせいだけだったのだろうか。
 小さく咳払いをした後、宏海はあたしの耳元に、そっと唇を寄せた。

「伊舞にアリバイ作り協力してもらう事にしたし。…って事でオレ、今日ここ泊まっていいか?」

 宏海…それ女の子の外泊パターンじゃない?ていうか、実の妹にアリバイ協力って。
 というツッコミは、お酒の匂いの残る唇によって、封じられる事になるのだけど。


47 :モモクリ・4:2007/12/21(金) 10:44:10 ID:/YgRC8b6
*
 宏海と体を重ねるのは、初めてじゃない。けれど、いつも初めて抱かれた時みたいに、胸が壊れそうなくらいドキドキする。

「あ…シャワー浴びてな…」
「構わねえよ。浴びなくても、オマエの体、凄くきれいだし」
 そう言って、頬や耳元や、胸元にキスをする宏海の唇は、温かくて、心地いい。
 普段人前だと、絶対言わない恥ずかしいセリフも、裸になるとすんなり出してくるのだから、ずるいと思う。
「矢射子のベッド、矢射子の匂いすんのな。…染み込みそう」
「やだ、な、なに急に。あれ?…宏海、眠いの?」

 ちょっと眠そうな目をしている体の上の相手に、あたしは声を掛けた。
 宏海はちょっと顔をしかめ――そう見えるか?と逆に尋ね返した。

「うん…やっぱりお酒、飲んじゃったから、からなのかな。…無理しなくていいよ?」
「してねえって。オレだって我慢してたんだぞ」
 と言いつつも、ちょっと辛そうなんだけど。
 …宏海があたしのこと大事にしてくれるのは凄く嬉しいけど、負担に感じるのは、嫌かも。

 ふとあたしの中で、前々からずっとしたいと思ってたことが頭に浮かぶ。
「…ね、その…あたし、が、しても…いい?」
「するって…ええっ?」
 ぎしっ。
 ベッドが軋む音と同時に、あたしと宏海の位置が変わる。――あたしが、宏海の上に乗る形になる。
「や、矢射子…?いいのか?」
「いつも気持ちよくしてもらってるから…えーと、お礼と言うか何というか」
 さすがにクリスマスプレゼントです、とはあんまり過ぎて言えなかった。

 こう、かな?いつも宏海がするように、頬に、肩口に、唇を滑らせてみる。
 …あ、宏海の頬、ちょっとヒゲが生えかかっててチクチクする。
「…っ」
 ぴくんっ。吐息とともに微かに跳ねる、あたしの体をすっぽり包むくらい大きな体が、何だかかわいい。
「気持ちいい?」
「…ん」
 とくん。とくん。
 胸板に口をつけると、唇に心音が伝わる。…なんか、こういうのいいなあ。
 宏海、いつもこんな感じであたしの事、抱いてたのかしら。こんな感じで、あたしの事、気持ちよくしてくれてたのかしら。


48 :モモクリ・5:2007/12/21(金) 10:44:43 ID:/YgRC8b6
 そっと右手を宏海の下半身へと忍ばせると、既に固くなっていたモノが手に触れた。
「ちょっ…そっちは」
「こっちも、キス…するね?」
 返事を待たずに体を股の間に潜り込ませて、そっと、脈動する赤黒い塊の先にキスをした。
 うわ。――近くで見ると、すごい、大きいんだ。
 コレ、あたしの中、入っちゃうんだよね。…あたしの中でも、とくとく脈打つんだよね。

 ちゅっ。ちゅ、くちゅっ。

「や…矢射子、無理すんなって」
 ――無理なんて、してないよ。だって、かなり嬉しくなってるもの。
 言葉で返す代わりに、右手で血管が浮いてる茎の部分を擦りながら、ぬるぬるが溢れだした先を口に含む。
「ふむぅ、んっ、んんんっ」
「あ…っ、はっ、くぅっ…」
 押さえ気味の、宏海の悶える声が耳に入る度、胸がきゅうんってなっていく。
 お腹の奥が切なくなって、エッチなあたしが、一つになりたがろうと、とろとろになってくのがはっきりわかる。

 でも、まだこうしてたい。

「あはっ…宏海、顔…真っ赤」
「…オマエが…やらしいコトすっからだろ」
 じゃあ、こうしたら、どうなるかな。
 あたしの唾液と宏海自身のでぬるぬるになったモノを胸の間に挟み、むにゅっと胸越しに揉んでみた。
 普段は邪魔にしか思ってない大きな胸も、宏海を気持ちよくさせてんだって思うと、ちょっとだけ誇らしく感じる。
「も…う、ダメだって…や、い…」
 ――いいよ。
 声にする代わりに、口いっぱい宏海のを含んだのと同時に、びくんと一際強い脈動が伝わる。
「――…っ!!」
「んむっ!?」
 どくん。どくん。どくん。
 口の中に、どろりと熱いものが満ちていく。少しだけこぼれたのが顎を伝って、胸の谷間にまで滴る。

 初めて口にした、好きな人のは、苦くて生臭くて飲み込みにくかったけど、あたしは心の底から満たされていた。


49 :モモクリ・6:2007/12/21(金) 10:45:43 ID:/YgRC8b6
*
 部屋の空気が、少しずつ重くなっていくような感じがした。
 二人分の吐息と、かいた汗が蒸発していく熱気が、壁ひとつ、扉一枚越しに、違う世界を作り出している。

「…無理して、飲むなよ。つか飲みモンじゃねえし」
「けほっ、いいの。…宏海の、だからいいの」
 枕元のティッシュを数枚引き抜いた宏海の手が、あたしの肌を白く染めた液体を優しく拭う。何となく、ばつの悪そうな表情で。
「…気持ちよく、なかった?」
「いや、そういう訳じゃねえけど…正直、気持ちよかったし。…でもな、いつも気持ち良くしてもらってんのはオマエだけじゃねえぞ。
――…オレだって、オマエとしてて、スゲー気持ちいい訳だし。だから…その、なんだ」

 一瞬、体がふわっと浮いたような感覚。頭の後ろで、軋むベッドのスプリングの音。
 次いで、見慣れた天井と、宏海の見下ろす顔が目に入り、あたしは自分が押し倒されたことに気がついた。

「――…今度は、一緒に気持ちよくなりたいって事で」
 色々考えた末のセリフなんだろうか。ちょっとだけ変な言葉だけど、それが宏海らしくも思えて、あたしは小さく首を動かし応えた。

 ウォレットケースからゴム製品を出し、袋から出したそれを丁寧に着ける、無骨な手。
 宏海からは、あまりまじまじ見るなと以前言われた事があるけれど、あたしは嫌いじゃなくて。
 むしろ、こういう細かい仕草にときめいてしまうのだけど、それって変なのかな。
「んじゃ、行くぞ」
「…うん」
 ――ぐっ、と押し付けられる塊。少しずつ、あたしの中を押し広げて、入ってくる。
「あああっ…」
「…痛い、か?」
 圧迫感に思わず漏れた声に、心配そうな声が返ってきた。
「う、ううんっ、大丈、夫」
 本当の事だ。最初の時は痛くて苦しくて、感じるどころじゃなかったあたしのカラダは、今は割と受け入れられるようになっていた。
「気ぃ遣うなよ。まだ…中、キツキツなんだから」
 言いながら、宏海はゆっくりと腰を前後させ、入口を広げるかのような、短いストロークを始めた。
 厳つい外見に似合わない優しい行為は、宏海の性格そのものを表してるようで。

 ああ、あたし、宏海のそんなところが好きになったんだ。
 改めて、思い出して、涙が一粒こぼれた。


50 :モモクリ・7:2007/12/21(金) 10:46:20 ID:/YgRC8b6
 そっと、背中に手を回す。広い背中には、うっすらと汗が浮かんでいた。
「矢射子…?」
 涙の跡に気がついたか、宏海の指が心配そうにあたしの頬をなぞった。
「…宏海」
 好き、好きなの。苦しくなるくらい。切なくなるくらい。
 言いたいのに、あたしの口は相変わらず上手く言葉が紡げなくて、嫌になる位もどかしい。

 両脚を腰に絡め、更に奥へと誘う。
「……っ」
 お腹の一番奥に衝撃が伝わると同時に、吐息が頬にかかる。
「は…あっ!」
 いやらしい水音が響くと同時に、あたしの中が、かき回され始める。 
「やべ…止まんね、っ」
 腰の動きに勢いが付き、あたしの背は、衝撃を受け止めるたび快楽に震える。
「うん、いい、よ、っ…!もっ…と」

 もっと、して欲しい。あたしの中が、宏海のカタチに穿たれる姿を想像し、あたしはそうなればいいと、本気で願った。
 その願いは、誰にも叶えることが出来ない。今抱きしめている、一番好きな人以外。
 今、唇を重ねる、宏海にしか。

 
「んっ…ふうっ――…あっ?ああっ!!」
 ごつっ、と一際強く奥を突かれた刹那、頭の中で何かがチカチカした。
「はうんっ!な、にっ!?…ふあっ、なんか、ヘンっ」
 こんなの、今まで無かったハズなのに。考えようとしても、きもちよすぎてわかんないよ。
 でも、もういいや。
 かんがえるのは、もうやめ。
 いまは、ただ、この、まっしろ、な。
 
 …。
 ……。
  

 ――次に意識がはっきりした時に、最初にあたしの視界に入ったのは、激しく上下する汗まみれの背中だった。
 胸には、あたしのものとは明らかに違う鼓動が伝わってくる。
「はっ…はぁっ…はあ、はっ…」
 しんとした部屋に、二人分の息遣いだけが満ちていく。
 脱力し、支えきれなくなったのか、あたしに遠慮なく預けてくる宏海の体の重みが、心地いい。
「…すき、よ。宏海」
 吐息混じりに呟くと、お腹の中で、ひくんっ、と入ったままの存在が脈打った。
 それは、不器用な彼なりの返事のようで――あたしは、少し、笑った。


51 :モモクリ・ラスト:2007/12/21(金) 10:47:09 ID:/YgRC8b6
******
 盆の上にはカップが二つ、湯気の昇るコーヒーに、あたしの顔も自然とにやけてしまう。
 …うふふ、これって、夜明けのコーヒーとかいうやつよね。まだ時間は日をまたいだばかりだけど。
「お待たせ、宏海はブラックだっ…?」
「――だからって、こんな真夜中に電話かけてくることねえだろ!もう二人共寝ちまってるよ!」
 扉を開け、尋ねようとしたあたしの言葉は、携帯電話片手に大声を上げる宏海に遮られた。
 相手は…例のお父さんかしら。
 がりがりと頭を掻き、渋面を作りつつも、それでも律儀に電話に出る辺りがなんとも。
「ああ?そっちが一人きりでイブを過ごしたってオレは別に構わねえよ。ていうかクリスマスの本番って基本的に25日だろが」
 何かと勘のいいお父さんに気付かれないように、極力音を立てないよう、そっとテーブルにお盆を置く。

 …コーヒー、冷めないうちに飲んだほうがいいんじゃないの?

 あたしの心配は的中し、宏海が電池切れそうだから切るぞ!と怒鳴りながら携帯電話の電源を切ったのは、カップから湯気がまったく
昇らなくなった頃だった。

「淹れなおした方がいい?」
「いや…怒鳴りすぎて喉疲れたから、このままでいい」
 言うなりすっかり冷めてしまったコーヒーをぐっと飲み干し、大きく息を吐いた宏海はあたしに向け、すまない、と小さく呟いた。
「…あー…早く家出てえよ本当。希望大学も市内だから、しばらくは家から通う事になりそうだし」
「あたしは…そんな、気にしてないよ。向こうだって、宏海一人しか…その…」
 ちょっと踏み込んでいい話なのか迷いつつ、言葉を選ぼうとしていたあたしの頭に、宏海の大きな手がそっと触れた。
「なんつうか、アレだな。オレの周りは…まあ、いいか。…ありがと」
「…何?」
 髪を撫でられるくすぐったさをごまかすように尋ねると、なんでもない、という言葉と同時に体が宏海の胸元へと引き寄せられた。

 とくん。とくん。

 宏海の心音のする、宏海の匂いの、体。
 がっしりした、肉付き。あたしより高い、体温。
 あたし、さっきまでこの体に抱かれて――…あ、いけない。また鼻血出そう。

「こ、宏海、その…お酒、抜けたの?」
 なに聞いてんだろあたし。
「ん、ああ。おかげ様でな」
 ナニのおかげよ宏海。
 どくん。どくん。どくん。
 うわああ。心臓おさまってよ!き、聞こえちゃうじゃない!
「…やっと、二人きりになれたな」
 あれ?その言葉どこかで聞いたような――。

「あ…あたしも、ずっと宏海と二人っきりになりたかった…」
 あ、このセリフ、ちょっと前にあたしが妄想してたヤツだ。
 でも今あたしを取り巻く状況は、決して夢なんかじゃなくて。

 今重ねられた唇も、決して幻なんかじゃなくて。


 メリークリスマス。囁きあう二人の姿は、窓の外で皓々と輝く満月だけが、知っている。

52 :モモクリの人:2007/12/21(金) 10:57:31 ID:/YgRC8b6
以上です。甘甘失礼しました。
本当は萌×(宏海に化けた)陽子でクリスマスネタを考えてたが、
「陽子って性別違う相手に化ける事できるんか?」と我にかえって没にしたのはここだけの話。
どんなでしょね。エロパロ的にオーケーなんでしょうか。

読んでくださった方、ありがとうございます。
では、失礼しました。

53 :モモクリの人(携帯版):2007/12/21(金) 15:39:03 ID:jnAEnM3D
「よい未成年者はクリスマスパーティーにお酒を持ち込んじゃだめだよ!」
注意書きを付けるの忘れてましたorzすみません。

54 :名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 20:51:18 ID:oJPQ4tUw
>>53
うおお、エロ可愛い話だGJ!
もえるん陽子(外見宏海)とは斬新だな。ありだとは思うが
陽子がまず男を知ってないと変身できない気もするんだぜ

55 :名無しさん@ピンキー:2007/12/21(金) 23:35:30 ID:TShernOp
GJ! これはうれしいクリスマス・プレゼントです!!

56 :名無しさん@ピンキー:2007/12/24(月) 07:44:31 ID:YvW0lJLj
乙&伊舞誕生日おめでとうアゲ。

57 :名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 14:52:33 ID:UJHLLgpN
うわっ、なんかエロパロ板がえらいことになってる!
緊急保守あげ。

58 :名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 16:05:35 ID:Gvk4hoR5
ほしゅ

59 :名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 18:13:20 ID:UJHLLgpN
もいっちよ保守!

60 :名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 18:25:23 ID:UJHLLgpN
もいっちよって何保守。

61 :名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 02:21:17 ID:a+auVox+
保守

62 :名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 23:43:44 ID:OA8bgtm9
来年もこのスレが賑わいますように!

63 :名無しさん@ピンキー:2008/01/01(火) 00:44:58 ID:t1Teo7j6
新年、ageましておめでとうございます(ベタ)!

今年も皆様にもて王の御加護がありますように。
素敵SSが読めますように。
そして、あもたん先生の新作を拝めますように(切実)心からお祈りいたします。

64 :名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 14:11:09 ID:pFAtB4Jk
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
保守がてら、微エロな新春小ネタ投下致します。
作品:太臓もて王サーガ(&無敵鉄姫スピンちゃん)、スピン&透瑠の話。
時系列が今(平成20年)に準じている為、多少捏造設定あり。
あと、タイトルから察していただける属性がありますので、
「オチンチン?性器?何ですかそれ」な方はNGワード「スケロク」で回避が吉かと思われます。
では。

65 :スケロク・1:2008/01/05(土) 14:12:09 ID:pFAtB4Jk
******
 その日、自分の元に運命の女神が微笑んだ――と、部井透瑠は後に回想する。
 年の瀬も差し迫った冬休みのある日、新年の準備のために透瑠は、近所の商店街へと買い出しに出かけていた。
 とはいえ、高校生の女手一つ――彼女は祖父と同居していたが、その男、部井一緒は透瑠にしてみれば、猫の手はおろか、ミジンコの
ツノ以下の存在だった――では、何かと不便だ。
 しかし今彼女の手にあったのは、軽い手荷物のみであった。

 理由は、彼女の貧乳――へぶっ!!…も、もとい、控えめな胸の下から聞こえる声の正体にあった。

「透瑠さんどうしたんです?急にあさっての方向に裏拳なんて」
「…いや、なんかどこかで物凄く失礼な事言うヤツがいた様な気がしてさ。それよりスピン、重くない?やっぱりあたしも持とうか?」
 心配そうに声をかける透瑠に、スピンと呼ばれた少女――いや、外見は幼女と呼んでも差し支えない娘はにこり、と微笑んだ。
「平気ですよ。この位、ロボットの私には何てないことです!」
 そう言うとスピンはよいしょ、と背中の風呂敷を背負いなおした。健気なものである。

 ちなみに、風呂敷の中には年末年始の食料品や、掃除用洗剤、替えの蛍光灯をはじめとする日用品の数々、果ては一緒の注文の品であ
るDVD-ROM(用途は聞くまでもない)などが入っており、女手ではもちろん、大の男でも全てを一気に持ちきるには、かなり骨が折れる
シロモノであった。

 そりゃ、楽なのはいいんだけどねー…問題はこの姿を他人が見てどう思うかなんだよなあ…。

 自分の背丈ほどもある風呂敷入り荷物を背負う、いたいけな幼女の図は、一歩間違えれば即通報レベルの問題だ。
 それでも、スピンは透瑠の役に立てることが嬉しいのか、にこにこと上機嫌だった。
 …まあ、いいか。
 透瑠は心の中で呟くと、スピンに向け、小さく笑みを浮かべた。

 普段、常軌を大幅に逸脱した家族や近隣住民に振り回されてばかりいる透瑠にとって、こうしてスピンとのんびりしている時こそ、正
に至福の時だった。
 
 ――カランカランカラン。
「はい出ました!三等、DVDプレーヤー!」

 鐘の音と、賑やかな声にスピンが足を止める。つられて透瑠も立ち止まった。
「透瑠さん、あれ何です?」
「え?あー、歳末の福引きだね。ホラ、買い物した時おつりの他に何枚か紙貰ったでしょ?アレを集めたらあそこで抽選が出来るんだよ。
上手くいくと、さっきみたいに賞品が貰えるってわけ」
 透瑠の説明に、スピンがぱあああっと顔を明るくさせる。
「すごいです!!こんなにお買い物させてくれた上に、賞品が貰えるなんて!何てパラッパラッパーなんでしょう!」
 太っ腹のどこをどうしたらそうなるのかは謎だが、目をキラキラさせて抽選会場を見るスピンに、透瑠は自分のカバンを見た。
「スピン、あそこに行って抽選したい?」
 言葉を聞くなり、スピンの頭が高速で上下する。そんなに頭を動かすと首の駆動部分に負担がかかるのだが、お構いなしだ。
 苦笑しながら透瑠は、スピンに抽選補助券を持たせ、共に列に並んだ。


66 :スケロク・2:2008/01/05(土) 14:13:01 ID:pFAtB4Jk
 ――…一等のプラズマテレビ、三等のDVDプレーヤーと電動自転車は…当選済みか。ちぇっ、自転車はもう先越されたか。
 二等は…温泉旅行。悪くはないけど、無理だろうね。

 当選済みを示すリボンが目立つパネルに目を遣り、透瑠はこっそり溜息をついた。スピンはといえば、自分の番は今か今かと鼻息荒く
(実際はロボットなので呼吸などしないはずだが)待ちわびていた。

「…白玉ね。ハイ、七等のポケットティッシュでーす。…お、次は小さいお嬢ちゃんが引くのかい?」
「お、押忍!!よろしくお願いします!…って透瑠さん、これどうやるんです?」
 はじめて見るガラポン(回転式抽籤器)に、スピンの緊張は更に高まる。
「ああ、まずはこのハンドルを握って」
「に、にぎ、握って…」
「で、こうぐるぐるーって回すんだ」
「ぐ、ぐるぐるぐるぐる…」
 スピンは言われた通り、ハンドルを回し始めた。――だが。
 あまりの緊張からか力の加減がきかず、ガラポンは回転スピードを上げ、ついには残像さえ見えるレベルにまでなってしまった。
「う、腕が増えた…?…って、ダメだ!スピン、ストーップ、ストーップ!!!!」
「おーっとっとっとっと」

 ――カッ!!ズビシッ!!「痛ぅっ!!?」
 玉の残りが少なかったのが災難だったらしい。ガラポンから放たれた玉は猛スピードで跳ね、抽選担当者の額にめり込んだ。

「わぁ、やった透瑠さん、赤玉ですよー」
「これは俺の血だーっ!!何すんだこのガキッ!!」
 額から血を流す担当者に怒鳴られ、スピンの目にみるみる内に涙(レンズの洗浄液だが、外見はそうしか見えない)が浮かぶ。
「ご…ごめんなさ…」
「ちょっとアンタ!こんな小さな子に向かって怒鳴ることないじゃない!!」
「てめえにはこの血が見えねーのか!?いいからティッシュ持って帰れ!」

 ことスピン関係ともなれば、過保護になり周りが見えなくなるのが透瑠の長所であり、また短所でもあった。

「残念だったね、抽選券ならまだ一枚残ってるんだよ!!…スピンの仇、取ってやるんだから!」
 透瑠の瞳が真っ赤に燃える。握ったハンドルに力を込め、運命のルーレ…もとい、ガラポンはゆっくりと回りだした。

 ――そして。

67 :スケロク・3:2008/01/05(土) 14:13:50 ID:pFAtB4Jk
*
「…という訳で、明日からあたしとスピンは二泊三日で温泉ペア旅行に行くことにしたから、留守よろしく」

 かちゃ。夕食(おせちもいいけどカレーもね)を済ませスプーンを置くと、透瑠は目の前の祖父に向け、涼やかに言い放った。
「…明日?」
「一応両親の許可は取ってるから。食費くらいは置いておくし、何かあったら例の変態二人組にでもすがり付いてちょうだい」
「…いや、ワシの許可は…」
「い・る・の・か?――…安心しな。万が一の時の為にバックアップ用のノートPCは持っていくし、メンテナンス位ならあたしの腕でも
何とかなる。じゃあ、ごちそうさま」
 ずずー、と食後のお茶を飲み、透瑠は一息吐いた。
「…いや!と、透瑠お前受験生じゃないのか?この冬にラストスパートを決めず、温泉でにょた…ゲフンゲフン、だらけるなんぞもって
の他だろうが!!ま、まあ、スピンを外の世界に連れて行くのにはワシも反対せんがな。だがお前に――は…」

 説教を口にしつつ脳裏に蘇った記憶に、一緒は青ざめた。
 対する透瑠は片方の口端に笑みを作った。しかしその目は笑っていない。

「思い出したか色ボケじじい。あたしはとっくに推薦の合格通知が届いてるんだよ。本当は黙って行くつもりだったけど、それだと何か
不祥事があると困るから、一応伝えるだけ伝えたの」
「――くっ…」


 ※突然Q&A※
 Q・一緒と透瑠が泊まって、スピンを荷物扱いにしちゃいけないの?
 A・アスタロロボモタの事故以来、自立思考型ロボットの存在が認められていない以上、自立思考型ロボットであるスピンは、一般的
にはあくまでも『人』扱いなんだよ。
 だからスピンといっしょに泊まりたい場合は、透瑠か一緒かのどちらかかが旅行を諦めなきゃいけないんだ。
 Q・でもそれって、ぶっちゃけ勝手に作った設定じゃない?
 A・…聞くな!!(血の涙)


68 :スケロク・4:2008/01/05(土) 14:14:25 ID:pFAtB4Jk

「くっ…老い先短い年寄りに、夢を見させる事すらせんとは…何と非道な孫か…」
「アンタの夢は、前途ある若者の将来を潰しかねないじゃないか。温泉地でのハレンチ行為で捕まった祖父の為に、合格取り消しだなん
て、絶対ゴメンだね」
 そもそもあたしが当てた旅行だし、という至極もっともな意見で透瑠の言葉が締めくくられる。一緒は、額に青筋を浮かべ、ぐぎぎ、
と歯軋りをした後、がっくりと項垂れた。
「――見損なったぞ透瑠。ワシがそこまでスピンを愚弄していると思っとったのか。…ワシとて科学者の端くれだ。だがな、それ以前に
一人の人間なんだぞ?綺麗な景色、澄んだ空気を己の最高傑作たるスピンと共に感じたい――…そう思って何が悪いと言うんだ」
 項垂れたままの一緒の声は、心底落胆したようで、さすがに透瑠の胸も微かに痛んだ。
「…じじい…」
「スピンに今まで苦労をかけてきたと思うのはワシも同じだ。だからこそ、ワシの手で最高の状態に保たれたスピンによってその素晴ら
しい景色の記憶を残したいと思っておるのだ!分かったか!!!!」
 どん、と効果音でも付きかねない程の迫力でもって、一緒は透瑠に向き直った。

「…」
 ちょいちょい。
「なんですか透瑠さん?」

 しばし無言で向かい合いつつ、透瑠は手招きでスピンを呼び寄せる。
「スピン。あのじじいの顔見てごらん」
「?」
 言われて、スピンは一緒の顔を見た。

 ――ピッ。

『エロを感知しました』
「ギニャァァァァァァァアアアアアッ!!!!!!」
 ――やっぱりか。エロ防止装置により夜空の星となった祖父の姿を尻目に、透瑠は二度目の食後の茶をゆっくりと喫していた。

*

 その夜、猫耳アパート『男物だけど濡れた服よりマシだろ』号室の片隅に青白い光が瞬いていた。と、たまたま付近を通った近隣住民
は証言する。
 ついでに、『コノウラミハラサデオクベキカ』という怨念染みた、老人の低いうめき声も耳にした。と。
 ただし、あまりの不気味さに証言者が逃げ出したため、声の主が薔薇柄のシャツを身に着けていたかどうかは不明である。
 そんな呪詛は欠片も知ることなく、同号室の自室で次の日からの旅路を夢見る少女は、心地良い眠りについていた。

 その日、自分の元に運命の女神が微笑んだ――と、少女――部井透瑠は後に回想する。
 だが、災厄の種を持つ悪魔もまた、同時に微笑んだのだった――そう続けて回想する事になろうとは、この時はまだ欠片も気付かずに、
安らかに眠っていたのだ。


69 :スケロク・5:2008/01/05(土) 14:15:03 ID:pFAtB4Jk
*
 長距離バスがトンネルをいくつも抜け、山間へと近づく度に、周りの風景は雪で白く染まっていく。
 所々から、温かそうな湯煙が昇る様を目にし、透瑠は、ようやく遠くへ来たのだという実感を持つようになった。

「わあっ、あそこが温泉なんですね透瑠さん!」
「うん。これからお世話になる旅館もあの辺にあるから、着いたらちょっと周りを歩いてみようか」
 透瑠の提案に、スピンは目を輝かせた。
「温泉にも入れますか!?」
「勿論。『今の体』なら大丈夫だよ」
 そう透瑠が話しかける相手は、同じスピンではあったが、数日前のような幼女の姿をとってはいなかった。

 背丈も外見年齢も透瑠とほぼ同じ位のツインテールの少女の体は、スピンが『女子高生』の姿で学校に通う時に使用するボディである。
エネルギー消費が激しいのが難点だが、ノーマルボディと異なり防水加工も施されているので、ロボットでも温泉に入れるという利点も
ある。
 ――誰に対する利点かと言えば、元々はエロ願望しか持たない一緒に対してなのだが、今の透瑠にとっても、損な話ではなかった。

 …せっかくの温泉なのに、スピンを部屋に置いてけぼりにして自分だけ悠々と温泉に浸かるってのも、何だしねえ。

 昨日の一緒のセリフではないが、透瑠もまた製造されて間もないスピンに、色々(非エロ)な経験をさせたいという親心染みた考えを
抱いてはいた。普段、代わり映えの無い日常を送るスピンへの、ささやかな贈り物、といったところか。
「さて、と。もうすぐ目的地に着くから、降りる準備しようか」
「はい!」
 おんせん、おんせん、と鼻歌を歌いながらごそごそと手繰るスピンの手荷物は――バックアップ用のノートパソコンや、予備バッテリー
その他、こまごまとしたパーツなど、温泉旅行としてはどうかと思う中身だったのだが。


「ようこそ『新春山村荘』へいらっしゃいましー。部井様でいらっしゃいますね?御待ちしておりましたー」
 旅館に着いて早々、柔らかな笑みをもって二人に頭を下げる女将(外見は女将というより、大沢家政婦事務所から派遣されてきた人に
大変よく似ている)に、透瑠とスピンもまた、頭を下げ返す。
「年明け早々すみません。二日間、よろしくお願いします。――ええと、前もって連絡はしたと思うのですが、食事は…」
「お一人様分だけで宜しいと。はい、伺っておりますー。お連れ様の体質はどうしようもございませんものねえ」
 大福帳に目を通しつつ、ころころと笑う(声も、今にも『むかーし、むかし』と言い出しそうな位似ている)女将に引きつった笑みを
返しながらも、透瑠は心の片隅で、騙しているような(実際騙しているのだが)申し訳ない気分を覚えていた。

 温泉に関しては何とかなっても、食事はどうにもならないのがスピンの体である。
 故に、周りにはアレルギー体質と称して、スピンには外食の類は一切取らせないのだが、この対応だけはいつまで経っても慣れない。
 叶うなら、食事もいっしょに摂る事が出来れば――思うこともある。
 しかし反面、食費が浮く、という意味で便利だと思うこともある訳で。

 どれだけロボット工学が進歩したとしても、悩みの種は尽きまじ、なのだ。

「新春さんしょんしょ…新すん山村荘…新春しゃんしょん…「スピン、言えないなら無理に言わなくていいから」
 当のスピンは透瑠の心情を知らぬまま、今から泊まる宿の名前を小さく連呼していた。
 どうでもいいが、新春以外の季節もこの宿はこの名前なのだろうか。
 本当にどうでもいいが。


70 :スケロク・6:2008/01/05(土) 14:15:56 ID:pFAtB4Jk
 どさどさっ。
 こじんまりした和室――『枯葉の間』という(ちなみに隣室は『ろくでなしの間』だった。何だかブルースも似合いそうな名である)
――に、二人分の荷物を置く音が響いた。
「ふう、商店街の福引きにしては、割といい部屋だね。眺めもいいし」
 大窓の外は、雪景色もあいまって、水墨画の如き清冽さを二人にもたらしてくれる。
 こんな風景、街中に居たままだったら、けして味わう事が出来なかっただろう。透瑠は、改めて自分の強運に感謝した。
「本当すごいですねー!この部屋、レンズの倍率上げたら、露天風呂丸見えですよ透瑠さん」
「ぶっ!!」
 無邪気にはしゃぐスピンの声に、透瑠は啜りかけていた茶を噴きだした。言葉に悪意が全く無いだけに、かえって生々しい。
「博士が来てたら、喜んだでしょうねえ」
「げほっごほっ…そ、そうだね…」

 ――本当に、本当にあのクソジジイが来なくて良かったよ。

 茶にむせながら、孫娘が心底強く思ったことなど、遠く逢魔市の猫耳アパートで、一人エロDVD鑑賞に耽る一緒には、知る余地もない事
だったという。

「そ、それよりスピン、一息ついたとこだし温泉入る準備でもしようか。エロ防止装置のロックも外さないとね」
 バックアップ用のPCを立ち上げながら問う言葉にスピンは明るくはい、と答えた。
「さっきの露天風呂に入るんですか?」
「いや…ここ、家族風呂があったから、まずはそっちに入ってみようか。…スピンに何かあったら大変だし」
 ロックの解除プログラムを打ち込みつつ、透瑠は苦笑い混じりに答える。
 簡単なメンテナンス程度なら自分の腕でも出来るのだが、万が一の事態に陥った場合、最悪、この地にあのド変態を招かねばならない。
 それだけは勘弁して欲しかったし、その為には徐々にハードルを上げるべきだと、透瑠は判断したのだった。

 ――というのは建前で、本音の一つに、露天風呂で自分のAAAカップの胸を晒したくn――ごぎゃあっ!ゴメンナサイ許して下さいっ!
…はあはあ…もとい、白昼から嫁入り前の肌を他人に見せるのを苦手としたからでもあったが。
「どうしたんです透瑠さん?急にあさっての方向に百烈脚なんて。エア・ストリートファイトですか?」
「何でもないよ。…ただ、ちょっとムカつくセリフが聞こえてきた気がしただけだから…さて、解除完了、と」
 エンターキーを押すと同時に『プログラム解除イタシマシタ』という機械音声が、スピンのエロ防止装置の解除を告げる。
「じゃあ、いっしょにおフロ入ろうか!」
「はい!」

 …十数分後、『新春山村荘』家族風呂に女性のものとも思えないほどの絶叫が響き渡ろうとは、この時、誰も知るはずが無かった。


71 :スケロク・7:2008/01/05(土) 14:16:52 ID:pFAtB4Jk

「お客様ー?どうかなさいましたかー?」
 札を立てた脱衣所の戸を叩く女将の声に、透瑠は平常心を持ち出せるだけ持ち出したような声で、何でもありません、と返した。
「ちょ、ちょっと転んでしまっただけですから…ご迷惑かけて申し訳ありません」
 勿論、実際は誰も転んでなどいない。だが、目の前に起きた非常識事態を、どう説明すればいいと言うのか。
          
 あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!
『あたしは女同士脱衣所で服を脱いでいたと思っていたら いつの間にかスピンの股間に助六寿司が出現していた』
 な…何を言っているのかわからねーと思うが あたしも何を見たのか一瞬わからなかった…
 頭がどうにかなりそうだった…
 キノコを大きくするキノコだとかドッキリ企画だとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
 もっと恐ろしい業の片鱗を味わったぜ…(AA略)
         
 …つまり、そういう事なのだ。
 今、下着姿の透瑠の目の前で全裸(風呂に入るのだから裸で当然なのだ)になったスピンの股間、通常なら何もない筈のその場所に、
成人男性の性器――ご丁寧に竿だけでなく袋まで付いている――が突如、鎮座してしまったのだ。
「な…な…なんで」
「どうしたんです透瑠さん?」
「どうしたって…スピン、こ、コレどうしたの?」
「?」
 疑問符を掲げ、スピンは自らの股間を見る。――いやスピン、そんなの触んなくていいから。揉まなくてもいいから。
 透瑠は首から上を真っ赤にさせつつ、心でツッコミを入れた。
「あー…、ゴメン、聞き方が悪かったね。スピン、あのクソジジイが『何の為に』そんなモン付けたか、あたしに教えてくんない?」
「博士が『温泉に入る時に絶対必要なオプションだ』って言ってましたから。温泉って、胸がまっ平らか、あそこにオチンチンが無いと
入れないって。…その、私も入りたかったですし…」

 プチン。

 あ・の・色ボケ老人…っっ!!!!
 純真なロボットだまくらかしてまであたしにイヤガラセしたかったのかあああぁぁあぁーーーーっ!!!!!!!


72 :スケロク・8:2008/01/05(土) 14:17:36 ID:pFAtB4Jk
*
 かぽーん。(場面転換SE)

「…大丈夫ですか透瑠さん?」
「……まあ、何とか落ち着いたよ。あのクソジジイに対しては後で文句言っとくとして…今は温泉を楽しまなくちゃね」

 正直、全然大丈夫ではない。今から引き返してボケジジイの臓物ブチ撒けたい気分ではあったが、それこそ一緒の思う壺かと考えると
癪に障る。
 しかし考えてみれば女体バカ一代のあの男が、イヤガラセとは言えども、スピンに男性器を装着するという行為に踏み込むのはかなり
の精神的ダメージを受ける作業ではなかろうか――かつて自分が細工した時でさえ、かなりの衝撃を受けていたのだから。
 己の信念を曲げ、血の涙を流しつつ一晩でやってのけた一緒のジェバンニを思うと、ほんの少しだけ溜飲が下がる気持ちもあった。
 というか思わないとやってけない。
 ぶくぶくと口元まで湯に浸かりつつ、透瑠はそう自分を納得させていた。

「たださ、その…言いにくいんだけど、そのカラダだとスピンは人前でお風呂に入れないよ。残念だけど、露天風呂は諦めなきゃね」
「はい…」
 湯煙に霞むスピンは心底しょんぼりしているようで、透瑠の心にチクリとした痛みを感じさせた。

 ――全く、なんて事してくれたんだよ。スピンにはなんの罪も無いってのに。

 ロボットであるスピンにとって温泉の(人間が一般的に感じる)心地良さや効能は、はっきり言って無用の長物である。
 故に、楽しみにする物といえばそこから目にする光景や音、人とのコミュニケーションなどであろうが、今の状況では楽しみも半減と
いったところであろう。

 ひょっとしたら――今、ここに来た事を後悔しているかもしれない。あたしが誘った事を、恨んでいるかもしれない。

「…ごめん」
 溢れ出した罪悪感からの言葉に、スピンが透瑠を見た。長い時間湯に浸かりながら尚白いままの肌が、妙にまぶしく見えて――透瑠は
視線を逸らした。
「あたしのワガママ…なんかに付き合わせたせいで、スピンに辛い目に遭わせる事になっちゃってさ…本当、ごめん」
 今が湯煙の中で良かった――掛けた眼鏡が白く曇り、相手に自分の表情がわからなくなっている事に、透瑠は少し感謝した。


73 :スケロク・9:2008/01/05(土) 14:18:14 ID:pFAtB4Jk
 あーあ。なにやってんだろあたし。
 こんな思いする為に温泉旅行なんかに来た訳じゃないのに。

 鼻の奥がツンと痛み、柄にも無い表情になっていくのを自覚した瞬間――ばしゃん、という水音と共に、透瑠の体が湯船に沈んだ。
「っ!!?ごぼっ…っぷあっ!スピン!?」
 まさか殺意まで!?ぞくりと背を震わせた透瑠の憶測はしかし、目の前で満面の笑みで抱きつくスピンの表情によって打ち消された。
「…スピン…?」
「透瑠さん、私、辛いなんて全然思ってないですよ。…私、透瑠さんといっしょに温泉に来られて良かったって思ってますもの」
「……」
「ホラ、大学の推薦合格のお祝いも、ちゃんと出来ませんでしたし…本当は、私が福引きを当てたかったんですけどね。だから…」
 そんな表情しないで下さい。スピンはそっと透瑠の眼鏡を外すと、こつん、と額を重ね合わせた。
 ――どきん。
 何気ない筈のスピンの仕草に、透瑠の胸が断続的なビートを刻みだす。

 …うわあ。何であたしドキドキしてんの?スピンはロボットで家族で――…一応女の子、で…。
 そういや今のスピンの股間には…あ…アレが…ひゃああっ!あ、あたしの太股に当たってるんだけどっ?

「どうしたんです透瑠さん?なんか心拍数、上がってますけど」
 きょとんとした表情で尋ねるスピンの言葉も、妙に意識し始めた透瑠の耳を素通りするばかりだった。
「透瑠さん?」

 ああ、あたしなんでスピンに抱きつかれてんだっけ。…頭ン中ぐらぐらしてきちゃったよ…。
 それにしても…悔しいけど、スピンの胸、あたしよりも…やわら…か…。

 くてん、と首を曲げ、そのまま透瑠はスピンの腕の中で意識を手放した。
 真っ暗闇な状態の中、透瑠は水音と同時にふわふわと体が宙に浮いているような感覚を憶えていた。

 かぽーん。(場面転換SE)


74 :スケロク・10:2008/01/05(土) 14:18:46 ID:pFAtB4Jk
******
 ――これが『湯当たり』というものなんだろうか。そういえば、修学旅行の時も何人か、旅館の風呂から上がった後に、こんなふうに
ぐったりしたクラスメイトを見たような気がする。

 脱衣所で、肌を紅く染めた透瑠の姿を目に、スピンは冷静に過去のメモリを思い返していた。
「透瑠さん、服を着ないと風邪引いちゃいますよ」
「…うー…」
 スピンの腕の中で、小さくうめく声――しかし、透瑠はまだ熱に浮かされた状態から目覚めそうにも無かった。
「体、拭きますね」
 自分の体ならともかく、人間の体である透瑠の場合は、このまま放置していては季節柄問題がある。判断の末、スピンは透瑠を腕に抱
いたまま、脱衣カゴからタオルを取り出すと、そっと温かな水滴が滴る肌をタオルで拭った。

 髪留めを外した――透瑠は自分の髪形にコンプレックスを抱いているので、水分を取った後はちゃんと結びなおす――髪から始まり、
顔、首筋、腕と、タオルを持ったスピンの手が優しくなぞる。
 しっとりした肌を傷つけないように、あくまでそっと。
 薄い、だがそれでも微かな弾力を感じる胸に触れた時、腕の中の体が、ぴくんっ、と跳ねた。
「んっ…」
 ――気が付いたのだろうか。思ったが、違うようだった。
 けれど、どうしてさっきより心拍数が上がっているのだろう。心なしか、頬の赤味も増しているような気がする。
 何より表情が、普段の透瑠と違う。
 見ているこちらのモーター回転数が上がりそうな、頭のリミッターが外れてしまいそうな、蟲惑的とでも表現するかのような顔。

 それを『感じている』のだと、気付くのは、残念ながらもっと先のことで。
 この時のスピンには、自分一人では解くことの出来ない謎を内に抱えながら、微かに震える透瑠の体を伝う雫を拭う事しか出来なくて。

「……あっ…あ、れ…?」
「気が付きましたか透瑠さん?」

 体を反転させ、背中を拭いている時に胸の下で聞こえた声に、スピンも反応した。
 回転数が上昇していた自分のモーターの駆動音が、透瑠の耳に入っていなければいいのだけど、などと少し思ったのだが。
 何故かはスピン自身、あまりよくわかっていなかった。
「湯当たり起こしちゃったみたいですね。透瑠さん、お家のお風呂だとこんな長い間入ってませんから…やっぱり、温泉っていいものな
んですね。肌のキメも随分良くなってますよ」
 レンズの倍率を上げ、スピンは透瑠の肌の細かい部分を見た。
 自分の肌と異なる、天然の肌は、湯から上がりなおほの紅さを失ってはいなかった。

 そしてスピンはそんな体を――素直に『綺麗だ』と思っていた。

 できるなら、ずっとこうしていたい。柔らかくて、滑らかな人肌に、ずっと触れていたい。
 今まで抱いた事の無い思いに、どこかで戸惑いながらも、スピンは願ってしまったのだ。

「す、スピン、ちょっと…体離してくれないかな」
「?」
 淡い願いを遮る声に疑問符が浮かぶ。
「その、あああたしの目の前…」
 言われてスピンもはっとなる。
 ――今、スピンが透瑠を抱きながら透瑠の背中を拭いていると言う事は、透瑠の顔はスピンの肌に密着している訳で。
 ついでに言えば、今透瑠の顔のある場所は、ご丁寧にも件の『助六寿司』のある場所で。

「ひゃああああぁぁぁああーーっ!!!!す、すみませえぇえんっ!!」
「わあああああーーーーっ!」

 さっきは全然気にしてなかったのに、今になって、どうしてこんなに意識してしまうのか。
 わからないまま大声を上げるスピンとつられて叫んでしまった透瑠。

 凸凹コンビ二人だけの旅の日々は、まだ始まったばかりだという。


75 :スケロクの人:2008/01/05(土) 14:25:44 ID:pFAtB4Jk
新年早々こんな夢を見てしまったのでムラムラして書いた。反省はしている。

小ネタなので、ひとまずここまで!です。打ち切りフラグなオチですみません。
それでは、今年もこのスレが賑いますよう、前スレの神SSの続きが見られるよう
願いつつ、再びROMに戻ります。
では。

76 :名無しさん@ピンキー:2008/01/07(月) 01:10:21 ID:WVtTHOS9
素敵な夢を見てくれてありがとう。
そして投下してくれてありがとう!
死ぬ程萌えたぜ!GJ!
この二人の百合カプ大好きなんだ…。

77 :名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 05:19:04 ID:PFvt8yoV
無我野喬至あげ
半ページでも新しい絵が見られて良かったよ

78 :名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 05:22:31 ID:PFvt8yoV
しまった微妙にスレ違いスマン…

79 :名無しさん@ピンキー:2008/01/11(金) 20:36:38 ID:5hmQDWK6
>>75
遅ればせながらGJです
そういや「助六寿司」の淫語としての意味を知ったのはもて王からだったなあw

80 :名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 21:56:08 ID:dwQinhMd
百合は…正義だ…!GJです

81 :名無しさん@ピンキー:2008/01/16(水) 00:35:37 ID:nG5RJfO3
>>75
GJ!百合百合!

&ホッシュ

82 :名無しさん@ピンキー:2008/01/18(金) 08:20:40 ID:AiVY2o6g
乙。
百合のセオリーにのっとって、透瑠が責められる側と見て宜しいですか。
浴衣着たまんまエロと見て宜しいですか。ハアハア

ところで、たまにはエロ雑談とかあってもいいと思うんだぜ?
例えば悠が半蛇の間界人ということはちんこは2つ…ん?誰か来たようだな?

83 :名無しさん@ピンキー:2008/01/23(水) 19:54:30 ID:NCi+/bwD
|д・)<ホッシュ
そろそろバレンタインネタの時期だなあ。

84 :名無しさん@ピンキー:2008/01/27(日) 08:50:52 ID:5k6rUaJi
亜門新連載まだか

85 :名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 07:33:54 ID:rn6Ub2Qu
ほs
俺…あもたんの連載が始まったら、今度こそマメにアンケート書くんだ…
だからお願い早く…早くプリーズ!

86 :名無しさん@ピンキー:2008/02/08(金) 00:25:31 ID:HWR5LfHd
ほす

チョコには元々媚薬効果があると聞いた

87 :AQ:2008/02/08(金) 12:09:40 ID:0OQ6Y/dP
保守がてら、ちょっと早い時期ネタ投下致します。
あもたん先生総合になったと言うことで、短編集から。
作品名:一九ポンチ咄・カップリングは一九×桂×慎右ェ門の3P仕様です。
3Pはちょっと…という方はNGワード「バレンチ」でお願いします。
では。


88 :バレンチ・1:2008/02/08(金) 12:10:37 ID:0OQ6Y/dP
******
「こらキサマ!!学校に何を持ってきてるんだ!」
 僕、野田慎右ェ門の耳に、遠くからでも届く濁声が響く。
 といっても注意されたのは、僕ではない。
 運悪く学校にチョコレートを持ってきていたのを発見された女子生徒である。

 2月14日。
 世間ではバレンタインデーと称され、菓子業者・小売店の謀略が渦巻き、恋する男女が浮き足立ち、そうでない野郎は――。
「こ、これは調理実習で使うもので…」
「調理実習で使うのにリボン付きのラッピングなんぞ要らんだろうが!没収だ没収!」
 怒鳴る男の足元には、、同様の理由から没収されたチョコが紙袋に詰め込まれている。
 ――そうでない(勿論、一部のだが)野郎は、ねたみチョネみの炎を上げて浮き足立つ者を蹴落とそうとする日な訳で、今校門の前に
立ち、抜き打ちの持ち物検査(女子限定)をする教師もまた、そういう一部の男であった。

 あーあ、かわいそうに。人前であんなにがなり立てなくてもいいのに。
 …と思いつつも、僕は何食わぬ顔で二人の前を通り過ぎ、門をくぐる。
 情けないと笑いたければ笑うがいい。
 大多数の生徒がそうであるように、僕だってこんな所で無駄な正義感を振りかざして、平穏な生活を乱したくはないのだ。

 そう、どこかの誰かさんのように。

「大体だな、キサマらは学校をどういう場所だと…なぁーーっ!!?」
 ――噂をすれば何とやら。
 あの先生があんな間抜けな叫び声を上げる相手は、この学校内広しと言えど、一人しか居ない。
「おはようございます、先生」
 晴れやかな笑顔で挨拶する、一人の男子生徒。
 金メッシュの入った長い前髪、額には赤ハチマキ、両肩には(悪趣味な)頭蓋骨の肩当て。
 そして、今日は小脇に、大きさにしてA3変型版サイズの板チョコを抱えている。

 彼こそが『平穏』の二文字から最も遠いところに居る男。
 名前を、藤田一九という。

「き、き、キサマ、そりゃ一体どういうつもりだ!」
「――何がだ?」
「とぼけるな!その脇に抱えてるシロモノだ!」
「ああ。今日の美術に使用するんだ。並みの大きさだと造りが細かすぎてな。今の季節は手頃な大きさのものが手に入るので助かる」
「美術だと!?チョコだけに彫刻でもする気かキサマ!」
「……」
「何だその『がんばったね』とでも語り掛けるような目は!というかそういうリアクションの方が下手な突っ込みより傷付くわ!」
「まあまあ、普段言い慣れてないギャグを言おうとした努力は認めてやろう。だが、赤面するのもその位にしておかないと、てっぺんの
もじゃもじゃハンバーグが蒸し焼きになるぞ?」
「やかましい!」

 …全く、先生相手によくやるよ。
『退かぬ!媚びぬ!省みぬ!!』を地で行く(いろいろな意味で)規格外な同級生のやり取りを、背中で聞きつつ僕は――。
「えへへ、上手くいったね。藤田くんのとんちの勝利だねー」
「う、うん」
 僕は、胸に件の没収チョコ入り紙袋を抱え、校舎へと駆け込んで行ったのだ。


89 :バレンチ・2:2008/02/08(金) 12:11:17 ID:0OQ6Y/dP
*     
『波風立てずに、平穏な日々を送る』
 ささやかな筈だった僕の人生の目標は、彼に出会った日から音を立てて崩れていった。
 気が付けば僕は、『とんち同好会(※人数不足のため、同好会扱い・非公認)』なんて妙ちきりんな場所に籍を置き、日々振り回され
る羽目に遭っている。
「いやー、紙袋が無くなっている事に気付いた時のもじゃバーグ(仮名)の顔といったら。二人にも見せてやりたかったぞ」

 こっちは、いつ見つかって呼び出されるかとヒヤヒヤしてたんだけどね。

 言いたいのをぐっと堪えて、代わりにパックのフルーツ牛乳を飲み込む。
 2月の屋上はまだ寒く、昼食向きでないのを改めて実感する。
「没収されてた女子からも感謝されてたよー。本当、良かったね藤田くん。野田くんも」
「うむ。これで皆がとんちに興味を持ってくれるといいがな」

 いや、それ絶対無いから。

「でもさ、どうして女子ってのは没収されそうなの分かってて、ワザワザ学校にチョコレート持ってくるのかな。学校の外で渡した方が
効率も良さそうだと思うんだけどな」
 2個目のカレーパンを口に運びながら呟いた僕の素朴な疑問は、とんち同好会紅一点の、分かってないなあ、という言葉に切り返され
た。
「分かってないって…桂さん、何が?」
「だからそれは両想いだったり、あらかじめ『分かってる』相手だから出来る方法じゃない?でも学校しか接点のない場合なら、女の子
だって、危険を冒してでも相手に想いを伝えたくなるものなの。バレンタインってそういう日なんだから」

 はあ、そういうモンですか。

「ははは、慎は女心が分かってないんだな」

 アンタに言われたくはないけどね。

 ――でも。
 僕は弁当の出汁巻卵を咀嚼する、桂さんの小さな口をちらりと見て、心で呟く。
 彼女には、『想いを伝える相手』は居ないのかな。

 それこそ、危険を冒してでも、心を伝えたい相手は。

 ずずーっ。一九くんが音立てて缶入り緑茶を啜る音に、僕は正気を取り戻す。
 と、同時に気恥ずかしさに背中に汗をかいた。――こらこら。何考えてんだ学校で。
「ぷはあ。さて、ウチのクラスは次は美術だから、そろそろ支度するか。慎、行くぞ」
「え、あ――うん」
 一九くんの言葉に促されるように、慌てて口にカレーパンを押し込み、僕は屋上を後にする事にした。
 …って、あのチョコ持ってくの?
「それと――放課後、『同好会』の活動があるから、道場に集合な」

 ドアノブに手を掛け、背を向けたまま放たれる言葉。
 少しだけトーンの低くなった彼の声に――何故か、僕の胸は少しだけざわめいたのだった。


90 :バレンチ・3:2008/02/08(金) 12:12:03 ID:0OQ6Y/dP
*     
 学校から少し離れた住宅街の一角、とある寺の敷地内に、彼が主を務める道場がある。
 本来は、部活動の類は学校内で行うべきものなのだが、僕らの活動は人数もさることながら、活動内容も、学校に認められるものでは
無かった為、きちんとした部室を与えられる事無く――。
 結果、月に数度の部活動(非公認)は、この無駄に広い道場で行う事になっている。

「今来ましたー。遅れてゴメンね…って、あれ?藤田くんは?」
「一九くんなら、さっきお茶を持ってくるって出てったよ」
 板戸を開け、ひょっこりと現れた桂さんの問いに、僕はストーブで手を温めながら答える。
 僕もついさっきここに来たばかりだったのだ。
 2月の空気で冷えびえとしていた道場は、暖まるまでには、まだ時間がかかりそうだった。

 今日もここで、夕方近くまでぐだぐだと、とんちの名を借りた屁理屈の応酬をするのか。
 高校生の貴重な青春を費やす、なんとも無駄な時間を憂い、僕は軽く溜息を吐いた。

 だったら、そんな珍妙な活動などさっさと身を引けばいいという、至極もっともな意見もあるだろう。
 僕だって出来る事ならそうしてる。
 出来ないのは、あの男の不必要なほどの唯我独尊っぷりに押し切られているのと、もう一つ。
 隣で同じようにストーブにあたる彼女の存在にあった。

「ふーん…あ、ねえ野田くん。野田くんは今日、誰かからチョコ貰った?」
 ――どきん。
「い…いや、ボクはその、元々縁が無いから…」
 本当の事だ。
 しどろもどろな僕の返事に、桂さんはニコリと微笑むと、自分の鞄をごそごそと探り出した。
「じゃーん」
 しばらくしてから、彼女が効果音付きで取り出したのは、いわゆる板チョコというヤツである。
 朝、一九くんが持ち歩いていたように、無意味な程でかい訳でも、中にナッツやパフが入っている訳でもない、一つ100円そこそこの
どこにでも売っていそうな…ていうか桂さん、コンビニのシール付けっぱなしだよ。
 って…アレ?

「え…ひょっとして、ボクに?」
 おそらくは間抜けな表情であろう、自分の顔を指差し尋ねると、彼女は少し頬を赤らめ、小さく頷いた。

 うわあ。
 耳まで一瞬で熱くなってくのがわかった。
 たとえ義理だろうが、コンビニチョコだろうが、今日が特別な日で、そんな日にチョコを――元々好意を寄せていた彼女から貰えた、
という事実は、僕を容易に幸福の絶頂へと押しやった。
「あっ、ああ、ありがとう」
 赤面しつつ、チョコを受け取ろうとする――が、桂さんの手は、チョコから離れない。
「……?」
「手渡しじゃ、ひねりが足りないでしょ?」
 そう言うと外装の銀紙を剥がし、ぱきん、とチョコを小分けにし、そして彼女はそのまま――自分の唇へと、ひとかけのチョコレート
を忍ばせた。


91 :バレンチ・4:2008/02/08(金) 12:12:43 ID:0OQ6Y/dP
「え…桂さ…ん?」
「ん」
 ちょっ――ちょっと、これは、まさか。
 ひょっとして、『口移し』で…僕に?
 そんなっ!心の準備も無しにっ!?
 第一、僕はまだキス自体、生まれてこの方した事ない…のにっ!

 ばくばくと、派手に音立て始める胸を押さえる僕を知ってか知らずか、桂さんの大きな目はそっと閉じられ、僕の首に細い両腕が巻き
つかれていく。
 ふわり。おだんご付きセミロングの髪から漂う香りと、チョコの甘い匂いが僕の鼻先をくすぐり――僕も静かに目を閉じた。

 口の中に、ミルクチョコレートの味が広がる。
 甘く、とろりとした舌触り。
 そして――僕の唇を塞ぐ、柔らかい、唇の感触。
「ん…んむっ、んくっ」
「ふ…ぅんっ」
 堪えきれずにこぼれる吐息が、互いの頬をくすぐる。
 舌と舌が絡み合い、口の中のチョコが、みるみるうちに溶けていく。
「ぷぁっ。…美味しい?野田くん」
 唇を離し、尋ねる彼女に、僕はぼーっとなった頭をタテに振った。
 口の中をとろとろにした、チョコレートと、桂さんの唾液。
 僕の喉仏がゆっくり上下し、飲み込んだのを確認すると、桂さんは再びチョコの欠片を自分の口に含み、今度は僕の体の上へと、小さ
い体を覆い被せてきた。

 文字通りの、甘い誘惑に抗いきれず――いや、元々抗う必要なんて無いのだけど――僕の両手が、彼女の細い腰に回されようとしたそ
の時。

 がららららっ。
「遅くなってすまんな二人共。中々茶が沸かな……ん?」
「んんっ!!?」
 木戸を開ける音とともに投げかけられた、よく通る声に、僕と桂さんは入口を見た。
 僕と桂さん、そして一九くん。三人の視線がかち合う。

 同時に、口からチョコの欠片が床板にこぼれ落ち、ぽとん、と小さな音を立てた。
 ああ――すっかり忘れてた。


92 :バレンチ・5:2008/02/08(金) 12:13:31 ID:0OQ6Y/dP
*     
 そもさん。せっぱ。
『男二人と女一人。今の、どう見ても気まずいこの状況を打開するには?』
 ポク・ポク・ポク……ごめんなさい僕には名とんちが浮かびません。
「あ…あの…」
 青ざめつつ、言い訳をしようと口をパクパクさせる僕に、一九くんはストーブの近くにお盆を置くと、思い出したように、
「ああ、今日はバレンタインデーだからか」
 と一人納得したかのように呟いた。

 え?

 更に、言葉を受けた桂さんは照れたように、小さくえへへ、と笑うと、
「藤田くんも、食べる?」
 と尋ねていた。

 ええっ?

 ――どういうこと?
「いや、俺はもう少し茶を貰ってからにするよ」
 疑問符だらけの僕をそのままに、『一休流とんち術』三代目総帥は、平然と答えると、湯飲みに熱い茶を注いでいた。
 そういや、今日は随分寒かったからなあ――って違う。
 いったいどういう事なんだ?
 何なんだこの二人の関係?
 っていうか桂さんは何考えてんだ?

 何が何だかわからない。
 言いたい事は山ほどあるのに、どれから口にするべきか惑う僕の首に、桂さんは再び腕を絡めてくる。

「あっ、あの…桂さ…」
「――大丈夫。私、同好会以外でこういう事したコトないから」
 え…そうなんだ。良かっ…って、ちょっと待て自分!
 耳元に囁かれた言葉に、僕は思わず納得しかけ、慌てて自分にツッコミをいれる。
 同好会――って、僕今までされた事ないんですけど?
 っていうか、ナニを?

 けれどそれらは声にならず、口腔に残った疑念の欠片は彼女の小さな舌がこそげ取り、僕の頭は再び何も考えられない状態へと陥って
いったのだった。


93 :バレンチ・6:2008/02/08(金) 12:14:07 ID:0OQ6Y/dP
 …僕は一体、何をやっているのだろう。
 ついさっきまで、キスもした事が無かった口は、体の上にのしかかった少女の唇に塞がれて、隅々まで蹂躙されていく。
 それも、第三者の視線を感じながら。

 変だ。普通じゃない。
 恥ずかしい。
 なのに――止められない。

「…はっ、あ」
「…ふふっ。野田くん顔真っ赤になってるよ」
 僕の口から離れた桂さんの唇は、言葉を紡ぐとそのまま頬にキスを落とした。
 当然のように跳ね上がる心臓と、ズキズキ痛む股間。
 きっと、全部彼女には伝わっているのだろう。
「かわいい」
 僕にしか聞こえない位の囁きと同時に、耳に流れ込む、甘い吐息。
 ああもう、そんな事言われても、どうしろって言うんだよ。

「――桂」
 低い、僕のものじゃない声に、体の上にのしかかられていた重みが軽くなる。
 えーと…誰の声だっけ?
「そろそろ、俺もチョコを貰おうか」
「うん。…いいよ」
 かすかに涙でぼやけた視界の中で、彼女は上体を起こし、手元に転がっていた板チョコを掴んだ。
「藤田くんも、口移しにする?」
「そうだな――」
 …ふじた…一九くんか。
 ああ…そっか、これは別に、桂さんが僕に好意を持ってしてくれてる訳じゃないんだよな…。
 頭の隅で、僕はぼんやりと理解する。

 けれど、やっぱり幻想は見ていたかった。
 偽りだと分かっていても、ついさっきまで僕にしたような事を、一九くんにもする桂さんの姿は見たくなかった。
 僕は、顔を二人から逸らし、半べそをかいた情けない表情を見られまいとした。

 が、しばらくして返ってきた一九くんの答えは、僕の予想を裏切った。
「――俺もさすがに、男と間接キスっていうのは気分がいいものではない。そっちの口移しは遠慮させてもらう」
 代わりに――という言葉と共に聞こえたのは、チョコを割る音と、小さな衣擦れ音。そして。
「あっ」
 という、桂さんの吐息混じりの声だった。

「え?」
 声につられ、体の上の少女を見る。
 彼女は、僕の胸元に顔をうずめ、両手を固く握り締めた状態で、小さくぷるぷると震えていた。
「桂さん?どうし――」
 上体をわずかに起こし、尋ねようとした僕のセリフは、途中から絶句に変わった。

 捲り上げられた制服のスカートと、高く上げられた小さなお尻。
 通常覆っているであろう、下着の姿はそこにはなく、右足首に丸まって引っかかっている。
 そして――無防備になった…女の子の、あの部分を。
 彼は、一心に舌で愛撫していたのだ。


94 :バレンチ・7:2008/02/08(金) 12:14:42 ID:0OQ6Y/dP
*          
「いいっ、一九くんっ!?なななナニやってんの!」

 僕は今日、何度驚けばいいのだろう。
 けれど、察して欲しい。
 だって、今彼がやっている事は…アレだろ?その…く、クンn…。

「ふひぃふむふひぃは」
「ひゃんっ!」
「何言ってんのかわかんないよ!せめて口離せよ!!」
 真っ赤になって怒鳴る僕に、一九くんは唇を離すと、口移しだ。と答えた。
「上の口はお前で塞がってるのだから、やるなら下の口しか選択肢はあるまい?」

 いや、さも当然のように言われても。
 ていうかオッサン臭い表現だな。

「幾らなんでもその結論はないだろ!…桂さん、大丈夫?」
 人の事は言えないのは重々承知の上で、僕は胸元で荒い息をこぼし続ける彼女に問いかける。
「う…ん、だ、大丈夫、だよ。…ね、藤田くん…チョコ、美味しい?」
「ああ、桂の味が混じって、甘酸っぱくなってて、美味いよ」
 一九くんの言葉に、桂さんは軽く身を震わせると、よかった、と恍惚の表情で一人呟いていた。

 なにが。

 どうにも信じがたい事だが、この奇妙でふしだらで危うい状況は、二人にしてみれば『普通』の範疇に入るらしい。
 いつからこんな関係になったのかとか、問い質したい気もあったのだが、今はそれよりも。
「おっと、喋ってる間に溶けたチョコが溢れそうになってるな。…んっ」
「ふあっ、あ、舌、入ってるよぉっ…」
「もう一欠け、入れるぞ」
「うん、うんっ…いっぱい味わって…ね」

 それよりも――なんだこの疎外感。
 …ひょっとして、僕がここに居るのはただの邪魔なんじゃないのか?


95 :バレンチ・8:2008/02/08(金) 12:15:25 ID:0OQ6Y/dP
「それは違うぞ、慎」
「は?」
 ぎくり。顔に出てたのを読まれたか、いつの間にか顔を離していた一九くんが僕を見て、静かに言葉を放った。
 口の周りをチョコでベタベタにしているせいか、いまいち凄みに欠けるが。
「…なにが」
「お前はまだ、とんちについて理解してないようだな。とんちとは、いかに無駄な諍いを避けるかを己の頭を使って問う、言ってみれば
処世術の一つであり、むしろお前のように波風立てず暮らしたいと願う者こそ、進んでとんちを身に着けるべきなんだぞ?」
「…はあ」
 何度も聞いたセリフだ。やる気無さげに受け流す。
「自分が理解しがたいシチュエーションに陥ってしまった時――お前にとっては今がそうだろうが――どれだけ周りを、そして自分を傷
つけずに丸く収めるか。とんちの腕の見せ所じゃないのか?」
「そんな…」

 無茶苦茶な。続けようとした言葉は、無茶なもんか、という一九くんの言葉に遮られた。
 エスパーかよ。

「例えば今、お前が引け腰になってこの場を去るとしよう。まあ、今の俺としては不都合はないが、しかしお前はどうなる?その張り詰
めた股間はどうなる?自分を誤魔化しながら、恨み言を吐きながら自分を慰めて、ギクシャクした空気を同好会に持ち込むか?そんなの
は俺は御免被る。――第一に、桂はどうなる」
「…桂さん?」

 そうだ。桂さんは、どう思ってるんだ。

 僕は、胸元にしがみつく少女を見た。
 ――少女は、顔を真っ赤にしながら蚊の鳴くような声で、行かないで、と僕に向け、囁いた。
「……」
「さて慎。――どうする?」
 チョコの付いた唇を舐める一九くんの問いに、僕は目を閉じた。
 頭の奥で木魚が音を奏でる。

 チーン。
 澄んだ鐘の音が頭の中で響き渡ると同時に僕は目を開け、静かに――自分でも驚くほど静かに、
「わかった」
 と答えたのだった。

「あ、さっきの俺のセリフは、長いから読み飛ばしてかまわんぞ」
「どこ向いて言ってんの?」


96 :バレンチ・9:2008/02/08(金) 12:16:02 ID:0OQ6Y/dP
*       
「…続けるよ桂さん」
 震える手で、残り少なくなったチョコを分け、そっと唇に押し込む。
 そして、頃合を見計らい、僕は半開きになった彼女の唇に、自分の唇を重ねた。
 さっきまでとは違う、僕がリードを取る形のディープキス。
「ん…くふ、っ」
 少しだけ涙に濡れた、長いまつげが愛らしい。
「はっ…桂さんも、真っ赤になってる。汗までかいて…」
 だから、脱がすね。――囁き、彼女の制服の上着に手を掛ける。
 リボンタイを取りブラウスのボタンを外すと、ブラジャーに包まれた手のひらサイズの胸が、ふるりと揺れた。
「あっ…」

 チョコレート云々から逸脱している気もしなくも無いけれど、
「ん?チョコを奥に押し込み過ぎたな」
「ふあぁっ?あ、あ指…入っ…それ、チョコじゃないっ…!」
 一九くんに比べて僕はポジションで明らかに劣っているので、この位のオマケは大目に見て欲しい。
            
 そう、これは同好会の一環。僕がどれだけ状況を丸く収めるか、試す機会。
 だが、同時に、男としてのプライドを賭けた勝負でもあった。
 ――桂さんを、好きな娘を気持ちよくさせるのは僕だ。
 胸の奥から、ふつふつと湧き上がるものを押し込めるように、僕は、ぐっと喉を鳴らした。
 大きく開いたブラウスに手を潜り込ませて、ブラジャーごと胸を揉む。

 うわ…女の子の胸って、こんなに柔らかいんだ。
 それに、布の上からでも分かる、このちょっとコリコリしたのって…。
「ああっ、野田くん、そこ、やんっ」
「嫌なの?乳首が勃っちゃうくらい、気持ちよくなってるのに?」
「んんんっ」

 自分で自分のセリフに興奮してしまう。

 下手すれば暴発しかねない自分の下半身を律しながら、僕は、ブラをずり上げて直に胸を揉み、桂さんの耳朶に言葉を落とした。
「やっ、じゃないっ、じゃないけどっ、おかしくなる!」
 その言葉は、偽りではないだろう。
 僕と一九くん、二人がかりで上から下から責められて、嬌声を上げる桂さんの表情は、涙と涎でぐしょぐしょだけど、凄くやらしい。
 もっと、もっと、気持ちよくさせたくなる。
「いいよ。おかしくなっても」
 チョコの残りを手に取ろうと、腕を伸ばす。
 と、強い力で手首を掴まれた。
「――残りは半分に分けるぞ」
 一九くんだ。
「…うん」

「はっ、ひゃううっ、も、ダメぇ…」
「ほら、桂さん。最後のひとかけ、ボクに頂戴?」
 口に含ませ、何度目かのチョコレート味のキスを交わす。
 あまりの心地良さに、甘くて、苦しくて、涙が出そうだ。
「ふむっ、んんっ!んっ!―――!あっ!あはぁっ!」
 びくん、びくん。
 大きく痙攣する、小さな体。制服のズボンの太股の辺りが、じわりと熱くなった。
「ああ…ふぁあん、ん――」

 初めて目にする、女の子のイッた時の顔。
 恥ずかしさからか、真っ赤になった頬。涙で潤んだ、大きな瞳。小刻みにしゃくりあげるように震える、小さな肩。
 正直、僕と一九くんのどちらが彼女をイかせたかは、分からない。
 けれど、このとびきりやらしくて、せつなくて、いとおしい表情は、誰にも譲れない。
 だから、僕は唇を重ねた。

97 :バレンチ・10:2008/02/08(金) 12:18:04 ID:0OQ6Y/dP
*        
 あんなに冷え切っていた道場は、今はじっとりと肌にまとわり付く熱気がこもっている。
 けれどそれが、片隅の年季が入った石油ストーブのせいじゃないのは、ここにいる全員わかっていた。
「桂、服に皺が付きそうだから、脱がすぞ」
 静かに言葉を放つ一九くんの額のハチマキに、汗がにじんでいる。
 力なく、されるがままに服を脱がされ、靴下のみ(何やらマニアックだな)の姿になった桂さんも、そして、身を起こし、膝に彼女の
重みを感じながら、ぼんやりと脱がされる様を眺める僕も――全員、熱にうかされたように、赤い顔をしていた。

「……」
 白々とした蛍光灯の明かりの下の、桂さんの裸。
 呼吸と心音でふるふると揺れる、微かなふくらみ。
 ウエストから腰にかけての、なだらかなライン。
 強く握れば折れそうなほど、華奢な手足。
 全て、僕がかつて夢にまで――それこそ自慰のネタにするほど――見たものだった。

 それらが今、目の前に、圧倒的な現実と共に横たわっている。

「…一九くん」
 擦れた声で僕は、とんち道場三代目総帥の名を呼んだ。
「なんだ、慎」
「今、思ったんだけど…ボクたち、『チョコを貰うため』に桂さんにああいうコトしたんだよね…」
「ああ」
「だったら、貰った後で服を脱がしても意味無いんじゃない?」
「……」

 いや、本当に素朴な疑問だったんだから仕方ないじゃないか。
 空気読めてなかったのは認めるよ。
 だからそんな小馬鹿にしたような目で見るのやめてくれない?


98 :バレンチ・11:2008/02/08(金) 12:18:31 ID:0OQ6Y/dP
 そりゃ僕だって…出来ることなら続きがしたいよ。
 さっきから股間はギチギチに張り詰めてて痛いくらいだし、何より桂さんと体を重ねる機会なんて、この先あるかどうかも疑わしい。
 けれど、あと一歩踏み込めないのは、やはり心のどこかで『こんなのおかしい』と思う僕が居るからなんだ。

 一九くんは深く溜息を吐くと、やっぱりお前はとんちを分かっていないなあ、と呟いた。
「…どういう意味だよ」
「さっきも言っただろう。とんちの真髄は、いかに相手を、そして己を傷つけずに丸く収めるかにあると。――このまま済ませてお前は
満足するのか?」
 一言一言、噛み含めるように返す一九くんのセリフがどうにも癪に障る。
「な、なんだよ――じゃあ、三代目総帥殿はどういったとんちで切り返そうっていうんだよ」
 僕の言葉に、一九くんはしばし黙った。

 なんだよ。そっちこそ考えなしだったんじゃないか。

「――3月」
 沈黙を破ったのは、裸で僕に寄りかかる桂さんだった。
「…14日は…なんの日だっけ、野田くん」
「え…?えーと、ホワイトデーだろ?」
 バレンタインデーと対を成す、恋人の祭典。2月14日に心を打ち明けた女性に、男性が応える日――だったと思う。
 元々バレンタイン自体縁の無い僕に必要の無い知識なので、なげやりなのはやむ無いことである。
 でもそれが――考え至り、僕は桂さんの顔を見た。
「なるほど、前倒しというわけだな。桂」

 ベルトをカチャカチャ鳴らす一九くんの回答に、桂さんはこくん、と頷いた。
 なるほどって言っちゃったよこの総帥。――いやいやいや、ちょっと。
「準備早っ!」
 早々に桂さんの目前で臨戦態勢になっているブツをさらけ出す男に、ツッコミを入れる。
「何だ慎。――お前は桂の想いに応えないのか?」
「うっ…」
「野田くん…のも、ずっと苦しそうにしてたよね。…受け止めさせてくれる?」

 女の子にこんな事を言われて、断る男が居るだろうか。
 否。
 僕は真一文字に口を閉じ、気合を入れると、ズボンのベルトに手を掛けた。


99 :バレンチ・12:2008/02/08(金) 12:19:03 ID:0OQ6Y/dP
*        
 僕と一九くん、二人のポジションを代えることになり、ガチガチになったモノを片手に僕は、桂さんの足の間に割って入る。
 ――これが、女の子のアソコなんだ。
 初めて見る本物のアソコが、チョコまみれというのもどうかと思うけれど。
 とろとろになった場所は、そのまま挿れても大丈夫そうだった。

「…じゃあ、入れるよ」
「う、うんっ」
 狙いを定め、ゆっくり腰を突き出す。
 緊張ゆえに、何度か滑るミスを犯しつつも、僕は桂さんの熱いぬかるみへと、沈み込んでいった。

「あ…野田くんの、入ってくる…熱…」
「はああっ…ああっ、あ」

 情けない声が、勝手に喉の奥から漏れてくる。
 けれど、押さえ切れない。
 ぐちゅぐちゅって、やらしい音をたてて、僕を包み込んでくる桂さんの中。
 僕の全部を、淫らに呑み込んでいく、もう一つの口。

「凄…こんな、の」
 ――舐めるように僕の形に沿って這う幾枚ものぬめる舌が、僕のキモチイイ部分に触れるたび、
「感じたこと…な、い」
 ――頭の奥でチリチリと、どこかの細胞が焼き切れていくかのような微かな音を響かせ、
「…桂さん…の、なか」
 ――同時に僕の中の何かが失われていくような錯覚を覚えた。
「……気持ち、いい」

 そして。

「んっ…!!」
 僕の先端が、彼女の奥の大切な場所の入口をノックし、彼女の淫らなカラダが跳ねた瞬間。

 今まで僕を縛り付けていた理性とか、常識と呼ぶ類の抑圧が――簡単に、本当に驚くほど簡単に、消え去り、
「うおおああぁぁ……ああっ!!」
 僕は、ただ彼女の中で与えられる快楽を求め、夢中で腰を振る獣になった。

 ――快楽で頭の中が焼き切れていたせいか、最中の記憶は、残念ながらきちんとは残っていない。
 憶えているのは、突き上げるたびに微かに揺れる桂さんの胸とか、
 白く泡立った粘液まみれの僕を、何度も何度も呑み込んだ、繋がった部分の小ささや柔らかさとか、
 抱え込み、肩口へと高くあげた片脚の細さとか、
 そして――頭を抱え込まれ、僕と同じようなモノを何度も口に出し入れされていた桂さんの、やらしくも満たされている表情で。

 僕は心の底から、この刹那に似た時間が、永遠に続けばいいと願った。

 ………。
 ……。
 …。

 ぱたっ。ぱたたっ。
 柔らかい土に雨粒が落ちるような音が、自分の心音と呼吸音でざわめいていた耳の奥に届き、そこで僕の意識が取り戻された。

 快楽の残滓で、じんじんと痺れる意識の中で、僕はいまだひくつくモノを片手に握り、痙攣を起こしたかのように体を小さく震わせる
桂さんの体の、へその辺りから胸の双丘にかけてのほの紅い肌を、自分の精液で白く染め上げたのを見た。

 その姿はとても淫らで、背徳的で――それでいて、今まで見た事が無いくらい綺麗で。
 いつも放つたびにちょっとした罪悪感を抱いてしまう自分の体液に対して、僕は初めて『誇らしい』と思ったのだった。


100 :バレンチ・13:2008/02/08(金) 12:19:36 ID:0OQ6Y/dP
******
 冬の木枯らしの中では、夏の日差しは思い出せない――と書いてあった本のタイトルは何だっただろう。
 駅前の、コンビニの前で、買い食いの肉まんを頬張りながら僕は、ぼんやりとそんな事を考えていた。
 青白い光が、肉まんから昇る湯気と、僕の吐息を照らしている。

 確かに、2月の空気は寒い。日も暮れた夜道なら尚更に。
 けれど今の僕は、目を閉じれば容易に、さっき全身で感じた気怠くも心地良い熱さを思い出す事が出来た。
 ――何故なら僕は。
「お待たせー。ごめんね寒かった?」
 コンビニの自動ドアが開き、隣に立った少女の声に僕は目を開け、軽く首を振った。
「いや、大丈夫だよ」

 僕は、ついさっきまで、彼女を抱いていたのだから。

 ――桂を送っていけ。

 すっかり暗くなった外を見た一九くんに、そう言われたのは、狂乱の痕跡をあてがわれた濡れタオルで拭っていた時だった。
「慎、お前たしか途中まで同じ方向だったろ。…本来は同好会の責任者たる俺が送るべきなんだが、秋剣の世話が待っててな」
 むう、と心配そうに唸りながら、責任者は語る。

 なんだよ、そんなに頼りないか。

 ちなみに、秋剣というのは一九くんの飼っている馬のことである。
「そんなに気を使わなくてもいいよー。あたしの家、駅から近いし、まだ門限の時間でもないし」
「でも、もう外は暗くなってるから送るよ。夜道の一人歩きは色々あるし」
 さっきの手前、変質者云々、とは口に出さなかったのだが、一九くんには、送り狼になるなよ、と釘を刺された。

 人の事を何だと思ってるのだろうか。
 しかし、つくづく古臭い言い回しが好きな男だな。同い年なのに。

 そんな経緯で僕は今、電車待ちがてら二人でコンビニに立ち寄り、こうやって二人揃って買い食いなんてしてる訳だが。
 あ、桂さんのは桜あんまんだ。
 コンビニの、人工的な明かりに照らされた彼女の横顔は、呆れるほどに普段通りで。
 女の子が隠し持っているという、切り替えの早さとタフさというものを実感すると共に、心のどこかで、今さっきまでの事が全部自分
一人の見た幻だったんじゃないか、と僕に思わせたりもするものだった。
 ――幻。
 本当にそうだったなら、どれだけ気楽なものだろうか。
 僕の望んでいた平穏な日常と、あの行為は、はっきり言って真逆の位置に存在している。
 全てを幻と思い込むことが出来たなら、僕はまた、ひっそりと暮らしていく事が叶うだろう。

 …胸に一抹の、2月の風のような寂寥感を抱きながら。


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